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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1210461
審判番号 不服2008-19341  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-31 
確定日 2010-01-14 
事件の表示 特願2005-212683「半導体レーザ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月 4日出願公開、特開2005-311401〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年7月28日に出願した特願2000-229298号(以下「原出願」という。)の一部を平成17年7月22日に新たな特許出願としたものであって、平成18年6月26日付け及び平成19年7月13日付けで手続補正がなされたところ、平成20年6月19日付けで前記平成19年7月13日付けの手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月31日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

そして、その請求項に係る発明は、平成18年6月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。

「半導体レーザ素子と、前記素子を配置するフレームと、前記フレームに密着するとともに前記半導体レーザ素子のレーザ光の出射方向の前端部にテーパー面を形成した樹脂を備える半導体レーザ装置において、前記フレームは露出した素子配置部と前記レーザ光の出射方向の左右に位置する翼部を備え、前記素子配置部と前記左右の翼部の間に前記樹脂をフレームの表裏に連絡するための樹脂連絡孔を形成し、前記樹脂連絡孔を前記テーパー面より後方に配置したことを特徴とする半導体レーザ装置。」(以下「本願発明」という。)


2 引用刊行物の記載事項
(1)引用刊行物1
原出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-154848号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体レーザ装置に係わる。」

イ 「【0016】図1?図4を参照して本発明による半導体レーザ装置の一例を説明する。・・・
【0017】・・・図4にその平面図を示すように、Si等のフォトダイオードPDが形成されたサブマウント基板15が設けられ、この上に半導体レーザLD、例えばヘテロ接合型半導体レーザ等の各種半導体レーザ素子がマウントされる。
・・・
【0019】一方、図3に斜視図を示すように、リードフレーム21が設けられる。このリードフレーム21は、一枚の金属板から打ち抜き等によって形成され、半導体レーザLD、すなわちこれがマウントされた例えばサブマウント基板15がダイボンドされるマウント部11Mを先端に有するリード11と、その両側に他の外部端子導出リードを構成する2本のリード12とを組とする複数組のリードが配列され、それぞれのリード11および12の外端部が連結部21Lによって連結された構成を有する。
【0020】リード11の半導体レーザLDのマウント部、すなわち図示の例では半導体レーザLDがマウントされたサブマウント基板15をマウントするマウント部11Mには、図2の平面図で示すように、その両側のリード12の先端に対向するように広がる翼11W_(1)および11W_(2)が設けられて、例えばT字形パターンに構成される。
【0021】そして、また、図3に示すように、リードフレーム21のリード11と、その両側のリード12とを組とし、その先端部にエポキシ樹脂等よりなる樹脂モールド体13をモールドして、リードフレーム21の連結部21Lを切り離し、図1および図2に示すように、各リード11および12が機械的に連結され、電気的に絶縁されて保持された半導体レーザ装置が構成される。
【0022】この樹脂モールド体13は、例えばその全体的形状が直方体をなす形状とし得るものであるが、その成形に当たって凹部14が設けられる。
【0023】凹部14内には、リード11のマウント部11Mを外部に露出させる。同時に凹部14内に両側のリード12の一部、すなわち半導体レーザLDおよび光検出素子PDの各電極が接続されたボンディングパッド部19と、金線等のリードワイヤ18がボンディングされる電極接続部12Aとなる例えば先端部とが外部に露出される。
・・・
【0028】このようにして樹脂モールド体13によって周囲が囲まれた保護された半導体レーザLDおよびそのモニター用光検出素子のフォトダイオードPDが保護された半導体レーザ装置22を得る。
【0029】このような構成による半導体レーザ装置22は、目的とする使用態様に応じて例えば光ディスク、光磁気ディスク等のドライブ装置における光ピックアップの所定部に組み込まれる。この場合、その光ピックアップの所定部に、この半導体レーザ装置22を設定するに当たり、その樹脂モールド体13にその設定の基準面を形成するようになし得る。
・・・
【0033】これら基準面は、樹脂モールド体13によって形成する場合に限らず、例えば図5および図6にその一例の斜視図および平面図を示すように、リード11の先端をマウント部11Mより前方に延長させ、この延長部11MFの前方端面をY方向と直交する基準前方面13Fとして形成し得る。また、X方向の基準面13S_(1)および13S_(2)を、リード11の先端部から両側に延長した延長部の端面によって形成することもできる。」

ウ 上記イの【0033】を踏まえて図1及び図5を見ると、「X方向の基準面13S_(1)および13S_(2)」を形成するために設けられる「(リード11の先端部から両側に延長した)延長部」は、半導体レーザLDからの出射光の出射方向の左右に位置することがみてとれる。

よって、これらの記載を総合すると、引用刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「一枚の金属板から打ち抜き等によって形成され、半導体レーザLDがマウントされたサブマウント基板15がダイボンドされるマウント部11Mを先端に有するリード11と、その両側に他の外部端子導出リードを構成する2本のリード12とを組とする複数組のリードが配列された構成を有するリードフレーム21の、前記リード11と、その両側のリード12とを組とし、その先端部にエポキシ樹脂等よりなる樹脂モールド体13をモールドして、各リード11および12が機械的に連結され、電気的に絶縁されて保持された半導体レーザ装置であって、
前記樹脂モールド体13は、その全体的形状が直方体をなす形状とし得るものであるが、その成形に当たって凹部14が設けられ、凹部14内には、リード11のマウント部11Mを外部に露出させ、
このような構成による半導体レーザ装置は、例えば光ディスク、光磁気ディスク等のドライブ装置における光ピックアップの所定部に組み込まれ、この場合、その光ピックアップの所定部に、この半導体レーザ装置を設定するに当たり、その樹脂モールド体13にその設定の基準面を形成するようになし得、これら基準面は、樹脂モールド体13によって形成する場合に限らず、X方向の基準面13S_(1)および13S_(2)を、リード11の先端部から両側に延長した延長部の端面によって形成することもでき、前記延長部は半導体レーザLDからの出射光の出射方向の左右に位置する、半導体レーザ装置。」

(2)引用刊行物2
原出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平7-321407号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザーダイオードチップを樹脂封止して形成したレーザーダイオード装置に関し、特にレーザーダイオードチップからのレーザー光の発光に伴う封止樹脂の損傷防止及び遠視野像を確保する技術に関する。」

イ 「【0021】
【実施例】以下に図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。図1に、本発明の一実施例に係る樹脂封止形レーザーダイオード装置の斜視図を示す。さらに図8は特に本発明に係り、そのうち図8(a)は封止樹脂層30とレーザーダイオードチップ10の間に設けられる端面破壊防止層を含む樹脂封止形レーザーダイオード装置を側面から見た拡大断面図を示し、図8(b)は同じく封止樹脂を除いて見た平面図であり、図8(c)は同じく正面から封止樹脂を除いてみた図である。図8ではフォトダイオード73が作り込まれたSi基板からなる放熱板71の所定位置にレーザーダイオードチップ10がシリコーン樹脂によりなる膜厚50μm以上の端面破壊防止層20で被覆され、更に全体が封止樹脂(透明エポキシ樹脂)30で封止された様子を拡大して示している。
【0022】・・・端面破壊防止層20は量産方法として優れた滴下法により形成された液滴状の外形をなしており、図8(b),(c)で示されるようにチップ10を中心に前後左右に広がっており、チップ10の前方発光端面9側は放熱板71の側面を経てリードフレーム側面を覆い、後方発光端面側は放熱板71のフォトダイオード73の受光部73aを覆い、リードフレーム72の表面に広がる。またチップ10の左右方向は放熱板71の表面に広がり、リードフレーム72への封止樹脂30の食いつき向上のため設けてある貫通孔77の周囲まで達する。・・・」

ウ 「【0023】次にこの端面破壊防止層20の形成方法を説明する。フォトダイオード73が作り込まれた放熱板71上の所定位置に、レーザーダイオードチップ10をジャンクションダウン方式で半田付けする。次に放熱板71をAgエポキシ接着剤75でリードフレーム72上に固着し、さらにチップ10、フォトダイオード73の電極とリードフレーム72の外部引出電極端子721,722をAu線76によるワイヤボンディングにより接続する。その後液状のシリコーン樹脂の適量を図示しないディスペンサーでチップの上方から滴下する。樹脂は表面張力で放熱板71とリードフレーム72上に広がる。熱硬化型シリコーン樹脂では次にクリーンオーブン内で加熱硬化すると図8に示すような形状の端面破壊防止層20となる。なおuv(紫外線)硬化型シリコーン樹脂の場合は、uv照射により同様の形状が得られる。
【0024】上記に従い、各種のシリコーン樹脂をコーティングし、透明エポキシ樹脂で封止したレーザーダイオードを製作し、・・・」

エ 「【0037】・・・図13はこの発明に用いられるリードフレーム72の平面図を示す。このリードフレーム72は、フォトダイオードが作り込まれ、かつレーザーダイオードチップを搭載する放熱板を固着する部分の放熱を良くするため、その部分の面積を大きくしたT字形に設計してあり、そのT字の横棒の両端側には封止樹脂とリードフレーム72との食いつき向上のため貫通孔77が設けられている。・・・」

よって、これらの記載を総合すると、引用刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「フォトダイオード73が作り込まれた放熱板71上の所定位置に、レーザーダイオードチップ10をジャンクションダウン方式で半田付けし、次に放熱板71をAgエポキシ接着剤75でリードフレーム72上に固着し、さらにチップ10、フォトダイオード73の電極とリードフレーム72の外部引出電極端子721,722をAu線76によるワイヤボンディングにより接続し、その後液状のシリコーン樹脂の適量をディスペンサーでチップの上方から滴下して端面破壊防止層20となし、レーザーダイオードチップ10が前記端面破壊防止層20で被覆され、更に全体が封止樹脂(透明エポキシ樹脂)30で封止された樹脂封止形レーザーダイオード装置において、
前記リードフレーム72は、レーザーダイオードチップを搭載する放熱板を固着する部分の放熱を良くするため、その部分の面積を大きくしたT字形に設計してあり、そのT字の横棒の両端側には封止樹脂とリードフレーム72との食いつき向上のため貫通孔77が設けられている、樹脂封止形レーザーダイオード装置。」


3 対比
本願発明と引用発明1を対比する。

(1)引用発明1の「半導体レーザ装置」は、その「リード11」が、「半導体レーザLDがマウントされたサブマウント基板15がダイボンドされるマウント部11Mを先端に有する」ものであるから、
ア 引用発明1の「半導体レーザLD」、「リード11」及び「半導体レーザ装置」は、それぞれ、本願発明の「半導体レーザ素子」、「(前記素子を配置する)フレーム」及び「半導体レーザ装置」に相当し、
イ 引用発明1の「半導体レーザ装置」は、本願発明の「半導体レーザ素子と、前記素子を配置するフレームとを備え」との事項を備える。

(2)引用発明1の「半導体レーザ装置」は、「リード11と、その両側のリード12とを組とし、その先端部にエポキシ樹脂等よりなる樹脂モールド体13をモールドして、各リード11および12が機械的に連結され、電気的に絶縁されて保持された」ものであるから、
ア 引用発明1の「樹脂モールド体13」は、本願発明の「(前記フレームに密着する)樹脂」に相当し、
イ 引用発明1の「リード11と、その両側のリード12・・・の先端部にエポキシ樹脂等よりなる樹脂モールド体13をモールドし」との事項と、本願発明の「前記フレームに密着するとともに前記半導体レーザ素子のレーザ光の出射方向の前端部にテーパー面を形成した樹脂を備え」との事項とは、「前記フレームに密着する樹脂を備え」との点で一致する。

(3)引用発明1の「樹脂モールド体13」は、「その全体的形状が直方体をなす形状とし得るものであるが、その成形に当たって凹部14が設けられ、凹部14内には、リード11のマウント部11Mを外部に露出させ」るものであり、該「(リード11の)マウント部11M」には「半導体レーザLDがマウントされたサブマウント基板15がダイボンドされる」から、
ア 引用発明1の「(外部に露出された)マウント部11M」は、本願発明の「(露出した)素子配置部」に相当し、
イ 引用発明1は、本願発明の「前記フレームは露出した素子配置部を備え」との事項を備える。

(4)引用発明1の「延長部」は、「リード11の先端部から両側に延長した」ものであり、「半導体レーザLDからの出射光の出射方向の左右に位置する」ものであるから、
ア 引用発明1の「延長部」は、本願発明の「(レーザ光の主射方向の左右に位置する)翼部」に相当し、
イ 引用発明1は、本願発明の「レーザ光の主射方向の左右に位置する翼部を備え」との事項を備える。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「半導体レーザ素子と、前記素子を配置するフレームと、前記フレームに密着する樹脂を備える半導体レーザ装置において、前記フレームは露出した素子配置部と前記レーザ光の出射方向の左右に位置する翼部を備える半導体レーザ装置。」
である点で一致し、両者は次の点で相違する。

相違点
本願発明は、樹脂が、半導体レーザ素子のレーザ光の出射方向の前端部にテーパー面を形成したものであり、(フレームの)素子配置部と左右の翼部の間に前記樹脂をフレームの表裏に連絡するための樹脂連絡孔を形成し、前記樹脂連絡孔を前記テーパー面より後方に配置したのに対し、引用発明1は、樹脂が、レーザ光の出射方向の前端部にそのようなテーパー面を形成しておらず、また、フレームの素子配置部と左右の翼部の間にそのような樹脂連絡孔を形成するのか否か明らかでない点。


4 判断
上記相違点につき検討する。

引用発明1の「半導体レーザ装置」は、「例えば光ディスク、光磁気ディスク等のドライブ装置における光ピックアップの所定部に組み込まれ」るものであり、光ピックアップの所定部に接続されるものであるところ、2つの光学部品を接続する際に、接続する光学部品に先細り形状のテーパー面を形成して両者を接続しやすくすることは原出願の出願時において周知の技術であり(例えば、特開昭61-88208号公報(第1頁右下欄下から4行目?第2頁左上欄第12行、第5図)、特開平4-215607号公報(【0021】?【0028】、図12?図18)、特開2000-47061号公報(【0025】?【0028】、図2、図3)参照。)、また、引用刊行物2には、上記2(2)のとおりの引用発明2が記載され、リードフレームを封止樹脂で封止した樹脂封止形レーザーダイオード装置において、該リードフレームに封止樹脂とリードフレームとの食いつき向上のための貫通孔を形成することが示されていることを考慮すると、引用発明1において、上記周知技術を適用して樹脂モールド体13の半導体レーザLDのレーザ光の出射方向の前端部にテーパー面を形成し、さらに、上記引用発明2を適用してリード11のマウント部11Mと延長部の間の樹脂モールド体13がモールドされた領域に該樹脂モールド体13とリード11との食いつき向上のための貫通孔を形成することは当業者が容易になし得ることであり、その際、該貫通孔をどの位置に形成するかは当業者が設計上適宜定め得る事項というべきであって、当該貫通孔を樹脂モールド体13の幅が広い部分に形成して、前記テーパー面より後方に配置するようになすことに格別の困難があるものともいえない。

そして、本願発明によってもたされる効果は、引用発明1、2及び上記周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-11 
結審通知日 2009-11-17 
審決日 2009-11-30 
出願番号 特願2005-212683(P2005-212683)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 稲積 義登
杉山 輝和
発明の名称 半導体レーザ装置  
代理人 ▲角▼谷 浩  
代理人 ▲角▼谷 浩  

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