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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1210997
審判番号 不服2007-15156  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-28 
確定日 2010-01-22 
事件の表示 平成11年特許願第502559号「血管レトラクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月10日国際公開、WO98/55029、平成14年1月22日国内公表、特表2002-502292号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1998年5月27日(パリ条約による優先権主張1997年6月2日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成18年7月6日付け拒絶理由通知に対し、平成19年1月4日付けで手続補正がなされたが、同年2月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に、同年6月25日付けで明細書について補正をする手続補正書が提出されたものである。

2.平成19年6月25日付けの手続補正の補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年6月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正による補正の内容
本件補正は、補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項1について、次のように補正をする内容を含むものである。(下線部は、補正箇所を示す。)

「内視鏡下処置を実施するために患者に設けた解剖空間を開放保持するた
めのレトラクタであって、該レトラクタが:
基端と末端とを有する剛直な伸長部材を備え、該伸長部材は、内部に通路を画定する概ね弓形断面を有しており、該伸長部材の上記基端は、その長手方向位置で少なくとも部分的に通路から上に離れるように湾曲しており、;且つ
内視鏡チャンネルを備え、該チャンネルは、上記伸長部材の内面上にあり、且つその部分に沿って末端方向へ延びているものであることを特徴とするレトラクタ。」

(2)補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無
本件補正による特許請求の範囲の請求項1についての上記補正は、補正前の請求項1に記載された「伸長部材」の「湾曲」に関して、特に当該伸長部材「の上記基端」が湾曲しているとの限定事項を付加するものであり、かつ、本件補正による補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正による補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について、以下に検討する。

(3-1)引用刊行物の記載事項
(3-1-1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前である平成9年(1997年)3月25日に頒布された刊行物である特開平9-75353号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「皮下の処置対象組織に沿って留置することにより、皮下組織の下部に腔を確保する腔確保具において、
本体の両端部に内視鏡と少なくとも1種類以上の処置具が同時に挿入可能な開口を設けたことを特徴とする腔確保具。」(【特許請求の範囲】)
イ 「【発明の属する技術分野】本発明は、例えば内視鏡的に伏在静脈等の皮下血管を採取する採取術に用いる腔確保具に関する。」(段落【0001】)
ウ 「本発明…(略)…の目的とするところは、処置対象組織に沿って留置したとき、その周辺に内視鏡および処置具を挿入して処置するに十分なスペースの腔を確保することができる腔確保具を提供することにある。」(段落【0008】)
エ 「皮下の処置対象組織に沿って留置することにより、皮下組織の下部に腔を確保でき、本体の両端の開口の何れの方向からも内視鏡と処置具を同時に挿入して観察しながら目的部位を処置できる。」(段落【0010】)
オ 「(第1の実施形態)図1?図10を参照して本発明の第1の実施形態に係る腔確保具を説明する。図1および図2は腔確保具1の全体的な構成を示している。この腔確保具1はその本体2が円筒体を径方向上下に2分割した一方の半円(筒)状または円弧状のものであり、合成樹脂材料またはステンレス材料によって形成されている。
本体2の長手方向の両端にはそれぞれ開口3が設けられている。また、本体2の側壁部4における両端部分にはぞれぞれ本体2の長手方向に亘って細長く形成した横穴5が設けられ、左右の横穴5は本体2の長手方向の軸線に対して対称的に配置されている。
さらに、本体2の両端部にはそれぞれ内視鏡ガイド筒6がその本体2と一体に設けられている。この各内視鏡ガイド筒6は本体2の長手軸方向に平行な同一の直線状に配置され、これらの内視鏡ガイド筒6の間は途切れている。
この各内視鏡ガイド筒6の円筒部の上半円部は本体2の側壁部4の上部に突き出し、下半円部が側壁部4の内側下部に突き出しており、内視鏡ガイド筒6を側壁部4の中間、特に中央に配置することにより外部に大きく突き出させないで、本体1の内部に空洞部7のスペースを極力広く確保する。また、本体2の両端面、下端面および横穴5の内周端面は丸みが付けられ、体腔内組織に傷を付けないように形成してある。
図3は腔確保具1を皮下組織に留置して伏在静脈等の皮下血管を採取する採取術に用いた場合を示すものである。腔確保具1を留置する前処置として、例えば図4に示すように皮下組織に腔確保具1を留置するスペースを形成する。図4中、8は表皮、9は表皮8の下層の脂肪等の皮下組織、10は皮下組織9の下層の血管上結合組織、11は伏在静脈等の血管である。図4は表皮8の一部にメスを入れ、皮下組織9および血管上結合組織10を皮切し、その皮切部12から剥離子13を挿入し、硬性内視鏡14によって観察しながらその剥離子13によって体内に留置スペース15を形成した状態を示している。
体内に留置スペース15を形成した後、図3に示すように、皮切部12から腔確保具1の本体2を挿入し、その外端の開口3を体外に露出した状態で腔確保具1を留置すると、皮下組織9の下部に空洞部7によって腔16が確保される。
そこで、本体2の一方の内視鏡ガイド筒6に硬性内視鏡17の挿入部18を挿入し、腔16に挿入部18の先端部を挿入する。また、本体2の一端側から横穴5を介して処置具、例えば鋏鉗子19を挿入し、鉗子部19aを腔16に挿入する。さらに、本体2の一方の開口3から処置具、例えばフックプローブ20を挿入してフック部20aを腔16に挿入する。
このように腔確保具1の本体2の一端側から硬性内視鏡17、鋏鉗子19およびフックプローブ20を同時に挿入することができる。そして、硬性内視鏡17によって腔16を観察しながらフックプローブ20によって血管上結合組織10を血管11から引き離し、その血管上結合組織10を鋏鉗子19によって切断して血管上結合組織10を血管11から切り離すことができる。」(段落【0011】?【0018】)
カ 「(第7の実施形態)図18を参照して本発明の第7の実施形態に係る腔確保具を説明する。同図中、50は腔確保具であり、この腔確保具50の本体51は円筒体を径方向上下に2分割した上側の半円(筒)状のものの形に形成され、その本体51の両端部には開口52がそれぞれ設けられている。さらに、本体51の両端部における上壁部には切欠部53が設けられている。この切欠部53は開口52の開口幅を拡大して処置具54を挿入しやすく、また操作しやすくしている。また、切欠部53によって形成された一対の脚部55は本体51の軸方向外方に延長し、組織56を押え付け、処置具54を挿入しやすく、また操作しやすくしている。なお、57は前述したような内視鏡ガイド筒である。
(第8の実施形態)図19を参照して本発明の第8の実施形態に係る腔確保具を説明する。同図中、58は腔確保具であり、この腔確保具58の本体59は円筒体を径方向上下に2分割した上側の半円(筒)状のものの形に形成してなり、本体59の両端部にはその周壁を拡開した開口60を形成している。この実施形態においても、開口60が特に広いために処置具54が挿入しやすく、また操作しやすいという効果がある。」(段落【0035】?【0036】)

ここで、摘記事項カにおける(第7の実施形態)及び(第8の実施形態)は、いずれも(第1の実施形態)の変形例であり、当該(第8の実施形態)の腔確保具58の本体59は、(第1の実施形態)の腔確保具1の本体2と同様に、「合成樹脂材料またはステンレス材料によって形成され」、「内視鏡ガイド筒が…(略)…一体に設けられ」、「空洞部」を有する(摘記事項オ)ものであり、当該本体59内への処置具の挿入については、摘記事項カの「この実施形態においても、開口60が特に広いために処置具54が挿入しやすく、また操作しやすい」との記載から明らかなとおり、「開口60」からなされるものと理解される。

以上の記載事項及び図面の図示事項を総合勘案して、本願補正発明の発明特定事項の記載振りに則って整理すると、引用文献1には、次のとおりの発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「内視鏡的に伏在静脈等の皮下血管を採取する採取術に用いる皮下組織の下部に腔を確保する腔確保具58であって、該腔確保具58が:
長手方向の両端部を有する合成樹脂材料またはステンレス材料によって形成されている本体59を備え、該本体59は、円筒体を径方向上下に2分割した上側の半円筒状のものの形に形成して空洞部を有してなり、該本体59の上記両端部にはその周壁を拡開した開口60を形成しており、;且つ
内視鏡ガイド筒が本体59と一体に設けられており、該内視鏡ガイド筒の円筒部の上半円部は本体59の側壁部の上部に突き出し、下半円部が側壁部の内側下部に突き出しており、且つ該内視鏡ガイド筒は本体59の長手軸方向に平行な直線状に配置されているものである腔確保具58。」

(3-1-2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前である平成9年(1997年)5月13日に頒布された刊行物である特開平9-122133号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

キ 「長形のプラットホーム、
前記プラットホームの遠方端に接続し、スプーンの形をして器具が挿入される窪みを形成する透明な窪んだヘッド、及び内視鏡を前記プラットホームに接続する手段からなる組織開創装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項4】)
ク 「【発明の属する技術分野】この発明は、一般に、血管採収に関し、特に、新規で有用な血管採収のための内視鏡方法及び冠動脈バイパス処置又は他のタイプの血管採収処置等の外科処置を補助してその方法の実施に使用する新規な装置に関するものである。」(段落【0001】)
ケ 「血管7の上面に十分な切開面が形成されると、光学切開装置10が脚2から切開3を通って引き出される。その後、図9に最も良く示すように、光学開創装置20が切開3を通して切開面に挿入される。図2、5、17に示すように、光学開創装置20は長形部材又はプラットホーム21を有する。プラットホーム21は、プラットホーム21の下側21aに接続する軸22を有する。軸22には、内視鏡5を受けるための延びた管23がある。内視鏡5のチップ6は、例えば30°の傾斜で軸22から窪み28に延びる。窪み28は透明な窪んだヘッド26の外面と連続する外端27によって形成される。ハンドル24は長形プラットホーム21にプラットホーム21の近方端で接続して、片手での使用が可能となり、開創装置20を血管7の軸に対するどの角度でも上げることが可能となり、皮下組織の下に空間を形成できる。
図5は、図4に示す光学切開装置10の作動ヘッド16と同様な形の光学開創装置20の透明な作動ヘッド26を示す。切開作動ヘッド16と同様に、開創装置作動ヘッド26はプラスチック等の透明物質から形成され、外周端27のあるほぼ半円又はスプーン状であり、窪み28を形成する。窪み28の下は器具操作を可能とする末端作動部のための作業空間として機能する。」(段落【0013】?【0014】)

以上の記載事項及び図面の図示事項を総合勘案して整理すると、引用文献2には、次のとおりの発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「プラットホーム21を有し、プラットホーム21は、プラットホーム21の下側21aに接続する軸22を有し、軸22には、内視鏡5を受けるための延びた管23がある、血管採収処置等の外科処置を補助するために皮下組織の下に空間を形成する光学開創装置20。」

(3-2)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、その機能、構造、意味内容等からみて、後者の「内視鏡的に伏在静脈等の皮下血管を採取する採取術に用いる」は、前者の「内視鏡下処置を実施するために」に相当し、以下同様に、「皮下組織の下部に腔を確保する」は「患者に設けた解剖空間を開放保持するための」に、「腔確保具58」は「レトラクタ」に、「長手方向の両端部を有する」は「基端と末端とを有する」に、「合成樹脂材料またはステンレス材料によって形成されている」は「剛直な」に、「本体59」は「伸長部材」に、「空洞部」は「通路」に、「該本体59は、円筒体を径方向上下に2分割した上側の半円筒状のものの形に形成して空洞部を有してなり」は「該伸長部材は、内部に通路を画定する概ね弓形断面を有しており」に、「内視鏡ガイド筒」は「内視鏡チャンネル」に、「内視鏡ガイド筒が本体59と一体に設けられており」は「内視鏡チャンネルを備え」に、「該内視鏡ガイド筒は本体59の長手軸方向に平行な直線状に配置されている」は「該チャンネルは」「その部分に沿って末端方向へ延びている」に、それぞれ相当する。
また、後者の「該本体59の上記両端部にはその周壁を拡開した開口60を形成しており」との事項について検討すると、まず、引用発明1に関する具体的な実施形態である(第8の実施形態)と関連する実施形態である(第1の実施形態)について、摘記事項オに「腔確保具1の本体2の一端側から硬性内視鏡17、鋏鉗子19およびフックプローブ20を同時に挿入する」と記載されており、その使用形態としては、引用発明1の「本体59の両端部」のうちの一方の端部に形成された開口60から硬性内視鏡と共に鋏鉗子等の処置具が挿入されることが意図されていることを踏まえれば、当該「本体59の両端部」のうちの一方の端部を前者の「基端」に相当するものということができる(その場合、「本体59の両端部」のうちの他方の端部が「末端」に相当することとなる。)。また、引用文献1の図19も参酌すると、本体59の両端部に形成された開口60の「その周壁を拡開した」との形状は、具体的には空洞部(通路)から「上に離れるように湾曲して」いるものといえる。そうすると、後者の上記「該本体59の上記両端部にはその周壁を拡開した開口60を形成しており」との事項は、前者の「該伸長部材の上記基端は、その長手方向位置で少なくとも部分的に通路から上に離れるように湾曲しており」との事項に相当するといえる。
そして、後者の「該内視鏡ガイド筒の円筒部の上半円部は本体59の側壁部の上部に突き出し、下半円部が側壁部の内側下部に突き出しており」との事項は、前者の「該チャンネルは、上記伸長部材の内面上にあり」との事項と、「該チャンネルは、上記伸長部材上にあり」との事項として共通する。

してみれば、本願補正発明と引用発明1とは、
「内視鏡下処置を実施するために患者に設けた解剖空間を開放保持するためのレトラクタであって、該レトラクタが:
基端と末端とを有する剛直な伸長部材を備え、該伸長部材は、内部に通路を画定する概ね弓形断面を有しており、該伸長部材の上記基端は、その長手方向位置で少なくとも部分的に通路から上に離れるように湾曲しており、;且つ
内視鏡チャンネルを備え、該チャンネルは、上記伸長部材上にあり、且つその部分に沿って末端方向へ延びているものであるレトラクタ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:本願補正発明の内視鏡チャンネルは、伸長部材の「内面上」に設けられるのに対し、引用発明1の内視鏡ガイド筒(内視鏡チャンネル)は、「内視鏡ガイド筒の円筒部の上半円部は本体59の側壁部の上部に突き出し、下半円部が側壁部の内側下部に突き出して」いるものであって、本体59(伸長部材)の内面上に設けたものではない点。

(3-3)判断
引用発明1の内視鏡ガイド筒(内視鏡チャンネル)が「内視鏡ガイド筒の円筒部の上半円部は本体59の側壁部の上部に突き出し、下半円部が側壁部の内側下部に突き出して」いるものとされているのは、摘記事項オに記載されたとおり、「内視鏡ガイド筒6を側壁部4の中間、特に中央に配置することにより外部に大きく突き出させないで、本体1の内部に空洞部7のスペースを極力広く確保する」ことを特に意図したことによるものであるが、引用文献1に開示された発明全体の目的は「処置対象組織に沿って留置したとき、その周辺に内視鏡および処置具を挿入して処置するに十分なスペースの腔を確保することができる腔確保具を提供すること」(摘記事項ウ)であって、当該内視鏡ガイド筒(内視鏡チャンネル)の具体的構成は、十分な程度のスペースの腔を確保することができる範囲で適宜変更できることは明らかである。
ここで、引用発明2の「光学開創装置20」は、「血管採収処置等の外科処置を補助するために皮下組織の下に空間を形成する」ためのものであるから、本願補正発明の「レトラクタ」に相当するものであり、また、同様に「プラットホーム21」は「伸長部材」に、「プラットホーム21の下側21a」は「伸長部材の内面上」に、「軸22」は「内視鏡チャンネル」に、それぞれ相当し、そうすると、引用発明2は、レトラクタにおいて、伸長部材の内面上に内視鏡チャンネルを備えたものといえる。
してみれば、血管採収処置等の際に皮下組織の下に空間を形成するための光学開創装置20(レトラクタ)である点で引用発明1の腔確保具58(レトラクタ)と共通の技術分野に属する引用発明2を、引用発明1に適用し、本体59(伸長部材)の「内面上」に、内視鏡ガイド筒(内視鏡チャンネル)を設ける構造とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1及び引用発明2から、当業者が予測できる範囲内のものであり、格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は(以下「本願発明」という。)は、平成19年1月5日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「内視鏡下処置を実施するために患者に設けた解剖空間を開放保持するためのレトラクタであって、該レトラクタが:
基端と末端とを有する剛直な伸長部材を備え、該伸長部材は、内部に通路を画定する概ね弓形断面を有しており、該伸長部材は、その長手方向位置で少なくとも部分的に通路から上に離れるように湾曲しており、;且つ
内視鏡チャンネルを備え、該チャンネルは、上記伸長部材の内面上にあり、且つその部分に沿って末端方向へ延びているものであることを特徴とするレトラクタ。」

4.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、前記「2.(2)」に示した限定事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3-2),(3-3)」に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-18 
結審通知日 2009-08-25 
審決日 2009-09-07 
出願番号 特願平11-502559
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 智宏土田 嘉一  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 中島 成
増沢 誠一
発明の名称 血管レトラクタ  
代理人 大森 忠孝  
代理人 山崎 宏  
代理人 田中 光雄  
代理人 大畠 康  

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