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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1211261
審判番号 不服2006-14811  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-10 
確定日 2010-02-05 
事件の表示 特願2001-250413「サーバシステム及びサーバシステムの制御方法とプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 7日出願公開、特開2002-163163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成13年8月21日(優先権主張平成12年9月12日)の出願であって,平成17年8月1日付けで拒絶理由が通知され,同年10月7日付けで手続補正がなされたが,平成18年6月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年7月10日に拒絶査定に対する審判請求書が提出され,同年8月9日付けで手続補正書が提出され,平成21年3月27日付けで審尋がなされ,同年5月29日に回答書が提出されたものである。

第2 平成18年8月9日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成18年8月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正後の本願発明

上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,補正前の平成17年10月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された,

「【請求項1】
印刷装置からの印刷装置固有の情報を第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能なサーバシステムであって,
前記第一ローカルサーバ部から外部ネットワークを介して前記印刷装置固有の情報を取得する取得手段と,
前記外部ネットワークを介して取得した前記印刷装置固有の情報をデータベースに格納させる格納制御手段と,
汎用コンピュータの情報を第二フォーマットで出力する第二ローカルサーバ部と外部ネットワークを介して通信可能なセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された前記第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を通知すべく,前記センタサーバ部が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段と,
前記第一ローカルサーバ部より通知され取得した情報の内容を解析する解析手段とを有しており,
前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき取得した印刷装置固有の情報が,通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記センタサーバ部に通知すべく変換し,
前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害に応じて,前記発生した障害を前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われることを特徴とするサーバシステム。」

という発明を,

「【請求項1】
印刷装置からの印刷装置固有の情報を印刷装置の管理ソフトウェアが解釈できる第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能で,前記印刷装置固有の情報として前記第1ローカルサーバ部から印刷装置においてどれほど印刷が行われたかを示すカウンタ値を取得するサーバシステムであって,
前記第一ローカルサーバ部から外部ネットワークを介して前記印刷装置固有の情報を取得する取得手段と,
前記外部ネットワークを介して取得した前記印刷装置固有の情報をデータベースに格納させる格納制御手段と,
汎用コンピュータの情報を汎用コンピュータの管理ソフトウェアが解釈できる第二フォーマットで出力する第二ローカルサーバ部と外部ネットワークを介して通信可能な前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアを稼働させるセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された前記第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を,前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部へ通知すべく,前記センタサーバ部が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段と,
前記第一ローカルサーバ部より通知され取得した情報の内容を解析する解析手段とを有しており,
前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき,取得した印刷装置固有の情報の種類が通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部に通知すべく変換し,
前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害の種類に応じて,前記印刷装置固有の情報としての前記発生した障害を,前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われることを特徴とするサーバシステム。」

という発明に補正することを含むものである。
すると,本件補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「印刷装置からの印刷装置固有の情報を第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能なサーバシステム」に対し「印刷装置からの印刷装置固有の情報を印刷装置の管理ソフトウェアが解釈できる第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能で,前記印刷装置固有の情報として前記第1ローカルサーバ部から印刷装置においてどれほど印刷が行われたかを示すカウンタ値を取得するサーバシステム」との限定を加えるものでり,また,「汎用コンピュータの情報を第二フォーマットで出力する第二ローカルサーバ部と外部ネットワークを介して通信可能なセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された前記第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を通知すべく,前記センタサーバ部が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段」に対し「汎用コンピュータの情報を汎用コンピュータの管理ソフトウェアが解釈できる第二フォーマットで出力する第二ローカルサーバ部と外部ネットワークを介して通信可能な前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアを稼働させるセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された前記第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を,前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部へ通知すべく,前記センタサーバ部が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段」との限定を加え,「前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき取得した印刷装置固有の情報が,通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記センタサーバ部に通知すべく変換し,」に対し「前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき,取得した印刷装置固有の情報の種類が通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部に通知すべく変換し,」との限定を加え,「前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害に応じて,前記発生した障害を前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われる」に対し「前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害の種類に応じて,前記印刷装置固有の情報としての前記発生した障害を,前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われる」との限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-112847号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ネットワークに対し,複数のクライアントと,サーバとが接続されたクライアント・サーバシステム及びこのシステムにおけるクライアント稼働監視方法に関するものである。」(公報第2頁)

(b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,クライアントの数が100台,200台と言うように膨大なシステムにおいて,以下に述べるような問題点が生じる。まず,膨大な数のクライアントとサーバが定期的にヘルスチェック機能による通信を行うので,ネットワークへの負荷が増大し,本来のクライアントとサーバ間の通信が行い難くなり,業務処理に悪影響を及ぼすという問題点がある。
【0005】更に,運用管理用ミドルウェアによりヘルスチェック機能を実現する場合には,インストールに人手と時間を要する問題がある。更に,クライアントとサーバのプラットホームが異なる場合には,運用管理用ミドルウェアのサポート制限により,クライアントをエージェントとして登録できない場合があった。
【0006】本発明は,上記のような従来のクライアント・サーバシステムにおける問題点を解決せんとしてなされたもので,その目的は,クライアントの数が多い場合にも,また,クライアントとサーバのプラットホームが異なる場合にも,比較的容易に,かつ,適切にクライアントの稼働状態を把握することが可能なクライアント・サーバシステム及びクライアント稼働監視方法を提供することである。」(公報第2?3頁)

(c)「【0009】本発明に係るクライアント・サーバシステムでは,サーバは複数で構成され,複数のサーバに,所定の1つのサーバに対し自サーバの送信に関する記録情報を送信する送信手段を具備させ,前記1つのサーバに,送信記録収集手段,検出手段を備えさせたことを特徴とする。これにより,マルチベンダ環境においてクライアントの稼働状態が検出され,検出結果が出力される。
【0010】本発明に係るクライアント・サーバシステムでは,サーバは複数で構成され,複数のサーバには,送信記録収集手段,検出手段と,この検出手段の検出結果を所定の1つのサーバに対し送信する稼働状態送信手段とが備えられ,前記所定の1つのサーバには,送信されてくる稼働状態情報を受け取り自サーバのクライアントに係る稼働状態情報と共に保持する保持手段が備えられていることを特徴とする。これにより,それぞれのサーバにおいて検出されたクライアントに係る稼働状態情報が1つのサーバに集められて一元管理される。
【0011】本発明に係るクライアント稼働監視方法は,ネットワークに対し,複数のクライアントと,サーバとが接続されたクライアント・サーバシステムのクライアント稼働監視方法であって,前記サーバから前記クライアントへの送信に関する記録情報を収集し,該収集された記録情報に基づいて,前記クライアントの稼働状態を検出し,この検出結果を出力することからなる。これにより,サーバからクライアントへの送信に関する記録情報に基づいて,クライアントの稼働状態が検出される。」(公報第3頁)

(d)「【0031】次に図8に第3の実施の形態を示す。この実施の形態では,サーバCを備えており,サーバAが各クライアント2-1?2-nの稼働状態情報をサーバCへ通知し,サーバBが各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報をサーバCへ通知する構成を採用している。サーバCには,監視端末3C-1,3C-2が接続されている。
【0032】各サーバA,B,Cの構成を図9に示す。サーバAは,クライアント送信処理プロセス31,ログ収集・判定処理プロセス32,エージェントに対応する運用管理用ミドルウェア37Aを有する。サーバBは,クライアント送信処理プロセス31B,ログ収集・判定処理プロセス32B,エージェントに対応する運用管理用ミドルウェア37Bを有する。サーバCは,マネージャに対応する運用管理用ミドルウェア37C,稼働状態生成処理プロセス33C,稼働状態情報を保持するためのファイル4Cを有する。監視端末3C-1は,稼働状態表示プロセス34C-1を有し,監視端末3C-2は,稼働状態表示プロセス34C-2を有する。
【0033】以下に本システムの動作を説明する。クライアント送信処理プロセス31,31B,ログ収集・判定処理プロセス32,32Bによる応答と通知の際に対応する処理は,既に図2,図4,図5を用いて説明した通りである。ログ収集・判定処理プロセス32,32Bによる処理結果に係る稼働状態情報は,運用管理用ミドルウェア37A,37Bのエージェントに渡され,各エージェントはこの稼働状態情報をサーバCの運用管理用ミドルウェア37のマネージャへ通知する。
【0034】運用管理用ミドルウェア37のマネージャは受け取った稼働状態情報を稼働状態生成処理プロセス33Cへ送出し,稼働状態情報は稼働状態生成処理プロセス33Cによりファイル4Cへ反映される。
【0035】監視端末3C-1,3C-2の稼働状態表示プロセス34C-1,34C-2は,上記ファイル4Cを参照して,各クライアント2-1?2-nの稼働状態及び出力機器5-1?5-mの稼働状態の表示データを作成し,稼働状態の画像をCRT表示装置20へ表示する。つまり,各クライアント2-1?2-n及び出力機器5-1?5-mのそれぞれが,正常か異常かの画像がCRT表示装置20に表示される。本実施の形態では,運用管理用ミドルウェアをサーバのみに適用して,インストールの手間を減少させ,1つのサーバにてクライアントの稼働状態を一元的に監視できる。」(公報第5頁)

(e)「【0037】このシステムにおける各クライアント2-1?2-nの稼働状態情報に関する処理動作は,図2,図4,図5を用いて説明した処理と同様である。このシステムでは,各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報に関しても同様に処理が行われる。ところで,このシステムでは,ログ収集・判定処理プロセス32は処理結果を稼働状態生成処理プロセス33と共に,統計データ生成処理プロセス39へ送出する。統計データ生成処理プロセス39は,各クライアント2-1?2-nに対する各時間帯単位の応答,通知の回数,各出力機器5-1?5-mに対する各時間帯単位の出力枚数などの統計情報を生成し,ファイル4Aへ反映する。」(公報第5頁)

これらの記載によれば引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「サーバAが各クライアント2-1?2-nの稼働状態情報をサーバCへ通知し,サーバBが各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報をサーバCへ通知するクライアント・サーバシステムであって,
サーバAは,クライアント送信処理プロセス31,ログ収集・判定処理プロセス32,エージェントに対応する運用管理用ミドルウェア37Aを有し,
サーバBは,クライアント送信処理プロセス31B,ログ収集・判定処理プロセス32B,エージェントに対応する運用管理用ミドルウェア37Bを有し,
サーバCは,マネージャに対応する運用管理用ミドルウェア37C,稼働状態生成処理プロセス33C,稼働状態情報を保持するためのファイル4Cを有し,
ログ収集・判定処理プロセス32,32Bによる処理結果に係る稼働状態情報は,運用管理用ミドルウェア37A,37Bのエージェントに渡され,各エージェントはこの稼働状態情報をサーバCの運用管理用ミドルウェア37Cのマネージャへ通知することで,
それぞれのサーバにおいて検出された稼働状態情報が1つのサーバに集められて一元管理されており,
各出力機器5-1?5-mに対する各時間単位の出力枚数などの統計情報を生成することができるクライアント・サーバシステム。」

3.対比

本件補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「各クライアント2-1?2-n」,「各クライアント2-1?2-nの稼働状態情報」,「サーバA」,「サーバC」は,本件補正発明の「汎用コンピュータ」,「汎用コンピュータの情報」,「第二ローカルサーバ部」,「センタサーバ部」にそれぞれ相当する。
引用発明の「運用管理用ミドルウェア37A」及び「運用管理用ミドルウェア37C」は,本件補正発明における「汎用コンピュータの管理ソフトウェア」に相当する。

引用発明は,各出力機器5-1?5-mに対する各時間単位の出力枚数などの統計情報を生成することができるから,引用発明の「各出力機器5-1?5-m」が印刷出力を行う出力装置であることは明白であり,引用発明の「各出力機器5-1?5-m」,「各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報」は,本件補正発明の「印刷装置」,「印刷装置固有の情報」にそれぞれ相当する。

引用発明のサーバBは,印刷装置固有の情報(各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報)を,汎用コンピュータの管理ソフトウェア(運用管理用ミドルウェア37C)に管理させるためにセンタサーバ部(サーバC)へ通知しているから,
引用発明の「サーバB」,「運用管理用ミドルウェア37B」は,本件補正発明における「サーバシステム」,「印刷装置の管理ソフトウェア」にそれぞれ相当する。

引用発明のサーバシステム(サーバB)は,印刷装置固有の情報(各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報)を取得しているといえ,「印刷装置固有の情報を取得する取得手段」に相当する構成を有している。

引用発明において,汎用コンピュータの管理ソフトウェア(運用管理用ミドルウェア37A及び運用管理用ミドルウェア37C)によって処理される汎用コンピュータの情報(各クライアント2-1?2-nの稼働状態情報)のフォーマットは,当該汎用コンピュータの管理ソフトウェアが解釈できるフォーマットであることは自明であり,本件補正発明における「第二フォーマット」に相当する。
引用発明において,印刷装置の管理ソフトウェア(運用管理用ミドルウェア37B)によって処理される印刷装置固有の情報(各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報)のフォーマットは,当該印刷装置の管理ソフトウェアが解釈できるフォーマットであることは自明であり,本件補正発明における「第一フォーマット」に相当する。
そして,引用発明と本件補正発明はともに,サーバシステムが「前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアを稼働させるセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された前記第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を,前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部へ通知すべく」,処理を行う処理手段を有している点で共通といえる。

したがって,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

[一致点]
印刷装置固有の情報を取得するサーバシステムであって,
前記印刷装置固有の情報を取得する取得手段と,
汎用コンピュータの情報を汎用コンピュータの管理ソフトウェアが解釈できる第二フォーマットで出力する第二ローカルサーバ部と通信可能な前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアを稼働させるセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を,前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部へ通知すべく,処理を行う処理手段と,
を有していることを特徴とするサーバシステム。

[相違点1]
本件補正発明には,第一ローカルサーバ部が設けられており,サーバシステムは「印刷装置からの印刷装置固有の情報を印刷装置の管理ソフトウェアが解釈できる第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能」であって,「前記第一ローカルサーバ部から外部ネットワークを介して前記印刷装置固有の情報を取得」しており,また,「前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害の種類に応じて,前記印刷装置固有の情報としての前記発生した障害を,前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われる」のに対して,
引用発明には,そのような第一ローカルサーバ部及び外部ネットワークに相当する構成がなく,サーバBが取得する稼働状態情報は,ログ収集・判定処理プロセス32Bによる処理結果に係る稼働状態情報である点。

[相違点2]
本件補正発明のサーバシステムは,印刷装置固有の情報として「印刷装置においてどれほど印刷が行われたかを示すカウンタ値を取得」しており,また,「取得した前記印刷装置固有の情報をデータベースに格納させる格納制御手段」を有しているのに対して,
引用発明のサーバBは,各出力機器5-1?5-mにおいてどれほど印刷が行われたかを示すカウンタ値を取得しておらず,また,取得した稼働状態情報をデータベースに格納させることについても記載がない点。

[相違点3]
本件補正発明のセンタサーバ部は,第二ローカルサーバ部と外部ネットワークを介して通信可能であるのに対して,
引用発明のサーバCは,サーバAにどのような接続手段で接続されているのか明示されていない点。

[相違点4]
印刷装置固有の情報を,汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるためにセンタサーバ部に通知すべく,処理を行う処理手段が,本件補正発明では,印刷装置固有の情報を「前記センタサーバ部が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段」であって,サーバシステムは「取得した情報の内容を解析する解析手段」を有し,「前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき,取得した印刷装置固有の情報の種類が通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部に通知すべく変換し」ているのに対し,
引用発明では,サーバBが各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報をサーバCへ通知する際に,そのようなフォーマット形式の変換を行っていない点。

4.判断

上記相違点について検討する。

[相違点1]について
印刷装置からの印刷装置固有の情報を,外部ネットワークを介して特定のフォーマットで取得することは通常に行われているから,引用発明のサーバシステム(サーバB)が,印刷装置からの印刷装置固有の情報を,外部ネットワークを介して第一のフォーマットで取得することに格別の困難性はない。
その際に,特開平8-265317号公報の段落【0029】,及び関連する図面,特開平4-60649号公報の第2頁右下欄第7行?第3頁左上欄第8行,第5頁右上欄第16行?19行,第7頁左上欄第17行?右上欄第15行,及び関連する図面に記載があるように,外部ネットワークを介して機器の管理を行うシステムにおいて,管理対象装置側にローカルな管理装置(本件補正発明の「第一ローカルサーバ部」に相当)を設置し,当該ローカルな管理装置が,管理対象装置において発生した障害情報の種類に応じて,発生した障害を通知するか否かの判断を行うことは,本願出願前に周知(以下,「周知技術1」という。)であるから,当該周知技術1を適用し,引用発明に本件補正発明の「第一ローカルサーバ部」に相当する構成を設けることで,
引用発明のサーバシステムを「印刷装置からの印刷装置固有の情報を印刷装置の管理ソフトウェアが解釈できる第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能」であって,「前記第一ローカルサーバ部から外部ネットワークを介して前記印刷装置固有の情報を取得」するようにし,「前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害の種類に応じて,前記印刷装置固有の情報としての前記発生した障害を,前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われる」ように構成することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。

[相違点2]について
特開2000-214733号公報の段落【0060】?【0066】,【0103】?【0104】,及び関連する図面,特開平2-34864号公報の第8頁右上欄第3行?右下欄第9行,及び関連する図面に記載があるように,外部ネットワークを介して機器の管理を行うシステムにおいて,印刷装置においてどれほど印刷が行われたかを示すカウンタ値を取得すること,及び取得した印刷装置固有の情報をデータベースに格納させることは,本願出願前に周知(以下,「周知技術2」という。)である。
そうすると,引用発明に周知技術2を適用して,引用発明のサーバシステム(サーバB)が取得する印刷装置固有の情報として,各出力機器5-1?5-mの稼働状態情報の他に,印刷装置(各出力機器5-1?5-m)においてどれほど印刷が行われたかを示すカウンタ値を取得するようにすること,及び取得した印刷装置固有の情報をデータベースに格納させる格納制御手段を設けることは,当業者であれば容易に想到し得ることである。

[相違点3]について
外部ネットワークを介してクライアントを監視することは通常に行われているから,引用発明において,各クライアント2-1?2-nの稼働状態情報をサーバCへ通知するサーバAに上記「[相違点1]について」の中で指摘した周知技術1を適用して,サーバAを外部ネットワークを介して通信可能なローカルな管理装置とすることで,センタサーバ部(サーバC)が第二ローカルサーバ部(サーバA)と外部ネットワークを介して通信可能な構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得ることである。

[相違点4]について
特開平11-65951号公報の段落【0004】,【0048】?【0056】,及び関連する図面,特開平2-172344号公報の第3頁左下欄第8行?右上欄第4行,及び関連する図面に記載があるように,ネットワークを介して機器の管理を行うシステムにおいて,上位の管理装置に通知する情報を,当該上位の管理装置が解釈可能なフォーマット形式に変換して通知することは,本願出願前に周知(以下,「周知技術3」という。)である。
また,特開平9-247144号公報の段落【0027】?【0029】,及び関連する図面,特開平11-150540号公報の段落【0034】?【0042】,及び関連する図面に記載があるように,ネットワークを介して機器の管理を行うシステムにおいて,取得した管理情報の内容を解析し,通知すべき障害情報のみを上位の管理装置に通知することは,本願出願前に周知(以下,「周知技術4」という。)である。
引用発明において,サーバシステム(サーバB)とセンタサーバ部(サーバC)とでプラットホーム,障害コードの体系,監視プロトコル等を同じにするか否かは当業者が適宜設計し得る事項であって,それらが異なる場合のサーバシステム(サーバB)に周知技術3,4を併せて適用して,印刷装置固有の情報をセンタサーバ部(サーバC)が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段,及び取得した情報の内容を解析する解析手段をサーバシステムにそれぞれ設け,
「前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき,取得した印刷装置固有の情報の種類が通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部に通知すべく変換」を行うように構成することは,当業者が適宜なし得ることである。

そして,本件補正発明のように構成したことによる効果も引用発明,及び周知技術から予測できる程度のものであって,格別のものではない。

したがって,本件補正発明は,引用発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ

上記のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願出願について

平成18年8月9日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は平成17年10月7日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて,次のとおりのものである(以下,「本願発明」という。)。

「【請求項1】
印刷装置からの印刷装置固有の情報を第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能なサーバシステムであって,
前記第一ローカルサーバ部から外部ネットワークを介して前記印刷装置固有の情報を取得する取得手段と,
前記外部ネットワークを介して取得した前記印刷装置固有の情報をデータベースに格納させる格納制御手段と,
汎用コンピュータの情報を第二フォーマットで出力する第二ローカルサーバ部と外部ネットワークを介して通信可能なセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された前記第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を通知すべく,前記センタサーバ部が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段と,
前記第一ローカルサーバ部より通知され取得した情報の内容を解析する解析手段とを有しており,
前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき取得した印刷装置固有の情報が,通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記センタサーバ部に通知すべく変換し,
前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害に応じて,前記発生した障害を前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われることを特徴とするサーバシステム。」

第4 引用刊行物に記載された発明

原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び引用発明は,上記「第2 2.」に記載したとおりである。

第5 対比・判断

本願発明は,上記「第2 1.」で検討した本件補正発明から,
「印刷装置からの印刷装置固有の情報を印刷装置の管理ソフトウェアが解釈できる第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能で,前記印刷装置固有の情報として前記第1ローカルサーバ部から印刷装置においてどれほど印刷が行われたかを示すカウンタ値を取得するサーバシステム」から「印刷装置からの印刷装置固有の情報を第一フォーマットで出力する第一ローカルサーバ部と通信可能なサーバシステム」と限定を省き,「汎用コンピュータの情報を汎用コンピュータの管理ソフトウェアが解釈できる第二フォーマットで出力する第二ローカルサーバ部と外部ネットワークを介して通信可能な前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアを稼働させるセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された前記第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を,前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部へ通知すべく,前記センタサーバ部が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段」から「汎用コンピュータの情報を第二フォーマットで出力する第二ローカルサーバ部と外部ネットワークを介して通信可能なセンタサーバ部に,前記取得手段で取得された前記第一フォーマットの前記印刷装置固有の情報を通知すべく,前記センタサーバ部が解釈可能なフォーマット形式に変換するフォーマット変換手段」と限定を省き,「前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき,取得した印刷装置固有の情報の種類が通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記汎用コンピュータの管理ソフトウェアに管理させるために前記センタサーバ部に通知すべく変換し,」から「前記フォーマット変換手段は,前記解析手段による解析に基づき取得した印刷装置固有の情報が,通知すべき障害情報であれば,取得した印刷装置固有の情報を前記センタサーバ部に通知すべく変換し,」と限定を省き,「前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害の種類に応じて,前記印刷装置固有の情報としての前記発生した障害を,前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われる」から「前記第一ローカルサーバ部では,前記印刷装置において発生した障害に応じて,前記発生した障害を前記サーバシステムに通知するか否かの判断が行われる」と限定を省いたものである。

そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2 3.」及び「第2 4.」で検討したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明(本願の請求項1に係る発明)は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2009-11-27 
結審通知日 2009-11-30 
審決日 2009-12-21 
出願番号 特願2001-250413(P2001-250413)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田内 幸治  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 近藤 聡
五十嵐 努
発明の名称 サーバシステム及びサーバシステムの制御方法とプログラム  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  

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