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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1210430
審判番号 不服2007-23084  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-23 
確定日 2010-01-14 
事件の表示 特願2002-52818号「吸収式冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年9月10日出願公開、特開2003-254638号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年2月28日の出願であって、平成19年7月13日付けで拒絶査定がなされ(平成19年7月24日発送)、これに対し、平成19年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年9月13日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成19年9月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「少なくとも1個以上の凝縮器(C)、蒸発器(E)、吸収器(A)及びn個(n≧2)の再生器(Gn?G1)を溶液配管系と冷媒配管系とで作動的に接続して循環サイクルを構成し、高温側の再生器(Gn)で発生した冷媒蒸気を低温側の再生器(Gn-1)に順次導入してこれを該低温側の再生器(Gn-1)の加熱源として利用して該低温側の再生器(Gn-1)の吸収溶液を加熱濃縮することを最も作動温度の低い再生器(G1)まで繰り返すようにしてなる吸収式冷凍装置であって、
上記高温側再生器(Gn)が、下部ヘッダー(17)と上部ヘッダー(18)との間に上下方向へ延びる複数本の伝熱管(16)を備え、上記吸収器(A)側からの吸収溶液を上記下部ヘッダー(17)側から上記上部ヘッダー(18)側へ向けて流れる間に加熱沸騰させるとともに、上記上部ヘッダー(18)から流出する気液混合溶液を気液分離器(15)に流入させ、該気液分離器(15)で分離した吸収溶液の一部が上記下部ヘッダー(17)側へ直接に流入するように構成されていることを特徴とする吸収式冷凍装置。」(下線部は補正個所を示す)

(2)補正の目的
前記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「吸収溶液の一部」が「下部ヘッダー(17)側へ流入する」構成について、「下部ヘッダー(17)側へ直接に流入する」と限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3-1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-187740号公報(以下「引用例1」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(1-ア)「吸収式冷凍機12において、13は冷却水が流れている冷却水管、14は上記高濃度吸収溶液出口管9を通じて高濃度吸収溶液が加えられ、冷却水管13の冷却水で冷却される吸収器、15は吸収器14からの低濃度吸収溶液を低濃度吸収溶液供給管6を通じて高温再生器1に送る吸収液ポンプである。
16は高濃度吸収溶液出口管9および低濃度吸収溶液供給管6の途中に設けた高温熱交換器、17は同じく途中に設けた低温熱交換器、18は低温熱交換器17からの低濃度吸収溶液と高温再生器1からの冷媒蒸気とが加えられる低温再生器、19は低温再生器18からの冷媒蒸気と冷媒液とが加えられ冷却水管13により冷却される凝縮器である。
20は凝縮器19からの冷媒液が加えられ冷水を作る蒸発器、21は蒸発器20で作られた冷水を冷凍負荷(図示せず)との間で循環させる冷水管、22は蒸発器20の冷媒液を循環させる冷媒ポンプである。」(段落【0003】-【0005】)

(1-イ)「低濃度吸収溶液供給管6より高温再生器1のタンク2に送り込まれた低濃度吸収溶液は、燃焼器3からの燃焼ガスの加熱源により、燃焼炉4および伝熱管5周辺で加熱濃縮され、冷媒蒸気を発生して高濃度吸収溶液となる。」(段落【0006】)

(1-ウ)「濃縮されて高濃度となった吸収溶液は高濃度吸収溶液出口管9より吸収器14へと戻される。吸収器14へ戻された高濃度吸収溶液は、蒸発器20で蒸発した冷媒蒸気を吸収して低濃度吸収溶液となり、再び高温再生器1のタンク2に送り込まれる。
一方、高温再生器1で発生した冷媒蒸気は低温再生器18,凝縮器19を経て冷媒液となり、蒸発器20へ送られる。」(段落【0007】-【0008】)

上記記載事項について検討すると、記載(1-ア)、(1-ウ)及び図4によれば、凝縮器19、蒸発器20、吸収器14、高温再生器1及び低温再生器18を溶液配管系と冷媒配管系とで作動的に接続して循環サイクルを構成し、高温再生器1で発生した冷媒蒸気を低温再生器18に順次導入してこれを該低温再生器18の加熱源として利用して該低温再生器18の吸収溶液を加熱濃縮する吸収式冷凍機12であって、
上記高温再生器1が、上記吸収器14側からの吸収溶液を加熱沸騰させる吸収式冷凍機12が示されている。

記載(1-イ)及び図3によれば、高温再生器1が、下部ヘッダーと上部ヘッダーとの間に上下方向へ延びる複数本の伝熱管5を備え、吸収溶液を上記下部ヘッダー側から上記上部ヘッダー側へ向けて流れる間に加熱沸騰させることが示されている。

上記記載(1-ア)?(1-ウ)の記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

「凝縮器19、蒸発器20、吸収器14、高温再生器1及び低温再生器18を溶液配管系と冷媒配管系とで作動的に接続して循環サイクルを構成し、高温再生器1で発生した冷媒蒸気を低温再生器18に順次導入してこれを該低温再生器18の加熱源として利用して該低温再生器18の吸収溶液を加熱濃縮することを低温再生器18まで繰り返すようにしてなる吸収式冷凍機12であって、
上記高温再生器1が、下部ヘッダーと上部ヘッダーとの間に上下方向へ延びる複数本の伝熱管5を備え、上記吸収器14側からの吸収溶液を上記下部ヘッダー側から上記上部ヘッダー側へ向けて流れる間に加熱沸騰させる吸収式冷凍機12。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-201202号公報(以下「引用例2」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(2-ア)「10は貫流式濃縮器で、上部と下部に環状の上部管寄せ(上部ヘッダー)12及び下部管寄せ(下部ヘッダー)14を有し、これらの管寄せ12、14間に鉛直方向の多数の上昇管16を略円筒状に配設し、上部中央部に燃焼装置18、例えばバーナーを有し、稀吸収液を下部管寄せ14に導入して加熱濃縮し、上部管寄せ12から気液混合物を取り出すことができるように構成されている。」(段落【0020】)

(2-イ)「この貫流式濃縮器10に気液混合物導管24を介して気液分離器26が接続されている。気液分離器26の上部には蒸気抜出導管28が接続され、気液分離器26の下側部には吸収液抜出導管30が接続されている。32は上部仕切板(気液分離板)、34は下部仕切板である。気液分離器26の下部と貫流式濃縮器10の下部管寄せ14とは、吸収液循環導管36を介して接続されている。」(段落【0021】)

(2-ウ)「合流部64は、図2(a)に示すように、循環導管36内に供給管42を挿入したり、又は図2(b)に示すように、循環導管36に供給管42を単に接続したり、又は図2(c)に示すように、供給管42を下部管寄せ14に直接接続したりする等の構成が採用される。」(段落【0023】)

上記記載事項について検討すると、記載(2-ア)、(2-イ)によれば、上部管寄せ12から流出する気液混合物を気液分離器26に流入させ、該気液分離器26で分離した吸収溶液の一部が下部管寄せ14側へ流入するように構成されていることが示されている。

記載(2-ウ)及び図2(c)によれば、吸収溶液が下部管寄せ14側へ直接に流入するように構成されていることが示されている。

そうすると、引用例2には、「上部管寄せ12から流出する気液混合物を気液分離器26に流入させ、該気液分離器26で分離した吸収溶液の一部が下部管寄せ14側へ直接に流入するように構成されていること」が記載されているといえる。

(3-2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「凝縮器19、蒸発器20、吸収器14」は、本願補正発明の「少なくとも1個以上の凝縮器(C)、蒸発器(E)、吸収器(A)」に相当し、以下同様に、「高温再生器1及び低温再生器18」は「n個(n≧2)の再生器(Gn?G1)」に、「高温再生器1」は「高温側の再生器(Gn)」に、「低温再生器18」は「低温側の再生器(Gn-1)」に、「吸収式冷凍機12」は「吸収式冷凍装置」に、「下部ヘッダー」は「下部ヘッダー(17)」に、「上部ヘッダー」は「上部ヘッダー(18)」に、「伝熱管5」は「伝熱管(16)」に、「吸収器(14)」は「吸収器(A)」に、それぞれ相当する。
また、引用発明では再生器が2個(n=2)備えられているので、引用発明の「低温再生器18」は、本願補正発明の「低温側の再生器(Gn-1)」だけでなく「最も作動温度の低い再生器(G1)」にも相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「少なくとも1個以上の凝縮器(C)、蒸発器(E)、吸収器(A)及びn個(n≧2)の再生器(Gn?G1)を溶液配管系と冷媒配管系とで作動的に接続して循環サイクルを構成し、高温側の再生器(Gn)で発生した冷媒蒸気を低温側の再生器(Gn-1)に順次導入してこれを該低温側の再生器(Gn-1)の加熱源として利用して該低温側の再生器(Gn-1)の吸収溶液を加熱濃縮することを最も作動温度の低い再生器(G1)まで繰り返すようにしてなる吸収式冷凍装置であって、
上記高温側再生器(Gn)が、下部ヘッダー(17)と上部ヘッダー(18)との間に上下方向へ延びる複数本の伝熱管(16)を備え、上記吸収器(A)側からの吸収溶液を上記下部ヘッダー(17)側から上記上部ヘッダー(18)側へ向けて流れる間に加熱沸騰させる吸収式冷凍装置。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明では、上部ヘッダー(18)から流出する気液混合溶液を気液分離器(15)に流入させ、該気液分離器(15)で分離した吸収溶液の一部が下部ヘッダー(17)側へ直接に流入するように構成されているのに対して、引用発明では、冷媒蒸気と高濃度吸収溶液を分離する手段が明確でない点。

(3-3)相違点の判断
上記相違点について検討する。
本願補正発明と引用例2に記載された技術事項とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用例2に記載された技術事項の「上部管寄せ12」は、本願補正発明の「上部ヘッダー(18)」に相当し、以下同様に、「気液混合物」は「気液混合溶液」に、「気液分離器26」は「気液分離器(15)」に、「下部管寄せ14」は「下部ヘッダー(17)」に、それぞれ相当する。

したがって、引用例2には、「上部ヘッダー(18)から流出する気液混合溶液を気液分離器(15)に流入させ、該気液分離器(15)で分離した吸収溶液の一部が下部ヘッダー(17)側へ直接に流入するように構成されていること」が記載されているといえる。

また、吸収式冷凍装置において、蒸発器内の冷媒に吸収溶液が混入すると蒸発器における沸点上昇が生じ、性能低下を招くという問題点があり(引用例1の段落【0009】参照)、再生器で発生する気液混合溶液を気体と液体に十分に分離することは当該分野における周知の課題である。そして、その課題の解決手段である気液分離器を吸収式冷凍装置の再生器に採用することは、引用例2に記載されているように本願出願前公知の技術事項である。

そのため、引用発明において、再生器で発生する気液混合溶液を気体と液体に十分に分離するという周知の課題を解決するために、引用例2に記載された技術事項を適用して、上部ヘッダー(18)から流出する気液混合溶液を気液分離器(15)に流入させ、該気液分離器(15)で分離した吸収溶液の一部が下部ヘッダー(17)側へ直接に流入するように構成されているようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び引用例2に記載された技術事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3-4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成18年11月8日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「少なくとも1個以上の凝縮器(C)、蒸発器(E)、吸収器(A)及びn個(n≧2)の再生器(Gn?G1)を溶液配管系と冷媒配管系とで作動的に接続して循環サイクルを構成し、高温側の再生器(Gn)で発生した冷媒蒸気を低温側の再生器(Gn-1)に順次導入してこれを該低温側の再生器(Gn-1)の加熱源として利用して該低温側の再生器(Gn-1)の吸収溶液を加熱濃縮することを最も作動温度の低い再生器(G1)まで繰り返すようにしてなる吸収式冷凍装置であって、
上記高温側再生器(Gn)が、下部ヘッダー(17)と上部ヘッダー(18)との間に上下方向へ延びる複数本の伝熱管(16)を備え、上記吸収器(A)側からの吸収溶液を上記下部ヘッダー(17)側から上記上部ヘッダー(18)側へ向けて流れる間に加熱沸騰させるとともに、上記上部ヘッダー(18)から流出する気液混合溶液を気液分離器(15)に流入させ、該気液分離器(15)で分離した吸収溶液の一部が上記下部ヘッダー(17)側へ流入するように構成されていることを特徴とする吸収式冷凍装置。」

4.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」の本願補正発明から、「直接に」との特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3-3)」に示したとおり、引用発明及び引用例2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び引用例2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

そうすると、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-12 
結審通知日 2009-11-17 
審決日 2009-11-30 
出願番号 特願2002-52818(P2002-52818)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F25B)
P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 稲垣 浩司
長崎 洋一
発明の名称 吸収式冷凍装置  
代理人 大浜 博  

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