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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1211134
審判番号 不服2006-26658  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-27 
確定日 2010-02-03 
事件の表示 平成10年特許願第548365号「経皮浸透エンハンサーを使用する皮下筋肉組織へのカテコールアミン及び関連化合物の局所投与」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月12日国際公開、WO98/50014、平成12年11月 7日国内公表、特表2000-514837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成10年5月4日(優先権主張 1997年5月5日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年8月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年11月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年12月26日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年12月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により補正前の特許請求の範囲の請求項1は
「0.1重量%?10重量%のチロシン、0.1重量%?10重量%のアスコルビルパルミテート、0.25重量%?2重量%のピリドキシン、パントテン酸カルシウム及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種、3重量%のジメチルアミノエタノール、2重量%のビタミンEアセテート、及び1重量%の硫酸亜鉛(亜鉛としての重量)からなる組成物を、皮下筋肉の臨床的に知覚できる筋肉緊張が増すように皮下筋肉を覆う皮膚組織に局所的に塗布することを特徴とするヒトの化粧容姿を増進する皮膚組織及び皮下筋肉の局所化粧治療剤。」と補正された。
この補正は、補正前の「0.1重量%?10重量%のドーパ、チロシン、フェニルアラニン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種」、「0.1重量%?10重量%のオレイン酸、尿素、アスコルビン酸の飽和脂肪酸エステル、トコトリエノール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種」及び「0.25重量%?2重量%のピリドキシン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種」をそれぞれ「0.1重量%?10重量%のチロシン」、「0.1重量%?10重量%のアスコルビルパルミテート」及び「0.25重量%?2重量%のピリドキシン、パントテン酸カルシウム及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種」に限定し、さらに本願明細書の第16頁下から5行?1行に記載された処方における「3重量%のジメチルアミノエタノール」、「2重量%のビタミンEアセテート」、「1重量%の硫酸亜鉛」の配合を追加するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、以下に検討する。

(2)引用例の主な記載事項
原審の拒絶理由において引用された、本願の優先権主張日前に頒布された国際公開第96/33709号パンフレット(以下、「引用例」という。)には以下の事項(引用例は英文であるためその内容を翻訳文として示す。)が記載されている。

(i) 本発明は、主として皮下筋肉及び表面の皮膚、特に鼻唇のしわのような大きくなって目立ったしわがある顔、下顎骨の領域からの組織の垂下、及び老化や他の症状例えば重症筋無力症で観察される眼の回りや他の領域の組織の下垂の増大の治療に関する。また、たるんだ胸部の筋肉は胸部及び乳房の垂下をもたらす。本発明は、これらの変化を改善するために皮下の筋肉及び表面の皮膚を治療し、外観を改善する組成物及び方法に関する。(第1頁3?10行)
(ii)一つの態様では、組成物は、約5-約10重量%、さらに狭くは約7%のアスコルビン酸パルミテート、約2-約5重量%、さらに狭くは約3%のジメチルアミノエタノール、約1-約3重量%、さらに狭くは約2%のビタミンEアセテート、約0.25-約1重量%、さらに狭くは約0.5%のピリドキシン、約0.5-約1.5重量%、さらに狭くは約1%の硫酸亜鉛中の亜鉛、約1-約2重量%のパントテン酸又はパントテン酸カルシウム;及び約1-約3重量%、さらに狭くは約2%のチロシンを含む。(第8頁3?10行)
(iii)一般に、組成物は、改善をもたらすために、予定された又は必要に応じた処方で病気にかかった皮膚の領域に局所的に適用され、それぞれ連続して適用することにより徐々に改善するのが一般的なケースである。現在までの臨床上の研究に基づく限り、どんな副作用も認められない。
チロシンが皮膚化学的に許容できる担体中で皮膚に適用されるとき、臨床的に肉眼で認められる増大した筋緊張が起こる。本発明の組成物の有効性の評価では、約7重量%のアスコルビルパルミテート、3%のジメチルアミノエタノール、2重量%のビタミンEアセテート、1/2重量%のビタミンB_(6)(ピリドキシン)、1重量%の硫酸亜鉛(亜鉛としての重量)、1重量%のパントテン酸カルシウム、及び2重量%のチロシンが、顔の皮膚に適用される。適用後3-5分以内に、顔の皮膚は、さらに張るようになる。鼻唇のしわの減少が観察され、さらに眼窩付近及び額の顔面の一般的な引き締まりも観察される。この効果は、約24時間続き、そして処方物が毎日再適用されるとき、約1月後に、さらに若い外観をもたらす筋肉組織の顕著な短縮が生ずる。また、処方物が胸筋の領域及び乳房組織の領域に適用されると、その領域の持ち上げられた外観をもたらす。また、処方物は、外観を改善するために重症筋無力症の患者の顔面に適用されうる。
理論に束縛されることを望まないが、カテコールアミン関連化合物を用いることにより、筋緊張は増大しそして結果として生じる筋肉の短縮は、組成物が適用される顔、胸又は他の領域の組織を持ち上げる。カテコールアミン又はカテコールアミン関連化合物、特にカテコールアミンプレカーサー、並びにカテコールアミンの生成及び神経伝達物質の合成に含まれる他の化合物、例えばアセチルコリンプリカーサー、ビタミンC、ビタミンB6(ピリドキシン)、パントテン酸カルシウム又はパントテン酸、及び亜鉛の存在が、神経筋接合のアセチルコリンのレベルを上げるのに助けとなるようであり、特に神経シナプスが不随意筋肉と相互に反応するとき、増大した筋緊張をもたらすようにみえる。この増大した筋緊張は、筋肉の僅かな短縮を生じさせ、そして時間とともに、筋肉は実際により短くなる。短くなった筋肉は、覆った皮膚の持ち上げを生じさせ、ゆるみの減少という化粧上の外観をもたらす。カテコールアミンは、また、筋肉組織に特に明らかなグリコーゲン分解作用を行う。(第15頁13?第16頁18行)
(iv)「カテコールアミン、カテコールアミン関連化合物、アセチルコリン前駆体、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1つの活性成分を、該有効成分を経皮的に付与する皮膚科的に許容し得る担体中に含む、皮下筋肉及びそれを覆う皮膚組織の局所治療のための組成物」(第19頁下から2行?20頁5行 請求項6)

(3)対比、判断
引用例には、「約7重量%のアスコルビルパルミテート、3%のジメチルアミノエタノール、2重量%のビタミンEアセテート、1/2重量%のビタミンB_(6)(ピリドキシン)、1重量%の硫酸亜鉛(亜鉛としての重量)、1重量%のパントテン酸カルシウム、及び2重量%のチロシンを含む組成物」(上記(iii))が記載されている。以下、この組成物を「引用発明」という。
引用発明の組成物中のチロシン、アスコルビルパルミテート、ピリドキシン、パントテン酸カルシウムの含有量は、本願補正発明で特定された含有量の範囲内のものであり、ジメチルアミノエタノール、ビタミンEアセテート、及び亜鉛の含有量は本願補正発明における含有量と一致するから、引用発明の組成物は本願補正発明の組成物に包含される。
そして、引用例には、上記の組成物が顔面に適用されるとしわの減少や、若い外観を与え、皮下の筋肉組織の緊張による短縮がもたらされ、その結果外観が改善されること、 胸筋の領域及び乳房組織の領域に適用した場合に外観上の利益がもたらされること(上記(i)(iii))も記載されている。 上記組成物の顔面やその他の部位への適用が塗布によりなされることは自明であり、上記の作用は本願補正発明における化粧治療剤の作用(本願明細書第16頁末行?17頁7行)と異なることころがなく、外観の改善は化粧容姿が増進することに他ならないから、引用発明の組成物は「皮下筋肉の臨床的に知覚できる筋肉緊張が増すように皮下筋肉を覆う皮膚組織に局所的に塗布される、ヒトの化粧容姿を増進する皮膚組織及び皮下筋肉の局所化粧治療剤」として使用されるものと理解することができる。したがって、本願補正発明の組成物とはその用途においても相違するところはない。
そうすると、本願補正発明は引用発明を包含するから、本願補正発明は引用例に記載された発明であり、特許法29条第1項3号の規定により特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成18年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年3月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「0.1重量%?10重量%のドーパ、チロシン、フェニルアラニン及びこれらの混合物から成る群から選ばれる少なくとも1種、0.1重量%?10重量%のオレイン酸、尿素、アスコルビン酸の飽和脂肪酸エステル、トコトリエノール及びこれらの混合物から成る群から選ばれる少なくとも1種及び0.25重量%?2重量%のピリドキシン、パントテン酸カルシウム及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種からなる組成物を、皮下筋肉の臨床的に知覚できる筋肉緊張が増すように皮下筋肉を覆う皮膚組織に局所的に塗布することを特徴とするヒトの化粧容姿を増進する皮膚組織及び皮下筋肉の局所化粧治療剤。」(以下、これを「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明を包含するから、前記「2.(3)」に記載したと同様の理由により、引用例に記載された発明である。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-01 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願平10-548365
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大久保 元浩  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 弘實 謙二
川上 美秀
発明の名称 経皮浸透エンハンサーを使用する皮下筋肉組織へのカテコールアミン及び関連化合物の局所投与  
代理人 斉藤 武彦  
代理人 畑 泰之  

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