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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1210383
審判番号 不服2008-21914  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-28 
確定日 2010-01-15 
事件の表示 特願2005-131255「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日出願公開、特開2005-277433〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年9月4日に出願した特願平7-226199号の一部を平成14年3月29日に新たな特許出願とした特願2002-94690号の一部を新たな特許出願としたものであって、平成17年4月28日に出願され、平成20年7月18日付けで拒絶査定がされ、この拒絶査定に対して同年8月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年9月25日付けで手続補正がされたが、当審において、この手続補正を、平成21年6月16日付けの補正却下の決定によって補正却下するとともに、同日付で、拒絶理由を通知したところ、平成21年9月1日に手続補正書と意見書が提出されたものである。

2.平成21年9月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年9月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(2-1)補正の概略
本件補正は、補正前の請求項1に、
「【請求項1】(a)第1の表面と該第1の表面と反対側の第2の表面とを有し、前記第1の表面と前記第2の表面とを貫通する貫通孔が設けられた樹脂基板と、
(b)一端にランド部が形成され、該ランド部が前記貫通孔を覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に形成された金属配線と、
(c)該金属配線に接続された複数のバンプ電極を備えるとともに前記樹脂基板の前記第1の表面上の前記貫通孔に対応する領域上に搭載された半導体チップと、
(d)前記バンプ電極と接続される領域を除く前記金属配線を覆う絶縁シートと、
(e)前記樹脂基板の前記第2の表面側に形成され、前記貫通孔内に露出する前記金属配線の前記ランド部に接続された半田ボールと、
を含むことを特徴とする半導体装置。」
とあったものを、
「【請求項1】(a)第1の表面と該第1の表面と反対側の第2の表面とを有し、前記第1の表面と前記第2の表面とを貫通する貫通孔が設けられた樹脂基板と、
(b)一端にランド部が形成され、該ランド部が前記貫通孔を覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に形成された複数の金属配線と、
(c)該金属配線のランド部とは反対側の該金属配線の他端部を除いて該金属配線を覆う絶縁シートと、
(d)前記金属配線の他端部に接続された複数のバンプ電極を備えるとともに前記絶縁シートを覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に搭載された半導体チップと、
(e)前記樹脂基板の前記第2の表面側に形成され、前記貫通孔内に露出する前記金属配線の前記ランド部に接続された半田ボールとを備え、
(f)前記金属配線は、他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在しており、
(g)前記半導体チップにおける前記複数のバンプ電極が形成された面と前記樹脂基板の第1の表面とが向き合った構造を有することを特徴とする半導体装置。」
と補正する事項を含むものである。

すなわち、本件補正は、補正前の請求項1の「金属配線」を、補正後の請求項1において「複数の金属配線」と補正することで、補正前の請求項1に記載された発明から、請求項1において規定する「一端にランド部が形成され・・・」等の特徴を具備する「金属配線」を1本のみ有する半導体装置を除外することで、請求項1によって特許を請求しようとする範囲を減縮し、「絶縁シート」について、補正前の請求項1で「バンプ電極と接続される領域を除く前記金属配線を覆う」ものであったものを、補正後の請求項1の「金属配線のランド部とは反対側の該金属配線の他端部を除いて該金属配線を覆う」と補正し、「半導体チップ」について、補正前の請求項1で「金属配線に接続された複数のバンプ電極を備えるとともに前記樹脂基板の前記第1の表面上の前記貫通孔に対応する領域上に搭載された」ものであったものを、補正後の請求項1の「金属配線の他端部に接続された複数のバンプ電極を備えるとともに前記絶縁シートを覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に搭載された」と補正すると共に、補正後の請求項1において「金属配線は、他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在しており」、かつ、「半導体チップにおける前記複数のバンプ電極が形成された面と前記樹脂基板の第1の表面とが向き合った構造を有する」という限定を付加することによって、補正前の請求項1においては限定されていなかった、バンプ電極が金属配線と接続する位置を、「金属配線のランド部とは反対側の他端部」に限定し、金属配線の延在の向きを「他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって」に限定し、半導体チップが絶縁シートを覆うものであることを限定し、半導体チップのバンプ電極が形成された面と樹脂基板の第1の表面が向き合った構造であることを限定するように、請求項1によって特許を請求しようとする範囲を減縮するものである。

したがって、補正前の請求項1に対して行う本件補正は、特許請求の範囲の減縮に相当する。また、本件補正によって補正された、補正後の請求項1に記載された発明と、補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるとはいえない。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により構成される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2-2)特許法第29条第2項に規定する特許の要件について
(A)引用例
本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-140462号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平6-112354号公報(以下、「引用例2」という。)、特開平6-224255号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の技術的事項が記載されている。

(A-1)引用例1
(1-a)「【請求項1】半導体チップを載置する絶縁フィルムと、前記半導体チップの電極パッドのそれぞれと接続する部分をもち前記フィルム面内で互いに分離されて形成される複数の配線を有し、前記絶縁フィルムの配線形成面の反対面から複数の穴を開けてそれぞれの前記配線の一部を露呈し、これら穴に外部端子を差し込み前記配線の一部分と接続し、前記外部端子の先端部を前記絶縁フィルムより突出させることを特徴とする半導体装置のパッケージ。
【請求項2】前記外部端子の先端部の形状が半球状であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置のパッケージ。」(特許請求の範囲)

(1-b)「図4(a)及び(b)は従来のTAB型パッケージの一例を示す平面図及び断面図である。このTAB型パッケージは、図4に示すようにポリイミド等の樹脂で製作されるTABフィルム1上に、銅の金属膜を被着し、この金属膜をエッチングにより複数の配線2を形成し、一方、半導体チップ7には信号入出力用の電極パッドが形成され、この電極パッドとTABフィルム1の配線2の一端とを接続し半導体チップをTABフィルム1に載置し、樹脂により半導体チップを封止していた。」(【0004】)

(1-c)「図1(a)?(c)は本発明のTAB型パッケージの一実施例を示す表面の部分破断平面図、断面図及び裏面の平面図である。このTAB型パッケージは、半導体チップ7を載置するTABフィルム1の面内に半導体チップ7内あるいは外側にかかって伸延する配線2を形成し、これら配線2を電極パッドの対向する位置で電極パッド8と接続し、電極パッド8と接続された位置以外の配線部分をTABフィルム1より露呈するためにスルーホール3を形成している。そして、このスルーホール3に外部端子4を差し込み露呈した配線部分と接続し、外部端子4の先端部をTABフィルム1より突出させたことである。」(【0012】)

(1-d)「まず、TABフィルム1の面に金属膜を被着し、選択的にエッチングして、例えば、図1(a)に示すようなパターンで配線2aを形成する。次に、TABフィルム1に形成された配線2aの部分がTABフィルム1より露呈するように、配線形成面の反対面からフォトリソグラフィ技術で選択的にエッチングし、スルーホール3を形成する。尚、このスルーホール3は実装されるプリント基板の接続端子と合うように配列して形成されるものである。従って、配線のパターンも予めこのことを考慮して設計すべきである。次に、配線2a及びスルーホール3が形成されたTABフィルムと半導体チップを準備し、図2(a)に示すように、半導体チップ7をTABフィルム1に位置決めして載置し、電極パッド8とそれぞれ対応する配線2aと接合する。次に、スルーホール3の開口のある面からめっきあるいは蒸着等によりスルーホール3が塞がるように半田あるいは金属の膜を形成する。そして、図2(b)に示すように、スルーホール3以外の領域の金属膜をエッチング除去して、TABフィルム1より突出する外部端子材4aを形成する。次に、図2(c)に示すように外部端子部材4aに半田めっき等によりバンプ5を被着し、外部端子として完成する。」(【0014】-【0016】)

(1-e)図1(a)からは、配線(2a)の一端が、スルーホール(3)を覆い、他端が、電極パッド(8)と接続していることを読み取ることができる。
また、図1(a)からは、前記配線(2a)のうち、半導体チップ(7)の紙面上辺側の電極パッド列のうちの左から4番目の電極パッド(8)に接続した配線(2a)、及び、半導体チップ(7)の紙面下辺側の電極パッド列のうちの左から4番目の電極パッド(8)に接続した配線(2a)が、電極パッド(8)と接続した一方の端部を起点として、外部端子(4)が接続された他方の端部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在すると共に、この2本の配線(2a)が半導体チップ(7)によって覆われていることを読み取ることができる。
さらに、図1(b)からは、電極パッド(8)が、半導体チップ(7)の下面から突出していること、および、半導体チップ(7)の電極パッド(8)が形成された面と、TABフィルム(1)の配線(2a)が形成された面とが向き合った構造を有していることを読み取ることができる。

そうすると、引用例1の上記摘記(1-a)-(1-e)に記載された事項から、引用例1に、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「(ア)配線形成面と該配線形成面の反対面とを有し、前記配線形成面と前記配線形成面の反対面とを貫通するスルーホールが設けられたTABフィルムと、
(イ)半導体チップの下面から突出する電極パッドと接続した一方の端部を起点として、外部端子が接続された他方の端部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在する複数の配線と、
(ウ)前記配線の、外部端子が接続された方の端部とは反対側の前記配線の他端部に接続された複数の半導体チップの下面から突出する電極パッドを備えるとともに、前記複数の配線を覆うように前記TABフィルムの前記配線形成面上に搭載された半導体チップと、
(エ)前記TABフィルムの前記配線形成面の反対面から差し込まれ、前記スルーホール内に露呈した前記配線に接続する、先端部の形状が半球状である、スルーホールを塞ぐ半田とその上に被着した半田めっきからなるバンプで構成された、外部端子とを備え、
(オ)前記配線は、一端が前記スルーホールを覆うように前記TABフィルムの前記配線形成面上に形成された金属膜をエッチングして形成され、
(カ)半導体チップの電極パッドが形成された面と、TABフィルムの配線が形成された面とが向き合った構造を有することを特徴とする半導体装置のパッケージ。」

(A-2)引用例2
(2-a)「薄型オーバーモールデッド半導体デバイス(48)であって:第1表面,第2表面,および複数のスルーホール(44)を有する基板(40)であって、前記第1表面は、前記複数のスルーホールの上に置かれる複数のはんだパッド(47)を終端とする導電金属トレース(46)のパターンを有する基板(40);前記第1表面の上にマウントされた半導体ダイ(50)であって、前記半導体ダイは、前記導電金属トレースの前記パターンに電気的に結合されている半導体ダイ(50);封入材によって形成され、少なくとも前記半導体ダイを被覆するパッケージ・ボディ(54);および前記第2表面から延在する複数のはんだボール(56)であって、前記複数のはんだボールは、前記複数のスルーホールによって前記第1表面上の複数のはんだパッドに接続されている複数のはんだボール(56);によって構成されることを特徴とする薄型オーバーモールデッド半導体デバイス。」(【請求項1】)

(2-b)「改良基板40は高分子基板42から構成され・・・」(【0012】)

(2-c)図3は、引用例2に記載された発明の実施例に基づく薄型オーバーモールデッド・パッド・アレイ・キャリアの改良基板を、上面図で示したものであって、はんだパッド47が、導電金属トレース46よりも幅広で略円形の形状を備えていることを読み取ることができる。

(A-3)引用例3
(3-a)「請求項1】半導体素子の電極パッドを外部基板上の配線パターンに接続するための半導体素子実装用絶縁フィルムであって、該絶縁フィルムの片面には半導体素子の電極パッド上のバンプを接続するための配線パターンを有し、該配線パターンは絶縁フィルムを貫通する導通路によって絶縁フィルムの他面側に導通し、他面側の導通路端には外部基板上の配線パターンに接続するためのバンプが形成されていることを特徴とする半導体素子実装用絶縁フィルム。
【請求項2】半導体素子実装用絶縁フィルムの片面もしくは両面にカバーコート層が形成されている請求項1記載の半導体素子実装用絶縁フィルム。」(特許請求の範囲)

(3-b)「また、図3に示すように、前記本発明の半導体素子実装用絶縁フィルムの片面もしくは両面に、電気絶縁性を有する合成樹脂からなるカバーコート層7(17)を形成することによって、各配線パターン表面や各バンプの間もカバーコート層によって確実に絶縁することができて好ましいものである。さらに、カバーコート層は壁材的に作用すると共に、半田などのバンプ金属に対して疎性を示す合成樹脂からなるので、たとえバンプ金属が加熱流動しても流出の防止ができるという効果も発揮し、電気的な接続信頼性が極めて高いなり、狭ピッチ化を図ることができる。」(【0017】)

(B)対比
本願補正発明と、引用例1発明と比較する。
(a)引用例1の上記摘記(1-b)の「ポリイミド等の樹脂で製作されるTABフィルム」との記載を参酌すれば、引用例1発明の「TABフィルム」は、本願補正発明の「樹脂基板」に相当する。
(b)引用例1発明の「配線形成面」、「配線形成面の反対面」、「スルーホール」、「金属膜をエッチングして形成した配線」、「半導体チップの下面から突出する電極パッド」、「半導体装置のパッケージ」は、それぞれ、本願補正発明の「第1の表面」、「第2の表面」、「貫通孔」、「金属配線」、「バンプ電極」、「半導体装置」に相当する。
(c)本願補正発明において「ランド部」とは、金属配線のうち、貫通孔を覆う部位を指しているものと認められるから、引用例1発明の配線のうち、スルーホールを覆う部位は本願補正発明の「ランド部」に相当するといえる。
(d)引用例1発明の「・・・(イ)半導体チップの下面から突出する電極パッドと接続した一方の端部を起点として、外部端子が接続された他方の端部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在する複数の配線・・・とを備え、(オ)前記配線は、一端が前記スルーホールを覆うように前記TABフィルムの前記配線形成面上に形成された金属膜をエッチングして形成され、・・・を特徴とする半導体装置のパッケージ」は、本願補正発明の「・・・(b)一端にランド部が形成され、該ランド部が前記貫通孔を覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に形成された複数の金属配線と、・・・とを備え、(f)前記金属配線は、他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在しており・・・を特徴とする半導体装置」に相当する事項であるといえる。
(e)引用例1発明の「先端部の形状が半球状である、スルーホールを塞ぐ半田とその上に被着した半田めっきからなるバンプで構成された、外部端子」は、本願補正発明の「半田ボール」と、「先端部の形状が半球状である半田からなる外部端子」の範囲で一致するといえる。

すると、本願補正発明と、引用例1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「(a)第1の表面と該第1の表面と反対側の第2の表面とを有し、前記第1の表面と前記第2の表面とを貫通する貫通孔が設けられた樹脂基板と、
(b)一端にランド部が形成され、該ランド部が前記貫通孔を覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に形成された複数の金属配線と、
(d)前記金属配線の他端部に接続された複数のバンプ電極を備えるとともに前記樹脂基板の前記第1の表面上に搭載された半導体チップと、
(e)前記樹脂基板の前記第2の表面側に形成され、前記貫通孔内に露出する前記金属配線の前記ランド部に接続された半田ボールとを備え、
(f)前記金属配線は、他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在しており、
(g)前記半導体チップにおける前記複数のバンプ電極が形成された面と前記樹脂基板の第1の表面とが向き合った構造を有することを特徴とする半導体装置。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点>
(相違点1)
本願補正発明において、ランド部に接続する外部端子が、半田ボールであるのに対して、引用例1発明の外部接続端子が、半田ボールと明記されていない点。

(相違点2)
本願補正発明が、「該金属配線のランド部とは反対側の該金属配線の他端部を除いて該金属配線を覆い、かつ、半導体チップによって覆われる、絶縁シート」を備えるのに対して、引用例1には、このような部材について言及されていない点。

(C)判断
(相違点1について)
引用例2の「はんだパッド47」は、本願補正発明の「ランド部」に相当する。そして、引用例2には、基板の第2表面から延在するはんだボールが、基板のスルーホールを介して基板の第1表面に置かれる前記はんだパッドに接続されて外部端子として機能する半導体デバイスに係る発明が記載されている。一方、引用例1発明と、引用例2に記載された発明は、いずれも「第1の表面と該第1の表面と反対側の第2の表面とを有し、前記第1の表面と前記第2の表面とを貫通する貫通孔が設けられた樹脂基板と、一端にランド部が形成され、前記ランド部が前記貫通孔を覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に形成された金属配線と、前記金属配線のランド部とは反対側の前記金属配線の他端部に電気的に接続された複数の電極を備えるとともに前記樹脂基板の前記第1の表面上に搭載された半導体チップと、前記樹脂基板の前記第2の表面側に形成され、前記貫通孔内に露出する前記金属配線のランド部に接続された先端部の形状が半球状である半田からなる外部端子と、を含むことを特徴とする半導体装置」である点で一致する。してみれば、貫通孔内に露出した、樹脂基板の第1の表面に形成された金属配線を外部に接続するための外部端子として、引用例1発明の「先端部の形状が半球状である、スルーホールを塞ぐ半田とその上に被着した半田めっきからなるバンプで構成された、外部端子」として、引用例2に記載された「半田ボール」を用いることは、当業者が容易に想到し得たことであり、両者を組み合わせることを妨げる格別の理由も認められない。また、このような構成としたことによる効果も当業者が予測し得た範囲のものである。

(相違点2について)
各配線パターン表面や各バンプ間を確実に絶縁するために、バンプと配線パターンが接続する領域を除く配線パターンの表面に、電気絶縁性を有する層を備えた半導体装置は周知(例えば、引用例3の上記摘記(3-a)、(3-b)を参照されたい。)である。
してみれば、引用例1発明において、半導体チップのバンプ電極と接続する、金属配線のランド部とは反対側の該金属配線の他端部を除いて、前記金属配線を覆う絶縁シートを設けることで、各配線パターン表面や各バンプ間を確実に絶縁して、電気的な接続信頼性を高くすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、上記摘記(1-e)によれば「配線(2a)が半導体チップ(7)によって覆われている」のであるから、このように配線を覆うように絶縁シートを設けた場合には、当該絶縁シートは、半導体チップにも覆われるといえる。
以上によれば、当業者であれば、引用例1発明において、引用例3に示される周知の技術を適用して、相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することは容易に想到することができたものと認められる。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2に記載された発明及び引用例3に示される周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(なお、上記「(B)対比」において、本願補正発明の「ランド部」を、配線の貫通孔を覆う部位と認定した。仮に「ランド部」を本願の図1に示すような、他の配線部より幅広な形状を有する部位であると認定すると、引用例1の図1に記載された配線(2a)の形状と一応相違することとなり、この点においても本願補正発明と引用例1発明は相違することとなる。しかしながら、他の部材と接続する箇所において配線を幅広とすることは通常行われていること(要すれば、引用例2の図3等を参照されたい。)であるから、この点は設計事項にすぎず、仮にこの点を相違点として認めたとしても、本願補正発明の進歩性を認めることはできない。
また、上記「(B)対比」において、引用例1発明が、「電極パッド(8)と接続した一方の端部を起点として、外部端子(4)が接続された他方の端部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在する配線」を、複数備えていることから、引用例1発明と本願補正発明はいずれも「一端にランド部が形成され、該ランド部が前記貫通孔を覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に形成された複数の金属配線と、・・・を備え、前記金属配線は、他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在しており・・・」という構成を具備した発明である点で一致するとした。仮に、本願補正発明が、「全ての」金属配線が「他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在しており」という条件を満たしていることを要件としているのであれば、引用例1発明は、このような条件を満たしていない配線をも備えていることから、この点においても本願補正発明と引用例1発明は相違することとなる。しかしながら、引用例1の上記摘記(1-c)の「このTAB型パッケージは、半導体チップ7を載置するTABフィルム1の面内に半導体チップ7内あるいは外側にかかって伸延する配線2を形成し、」との記載、及び、摘記(1-d)の「TABフィルム1に形成された配線2aの部分がTABフィルム1より露呈するように、配線形成面の反対面からフォトリソグラフィ技術で選択的にエッチングし、スルーホール3を形成する。尚、このスルーホール3は実装されるプリント基板の接続端子と合うように配列して形成されるものである。従って、配線のパターンも予めこのことを考慮して設計すべきである。」との記載を参酌すれば、引用例1発明において、配線のパターンは設計事項であることが明らかであるから、引用例1発明において該配線の全てを「他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在しており」という条件を満たすようなパターンとすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得た設計事項であるといえる。また、このようなパターンとしたことによる効果も当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。)

審判請求人は、平成21年9月1日付けの意見書において「今回、本願の旧請求項1及び5(平成20年7月3日付けの手続補正書)において、補正却下された平成20年9月25日付け手続補正の内容に以下の内容を付加する補正を行いました。・・・(C)各金属配線は、他端部を起点として半田ボールが接続されたランド部まで、半導体チップの周辺部から半導体チップの中央側に向かって延在している。・・・〔J〕そこで、上記第1?第5引用例と本願発明とを対比致しますと、第1引用例には、「補正の却下の決定」の第9頁に相違点2として記載されていますように、「絶縁シート」に相当する構成が開示されていません。一方、本願発明と引用例との相違点2は進歩性なしとして示されている第3引用例には、「配線パターン5を覆うカバーコート層7」が開示されています。しかし、第3引用例には、上記記載の(C)に相当する構成が開示されておりません。つまり、第3引用例は、本願発明とは異なり、「配線パターン5は、バンプ2が接続された配線パターン5の他端部を起点としてバンプが接続された配線パターン5のランド部まで、半導体素子1の中央側から周辺部に向かって延在しており、このような配線パターン5がカバーコート層7によって覆われている」ことが開示されているに過ぎず、本願発明のような金属配線が絶縁シートによって覆われていることについては全く開示されておりません。従って、第3引用例を第1引用例に対してどのように組み合わせたとしても上記された相違点2を進歩性がないとする理由はなく、補正後の本願発明の構成に到達することは不可能であると考えます。」と主張するので、この点について更に検討する。
引用例1の上記摘記(1-e)に記載したように、引用例1の図1(a)から「半導体チップ(7)の紙面上辺側の電極パッド列のうちの左から4番目の電極パッド(8)に接続した配線(2a)、及び、半導体チップ(7)の紙面下辺側の電極パッド列のうちの左から4番目の電極パッド(8)に接続した配線(2a)が、電極パッド(8)と接続した一方の端部を起点として、外部端子(4)が接続された他方の端部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在する」ことを読み取ることができる。そして、引用例1の図1(a)から読み取ることができる前記事項は、審判請求人が意見書において主張する「上記記載の(C)に相当する構成」、すなわち、「(C)各金属配線は、他端部を起点として半田ボールが接続されたランド部まで、半導体チップの周辺部から半導体チップの中央側に向かって延在している。」に相当するといえる。
一方、引用例3の上記摘記(3-b)には「半導体素子実装用絶縁フィルムの片面もしくは両面に、電気絶縁性を有する合成樹脂からなるカバーコート層7(17)を形成することによって、各配線パターン表面や各バンプの間もカバーコート層によって確実に絶縁することができて好ましいものである。さらに、カバーコート層は壁材的に作用すると共に、半田などのバンプ金属に対して疎性を示す合成樹脂からなるので、たとえバンプ金属が加熱流動しても流出の防止ができるという効果も発揮し、電気的な接続信頼性が極めて高いなり、狭ピッチ化を図ることができる。」と記載されている。
そして、上記引用例1及び引用例3の上記記載に接した当業者であれば、引用例1に記載された、本願補正発明の「上記記載の(C)に相当する構成」、すなわち、「他端部を起点として半田ボールが接続されたランド部まで、半導体チップの周辺部から半導体チップの中央側に向かって延在している金属配線」を、引用例3に記載された、本願補正発明の「絶縁シート」に相当する「カバーコート層」によって覆い、引用例3に記載された、各配線パターン表面や各バンプの間を確実に絶縁し、たとえバンプ金属が加熱流動しても流出の防止ができ、電気的な接続信頼性が極めて高くなり、狭ピッチ化を図ることができるという効果を求めることは、容易になし得たことであると認められる。また、両者を組み合わせることを阻害する格別の事由を見いだすこともできない。すなわち、引用例3の上記摘記(3-a)からも明らかなように、引用例3に記載された発明は、配線パターンの延在方向については、何ら限定しない発明である。また、引用例3の発明の詳細な説明を精査しても、引用例3に記載された前記カバーコート層を形成することによる効果が、引用例3の図面に示された「配線パターン5は、バンプ2が接続された配線パターン5の他端部を起点としてバンプが接続された配線パターン5のランド部まで、半導体素子1の中央側から周辺部に向かって延在しており、このような配線パターン5がカバーコート層7によって覆われている」場合のみに生じ、それ以外の場合には妥当しないものであると解することもできない。
審判請求人は、引用例3に、本願補正発明の「上記記載の(C)に相当する構成」が記載されていないことから、第3引用例を第1引用例に対してどのように組み合わせたとしても上記された相違点2を進歩性がないとする理由はなく、補正後の本願発明の構成に到達することは不可能であると主張するが、審判請求人の前記主張は、引用例1が、本願補正発明の「上記記載の(C)に相当する構成」を備えている点について考慮していない点で、主張の前提を欠き、かつ、以上のように、本願補正発明の「上記記載の(C)に相当する構成」は、引用例1に記載されていると認められるから、審判請求人の前記主張は採用することができない。

(2-3)特許法第29条の2に規定する特許の要件について
(B-1)先願発明
本願の出願の日前の出願であって、本願の出願後に出願公開された特願平7-524537号(国際公開番号 WO95/26047、出願人:日立化成工業株式会社、発明者、福富直樹、坪松良明、井上文男、山崎聡夫、大畑洋人、萩原伸介、田口矩之、野村宏)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。

(1-a)「本発明の半導体パッケージにおいては、配線は1層の配線においてその配線の片面が半導体チップと接続する第1の接続機能を持ち、その配線の反対面が外部の配線と接続する第2の接続機能をもつように構成されている。外部の配線と接続する外部接続端子は、例えばはんだバンプ、金バンプ等が好的に使用できる。外部接続端子は、半導体素子端子が配線とワイヤボンディング等で導通される位置より内側に設けるようにするのが高密度化の上で好ましい(ファンインタイプ)。このように外部接続端子の位置は、半導体素子が搭載された下面に格子状に配置するのが高密度化の上で好ましい。」(第9ページ第21-27行)

(1-b)「 図17により本発明の第十五の実施例について説明する。金属箔31上に絶縁基材32を直接形成した2層フレキシブル基材(図17a)の金属箔上に所定のレジスト像を形成し、公知のエッチング法により所望する複数組の配線パターン33を形成し、レジスト像を剥離する(図17b)。・・・一方、絶縁基材としては、プロセス耐熱性などの観点からポリイミド材が一般的である。・・・次に、後工程で外部基板との接続部となる位置に銅箔に達する凹部34を設ける(図17c)。・・・次に、所定の部分(開孔部35)をパンチング加工等で打ち抜いた接着材36付きフレーム基材37を配線パターン面に接着させる(図17d)。この場合、フレーム基材は特に限定するものではなく、ポリイミドフィルムや銅箔などの金属箔の適用が可能である。ここで、仮に2層フレキシブル基材のポリイミド層厚さが25μmで、かつ、接着するフレーム基材がポリイミドフィルムの場合、フレーム全体としての剛直性を確保するためにはフィルム厚さとして50?70μm程度が必要になる。なお、フレーム基材層を形成する領域についても特に限定するものではなく、半導体チップを搭載する部分にフレーム基材層を設けることも可能である。具体的には、チップ実装がワイヤボンディング方式の場合には、最小限ワイヤボンド用端子部38が露出していれば他の領域全てにフレーム基材層を設けても良い。次に、半導体チップ39を搭載し、金ワイヤ40で半導体チップと配線パターン間を電気的に接続させる(図17e)。一方、半導体チップ実装方式としてフェースダウン方式を採用する場合には、配線パターンの所定位置(半導体チップの外部接続用電極位置に対応)に金属パンプ等を設け、金属バンプを介して半導体チップと波線パターンとを電気的に接続させても良い。・・・次に、外部基板との接続部42を形成する。接続部42の形成方法としては、・・・はんだ印刷法によりはんだバンプを形成する方法などが適用可能である。最後に、フレームからパッケージ部を切断して所望するパッケージが得られる(図17g)」(第23ページ第18行-第25ページ第20行)

(1-c)図17は、先願明細書に記載された発明の半導体パッケージの製造法の一例を説明する断面図であって、同図からは、絶縁基材32の表面上に複数の配線パターン33が形成されており、該配線パターン33の一端が絶縁基材32の凹部34を覆い、他端部で半導体チップに電気的に接続されており、かつ、該配線パターンが、前記他端部を起点として、絶縁基材32の凹部34を覆う前記一端まで、半導体チップ39の周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在していること、
該配線パターンは、絶縁基材32の凹部34を覆う前記一端とは反対側の該配線パターンの前記他端部を除いて、フレーム基材37によって覆われていること、
該フレーム基材37は、半導体チップ39によって覆われていること、
及び、図17gからは、接続部42が、絶縁基材32に形成された凹部を充填し、かつ、絶縁基材の下側に半球状に盛り上がっていることを読み取ることができる。

上記先願明細書に記載された事項及び図面を総合勘案すると、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

「(ア)第1の表面と該第1の表面と反対側の第2の表面とを有し、前記第1の表面と前記第2の表面とを貫通する凹部34が設けられた厚さ25μmのポリイミド材からなる樹脂基材32と、
(イ)一端で前記凹部を覆うように前記樹脂基材の前記第1の表面上に形成されたエッチングされた金属箔31からなる複数の配線パターン33と、
(ウ)絶縁基材32の凹部34を覆う前記一端とは反対側の該配線パターンの前記他端部を除いて該配線パターンを覆うポリイミドフィルムからなるフレーム基材と、
(エ)前記配線パターンの他端部に金ワイヤで電気的に接続されるとともに、前記フレーム基材を覆うように前記樹脂基材の前記第1の表面上に搭載された半導体チップと、
(オ)前記樹脂基材の前記第2の表面側に、はんだ印刷法により形成された、前記凹部内を充填し、該凹部に露出する前記配線パターンに接続され、前記樹脂基板の前記第2の表面側に半球状に盛り上がる、半田バンプとを備え、
(カ)前記配線パターンは、前記他端部を起点として、絶縁基材32の凹部34を覆う前記一端まで、半導体チップ39の周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在した構造を有する半導体パッケージにおいて、
(キ)半導体チップ実装方法として、前記ワイヤボンドに替えて、配線パターンの所定位置(半導体チップの外部接続用電極位置に対応)に金属パンプ等を設け、金属バンプを介して半導体チップと配線パターンとを電気的に接続させるフェースダウン方式を採用した半導体パッケージ。」

(B-2)対比
本願補正発明と、先願発明を比較する。
(a)先願発明の「ポリイミド材からなる絶縁基材」は、本願補正発明の「樹脂基板」に相当する。以下、同様に先願発明の「凹部」、「エッチングされた金属箔からなる配線パターン」、「ポリイミドフィルムからなるフレーム基材」、「半導体パッケージ」は、それぞれ本願補正発明の「貫通孔」、「金属配線」、「絶縁シート」、「半導体装置」に相当する。
(b)先願発明の配線パターンのうち「前記第1の表面と前記第2の表面とを貫通する凹部34」を覆う部位は、本願補正発明の「ランド部」に相当する。
(c)半田印刷法によって形成された、前記凹部内を充填し前記樹脂基板の前記第2の表面側に半球状に盛り上がるバンプは、本願補正発明の「半田ボール」に相当する。仮に相違するとしても、前記半田バンプに替えて半田ボールとすることは、設計事項であり、この点は実質的な相違点とは認められない。
(d)フェースダウン方式を採用した半導体パッケージにおいて、半導体チップにおける複数のバンプ電極が形成された面と、前記半導体チップを搭載する部材の表面とが、向き合った構造となることは周知の事項である。

すると、本願補正発明と、先願発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
(a)第1の表面と該第1の表面と反対側の第2の表面とを有し、前記第1の表面と前記第2の表面とを貫通する貫通孔が設けられた樹脂基板と、
(b)一端にランド部が形成され、該ランド部が前記貫通孔を覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に形成された複数の金属配線と、
(c)該金属配線のランド部とは反対側の該金属配線の他端部を除いて該金属配線を覆う絶縁シートと、
(d)前記金属配線の他端部と、複数のバンプ電極によって電気的に接続されるとともに、前記絶縁シートを覆うように前記樹脂基板の前記第1の表面上に搭載された半導体チップと、
(e)前記樹脂基板の前記第2の表面側に形成され、前記貫通孔内に露出する前記金属配線の前記ランド部に接続された半田ボールとを備え、
(f)前記金属配線は、他端部を起点として前記半田ボールが接続された前記ランド部まで、前記半導体チップの周辺側から該半導体チップの中央側に向かって延在しており、
(g)前記半導体チップにおける前記複数のバンプ電極が形成された面と前記樹脂基板の第1の表面とが向き合った構造を有することを特徴とする半導体装置。

一方で、両者は、次の点で一応相違する。
<相違点>
(相違点1)本願補正発明のバンプ電極が半導体チップに備えられているのに対して、先願発明では、金属配線に設けられている点。

(B-3)判断
・相違点1について
半導体装置の製造過程において、バンプ電極が半導体チップ上、あるいは、金属配線上のいずれに形成されていたとしても、本願補正発明に係る「半導体装置」という「物」の構造として見た場合、半導体チップと金属配線との間に、バンプ電極を構成する材料からなる領域が存在する構造を有する点で相違しないから、相違点1は実質的な相違点であるとは認められない。
また、仮に、「物」の構造として相違したとしても、バンプを半導体チップ側に設けるか、配線側に設けるかは設計事項(要すれば、特開平4-154136号公報第2ページ右下欄第2-4行等を参照されたい。)であり、この点は設計上の微差に過ぎない。

したがって、本願補正発明は、先願明細書に記載の発明と実質同一である。しかも本願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、本願の出願の際にその出願人が先願の出願人と同一でもない。

(2-4)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項、又は、同法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成21年9月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-9に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成20年7月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

(3-1)引用例等
当審の拒絶の理由に引用された引用例1-3、及び先願明細書等の記載事項は、前記のとおりである。

(3-2)対比・判断
上記で、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討した本願補正発明は、前記「(2-1)補正の概略」の項で検討したように、本願発明1を減縮したものである。
そうすると、本願発明1の構成要件のすべてを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記のとおり、引用例1-2に記載された発明、並びに引用例3に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか、又は、先願明細書等に記載された発明であり、しかも本願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、本願の出願の際にその出願人が先願の出願人と同一でもないものであるから、本願発明1も同様の理由により、引用例1-2に記載された発明、並びに引用例3に記載された従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか、又は、先願明細書等に記載された発明であり、しかも本願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、本願の出願の際にその出願人が先願の出願人と同一でもないものである。

(3-3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1-2に記載された発明、並びに引用例3に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるか、又は、本願の出願の日前の出願であって、本願の出願後に出願公開された先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明であって、しかも本願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、本願の出願の際にその出願人が先願の出願人と同一でもないものであるから、同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-05 
結審通知日 2009-10-27 
審決日 2009-11-10 
出願番号 特願2005-131255(P2005-131255)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
P 1 8・ 575- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 粟野 正明
加藤 浩一
発明の名称 半導体装置  
代理人 青木 俊明  
代理人 川合 誠  
代理人 清水 守  

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