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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16G
管理番号 1210652
審判番号 不服2009-1153  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-14 
確定日 2010-01-21 
事件の表示 特願2003-422300「歯付ベルト」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-180589〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年12月19日の出願であって、平成20年12月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年1月14日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成21年1月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年1月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
歯部の表面を被覆する帆布を備えた歯付ベルトであって、
前記帆布が、
50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?130%の伸びを示す2/2綾織りまたは平織りの帆布材料によって形成され、
レゾルシンとホルマリンとの混合物を含まないラテックス液単体で表面処理を施されることなしに、前記レゾルシンと前記ホルマリンとの固形分の合計1重量部に対して、固形分が10?30重量部であるラテックスを含むRFL処理液によって表面処理が施されていることを特徴とする歯付ベルト。
【請求項2】
前記ラテックスが、前記表面処理によって生じる前記帆布の伸びの減少を抑制することを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項3】
前記ラテックスが、クロロプレンラテックスであることを特徴とする請求項2に記載の歯付ベルト。
【請求項4】
前記ラテックスが、SBRラテックスであることを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項5】
前記RFL処理液が、前記ラテックス100重量部に対して3?7重量部のコロイド硫黄をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項6】
前記RFL処理液が、前記ラテックスとして熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。」に補正された。
上記補正は、請求項1についてみると、実質的に、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?150%の伸びを示す帆布材料によって形成され、」を「50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?130%の伸びを示す2/2綾織りまたは平織りの帆布材料によって形成され、」に減縮するものであって、これは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例
(2-1)引用例1
実公平5-33800号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「低伸度高強力のロープ抗張体をゴム層内に並列状に埋設し、かつ、歯部を有し、その表面に歯布を貼着してなる歯付ベルトにおいて、前記歯布としてRFL接着処理のみを施し、少なくともプーリとの接触面をゴム引きをしない帆布を用い、これを歯部表面に被覆してなることを特徴とする歯付ベルト。」(第1頁左下欄第2?8行)
(い)「又、一方、歯布4は本考案の特徴をなすもので、編織布あるいは帆布よりなり、代表的なものとしてはウーリー加工した捲縮ナイロン緯糸と通常のナイロン経糸で織成した帆布をRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)接着処理した伸縮性帆布である。」(第2頁右欄第1?6行)
(う)「一方この歯布4は上記RFL接着処理のみを施しただけで、その後、通常の帆布の如くソーキング又はスプレデイングなどのゴム引きを施さずに接着処理で貼着され、歯部3表面を貼着保護している。」(第2頁右欄第14?18行)
上記(あ)の「前記歯布としてRFL接着処理のみを施し、少なくともプーリとの接触面をゴム引きをしない帆布を用い、これを歯部表面に被覆してなることを特徴とする歯付ベルト。」の記載からみて、引用例1には「帆布が、レゾルシンとホルマリンとの混合物を含まないラテックス液単体で表面処理を施されることなしに、RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)接着処理する」ことが示されていると認められる。
以上の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「歯部の表面を被覆する帆布を備えた歯付ベルトであって、
前記帆布が、
レゾルシンとホルマリンとの混合物を含まないラテックス液単体で表面処理を施されることなしに、RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)接着処理した伸縮性帆布である歯付ベルト。」
(2-2)引用例2
特開平4-82970号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(か)「[産業上の利用分野]
本発明はゴム補強用繊維の処理方法及び同繊維を用いた歯付ベルトに係るもので、詳しくは歯付ベルト、Vベルト、多リブベルト等の伝動ベルトに用いられる織物、心線、短繊維のようなゴム補強用繊維の処理方法及び同繊維を用い歯付ベルトに関する。」(第1頁右下欄第9?15行)
(き)「[課題を解決するための手段]
即ち、本発明においては繊維をレゾルシン-ホルマリン溶液とゴムラテックスからなるRFL液の第1処理液に付着した後、ゴム糊を被覆したゴム補強用繊維の接着処理方法であり、該繊維をレゾルシンとホルマリンのモル比2/1?1/2とし、またレゾルシン-ホルマリンの初期縮合物の樹脂分とラテックスのゴム分の重量比を1/10?1/40とし、かつRFL液にクロロフェノールを含む溶液を含有させ、RFL液とクロロフェノールの重量比を1/0.03?1/0.1とするRFL液に浸漬した後、ゴム糊に浸漬し、200?240℃でベーキング処理する方法である。」(第3頁左上欄第3?15行)
(く)「前記ラテックスは…SBR、クロロブレンゴム、…等のラテックスである。」(第3頁右下欄第15?20行)
(け)「そして、このカバー帆布5は通常はベルト長手方向(緯糸方向)に伸縮性を有する平織物を用いるが、その他にも綾織物、朱子織物も使用することができる。」(第4頁左下欄第6?9行)
(3)対比
本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、後者の「RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)接着処理した」は前者の「RFL処理液によって表面処理が施されている」に相当する。
したがって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、両者は、
「歯部の表面を被覆する帆布を備えた歯付ベルトであって、
前記帆布が、
レゾルシンとホルマリンとの混合物を含まないラテックス液単体で表面処理を施されることなしに、RFL処理液によって表面処理が施されている歯付ベルト。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明は、「前記帆布」が「50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?130%の伸びを示す2/2綾織りまたは平織りの帆布材料によって形成され」ているのに対し、引用例1発明はそのような事項を具備していない点。
[相違点2]
本願補正発明は、「前記帆布」が「前記レゾルシンと前記ホルマリンとの固形分の合計1重量部に対して、固形分が10?30重量部であるラテックスを含むRFL処理液によって表面処理が施されている」のに対し、引用例1発明は「RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)接着処理した伸縮性帆布」であるものの、「RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)」がそのような組成であるかどうか不明である点。
(4)判断
[相違点1]について
まず、引用例1発明の「帆布」としてどのような材料を使用するかは、用途や強度・伸縮性等の所要性能に応じて適宜設計する事項にすぎない。そして、引用例2の上記(け)に摘記したように、帆布として平織物や綾織物が広く用いられていることを勘案すると、引用例1発明の「帆布」を「2/2綾織りまたは平織りの帆布材料」によって形成することは上記の適宜の設計の程度にすぎない。
次に、引用例1発明の「帆布」は「伸縮性帆布」であり、その伸縮性の程度は接着性や歯付ベルトとしての所要性能に応じて適宜設計する事項にすぎない。そして、(a)引用例1発明の「伸縮性帆布」も相応の伸縮性を備えていることが明らかであること、(b)本願明細書の表1、平成20年6月20日付け上申書の表1’などをみても、上記伸び80%付近、及び130%付近における実験例が少なく(しかも、特定のRF/L重量比についての実験例にすぎず、かつ、それも70%と80%、130%と150%というように相当に離れている)、また、段落【0017】等をみても、評価及び総合評価の基準が定量的・客観的であるかどうか必ずしも明確でなく、上記の伸びの数値範囲の上下限値に格別顕著な技術的意義があるとは認められないこと、以上を考え合わせると、引用例1発明の「帆布」を「2/2綾織りまたは平織りの帆布材料」によって形成するにあたって「50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?130%の伸びを示す」という数値範囲を満たす値のものとすることは、上記の適宜の設計として当業者が容易に想到し得たものと認められる。
[相違点2]について
引用例1発明の「RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)」の組成は、接着力・耐摩耗性等の所要性能に応じて適宜設計する事項にすぎない。そして、(c)引用例2には、上記(き)に摘記したとおり、レゾルシン-ホルマリンの初期縮合物の樹脂分とラテックスのゴム分の重量比を1/10?1/40としたRFL液が示されている(さらに、第5頁左下欄の第1表の下欄には「RF/L重量比=1/30」と記載されている)こと、(d)本願明細書の表1、平成20年6月20日付け上申書の表1’などをみても、RF/L重量比1/30付近、及び1/10付近における実験例が少なく(しかも、特定の上記伸びの値についての実験例にすぎず、かつ、それも1/30と1/40、1/10と1/5というように相当に離れている)、また、段落【0017】等をみても、評価及び総合評価の基準が定量的・客観的であるかどうか必ずしも明確でなく、上記の重量部の比の上下限値に格別顕著な技術的意義があるとは認められないこと、以上を考え合わせると、引用例1発明の「伸縮性帆布」を「RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)接着処理」するにあたって、その「RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)」を「前記レゾルシンと前記ホルマリンとの固形分の合計1重量部に対して、固形分が10?30重量部であるラテックスを含む」ものとすることは、上記の適宜の設計として当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、本願補正発明の作用効果は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が予測し得た程度のものである。

なお、請求人は審判請求の理由において、「引用文献1では、RFL接着処理の対象となる歯布4の伸びについては示唆されておりません。引用文献2では、RFL等の処理が施されるゴム補強用繊維によるカバー帆布5の伸びについては、示唆されておりません。また、引用文献3では、RFL液による処理の対象である帆布の伸びについては示唆されておりません。これに対し、請求項1に係る本願発明においては、伸びが所定の範囲内にある帆布材料に対して一段処理を施すことにより、上述の効果を得ることができます。そしてそれらの効果は、帆布材料の伸びの範囲を示唆し得ない引用文献1?3に記載された発明、およびそれらの組合せによっては得られるものではなく、独自のものであります。」と主張し、また、平成21年9月8日付け回答書において、「引用文献2(特開平04-082970号公報)では、帆布材料の具体的な伸びの範囲は示唆されておりません。」と主張しているが、引用例1発明の「帆布」を「2/2綾織りまたは平織りの帆布材料」によって形成することは適宜の設計の程度にすぎないこと、引用例1発明の「帆布」を「2/2綾織りまたは平織りの帆布材料」によって形成するにあたって「50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?130%の伸びを示す」という数値範囲を満たす値のものとすることは当業者が容易に想到し得たものと認められること、及び、引用例1発明の「RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテツクス)」を「前記レゾルシンと前記ホルマリンとの固形分の合計1重量部に対して、固形分が10?30重量部であるラテックスを含む」ものとすることは当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上述のとおりである。

したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)むすび
本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定違反するものであり、本件補正における他の補正事項を検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成21年1月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、平成20年5月9日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
歯部の表面を被覆する帆布を備えた歯付ベルトであって、
前記帆布が、
50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?150%の伸びを示す帆布材料によって形成され、
レゾルシンとホルマリンとの混合物を含まないラテックス液単体で表面処理を施されることなしに、前記レゾルシンと前記ホルマリンとの固形分の合計1重量部に対して、固形分が10?30重量部であるラテックスを含むRFL処理液によって表面処理が施されていることを特徴とする歯付ベルト。
【請求項2】
前記ラテックスが、前記表面処理によって生じる前記帆布の伸びの減少を抑制することを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項3】
前記ラテックスが、クロロプレンラテックスであることを特徴とする請求項2に記載の歯付ベルト。
【請求項4】
前記ラテックスが、SBRラテックスであることを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項5】前記RFL処理液が、前記ラテックス100重量部に対して3?7重量部のコロイド硫黄をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項6】
前記RFL処理液が、前記ラテックスとして熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項7】
前記帆布が、50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に110?150%の伸びを示す帆布材料によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。」

3-1.本願発明1について
(1)本願発明1
本願発明1は上記のとおりである。
(2)引用例
引用例1、2、及びその記載事項は上記2.に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明1は実質的に、上記2.で検討した本願補正発明の「50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?130%の伸びを示す2/2綾織りまたは平織りの帆布材料によって形成され、」を「50mmの幅で2kgfの力で引っ張られた時に80?150%の伸びを示す帆布材料によって形成され、」に拡張するものに相当する。
そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、実質的に同様の理由により、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができない。
そして、本願発明1が特許を受けることができないものである以上、本願発明2?7について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-13 
結審通知日 2009-11-18 
審決日 2009-12-04 
出願番号 特願2003-422300(P2003-422300)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16G)
P 1 8・ 121- Z (F16G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 広瀬 功次  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 藤村 聖子
川本 真裕
発明の名称 歯付ベルト  
代理人 松浦 孝  
代理人 潮 太朗  
代理人 藤 拓也  

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