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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1211116
審判番号 不服2007-27002  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-03 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2002-137471「帯状貝係止具とロール状貝係止具」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月14日出願公開、特開2003-289742〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成14年5月13日(優先日:平成13年7月13日,出願番号:特願2001-214403号,優先日:平成14年1月31日,出願番号:特願2002-24494号)の出願であって,平成19年8月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月3日に本件審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。
また,当審において,平成20年12月22日付けで審査官による前置報告書に基づく審尋がなされ,平成21年2月23日付けで回答書が提出された。

2.平成19年10月3日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年10月3日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容
平成19年10月3日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,本件補正前の特許請求の範囲の

「【請求項2】
次の1?10の構成を備えたことを特徴とする帯状貝係止具。
1.多数本の貝係止具(1)が帯状に連続成型され,
2.各貝係止具(1)はロープに差込み可能な細長の基材(2)に,ロープからの基材(2)の抜けを規制する2本のロープ止め突起(3)と,貝の抜けを規制する2本の貝止め突起(4)が突設され,
3.2本のロープ止め突起(3)は基材(2)からその周方向同方向に且つ先端側が内側向きのハ字状に突設され,
4.貝止め突起(4)はロープ止め突起(3)よりも基材(2)の長手方向外側に突設され,
5.貝止め突起(4)の根元(10)内側部分は貝の荷重が外側に向けて貝止め突起(4)に加わっても根元(10)が裂けないように円弧状に湾曲させてあり,
6.2本のロープ止め突起(3)と2本の貝止め突起(4)は基材(2)からその周方向同方向に突設され,
7.2本のロープ止め突起(3)は基材(2)側から先端部(5)側に次第に細く成型され,その細さはロール状に巻き取り可能な細さであり,
8.隣接する貝係止具(1)は,一方の貝係止具(1)の2本のロープ止め突起(3)の先端部(5)が他方の貝係止具(1)の基材(2)と直接又は連結片(6)を介して連結され,
9.前記連結片(6)は,基材(2)の軸方向に幅広でロープ止め突起(3),貝止め突起(4)よりも薄く且つ貝係止具(1)をロール状に巻き取り可能な薄さであり,
10.前記連結の繰り返しにより多数本の貝係止具(1)が帯状に連続成型されたことを特徴とする帯状貝係止具。」

の記載を,

「【請求項2】
次の1?8の構成を備えたことを特徴とする連続貝係止具。
1.ロープ及び貝の孔に差込可能な細長の基材(2)に,ロープに差し込まれた基材(2)がロープから抜けるのを防止する2本のロープ止め突起(3)と,基材(2)からの貝の抜けを規制する2本の貝止め突起(4)が突設された多数本の貝係止具(1)が均等間隔で平行に連続樹脂成型され,
2.2本のロープ止め突起(3)は基材(2)の周方向同方向から,先端側を内向き斜めにしてハ字状に突設され,
3.2本の貝止め突起(4)はロープ止め突起(3)よりも基材(2)の長手方向外側から先端側を内側向き斜めにしてハ字状に突設され,
4.2本のロープ止め突起(3)と2本の貝止め突起(4)は基材(2)の周面同方向位置から同方向に突設され,
5.貝止め突起(4)の根元(10)の内側部分は,貝の荷重が基材(2)の長手方向外側に向けて貝止め突起(4)に加わっても根元(10)の裂けを防止できるように円弧状に湾曲成型され,
6.隣接する貝係止具(1)同士は,一方の貝係止具(1)のロープ止め突起(3)の先端部(5)と,他方の貝係止具(1)の基材(2)のロープ止め突起(3)及び貝止め突起(4)が突出していない背面側とが連結片(6)で一体に樹脂成型され,
7.2本のロープ止め突起(3)は基材(2)よりも細い丸棒状であり,基材(2)側から先端部(5)まで連続して次第に細く成型され,先端部(5)はロール状に巻き取り可能な細さと可撓性を備え,
8.前記ロープ止め突起(3)の先端部(5)と他方の貝係止具(1)の基材(2)の背面との連結の繰り返しにより,多数本の貝係止具(1)がロープ止め突起(3)及び貝止め突起(4)を同じ向きにして平行に均等間隔で連続成型されたことを特徴とする連続貝係止具。」

と補正することを含むものである。

(2)補正の適否について
本件補正は,本件補正前の請求項2の発明特定事項のうち,ロープ止め突起と基材との連結について,「直接又は連結片(6)を介して連結され」とされていたところを,「連結片(6)で一体に樹脂成型され」と限定しながら,「連結片(6)は,基材(2)の軸方向に幅広でロープ止め突起(3),貝止め突起(4)よりも薄く且つ貝係止具(1)をロール状に巻き取り可能な薄さであり」を削除するものである。
してみると,本件補正後の請求項2は,本件補正前の請求項2の発明特定事項の一部を削除したものであって,本件補正前の請求項2を限定したものに当たらないから,本件補正は,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成14年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的にするものに該当しない。
また,上記削除は,同項第1号に規定する請求項の削除,同項第3号に規定する誤記の訂正,および同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないことは明らかであるから,本件補正は,同項第1号,同項第2号,および同項第4号に規定するいずれの目的にも該当しない。

(3)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成14年改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。

3.本願発明について

(1)本願発明
本件補正は上記2.のとおり却下されたので,本願発明は,平成18年9月25日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,そのうち,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。

「【請求項1】
次の1?8の構成を備えたことを特徴とする帯状貝係止具。
1.多数本の貝係止具(1)が帯状に連続成型され,
2.各貝係止具(1)はロープに差込み可能な細長の基材(2)に,ロープからの基材(2)の抜けを規制する2本のロープ止め突起(3)と,貝の抜けを規制する2本の貝止め突起(4)が突設され,
3.2本のロープ止め突起(3)は基材(2)からその周方向同方向に且つ先端側が内側向きのハ字状に突設され,
4.貝止め突起(4)はロープ止め突起(3)よりも基材(2)の長手方向外側に突設され,
5.貝止め突起(4)の根元(10)内側部分は貝の荷重が外側に向けて貝止め突起(4)に加わっても根元(10)が裂けないように円弧状に湾曲させてあり,
6.2本のロープ止め突起(3)と2本の貝止め突起(4)は基材(2)からその周方向同方向に突設され,
7.隣接する貝係止具(1)は一方の貝係止具(1)のロープ止め突起(3)の先端部(5)が基材(2)の軸方向に幅広でロープ止め突起(3),貝止め突起(4)よりも薄く且つ貝係止具(1)をロール状に巻き取り可能な薄さの連結片(6)を介して他方の貝係止具(1)の基材(2)と連結され,
8.前記連結の繰り返しにより多数本の貝係止具(1)が帯状に連続成型されたことを特徴とする帯状貝係止具。」

(2)引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-165036号公報(以下「引用例1」という。)には,「養殖帆立貝の掛止具,及び該掛止具,帆立貝のロープへの掛止方法」に関し,図1ないし51とともに次の事項が記載されている。

a.「【請求項8】樹脂等で形成された棒状の軸部先部に,尖鋭な挿入部及び抜け止め部を備え,該軸部の後部には後部抜け止め部を備える養殖帆立貝の掛止具において,前記掛止具単体を,該掛止具単体の軸部が平行するように多数並設し,各掛止具単体の軸部の中間部間を,軸方向に離れた複数本の可撓性連結片で連結し,前記可撓性連結片の基部は,前記軸部から向い合うように傾斜して突設したロープの抜け止め部の先部に一体に設けられ,該ロープ抜け止め部の先部の可撓性連結片で隣接する掛止具単体の軸部に一体に連結し,前記多数の掛止具単体を前記可撓性連結片で帯状に連結した,ことを特徴とする養殖帆立貝の掛止具。」

b.「図35は図30?図33の掛止具の他の実施の形態を示す。・・・」(段落【0090】)

c.「52…は掛止具単体,53,57は尖鋭部,53a,57aは規制片,55は軸部,54,54は先細り部である。軸部55の中間部周に,軸方向に離間してロープ42の抜け止め部61,62を径方向外方に2個突設する。」(段落【0091】)

d.「抜け止め部61,62は軸部55から径方向の同方向で,軸方向に互いに向い合うようにハの字型に突設され,径が太く,各先端部に小径の連結部58,59が形成され,複数本,図示例では2本の連結部58,59で平行し,隣接する掛止具単体の軸部55周に連結され,この部分で可撓性連結片を構成する。」(段落【0092】)

e.「図36はこの帯状掛止具51をロール状に巻回したロール状掛止具60を示し,図37は帯状掛止具51の拡大図であり,図38は掛止具単体52を切り離して示した図である。規制部61,62が径が太くても,これの先部の細い部分の連結片58,59で平行し,隣接する掛止具単体52と連結しているので,連結片58,59の部分から帯状掛止具51は容易に曲げられ,ロール状にすることができる。」(段落【0093】)

したがって,上記記載事項a.ないしe.および図35ないし38の記載からみて,引用例1には,

「次の1?8の構成を備えた養殖帆立貝の掛止具。
1.多数本の掛止具単体(52)が帯状に連続成型され,
2.各掛止具単体(52)はロープ(42)に差込み可能な細長の軸部(55)に,ロープ(42)からの軸部(55)の抜けを規制する2本の抜け止め部(61,62)と,帆立貝(40)の抜けを規制する2本の規制片(53a,57a)が突設され,
3.2本の抜け止め部(61,62)は軸部(55)からその周方向同方向に且つ先端側が内側向きのハの字型に突設され,
4.規制片(53a,57a)は抜け止め部(61,62)よりも軸部(55)の長手方向外側に突設され,
5.規制片(53a,57a)の根本内側部分が軸部(55)から軸方向内側に傾斜するように立ち上げられ,
6.2本の抜け止め部(61,62)と2本の規制片(53a,57a)は軸部(55)からその周方向逆方向に突設され,
7.隣接する掛止具単体(52)は一方の掛止具単体(52)の抜け止め部(61,62)の先端部が抜け止め部(61,62),規制片(53a,57a)よりも細く且つ掛止具単体(52)をロール状に巻き取り可能な細さの連結片(58,59)を介して他方の掛止具単体(52)の軸部(55)と連結され,
8.前記連結の繰り返しにより多数本の掛止具単体(52)が帯状に連続成型された養殖帆立貝の掛止具。」

の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

同じく,原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-191643号公報(以下「引用例2」という。)には,「貝係止具」に関し,図1ないし8とともに次の事項が記載されている。

f.「【請求項1】ロープに差込み可能な基材(1)の中央部にロープへ差込まれた状態でロープからの抜けを規制するロープ止め突子(2)を形成し、同基材(1)のうちロープ止め突子(2)より長手方向外側にロープ止め突子(2)側に突出する貝止め突子(3)を形成してなる貝係止具において」

g.「【請求項3】請求項1又は請求項2記載の貝係止具において、基材(1)から立ち上がる貝止め突子(3)の立ち上がり部内側(6)を基材(1)の中央部側から外側に滑らかな曲面で湾曲させてなることを特徴とする貝係止具。」

h.「・・・本発明の貝係止具の一実施例を図1?3に基づいて詳細に説明する。これらの図に示す貝係止具はプラスチックにより細長丸棒状に形成された基材1の中央部にロープCに係止するロープ止め突子2が形成され、同基材1のロープ止め突子2の両外側に同突子2側に突出し且外側に湾曲する貝止め突子3が形成されている。」(段落【0020】)

i.「図1、3の貝止め突子3は薄板状に形成されており、基材1のうちロープ止め突子2の両外側対称位置からロープ止め突子2と同方向に突設されており、基材1から立ち上がる立ち上がり部内側6にR(アール)をつけて基材1の中央部側から外側に滑らかな曲面で湾曲させてある。・・・」(段落【0022】)

j.「・・・貝止め突子3の立ち上がり部内側6をも滑らかな曲面に湾曲させてなるので、貝係止具をロープに差込むときにその立ち上がり部が倒れ易くなり、ロープへの貝係止具の差込みがより一層容易になる。」(段落【0029】)

したがって,上記記載事項f.ないしj.および図1ないし3の記載からみて,引用例2には,

「貝止め突子(3)の根元内側部(4)は貝係止具を差込むときに貝止め突子(3)の立ち上がり部が倒れ易くなるように円弧状に湾曲させてあり,
2本のロープ止め突子(2)と2本の貝止め突子(3)は基材(1)からその周方向同方向に突設された貝係止具。」

の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「掛止具単体(52)」,「軸部(55)」,「抜け止め部(61,62)」,「規制片(53a,57a)」,「帆立貝(40)」および「多数本の掛止具単体(52)が帯状に連続成型された養殖帆立貝の掛止具」が,
それぞれ,本願発明の「貝係止具」,「基材」,「ロープ止め突起」,「貝止め突起」,「貝」および「帯状貝係止具」に相当する。

そうすると,本願発明と引用発明1とは,
「次の1?8の構成を備えた帯状貝係止具。
1.多数本の貝係止具が帯状に連続成型され,
2.各貝係止具はロープに差込み可能な細長の基材に,ロープからの基材の抜けを規制する2本のロープ止め突起と,貝の抜けを規制する2本の貝止め突起が突設され,
3.2本のロープ止め突起は基材からその周方向同方向に且つ先端側が内側向きのハ字状に突設され,
4.貝止め突起はロープ止め突起よりも基材の長手方向外側に突設され,
5.貝止め突起に根元内側部分を有し,
6.2本のロープ止め突起と2本の貝止め突起は基材からその周方向に突設され,
7.隣接する貝係止具は一方の貝係止具のロープ止め突起の先端部が貝係止具をロール状に巻き取り可能な形状の連結片を介して他方の貝係止具の基材と連結され,
8.前記連結の繰り返しにより多数本の貝係止具が帯状に連続成型された帯状貝係止具。」

である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では,貝止め突起の根本内側部分の形状を,貝の荷重が外側に向けて貝止め突起に加わっても根元が裂けないように円弧状に湾曲させてあるのに対して,
引用発明1では,貝止め突起の根本内側部分が基部から軸方向内側に傾斜するように立ち上げられているものの,根本内側部分の形状が定かでない点。

[相違点2]
本願発明では,2本のロープ止め突起と2本の貝止め突起が,基材からその周方向同方向に突設されているのに対して,
引用発明1では,周方向逆方向に突設されている点。

[相違点3]
本願発明では,連結片の構成が,基材の軸方向に幅広でロープ止め突起,貝止め突起よりも薄く且つ貝係止具をロール状に巻き取り可能な薄さであるのに対して,
引用発明1では,ロープ止め突起,貝止め突起よりも細く且つ貝係止具をロール状に巻き取り可能な細さである点。

(4)相違点についての判断
次に,上記相違点について以下に検討する。

[相違点1]について
引用発明2の貝止め突子(3)の根本内側部(4)は,円弧状に湾曲させることによって,貝係止具を差込むときに貝止め突子(3)の立ち上がり部が倒れ易くなるという機能を有するものである。
一方で,引用発明2の貝止め突子(3)の根本内側部(4)は,貝止め突子(3)に貝を係止したときに,貝の荷重が外側に向けて加わることは必然であるところ,上記のとおり円弧状に湾曲させてあるために,根本内側部分を単に基材から立ち上げた場合よりも応力集中が緩和され,貝止め突子(3)の根元が裂けないという機能をさらに有することは,自明である。
そして,引用発明1の貝止め突起は,引用発明2の貝止め突子(3)と同様に,貝係止具をロープに差し込む際にロープ内を通過し,該通過後に貝を係止するものであるから,引用発明1の貝止め突起の構成を,ロープ内を通過し易く,かつ,貝の係止にあたって破損し難いものにするという課題は,引用発明1が当然に有していると認められる。
してみれば,引用発明1の貝止め突起を,ロープ内を通過し易く,かつ,貝の係止にあたって破損し難い構成にするために,引用発明1の貝止め突起の根本内側部分に,引用発明2の貝止め突子(3)の根本内側部分の円弧状に湾曲させることを適用して,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
貝係止具における貝止め突起とロープ止め突起を突設する方向の決定は,貝係止具の自動装填装置や,貝係止具をロープに差し込む際に用いる案内針の構成に合わせる等して,当業者が,使用上好ましい方向を適宜に選択すれば良いことであり,
引用発明2には,2本のロープ止め突子(2)と2本の貝止め突子(3)が基材(1)からその周方向同方向に突設されていることが示されている。
してみれば,引用発明1において,貝止め突起とロープ止め突起を,自動装填装置や案内針との関係等を考慮し,引用発明2に倣って,基材からその周方向同方向に突設させることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
引用発明1は,帯状に連続成型された帯状貝係止具を,貝係止具相互を連結する連結片を撓ませることによって,ロール状に巻き取り可能とするものであるから,連結片を撓ませ易くすることは,当業者が当然に考慮し得たことである。そして,連結片を撓ませ易くするために,その厚さを薄くすることは,技術常識の付加に過ぎないもので,当業者が適宜になし得た設計的事項である。
また,引用発明1の帯状係止具は,ロール状に巻き取り,かつ,巻き取られた状態から自動装填装置により引き出されて利用されるものであって,自動装填装置の円滑かつ確実な作動のために,巻き取りおよび引き出しの際に帯状係止具の各貝係止具が,横ずれ等を起こさないように構成されるべきであることは,自明である。そして,各貝係止具の横ずれ等を防ぐために,各貝係止具を連結する連結片を基材の軸方向に幅広に形成することも,技術常識の付加に過ぎないもので当業者が適宜になし得た設計的事項である。
以上のとおり,帯状貝係止具がロール状に円滑にかつ確実に巻かれて使用されるために,連結片の形状を適宜に決定することは設計的事項に過ぎないから,引用発明1から上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が適宜になし得たことである。

そして,本願発明の奏する効果について検討しても,引用発明1および引用発明2から予測可能なものであり,格別なものとはいえない。

よって,本願発明は,引用発明1および引用発明2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(5)むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-22 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-13 
出願番号 特願2002-137471(P2002-137471)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
P 1 8・ 572- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一伊藤 昌哉  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
山本 忠博
発明の名称 帯状貝係止具とロール状貝係止具  
代理人 小林 正英  
代理人 甲斐 哲平  
代理人 小林 正治  

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