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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2009800044 審決 特許
無効200680172 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A63F
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A63F
審判 全部無効 特39条先願  A63F
管理番号 1211608
審判番号 無効2009-800046  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-02-24 
確定日 2010-01-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2781921号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯

本件の経緯概要は以下のとおりである。

平成 1年 8月15日 本件出願(特願平1-210414号)
平成 8年 8月13日 審査請求
平成 8年 8月13日 手続補正書提出
平成10年 3月10日 特許査定
平成10年 5月22日 設定登録(特許第2781921号)
平成21年 2月24日 無効審判請求(書面には2月23日の日付が記載)
平成21年 6月 2日 答弁書・訂正請求(被請求人)
平成21年 7月13日 弁駁書(請求人)
平成21年 9月 2日 答弁書(2)(被請求人)

第2.本件審判事件にかかる両当事者の主張

請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。なお、以下において、本件設定登録時の請求項を「訂正前の請求項」、平成21年6月2日付の訂正請求に基づく請求項を「訂正後の請求項」という。
また、無効理由として先願発明であると主張された特許第2772787号については、本件とは別件の無効審判(無効2008-800204)において、平成21年2月2日付けで訂正請求がされたので、設定登録時の請求項1に係る発明を「先願発明」、訂正請求に基づく請求項1に係る発明を「先願訂正発明」という。

1.請求人の主張

請求人は、平成21年2月24日差出の審判請求書において、「特許第2781921号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求め」(請求の趣旨)、以下の理由により、本件特許発明(訂正前の請求項1)は特許を受けることができないものであるから、特許法123条1項2号の規定により無効にされるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1?22号証を提出した。

【無効理由1】
本件特許発明(訂正前の請求項1)は、先願発明(甲第1号証、特許第2772787号)と実質的に同一であり、特許法39条1項の規定に違反するもので無効にされるべきものである。(審判請求書第45?47頁)
【無効理由2】
本件特許の平成8年8月13日付け手続補正(甲第5号証)は、要旨を変更するものであるから、その出願日が手続補正をした日(平成8年8月13日)に繰り下がるべきものである。そして、本件特許発明(訂正前の請求項1)は、繰り下がった出願日以前に公開された甲第4号証(特開平3-75078号公報)に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号により無効とされるべきものである。また、同一でないとしても、本件特許発明(訂正前の請求項1)は繰り下がった日以前に公開された甲第4号証に記載された発明に甲第8?13,15?20号証に記載の周知技術を単純に組み合わせることで、当業者が容易に成し得たものであり、特許法29条2項により無効とされるべきものである。(審判請求書第47?62頁)
【無効理由3】
仮に出願日の繰り下げがないとしても、本件特許発明(訂正前の請求項1)は、甲第14号証に記載された発明に甲第15?21号証記載の発明を組み合わせることで、当業者が容易に成し得たものであり、特許法29条2項により無効とされるべきものである。(審判請求書第62?65頁)

甲第1号証:特許第2772787号公報
甲第2号証:社団法人発明協会発行の特許庁編「特許実用新案審査基準」の 抜粋(「第II部 特許要件」の「第4章 特許法第39条」)
甲第3号証:昭和61年4月25日付け株式会社有斐閣発行 吉藤幸朔著
「特許法概説(第7版)」の抜粋
甲第4号証:特開平3-75078号公報
甲第5号証:本審判の被請求人が平成8年8月13日付けで特許庁に提出し た手続補正書
甲第6号証:本審判の請求人が作成した甲第4号証の本件特許に係る出願当 初明細書と登録時の明細書との比較表
甲第7号証:社団法人発明協会発行の特許庁編「特許実用新案審査基準」の 抜粋(「第III部 明細書等の補正」の「第1章 出願公告 決定前の補正」)
甲第8号証:特開平6-304313号公報
甲第9号証:特開平7-68027号公報
甲第10号証:特開平7-136313号公報
甲第11号証:特開平8-117390号公報
甲第12号証:特開平8-173592号公報
甲第13号証:特開平6-114140号公報
甲第14号証:実願昭60-74971号(実開昭61-191081号) のマイクロフィルム
甲第15号証:特開昭59-186580号公報
甲第16号証:特開昭60-148575号公報
甲第17号証:特開昭62-127086号公報
甲第18号証:実願昭58-128413号(実開昭60-37380号) のマイクロフィルム
甲第19号証:特開昭59-40883号公報
甲第20号証:特開昭60-100987号公報
甲第21号証:「パチンコ攻略マガジン[創刊号]」の抜粋(テン・オクロ ック工房編著、1987年12月10日国立国会図書館受入)
甲第22号証:株式会社三共のホームページの抜粋(パチンコ機「フィーバ ーマッスル」のスペック紹介ページ、同ホームページの19 95年機種一覧より)

そして、被請求人の平成21年6月2日付け訂正請求を受けて、平成21年7月13日付け弁駁書において、該訂正請求は訂正要件違反であって認められないものである旨主張し(弁駁書第2?11頁)、仮に訂正が認められるとしても、訂正後の請求項1に係る発明は先願訂正発明と実質的に同一であって依然として特許法39条1項の規定に違反するものであり(弁駁書第11?15頁)、また、甲第14?21号証及び周知技術に基づき進歩性を有しないと主張し、新たに参考例1?14を提示した(弁駁書第15?23頁)。

参考例1:「フィーバーレクサス」の記事(フリー百科事典『ウィキペディ ア(Wikipedia)』より)
参考例2:「平成パチンコ大図鑑777」の抜粋(パチンコ必勝ガイド編、 白夜書房発行)
参考例3:「パチンコ必勝大図鑑増補改訂2000年度版」の抜粋(白夜書 房、2000年2月27日発行)
参考例4:「パチンコ攻略マガジン1989年8月号」の抜粋(双葉社、1 989年8月1日発行)
参考例5:「パチンコ攻略マガジン1989年9月号」の抜粋(双葉社、1 989年9月1日発行)
参考例6:「パチンコ攻略マガジン1989年10月号」の抜粋(双葉社、 1989年10月1日発行)
参考例7:「パチンコファン1989年10月号」の抜粋(日本文芸社、1 989年10月15日発行)
参考例8:「パチンコファン1990年1月号」の抜粋(日本文芸社、19 90年1月15日発行)
参考例9:「超LSI総合辞典」の”FIFO”に関する記述の抜粋(株式 会社サイエンスフォーラム、1988年3月31日発行)
参考例10:特開昭58-83473号公報
参考例11:特開昭58-153289号公報
参考例12:特開昭59-92674号公報
参考例13:特開昭59-99520号公報
参考例14:特開昭63-300490号公報

2.被請求人の主張

被請求人は、平成21年6月2日付けで答弁書を提出し、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め」(答弁の趣旨)、同日付の訂正請求に基づく請求項1は先願発明及び先願訂正発明と同一ではない(答弁書第4?9頁)と主張している。また、同日付けの訂正請求により請求人が主張する要旨変更の根拠は存在しなくなり、出願日が繰り下がることを前提とする新規性および進歩性欠如の主張には理由がなく(答弁書第9?10頁)、更に、訂正後の請求項1に係る発明は甲第14号証に記載の発明に甲第15?21号証に記載の周知技術を単純に組み合わせることで当業者が容易に成し得たものではない(答弁書第10?14頁)と主張している。

さらに、平成21年9月2日付の答弁書(2)において、平成21年6月2日付の訂正請求は認められるべき(答弁書(2)第3?11頁)とした上で、訂正後の請求項1に係る発明は、先願訂正発明と同一ではなく、また、当業者が容易になし得たものではない(答弁書(2)第11?18頁)としている。

第3.被請求人による訂正請求について

1.訂正請求の内容

平成21年6月2日付の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件特許第2781921号の明細書(以下「特許明細書」という。)を、訂正請求書に添付した明細書によって訂正しようとするものであって、次の事項を訂正内容とするものである。

・訂正事項1
【発明の名称】の「遊技機」を「パチンコ遊技機」と訂正する。
・訂正事項2
【請求項1】の「表示状態が変化可能な可変表示装置」を「打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置」と訂正する。
・訂正事項3
【請求項1】の「予め定められた特定の表示態様」を「予め定められた特定の識別情報」と訂正する。
・訂正事項4
【請求項1】の「遊技機」を「パチンコ遊技機」と訂正する。
・訂正事項5
【請求項1】の「前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段」を「前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段」と訂正する。
・訂正事項6
【請求項1】の「前記可変表示装置を可変開始させた後前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段」を「前記可変表示装置を可変開始させた後、前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段」と訂正する。
・訂正事項7
【請求項1】の「生成された前記表示結果決定用データが前記特定の表示態様に対応するものである場合に、該特定の表示態様が導出表示されることを当該特定の表示態様が導出表示される以前に遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段」を「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段」と訂正する。
・訂正事項8
[産業上の利用分野]の「本発明は、パチンコ遊技機等で代表される遊技機に関し、詳しくは、表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に遊技者に有利な状態に制御される遊技機に関する。」を「本発明は、パチンコ遊技機に関し、詳しくは、打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報となった場合に遊技者に有利な状態に制御されるパチンコ遊技機に関する。」と訂正する。
・訂正事項9
[従来技術]の「遊技機の一例としてのパチンコ遊技機」、「表示態様」を、それぞれ「パチンコ遊技機」、「識別情報」と訂正する。
・訂正事項10
[発明が解決しようとする課題]の「遊技機」、「表示態様」を、それぞれ「パチンコ遊技機」、「識別情報」と訂正する。
・訂正事項11
[課題を解決するための手段]の「本発明は、…特徴とする。」を
「本発明は、打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報となった場合に遊技者に有利な状態に制御されるパチンコ遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段と、
前記可変表示装置を可変開始させた後、前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段とを含むことを特徴とする。」と訂正する。
・訂正事項12
[作用]の「本発明によれば、…遊技者の期待感が高まる。」を
「本発明によれば、表示結果決定用データ生成手段の働きにより、可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成することが可能となる。また、可変表示制御手段の働きにより、可変表示装置を可変開始させた後、前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させるよう制御が行なわれる。また、事前報知手段の働きにより、打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知が行なわれる。
つまり、特定の識別情報が導出表示されることが、特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示において、および特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知が行なわれるため、特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示から遊技者の期待感が高まる。」と訂正する。
・訂正事項13
本件特許公報第4欄第6行の「遊技機の一例のパチンコ遊技機」、本件特許公報第8欄第37?38行の「弾球遊技機」、本件特許公報第24欄第38?39行の「弾球遊技機」、および【図面の簡単な説明】の「弾球遊技機の一例のパチンコ遊技機」の各々を、「パチンコ遊技機」と訂正する。
・訂正事項14
本件特許公報第4欄第31?32行の「特定の表示態様の一例である特定の識別情報」を「特定の識別情報」と訂正する。
・訂正事項15
本件特許公報第6欄第4行の「中当りの表示態様の一例である中当りの識別情報」を「中当りの識別情報」と訂正する。
・訂正事項16
本件特許公報第7欄第11行の「16個の表示態様の一例である識別情報」を「16個の識別情報」と訂正する。
・訂正事項17
本件特許公報第12欄第35行、第16欄第46行、第16欄第49行、および第22欄第13行の「表示態様」、並びに本件特許公報第16欄第44?45行の「表示態様の一例である識別情報」の各々を、「識別情報」と訂正する。
・訂正事項18
本件特許公報第22欄第9?10行の「具体的な表示態様に対応する識別情報」を「具体的な識別情報」と訂正する。
・訂正事項19
[発明の効果]の「本発明は、…提供し得るに至った。」を「本発明は、特定の識別情報が導出表示されることが、特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示において、および特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知が行なわれるため、遊技者の期待感を高めることができ、可変表示装置の面白さを十分に演出し遊技者の期待感をより一層向上することのできるパチンコ遊技機を提供し得るに至った。」と訂正する。
・訂正事項20
本件特許公報第11欄第3?15行の「それを受けてS7に従って当り予告表示器55による当り予告が停止制御される。後述するS21,S22ならびに前記S9,S11,S7に従って制御される当り予告表示器55により、少なくとも後述する特定識別情報判定手段の判定出力に基づいて、該特定の識別情報が表示される予定となっている回の可変表示中に、前記特定の識別情報が表示されることを遊技者に事前に報知するための事前報知手段が構成されている。なお、この事前報知手段は、前記当り予告表示器55による点灯または点滅表示に代えて、可変表示装置14の可変表示を特定の態様で行なわせる(たとえば可変表示の速さや明るさ等を変化させる)ものであってもよい。」を
「それを受けてS7に従って当り予告表示器55による当り予告が停止制御される。なお、前記当り予告表示器55による点灯または点滅表示に代えて、可変表示装置14の可変表示を特定の態様で行なわせる(たとえば可変表示の速さや明るさ等を変化させる)ものであってもよい。」と訂正する。
・訂正事項21
本件特許公報第17欄第5?12行の「また、前記S65に従ってリーチ目を表示する可変表示装置14により、前記可変表示装置の数回前の可変表示の段階において生成された前記表示結果決定用データが前記特定の表示態様に対応するものである場合に、前記特定の表示態様が表示される予定となっている回の可変表示の開始以前に、前記特定の表示態様が導出表示されることを遊技者に事前に報知するための前兆報知手段が構成されている。」という記載を削除する。
・訂正事項22
本件特許公報第24欄第16?18行の「前述した2つの実施例においては、前兆報知手段が、前兆パターンとして或る定められた停止図柄で可変表示装置を停止させるように表示制御するものを示したが」を「S21,S22ならびに前記S9,S11,S7に従って制御される当り予告表示器55により、さらには、前記S65に従ってリーチ目を表示する可変表示装置14により、打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、該特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段が構成されている。前述した2つの実施例においては、前兆パターンとして或る定められた停止図柄で可変表示装置を停止させるように表示制御するものを示したが」と訂正する。
・訂正事項23
本件特許公報第24欄第25?37行の「さらに、前記2つの実施例においては、前兆報知手段により前兆が報知された場合または事前報知手段により報知が行なわれた場合に、必ず大当りが発生するのではなく、中当りや小当りとなり大当りが発生しない場合や、可変表示装置である定められた停止図柄で予告する場合において、偶然にその停止図柄になった場合のように全く大当りや中当りさらには小当りにならない場合が生ずるものを示した。しかし、本発明はこれに限らず、一旦前兆報知手段により前兆が報知された場合または事前報知手段により報知がなされた場合には、必ず大当りが発生するものであってもよい。また、中当りや小当りがなく大当りのみあるものであっもよい。」を
「さらに、前記2つの実施例においては、事前報知手段により報知が行なわれた場合に、必ず大当りが発生するのではなく、中当りや小当りとなり大当りが発生しない場合や、可変表示装置である定められた停止図柄で予告する場合において、偶然にその停止図柄になった場合のように全く大当りや中当りさらには小当りにならない場合が生ずるものを示した。しかし、本発明はこれに限らず、一旦事前報知手段により報知がなされた場合には、必ず大当りが発生するものであってもよい。また、中当りや小当りがなく大当りのみあるものであっもよい。」と訂正する。

2.訂正の適否に対する判断

(1)訂正事項1,4について
「遊技機」を「パチンコ遊技機」に限定するものであり、特許明細書の[発明の実施例]において「パチンコ遊技機1」に関する記載が多々あるから、訂正事項1,4は、特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
「可変表示装置」の可変表示が「打玉の始動入賞領域への入賞により」行われるものであることを限定すると共に、可変表示装置について「表示状態が変化」を「複数種類の識別情報を可変表示」と限定するものである。
そして、本件特許公報第4欄第19?25行には「可変表示装置14には、複数種類の識別情報を可変表示できる識別情報表示部15a,15b,15cが設けられている。そして遊技領域13に形成されている始動入賞口27a,27b,27cのいずれかにパチンコ玉が入賞することにより最大4個まで始動入賞記憶が行なわれ、始動入賞記憶のあることに基づいて、識別情報表示部15a,15b,15cが可変表示を開始し」と記載されており、同第2欄第11?13行の「打玉が始動入賞領域に入賞する等の所定の条件が成立することに基づいて可変表示装置が可変表示され」の記載は従来技術に関するものであるが、本件特許発明がこれを当然の構成として有することは自明であるから、特許明細書には「打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置」が実質的に記載されているものと認められる。
そうすると、訂正事項2は、特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
「表示態様」を「識別情報」に限定するものであり、本件特許公報第4欄第30?38行には「そして停止したときの可変表示装置14による表示結果が予め定める特定の組合わせ(特定の表示態様の一例である特定の識別情報)になれば、大当りとなり可変入賞球装置20の開閉板22を開成して遊技者にとって有利となる第1の状態に駆動制御される。この可変入賞球装置20により、前記可変表示装置14の停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報になったことに基づいて所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段が構成されている。」と記載されているから、特許明細書には「予め定められた特定の識別情報」が実質的に記載されているものと認められる。
そうすると、訂正事項3は、特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項5について
「表示結果決定用データ生成手段」が「表示結果決定用データを記憶しておく」という動作をすることによって、「当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能」にしている点、及び、その表示結果決定用データは「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリア」に記憶しておく点、をそれぞれ限定するものである。
そして、本件特許公報第15欄第15行?第16欄第10行には「S53により、スタートスイッチ(始動入賞玉検出器39a?39b)がONになっているか否かの判断がなされる。そしてパチンコ玉が始動入賞口27a?27cのいずれかに入賞すれば、S53よりYESの判断がなされS55に進み、スタートスイッチチェックカウンタが最大か否かの判断がなされる。……次にS60では、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値を停止図柄データとして始動記憶カウンタの値に対応する停止図柄データ記憶エリアに記憶する処理がなされる。たとえば、第9図に示すように、始動記憶カウンタが「1」の場合には、停止図柄データ記憶エリアのエリア5に現在のカウント値に対応する停止図柄データ「a」が記憶される。なお、始動記憶カウンタの値に対応する停止図柄データ記憶エリアとは、始動記憶カウンタの値が「1」の場合にはエリア5となり、始動記憶カウンタが「2」である場合にはエリア6となり、始動記憶カウンタが「3」である場合にはエリア7となり、始動記憶カウンタが「4」である場合にはエリア8となる。次にS61に進み、停止図柄データ記憶エリアのエリア1?4が空き状態であるか否かの判断がなされ、空き状態でない場合には直接S63に進むが、空き状態の場合にはS62に進む。つまり、始動記憶カウンタがたとえば「1」である場合に、そのカウント値に対応するエリア5に停止図柄データ「a」が記憶され、エリア1?4に全くデータが記憶されていない場合には、S61によりYESの判断がなされてS62に進み、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値に基づいて4回分の停止図柄データを決定しエリア1?4に記憶させる処理がなされる。このS62による処理がなされた状態が、第9図の1個目始動入賞時の停止図柄データ記憶エリアに示されている。」と記載されており、同第16欄第36?38行には「前記S60により、前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段が構成されている。」と記載されている。これによれば、「パチンコ玉が始動入賞口27a?27cのいずれかに入賞」すなわち「打玉が始動入賞領域へ入賞」したときに、「停止図柄データ」すなわち「可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データ」が生成されて複数のデータ記憶エリアということのできるエリア5?8のうちのいずれかに記憶することが実質的に記載されているということができる。また、同第19欄第35?37行には「可変表示装置の可変開始が行なわれる毎に停止図柄データ記憶エリアの記憶情報が1ずつ図示左方向にシフトされる。」との記載から、エリア5?8のいずれかに停止図柄データが記憶されたときにそれ以前に記憶されている停止図柄データに基づく可変表示は、そのエリア5?8のいずれかに記憶された停止図柄に基づく可変表示の前に実行されることがわかるから、上記「表示結果決定用データ生成手段」は「表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能な」ものといえる。
そうすると、特許明細書には「可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段」が実質的に記載されているものと認められるから、訂正事項5は、特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(5)訂正事項6について
「前記可変表示装置を可変開始させた後」「表示結果を導出表示させる制御を行なう」基となる「表示結果決定用データ」が、「前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された」ものであることを限定するものである。
そして、本件特許公報第12欄第8?23行には「たとえば、第9図に示す1個目始動入賞時に停止図柄データ記憶エリアのエリア1に記憶されている停止図柄データがbであり、S18の処理によりこのbの停止図柄データが別エリア(今回表示)に呼出されて記憶されるのである。この別エリアに記憶されるのは、今回の可変表示における予定停止図柄のデータということになる。なお、前記停止図柄データは、前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データの一例である。次にS19により始動記憶カウンタを1減算し、S20により停止図柄データ記憶エリアの記憶内容をそっくり8から1の方向に1つずつシフトさせる。たとえば、第9図に示す1個目始動入賞時の停止図柄データ記憶エリアの停止図柄データがこのS20の処理がなされると1回目可変表示時の停止図柄データ記憶エリアに記憶されるようなデータとなる。」と記載されており、同第19欄第32?37行には「このように、始動入賞に伴って始動記憶カウンタが1ずつ加算され、その始動記憶カウンタのカウント値に応じた停止図柄データ記憶エリアのエリアに所定の停止図柄データが記憶され、可変表示装置の可変開始が行なわれる毎に停止図柄データ記憶エリアの記憶情報が1ずつ図示左方向にシフトされる。」と記載されており、特許明細書には、上記「表示結果決定用データ」が「前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された」ものであることが実質的に記載されているものと認められる。
そうすると、訂正事項6は、特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(6)訂正事項7について
訂正事項7については、請求人からは、弁駁書において訂正要件違反であるとの主張がなされ、被請求人からは、平成21年9月2日付の答弁書(2)において訂正要件を満たす旨の主張がなされた。
以下の訂正事項7の適否の検討において、訂正後の「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、」にかかる部分を(A)とし、「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、」にかかる部分を(B)として、「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において」にかかる部分を(C)として検討する。

(6)-1 まず(A)について検討する。

(6)-1-1 (A)に関する訂正は、訂正前の「前記可変表示装置の数回前の可変表示の段階において生成された前記表示結果決定用データが前記特定の表示態様に対応するものである場合」を「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合」と明らかに限定するものである。
そして、「表示結果決定用データ」が「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された」ものであることは「(4)訂正事項5について」で記載したとおりである。
また、本件特許公報第8欄第45?49行には「始動入賞時の停止図柄決定用カウンタの値が大当りまたは中当りに対応する値である場合には、停止図柄データ記憶エリアのエリア4(第9図参照)の停止図柄データを「EB4」に変更することにより、大当りまたは中当りの前兆としてリーチ目を表示する。」と記載されており、同第16欄第11?35行には「次にS63に進み、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値が大当りまたは中当りの値であるか否かの判断がなされる。この「現在のカウント値」とは前記S60で記憶した値と同じものである。…大当りまたは中当りの値になっている場合にはS63に進み、エリア4に記憶されている停止図柄データが大当りまたは中当りの値になっているか否かの判断がなされ、大当りまたは中当りの場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、大当りまたは中当りの値でない場合にはS65に進み、エリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更する処理がなされてサブルーチンプログラムが終了する。このS65による変更処理がなされた状態が、第9図のたとえば4個目始動入賞時におけるエリア4に示されている。…このS65による変更処理がなされるため、リーチ目が可変表示装置で表示されてから1?4回後の可変表示により大当りまたは中当りが発生することになる。」と記載されている。これらの記載を整理すると、特許明細書には、停止図柄データとなる始動入賞時の停止図柄決定用カウンタの値が大当りまたは中当りの値に対応するものになっている場合であって、停止図柄データ記憶エリアのエリア4に記憶されている停止図柄データが大当りまたは中当りの値でない場合に、エリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更する処理がなされることが実質的に記載されているといえる。
そうすると、「停止図柄データ」は「表示結果決定用データ」、「大当りまたは中当りの値」は「特定の識別情報に対応する表示結果決定用データ」、「エリア4」は「特定のデータ記憶エリア」ということができ、「停止図柄データ記憶エリア」は複数の「データ記憶エリア」からなるものであるから、特許明細書には「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合」が実質的に記載されているものと認められる。
そうすると、(A)と訂正することは、特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(6)-1-2 請求人は、「「前記特定の識別情報」は、実施例の記載に従えば、大当り発生用の識別情報をいうのか、大当りおよび中当り発生用の識別情報をいうのか不明確」であり、「「前記特別の識別情報」を大当り発生用の識別情報とする場合については本件特許明細書に記載されていないのである」から、「訂正事項7は、訂正の基準となる本件特許明細書に記載されていないと言わざるを得ない。」旨の主張(弁駁書第10頁第3行?第11頁第5行)をしているので、検討する。
「「前記特別の識別情報」を大当りまたは中当たり発生用の識別情報とする場合については記載されている」(弁駁書第11頁第1?2行)と請求人も認めている。一方、本件特許公報第24欄第35?37行には「また、中当りや小当りがなく大当りのみあるものであっもよい。」と記載されており、この場合は「前記特別の識別情報」は大当り発生用の識別情報のみを意味することとなる。したがって、「前記特別の識別情報」は、少なくとも大当り発生用の識別情報を意味する場合と大当りおよび中当り発生用の識別情報を意味する場合があることは明確であって、どちらの場合であっても矛盾を生じるものではない。したがって、「「前記特別の識別情報」を大当り発生用の識別情報とする場合については本件特許明細書に記載されて」いるから、請求人の主張は失当である。

また、請求人は、「訂正事項7における「複数のデータ記憶エリア」、「特定エリアデータ」は訂正の基準となる本件特許明細書に記載されている用語を用いて説明できないのであって、これら「複数のデータ記憶エリア」、「特定エリアデータ」は新規に追加された事項であると言わざるを得ない。」と主張(弁駁書第11頁第6?19行)しているので、検討する。
本件特許公報第15欄第17行?第16欄第8行の記載および第9図によれば、停止図柄データ記憶エリアのエリア1?8に停止図柄データを記憶する旨の記載があり、エリア1?8は、データを記憶する複数のエリアであるから、「複数のデータ記憶エリア」ということができる。
更に、本件特許公報第17欄第12?14行には「なお、前記S65では、常にエリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更するように構成した」という記載があり、エリア4は、他のエリアとは異なって「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するもの」である場合に「常に」「停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更する」というエリアであるから、「特定」のエリアすなわち「特定エリア」ということができ、エリア4に記憶されるデータは「特定エリアデータ」ということができる。
そうすると、「複数のデータ記憶エリア」、「特定エリアデータ」は、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであって、「複数のデータ記憶エリア」、「特定エリアデータ」が新規に追加された事項であるとの請求人の主張は失当である。

(6)-2 (B)、(C)に関する訂正は、「前記特定の識別情報が導出表示されることを」「遊技者に報知する」時期を、訂正前の「該特定の表示態様が導出表示されることを当該特定の表示態様が導出表示される以前に」を(B)「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において」及び(C)「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において」と明らかに限定するものである。

(6)-2-1 まず、(B)について検討する。
本件特許公報第8欄第45?49行には「始動入賞時の停止図柄決定用カウンタの値が大当りまたは中当りに対応する値である場合には、停止図柄データ記憶エリアのエリア4(第9図参照)の停止図柄データを「EB4」に変更することにより、大当りまたは中当りの前兆としてリーチ目を表示する。」と記載されており、同第16欄第11?35行には「次にS63に進み、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値が大当りまたは中当りの値であるか否かの判断がなされる。この「現在のカウント値」とは前記S60で記憶した値と同じものである。…大当りまたは中当りの値になっている場合にはS64に進み、エリア4に記憶されている停止図柄データが大当りまたは中当りの値になっているか否かの判断がなされ、大当りまたは中当りの場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、大当りまたは中当りの値でない場合にはS65に進み、エリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更する処理がなされてサブルーチンプログラムが終了する。このS65による変更処理がなされた状態が、第9図のたとえば4個目始動入賞時におけるエリア4に示されている。…このS65による変更処理がなされるため、リーチ目が可変表示装置で表示されてから1?4回後の可変表示により大当りまたは中当りが発生することになる。」と記載されている。これらの記載を整理すると、特許明細書には、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値が大当りまたは中当りの値であるとの判断がなされた時に、エリア4の停止図柄データが大当りまたは中当りの値でない場合に、エリア4の停止図柄データ(特定エリアデータに相当することは既述)をリーチ目表示用の停止図柄データに変更することにより、大当りまたは中当りが発生する1?4回前の可変表示においてリーチ目が可変表示装置に表示されることが実質的に記載されているものと認められる。
また、同第8欄第37?42行には「本発明に係る弾球遊技機では可変表示装置14によりリーチ目が表示される。このリーチ目とは、大当りが発生する可能性が高まったことを可変表示装置14により表示するためのものであり、たとえば「SANKYO 7 FEVER」のように表示される。」と記載されているから、リーチ目は大当りが発生する、すなわち特定の識別情報が導出表示される可能性が高いことを遊技者に報知するものと認められる。
そうすると、「前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、」遊技者に報知することが実質的に記載されているものと認められる。
したがって、(B)と訂正することは、特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(6)-2-2 次に(C)について検討する。
本件特許公報第20欄第14?18行には「可変表示装置の可変表示の最中に当り予告表示器55(図1参照)により当り予告がなされるとともに、その回の可変表示装置の停止時においては大当り目(たとえば「777」)の表示が行なわれる。」と記載されており、当該記載によれば、「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において」遊技者に報知することが実質的に記載されているものと認められる。
したがって、(C)と訂正することは、特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(6)-3 請求人は、被請求人が訂正事項7の原因として挙げている可変表示装置14の「リーチ目」の表示に関する本件特許明細書の記載は、「事前報知手段」ではなく「前兆報知手段」に関するものである旨(弁駁書第第3頁第25行?第5頁第25行)、「大当り」または「中当り」が導出表示される回の可変表示によって…導出表示される以前に「事前報知」を行うことは記載されているものの、「エリア4」に記憶されたデータに基づいた大当りまたは中当りに対応するものでない表示結果となる可変表示において「事前報知」を行うことは、どこにも記載されていない旨(弁駁書第5頁第26行?第9頁第25行)、2段階で「特定の識別情報が導出表示されること」を遊技者に報知することなどについては、訂正の基準となる本件特許明細書のどこにも記載されていない旨(弁駁書第9頁第26行?第10頁第2行)、訂正事項7は新たな技術的事項を導入するものである旨(弁駁書第11頁第20?21行)主張しているので、以下に検討する。

(6)-3-1 訂正後の請求項1に係る発明は、事前報知を2段階(「特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前」とその「前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示」)で行う旨を限定しているものであるが、この点については、本件特許公報第19欄第38行?第20欄第18行において「4回目始動入賞時において、始動記憶カウンタが「2」となっており、それに応じたエリア6に記憶される停止図柄データが大当りの停止図柄データ((h))となった場合には、前記S65に従って、エリア4の停止図柄データ「f」をリーチ目の停止図柄データ(x)に変更する処理がなされる。そして6回目の可変開始時においてはそのリーチ目(x)が別エリアに記憶されることとなり、可変表示装置においてリーチ目の表示がなされる。…そして、8回目可変開始時においては、前記大当りの停止図柄((h))が別エリアに記憶され、可変表示装置の可変表示の最中に当り予告表示器55(図1参照)により当り予告がなされるとともに、その回の可変表示装置の停止時においては大当り目(たとえば「777」)の表示が行なわれる。」と記載されており、すなわち、6回目の可変開始時において「リーチ目の表示」が、さらに8回目可変開始時において「可変表示装置の可変表示の最中に当り予告表示器55により当り予告」がなされるから、ここで「リーチ目の表示」及び「当り予告」が2段階の事前報知に該当するものである。よって、前者の「リーチ目の表示」が訂正事項7における「前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示」において行われる事前報知に相当し、後者の「可変表示装置の可変表示の最中に当り予告表示器55」による「当り予告」が、訂正事項7における「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前」において行われる事前報知に相当するから、上記のように事前報知を2段階で行うことは特許明細書に実質的に記載されているものである。
「リーチ目の表示」に関する本件特許明細書の記載は、「事前報知手段」ではなく「前兆報知手段」に関するものである旨の請求人の主張について検討すると、確かに特許明細書においては「リーチ目の表示」が「事前報知」であるとの明記はなく、「前兆報知」である旨の記載は存在する。しかし、本件特許公報第17欄第10?12行の「前記特定の表示態様が導出表示されることを遊技者に事前に報知する前兆報知手段が構成されている。」によれば、「リーチ目の表示」が大当りまたは中当りを「事前に報知する」ものと記載されているから、「リーチ目の表示」が「事前報知」であり、そのための手段が「事前報知手段」であることは明らかである。

以上によれば、訂正事項7は、特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(7)訂正事項8?18,23について
これらの訂正事項については、訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を取るためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的としている。また、特許明細書に記載された事項内において訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(8)訂正事項19,20,21および22について
弁駁書(第11頁第23?24行)において請求人から、訂正事項19乃至22は、明りょうでない記載の釈明にあたらないから、訂正要件違反であるとの主張がされたので、検討する。
訂正事項7により、「事前報知」が「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に」「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において」行われる旨、限定されたが、当該訂正が適法であることは上記したとおりである。

そして、訂正事項19は、上記訂正事項7で訂正された特許請求の範囲の記載に整合させるために同様の記載に訂正するとともに、訂正前の「遊技機」を「パチンコ遊技機」に限定するものである。そうすると、訂正事項19は訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を取るためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的としている。また、特許明細書に記載された事項内において訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また、本件特許公報第11欄第5?11行の「後述するS21,S22ならびに前記S9,S11,S7に従って制御される当り予告表示器55により、少なくとも後述する特定識別情報判定手段の判定出力に基づいて、該特定の識別情報が表示される予定となっている回の可変表示中に、前記特定の識別情報が表示されることを遊技者に事前に報知するための事前報知手段が構成されている。」及び同第17欄第5行?第12行の「また、前記S65に従ってリーチ目を表示する可変表示装置14により、前記可変表示装置の数回前の可変表示の段階において生成された前記表示結果決定用データが前記特定の表示態様に対応するものである場合に、前記特定の表示態様が表示される予定となっている回の可変表示の開始以前に、前記特定の表示態様が導出表示されることを遊技者に事前に報知するための前兆報知手段が構成されている。」との「事前報知手段」について説明する記載を訂正事項20、21によって削除し、上記訂正事項7で訂正された特許請求の範囲の記載に整合させるために、訂正事項22によって、「前兆報知手段または事前報知手段が」という事前報知手段の説明の記載があった本件特許公報第24欄第16行?第18行に訂正事項7で訂正された「事前報知手段」に関する記載を加入したものである。そうすると、訂正事項20?22は、あわせて、訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を取るためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的としている。また、特許明細書に記載された事項内において訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3.むすび

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前の特許法134条2項ただし書きに適合し、特許法134条の2第5項において準用する同改正前の特許法126条2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第4.本件特許発明

上記のとおり訂正を認めるので、本件審判請求にかかる本件特許発明は、本件訂正請求にかかる訂正明細書に記載された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)であって、次のとおりのものである。
「打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報となった場合に遊技者に有利な状態に制御されるパチンコ遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段と、
前記可変表示装置を可変開始させた後、前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段とを含むことを特徴とする、パチンコ遊技機。」

第5.本件特許発明にかかる検討

1.無効理由1について(39条1項)

最初に、本件特許発明が甲第1号証の先願発明の請求項1に係る発明(特許第2772787号)と同一の発明であるか否かについて検討する。
特許第2772787号について、本件とは別件の無効審判(無効2008-800204)が請求され、平成21年2月2日付け訂正請求による訂正を認めた上で特許を無効としないとの審決が平成21年8月19日付けで出されたが、平成21年9月18日付けで知的財産高等裁判所に出訴されて係属中である。したがって、上記訂正は確定していないので、先願発明としては設定登録時の請求項1に係る発明(「先願発明」)を検討するとともに、平成21年2月2日付けの訂正請求で訂正された請求項1に係る発明(「先願訂正発明」)についても検討する。

(1)先願発明について

(1)-1 先願発明
先願発明は、以下のとおりである。
「表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に遊技者に有利な状態に制御される遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段と、
前記可変表示装置を可変開始させた後前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
生成された前記表示結果決定用データが前記特定の表示態様に対応するものである場合に、前記特定の表示態様が導出表示されることを当該特定の表示態様が導出表示される以前に遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段とを含み、
該事前報知手段は、前記可変表示装置を特有の態様で表示させることにより前記事前報知を行なうことを特徴とする、遊技機。」

(1)-2 対比・判断
本件特許発明と先願発明とを比較対比すると、両者には少なくとも以下の相違点がある。
[相違点1]
「事前報知手段」が「前記特定の識別情報が導出表示されることを、」「遊技者に報知する事前報知」を、本件特許発明では「該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、」「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において」行うのに対し、先願発明では「当該特定の表示態様が導出表示される以前に」行う点。

つぎに、上記[相違点1]について検討する。
ここで、本件特許発明の出願日(平成1年8月15日)が先願発明の出願日(平成1年8月14日)よりも後の特許出願であることを考慮に入れると、後願である本件特許発明が先願発明の上位概念の発明であって、相違点が下位概念である先願発明の発明特定事項を上位概念としたことによる差異の場合は、両者を同一の発明であると判断することができるのに対して、後願である本件特許発明が先願発明の下位概念の発明であれば、両者を同一の発明であると判断することはできない。
しかして、上記[相違点1]に示した「該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、」「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において」行うということは事前報知をいつ行うかを特定する上で、「当該特定の表示態様が導出表示される以前に」を限定的に減縮していることは明らかであり、上記[相違点1]に示した「該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、」「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において」行う点が、本件特許発明の出願前の周知技術であるとも、また、本件特許発明の出願時において自明の事項であるということもできない。
そうしてみると、本件特許発明は先願発明の下位概念の発明であるということができるから、他の相違点について検討するまでもなく、両者は実質的に同一ではない。

(2)先願訂正発明について

(2)-1 先願訂正発明
先願訂正発明は以下のとおりである。
「打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報となった場合に遊技者に有利な状態に制御されるパチンコ遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段と、
前記可変表示装置を可変開始させた後前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に打玉の前記始動入賞領域への入賞により生成された表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回の前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段とを含み、
該事前報知手段は、前記可変表示装置を特有の態様で表示させることにより前記事前報知を行なうことを特徴とする、パチンコ遊技機。」

(2)-2 対比・判断
本件特許発明と先願訂正発明とを比較対比すると、両者には少なくとも以下の相違点がある。

[相違点2]
「事前報知手段」が「前記特定の識別情報が導出表示されることを、」「遊技者に報知する事前報知」を、本件特許発明では「該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、」「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において」行うのに対し、先願訂正発明では「該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に打玉の前記始動入賞領域への入賞により生成された表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、」「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回の前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において」行う点。

つぎに、上記[相違点2]について検討する。
本件特許発明と先願訂正発明は上記[相違点2]で示したように、明らかに相違するものであり、特に、本件特許発明の「特定エリアデータ」の記憶が特定の識別記号に対応するものでない表示結果を示す場合に事前報知を行うこと、「特定エリアデータ」に基づいた可変表示において事前報知を行うことは先願訂正発明に特定事項としてはなく、この点において、本件特許発明は先願訂正発明に対し限定的に減縮したものであり、本件特許発明は先願訂正発明の下位概念の発明であるということができ、[相違点2]にかかる事項が本件特許発明の出願前の周知技術であるとも、また、本件特許発明の出願時において自明の事項であるということもできないから、他の相違点について検討するまでもなく、両者は実質的に同一ではない。

(3)むすび
以上のとおり、特許第2772787号について平成21年2月2日付け訂正請求による訂正が認められるか否か、いずれであっても、本件特許発明は先願発明と実質的に同一であるということができず、また先願訂正発明とも同一であるということができない。

2.無効理由2について(出願日の繰下げ、29条1項3号、2項)

(1)出願日の繰下げについての検討
請求人は、本件特許の平成8年8月13日付け手続補正(甲第5号証、以下「本件手続補正」という。)は、要旨を変更するものであるから、その出願日が手続補正をした日(平成8年8月13日)に繰り下がるべきものであって、出願日が繰り下がったことを前提として、特許法29条1項3号又は29条2項により無効とされるべきものであると主張している。そして、本件手続補正が要旨を変更するものであるとする根拠として、本件手続補正によって、「複数種類の識別情報を可変表示可能」、「識別情報」、「特定の識別情報」および「弾球遊技機」が、それぞれ「表示状態が変化可能」、「表示態様」、「特定の表示態様」および「遊技機」に補正された点を挙げている(審判請求書第48頁第3行?第51頁第2行)。
これに対し、被請求人は、本件訂正請求により、請求項1の「表示状態が変化可能」、「特定の表示態様」および「遊技機」を、それぞれ「複数種類の識別情報を可変表示可能」、「特定の識別情報」および「パチンコ遊技機」に訂正しようとし、本件訂正を認めることは「第3」で検討したとおりである。
そして、「パチンコ遊技機」は、「弾球遊技機」の一種であり、かつ、出願当初の明細書に記載されているものであるから、本件訂正によって、請求人が要旨変更の根拠とした本件手続補正後の語句は、出願当初の語句に訂正され、要旨変更の根拠は存在しないものとなった。
そうすると、出願日は繰り下がることはなく、甲第4号証,甲第8?13号証は本件特許の出願日より後に公開されたものであるから、本件特許発明は請求人の主張した証拠(甲第4号証、甲第8?13,15?20号証)によっては特許法29条1項3号又は29条2項により無効とすることはできない。

3.無効理由3について(29条2項)

(1)甲第14?21号証の記載事項

甲第14号証には、以下の事項が記載されている。
「本考案は、特定の入賞が得られやすい状態になっている場合に、これを表示するようにしたスロットマシンに関するものである。」(第2頁第5?7行)
「しかし、従来のスロットマシンにおいては、前記マイクロコンピュータによって入賞リクエスト信号が得られた場合でも、それが表示されることがないため、遊技者にとっては折角のチャンスでありながらこれを知ることができない。特に、上述したようなボーナスゲームのリクエスト信号が発生されていたとしても格別の注意を喚起することなくゲームが続行されてしまう。本考案は上記のような背景を考慮してなされたもので、ボーナスゲームあるいは高配当が得られるような特定の入賞が発生されやすい状態になっている場合には、これを遊技者に報知することによって遊技者に大きな期待感を与え、ゲームの興趣をさらに盛り上げるようにしたスロットマシンを提供することにある。」(第4頁第8行?第5頁第2行)
「本体1の前面パネルに設けられたメダル投入口2から所定枚数のメダルを投入し、スタートレバー3を操作することによってリール4?6が回転する。リール4?6の回転中は、各リール上に配列されたシンボルの識別は非常に困難となっている。こうしてゲームが開始され、リール4?6が定常回転に達した後に、各リールごとに設けられたストップボタン11?13の操作が可能となる。遊技者が任意のタイミングでストップボタン11?13を操作してゆくと、リール4?6がその都度停止される。そして、観察窓7?9から観察される各リール相互間のシンボルの組み合わせが、投入されたメダルの枚数によって有効化された入賞ライン上で、所定の組み合わせになっていると、入賞の種類に応じた枚数のメダルが受け皿14に払い出される。」(第6頁第7行?第7頁第3行)
「ROM21には、入賞に該当するシンボルの組み合わせや、入賞ごとの払い出しメダル枚数の他、スロットマシンの基本的なゲームプログラム、およびボーナスゲームを実行するプログラム等がメモリされている。また、RAM22には、ゲーム進行中に順次書換られるシンボルデータや、リクエスト信号を発生するために一時的にサンプリングして保持される乱数値などがメモリされる。」(第7頁第12?20行)
「リールコントロールブロックBは、リール4?6のそれぞれを駆動するステッピングモータM1?M2に駆動パルスを供給する入力ポート23と、リール4?6の回転位置および停止位置を前記駆動パルスのパルス数として検出し、これをメインCPU20に入力する位置検出入力ポート24とを備えている。さらに、ストップボタン11?12の操作タイミングを、前記駆動パルスとの相関をもった信号としてメインCPU20に入力するためのリールストップ入力ポート25が設けられている。」(第8頁第3?13行)
「ストップボタン11?13が操作され、停止したリール4?6の回転停止位置として特定されたシンボルの組み合わせが、メインCPU20に入力され、その組み合わせをROM21のデータと照合した結果、入賞が得られた場合には、ホッパー駆動入力ポート28を介してホッパー29が作動する。ホッパー29の作動により、スロットマシンの本体1内に収容されているメダルが受け皿14に払い出される。」(第8頁第16行?第9頁第5行)
「ゲームを行った結果、各リール4?6相互間のシンボルの組み合わせが「7」-「7」-「7」になった場合には、ボーナスゲームの特典が与えられるようになっている。ボーナスゲームが行われると、入賞が極めて頻繁に生じるようになるため、ボーナスゲームの発生はメインCPU20でソフト的に制御される。」(第9頁第13?19行)
「乱数発生回路35から発生される乱数値を、乱数値サンプリング回路36によりサンプリングする。乱数値サンプリング回路36は、例えばスタートレバー3が操作された時点を基準にして、一定時間後に乱数値のサンプリングを行うようになっており、乱数発生回路35から発生される循環した乱数列から、常に一定間隔で乱数値をサンプリングし、一且サンプリングされた乱数値は以後サンプリングされることがないように構成されている。こうしてサンプリングされた乱数値は、カウンタ37にストアされる。リクエスト信号発生回路38は、こうして得られた乱数値をROM39のデータを比較し、一定範囲内のときにはリクエスト信号を出力する。」(第9頁第20行?第10頁第14行)
「リクエスト信号発生回路38からリクエスト信号が出力されると、各リール4?6の駆動を制御するモータ制御回路40?42のそれぞれは、リール4?6がシンボル「7」を表示した位置で停止させるようにモータM1?M3を制御する。モータM1?M3は、ステッピングモータによって構成されており、これらに供給される駆動パルスはカウンタ43?45で計数される。また、リール4?6が一回転するごとに、ホトセンサ47?49からカウンタ43?45にリセット信号が供給される。したがって、カウンタ43?45の計数値は、リール4?6の一回転内の回転位置に対応しており、この計数値に基づいて回転中のリール4?6のシンボルの移動を監視することができるようになる。こうして、各リール4?6が回転されているときに、ストップボタン11?13が操作されると、ストップ信号発生回路50?52から各モータ制御回路40?42にストップ信号が供給される。モータ制御回路40?42にリクエスト信号が入力されているときには、カウンタ43?45の計数値がモータ制御回路40?42にフィードバックされるようになっている。そして、モータ制御回路40?42は、リール4?6について、シンボル「7」が所定の入賞ライン上で停止するように、それぞれのカウンタ43?45での計数値を参照しながらモータM1?M3の駆動を制御する。一方、リクエスト信号発生回路38からリクエスト信号が発生されたときには、表示ランプ駆動回路55に駆動信号が出力される。この結果、配当パネル15内に設けられた表示ランプ16が点灯動作してリクエスト信号の発生、すなわちボーナスゲームとなるシンボルの組み合わせが得やすいように、リール4?6が停止制御される状態になっていることを表示する。しかし、ストップボタン11?13の操作タイミングとリール4?6の停止タイミングとがあまりかけ離れていると、不自然な感じがでてくるから、上述したようにシンボル「7」がでるようにリール4から6の停止制御を行うことには限度がある。例えば、ストップボタン11?13が操作された時点のシンボルから、3?4個ずれたシンボルの範囲内に「7」があるときには、シンボル「7」を表示してリール4?6を停止させ得るが、その範囲内にシンボル「7」が存在しないときにはシンボル「7」が出るようにリール4?6を停止制御できなくなり、ボーナスゲームが得られない場合も生じる。」(第10頁第17行?第13頁第4行)
「シンボル検出回路56?57から供給されるシンボルデータに基づき、入賞判定回路60が入賞の判定を行った結果、「7」-「7」-「7」の組み合わせであることが判定されたときには、ホッパー29が作動して規定枚数のメダルが払い出された後、ボーナスゲームが開始される。」(第14頁第4?9行)
「リクエスト信号が発生されたときには、初心者にもある程度シンボルの移動が識別できるように、リールの回転速度を低下させるようにすれば、リクエスト信号を有効に活用する上でさらに好ましい。」(第15頁第11?15行)
「以上に説明したように、本考案のスロットマシンにおいては、特定の入賞が得られやすいようにシンボル列の移動が停止制御されるときに、その旨が表示装置によって遊技者に報知されるようになる。したがって、従来のスロットマシンにはない非常にスリリングな興趣が得られるようになる。」(第15頁第17行?第16頁第3行)

甲第15号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明はマイクロコンピュータの利用により、電子的に統括制御されたスロットマシンに関するものである。」(第2頁左上欄第7?9行)
「スロットマシンは基本的には、何種かのシンボルマークが周縁部に配列された例えば3個のリールを高速回転させ、これらが停止された時点で所定の窓位置に現れた各リールのシンボルマークがいかなる組み合わせになっているかで入賞が決定される。」(第2頁左上欄第12?17行)
「ゲーム毎にサンプリングされる乱数値を予め設定記憶された入賞確率テーブル中の数値と照合してその入賞を決定するようにしてある。」(第2頁左下欄第19行?右下欄第1行)
「こうして決定された入賞に見合うシンボルマークの組み合わせが得られるように、あるいは得られ易いように、各リールをリールストップボタンが操作されてから停止させるまでの間に監視制御するものである。」(第2頁右下欄第2?6行)
「ROM51には前述したシンボルマークとシンボルマークコードとの対応表、入賞に相当するシンボルマークコードおよび入賞メダル支払い枚数表の他、実行されたゲームに関して入賞させるか否かを決定し、入賞させる場合にその入賞の高低に応じたヒットリクエストを発生させる入賞確率テーブルなどがストアされている。」(第4頁左上欄第4?10行)
「第9図は発生、更新される乱数値のサンプリング、ヒットリクエストチェック処理のフローチャートである。このフローチャートは、第4図に示したフローチャートにおける“ヒットリクエスト”処理に該当するもので、ゲーム開始後例えばスタートレバーの操作後の所定のタイミング信号(この時点で各リールは定常回転されることが好ましい。)により、その時点で乱数値RAM80(第8図)に存在する乱数値をそのゲームの乱数値として決定する。こうして決定された乱数値は第9図のフローチャートに従い、後述する入賞確率テーブルと照合され、大ヒットに該当する数値であれば大ヒットリクエスト信号の発生、また中ヒットに該当する数値であれば中ヒットリクエスト信号の発生というように小ヒットまでの判断、処理がなされいずれかのヒットリクエストが発生されるかあるいはヒットリクエストなしかがチェックされることとなる。なお、“入賞テーブル選択”の処理は、ゲーム開始に先立ち投入されるメダルが何枚であるかによって有効入賞ライン数が変化するので、この投入メダル数に応じた入賞テーブルを選択することを意味している。」(第5頁左上欄第12行?右上欄第13行、第9図)
「第10図は入賞確率テーブルの概念図である。テーブル中のB1?B3、M1?M3、S1?S3はそれぞれ事前に設定された数値で、第8図に示したような2バイトのメモリ領域、但しROM上に存在している。そして投入メダル数に応じていずれかのラインが選択される(第9図のフローチャートの“入賞テーブル選択”処理に対応。)。なお、各ラインにおける数値は通常はB<M<Sに設定され、例えば第7図により発生される乱数値がO?Nの範囲の値であると、投入メダル数1の場合の大ヒットの確率はB1/N、中ヒットの確率は(M1-B1)/N、小ヒットの確率は(S1-M1-B1)/Nとなり、B1、M1、S1それぞれの値が100、500、1000であるとすると、サンプリングされた乱数値が100未満であれば大ヒット、100以上500未満であると中ヒット、500以上1000未満なら小ヒットの各リクエストが発生され、1000以上ではヒットリクエストなしとなるものである。従ってこの入賞確率テーブルはいわば入賞の確率を決定する機能をもつと言える。」(第5頁右上欄第14行?左下欄第13行、第10図)
「こうして任意時点でのゲーム開始後に特定の乱数値がサンプリングされ、前述の入賞確率テーブルと照合されてヒットリクエストが得られることになるが、さらにペイアウト率を一定にする意味でリクエストカウンタを設けておいてもよい。すなわち、前述した入賞確率テーブル中の数値それぞれに相当する数値をRAM上にストアしておき、該当したヒットリクエストが発生した際に、その数値に-1の減算処理を行なう。」(第5頁左下欄第14行?右下欄第2行)
「これまでに述べてきた大、中、小の各ヒットの例としては、大ヒットが15枚のメダル支払いの後ボーナスゲームができるようになるもの、中ヒットが10?15枚のメダル支払い、小ヒットが2?5枚程度のメダル支払など適宜設定される。ボーナスゲームとしては、例えばメダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされ、このような手順で数回のゲームができるようになることなどが考えられる。」(第5頁右下欄第8?18行)
「リールの周縁の1個所に例えば光電検出できるリセット信号部を設け、このリセット位置におけるシンボルマークからリール回転方向への配列に従って順に0?20の付番によるコードナンバーとシンボルマークに対応するシンボルナンバーをROMにメモリしておけば、メインコントロール部により、リセット通過後にモータ送られるパルス数を計数してコードナンバーを算出し前述のコードナンバーおよびシンボルナンバーがメモリされたROMを参照すれば、窓に現れているシンボルマークが識別できることになる。もちろんリセット位置検出センサの位置が窓位置からずれている場合にはそのずれ分だけ回転させるべきパルス数を予め考慮しておくものとする。このような構成によれば、リールのストップボタンの押された瞬間に、リセット信号発生後何パルス送られたかを監視し、前述のシンボルナンバーROMを参照するによってその時点で窓に現れているシンボルマークが何であるかが識別できる。従って仮にストップボタンが押されてからリールが1回転するまでの間に実際にリールを停止させればよいものとすれば、リセット信号発生からストップボタン操作までの間にモータに送られたパルス数を考慮して、さらに送るパルス数を調節することで任意のシンボルマークが窓に現れて停止するようにすることが可能となる。」(第6頁左上欄第12行?右上欄第18行)
「まずストップボタンの操作後、シンボルマークが例えば4個分移動するまでの間にリールを停止させるようにするものとする。そしてストップボタンが操作された時点でのリールの位置から、これに後続しているシンボルマーク4個までの計5個のシンボルマークが何であるかをチェックするようにしてある。このようにシンボルマークをチェックして、すでにセットアップされたヒットリクエストに対応するシンボルマークの組み合わせを得るのに必要なシンボルマークがその5個のチェック範囲内にあればそこでリールを停止させることになる。なお、このような処理は3個のリールそれぞれについて行なわれることは言うまでもない。第12図は前述したコードナンバー及びシンボルコードのテーブル例を概念的に示すもので、また第13図はリール停止処理を示すフローチャートである。第12図におけるシンボルマークそのものは実際には簡略化されたデザイン図形であり、これはROM上には存在しないが、シンボルナンバーとの対応関係を表す意味で図示してある。また各リールの0?20のコードナンバー、1?8のシンボルナンバーは実際には2進数としてROMにストアされており、コードナンバーは5ビット、シンボルナンバーは3ビットあればよい。」(第6頁左下欄第17行?第7頁左上欄第1行)
「第13図におけるP10、P11の処理は、リールに設けられたリセット信号部、すなわちコードナンバー0を検出し、リールの回転に伴って順次コードナンバーを書き換えながらメモリしてゆくRAMを0にクリアするものであり、P12、P13では1シンボル分の移動に必要なパルス(9?10パルス)がモータに送り込まれたかを確認したうえで、前記コードナンバーをストアするRAMに新たなコードナンバーをセットアップする。また、P14のストップコントロール処理では、すでに得られているヒットリクエストを得るためのシンボルマークが、ストップボタンの操作時に前記した4個の範囲内に存在するかコードナンバーに基いてを判別し、存在する場合にはさらに何パルスだけモータに送り出せばよいかを算出する。そしてP15の処理により算出された個数分のパルスを計数しながら、予定個数だけモータに送り出した後、リールをストップさせ、P16の処理によりコードナンバーとシンボルナンバーとの参照を行なうことになる。こうして全てのリールについて処理を行なう。なお、第14図は第13図におけるP13の処理ごとにデータの書き換えられるRAMエリアの様子を示している。第14図において、RAM1はP13の処理により書き換えられるRAMで、例えばある時点においてリール窓のセンターライン(第2図におけるライン1に相当する。)に現れた各リールR1?R3のコードナンバーがセットアップされる。これが例えば図示した状態であるとする。こうして各リールのコードナンバーがセットアップされると、第12図に示した表がストアされたROMを参照することによりリール窓に現れている各リールR1?R3毎3個のシンボルコード(シンボルマーク)が一義的に決定され、この結果がRAM2に図示のようにセットアップされることになる(参考のため、シンボルマークも付記した。)。こうしてRAM2が決まると、第2図における各入賞ライン1、2A、2B、3A、3B上の各シンボルマークの並びが決定し、これが図示のようにRAM3にストアされることになる。そしてこの各ラインでのシンボルコードの組み合わせを、入賞のシンボルコードの組み合わせと共にこれに対応した支払メダル数、またボーナスゲームの有無がメモリされている入賞シンボルテーブルと照合される。」(第7頁左上欄第4行?左下欄第7行、第13図、第14図)
「第15図はこうした入賞シンボルテーブルの一例を概念的に示すものである。なお、例えば投入メダル数が1枚であれば、ライン1のみの照合で済むことは言うまでもない。今仮に3枚のメダル投入があったとし、ライン3Bのシンボルコードの組み合わせ5(E)-5(E)-5(E)でメダル10枚の払い出しの中ヒットであれば、これがRAM4に図示のようにセットされる。」(第7頁左下欄第7?15行)
「以上のようにして第2リールストップ処理が終了した後、第3リールの停止処理は、大ヒットリクエストが発生されている場合第23図のフローチャートにより行なわれる。この場合のヒットの判断は、第2リールストップ後にすでに作成された入賞区分表(第21図)を参照して実行される。また中ヒットリクエストが発生されている場合にはこのフローチャートにおける2つのヒット判断処理ブロックが入れ換わったもので行なわれる。小ヒットリクエストが発生されている場合には、本来第3リールのシンボルは何であってもよいが、投入メダル数によっては(2枚以上)、複数の入賞ラインのいずれかによって大ヒット、中ヒットが発生することもあり得るので、やはり第3リールストップ処理においても4コマずれの範囲内でこれをチェックすることが必要であり、またヒットリクエストなしの場合でも第1、第2リールが大あるいは中ヒットを構成するシンボルの並びになっていることもあり得るのでやはりチェックが必要で、これは第24図のフローチャートによって処理されることになる。例えばヒットリクエストなしの場合で第1、第2リールがそれぞれコードナンバー17、19でストップしていたとすれば(第21図参照)、第3リールのストップ操作が、第3リールのコードナンバー3と4との間で行なわれるとコマずれなしのコードナンバー4から4コマずれのコードナンバー8までの間でチェックが行なわれる。そしてコマずれなしであると中ヒットとなるので、第3リールは例えば1コマずれのコードナンバー5でストップされることになる。なお、前述したように、第21図の入賞区分表は単にライン1での入賞の有無だけでなく、各入賞ラインにっいてのものであるので、各ラインとも入賞が発生してしまうことはない。こうして第3リールがストップすると、第25図に示したフローチャートによる処理が実行される。すなわち、第3リールの停止により、窓に現れている全てのリールのシンボルマークが確定し、これで第14図に示した各RAMエリアが全てのデータをもつことになり、この時点で再度第22図の入賞判定処理が実行される。そして入賞の場合にはそのゲーム開始時に得られていたヒットリクエストを減算し、メダル支払いのためのホッパーモータがONされる。」(第9頁左上欄第13行?左下欄第18行)
「また、リールの処理は4コマずれを想定して説明してきたが、このためヒットリクエストに対応したシンボルがその4コマずれの範囲内に存在しないこともあり得る。(特に大ヒットシンボルは少ないため、充分あり得る。)このような場合にはヒットリクエストを満足しない結果となってしまい、設定された入賞確率が低下することになり、特に大ヒットではその影響が大きくなる。これを適正化するためには、ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合にはそのヒットリクエストを次回のゲームまで保存するようにすればよい。」(第9頁右下欄第10行?第10頁左上欄第1行)

甲第16号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明は電動型スロットマシンに関する。」(第2頁左上欄第16行)
「周囲に多数の絵柄が表示されている複数本のリール」(第2頁左下欄第6?7行)
「乱数発生手段(4)では、スタートスイッチ(3)の作動信号が入力されると乱数を通常の手段により発生せしめる。発生せしめる乱数の数は、後述するごとく絵柄組合せテーブルメモリ(7)の記憶内容によって1個または3個である。発生した乱数は停止絵柄情報読取手段(8)に送られ、種々の絵柄の組合せまたは種々の絵柄が記憶されている絵柄組合せテーブルメモリ(7)から前記乱数に基づいてランダムに停止絵柄の組合せを読取り、決定する。絵柄組合せテーブルメモリ(7)の内容は、前記のごとく絵柄の組合せそのものであってもよいし、絵柄自体であってもよい。絵柄の組合せを記憶しておくばあいは、すべての絵柄の組合せを記憶させてもよいし、メダルの払出しを受けられる組合せ(以下、アタリの組合せという)とメダルの払出しを受けられない組合せ(以下、ハズレの組合せという)とを適当な数ずつ記憶させてもよい。後者のばあいは、アタリの組合せの数とハズレの組合せの数とを適宜調整することにより、アタリの回数を制御することが可能になる。なお、絵柄の組合せを記憶させておくばあいには、乱数発生手段(4)で発生せしめる乱数は1つでよい。一方、絵柄自体を記憶させておくばあいでは、各リールの表示絵柄に対応した絵柄が記憶されている3つのテーブルを用いてもよいし、各絵柄ごとに個数を適宜選定して同種の絵柄を1個ないし複数個記憶させておいてもよい。後者のばあいはテーブルは1つでよく、同じテーブルから3回絵柄を読取る。なお、絵柄自体を記憶させておくばあいには、3つの乱数が必要になる。」(第3頁左上欄第6行?右上欄第18行)
「かくして停止絵柄情報読取手段(8)で決定された停止絵柄情報は停止絵柄位置情報発生手段(9)に送られ、リールに表示されている絵柄の位置情報に変換されて比較手段(10)に送られる。比較手段(10)には、各リールにおける停止絵柄位置情報と表示絵柄位置検出手段(11)から常時送られてくる各リールの現在の表示絵柄位置情報とストップスイッチ(12)の作動信号が入力される。比較手段(10)では1個のストップスイッチ(12)から作動信号が入力されると、そのリールの現在の表示絵柄位置情報とそのリールの停止絵柄位置情報とを比較して両者の位置関係情報をタイミング手段(13)に出力する。タイミング手段(13)では、比較手段(10)からの位置関係情報に基づいて、ストップスイッチ(12)が作動したリールの停止時の表示絵柄があらかじめ決められた停止絵柄となるようなタイミングで励磁パルス停止信号をドライバー手段(5)に出力する。ドライバー手段(5)では該停止信号により励磁パルスの発生を停止してステッピングモータ(6)を停止せしめる。その結果、停止したリールの表示絵柄は、ストップスイッチ(12)の作動のタイミングとは無関係に乱数に基づいて決められた絵柄となる。」(第3頁右上欄第19行?右下欄第2行)
「本発明のスロットマシンの特徴は、以上の機能実現手段にさらにアタリの組合せの出る確率を特別に高くした絵柄組合せテーブル(以下、特別テーブルという)を別途用意し、その特別テーブルに切替える時期をリセット時に決定する手段を追加した点にある。」(第4頁右上欄第12?17行)

甲第17号証には、以下の事項が記載されている。
「この発明は、複数のドラムを一斉始動させた後、停止ボタンによりこれらを停止させた際、停止ライン上に並ぶ各ドラムの絵柄が所定の配列となるか否かによりゲームの勝負を決定するスロットマシンに関する。」(第1頁右欄第4?8行)
「周面に複数個の絵柄が配列された複数のドラムと、それぞれのドラムを駆動するための駆動手段と、駆動手段が始動する毎に特定の入賞の条件を向上させるための抽選を行う抽選手段と、抽選結果に応じて前記駆動手段の動作を制御して特定の入賞の条件を向上させるための入賞条件向上手段と、抽選結果を遊戯者に報知する報知手段とを具備させることにした。」(第2頁右上欄第1?8行)
「特定の絵柄配列となったとき、「ボーナスゲーム」の権利が与えられて、高配当のメダルの払い出しが期待できるようになっている。」(第2頁右下欄第9?12行)
「コンピュータ回路は、各ドラムが一斉回転する毎に前記ボーナスゲームについての抽選を実行する手段と、抽選が当たったとき各パルスモータの動作を制御してボーナスゲームにかかる前記絵柄配列が有効な停止ライン上に揃い易いように入賞の条件を向上させる手段とを構成するものであって、具体的には、第5図および第6図に、制御手順が示してある。第5図において、今遊戯者がメダル投入口4ヘメダルを投入して、始動レバー6を操作すると、ステップ1(図中、「ST1」で示す)およびステップ2の各判定が“YES”であり、3個のドラム1a、1b、1cが一斉回転する(ステップ3)。この段階で、前記の抽選が実施されて、抽選が当たると、ステップ4が“YES”となり、抽選結果表示ランプ30が点灯すると共に、音声発生部23が所定の効果音を発して、遊戯者に抽選の当ったことが報知される。そして遊戯者が3個の停止ボタン5をランダムに押操作すると、抽選が当っていないときは本来の通常の停止制御が、一方抽選が当ったときは、後述する第6図の停止制御が、それぞれ実行されて、各ドラム1a、1b、1cが順次停止し、(ステップ6?8)、絵柄表示部3には各ドラムにつき3駒分の絵柄が並ぶものである。」(第3頁左下欄第1行?右下欄第5行、第5図)
「今メダルの投入および始動レバー6の操作によりドラム1a、1b、1cが一斉始動すると、まずCPU27はROM28に予め格納してある乱数テーブルより任意の乱数を取り込んで、抽選処理を開始する(ステップ21、22)。この抽選処理は、乱数値がRAM29にセット済の設定値と一致するか否かを判定し、もしこれが一致するとき、ボーナスゲームにかかる絵柄配列が生じ易いような停止制御を、各ドラムに対し与えるものである。」(第4頁左上第1?10行、第6図)

甲第18号証には、以下の事項が記載されている。
「本考案はスロットマシンに関し、更に詳しくは通常のゲームのほかに副次的ゲームが行なえるようにしたスロットマシンに関するものである。」(第2頁第6?8行)
「本考案においては、停止された複数個のリールの絵柄が特定の組み合わせになると、いわゆる通常のゲームとは異なる副次的ゲーム(以下、ボーナスゲームという)のチャンスが与えられるようにする。しかもこのボーナスゲームは通常のゲームよりも入賞率が高く設定されると共に、このボーナスゲームの実行可能回数の決定もゲームの一要素に盛り込むことによって、極めてゲーム性に富んだものとなる。」(第2頁第20行?第3頁第8行)
「コイン投人後にスタートレバー3が操作されると、全リール4、5、6は各リール毎に設けたパルスモータによって一斉に回転され、それぞれのリール窓7、8、9内で各リールの絵柄は順次変化し、絵柄の識別は不可能となる。これと同時に、コイン投入口1へのコイン投入は禁止されるべく、図示せぬロック用コイルが作動し、コイン投入口1は閉じられ、またスタートレバー3の再操作もロックされる。こうして所定時間経過すると、スロットマシン本体内に設けられた乱数発生器によるランダム値に応じて第1リール4、第2リール5が所定の間隔で順次停止される。同時に第3リール6の任意停止が可能となり、第3リール6のストップボタン10の操作許可表示11(例えばランプの点灯)がなされる。」(第4頁第7行?第5頁第1行)
「乱数発生部34は、2個の乱数値をサンプリングし、この乱数値に応じてモータ制御部25を制御する。すなわち、パルスモータ31の始動後約2秒経過すると、乱数発生部34からサンプリングした乱数値に応じてパルスモータ31を停止させる。更に、約1.5秒経過すると、もう1つの乱数値に応じてパルスモータ32が停止する。このようにして第1及び第2リール3、4が順次停止する。前記第2リール4の停止と同時に、モータ制御部26は、パルスモータ33の回転を低速(高速時の1/8)に切り換える。このパルスモータ33が低速回転になると、第1図に示すストップボタン操作許可表示11が点灯する。遊戯者は、第3リール5の絵柄を見ながら、入賞絵柄の配列が完成されるように、ストップボタン10を押す。このストップボタン10が押されると、モータ制御部26は周波数の低いパルスをモータ駆動回路30へ送るのを停止する。この結果、第3リール5の回転が停止する。」(第9頁第10行?第10頁第9行)

甲第19号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明はスロットマシンのリール停止機構に関する。」(第1頁右下欄第3?4行)
「スロットマシンの複数のリールを停止せしめる際、リールの絵柄の組合せをランダムに決定するリール停止機構に関する。スロットマシンはリールの絵柄の組合せがランダムになるのがもっとも好ましく、種々のタイプのリール停止機構が提案され、実施されている。」(第1頁右下欄第4?11行)
「ハンドル(1)を引き3個のリール(2a)、(2b)、(2c)を回転せしめ、自動的または停止ボタン(3a)、(3b)、(3c)の押圧により3個のリールを順次停止せしめて絵柄の組合せにより所定の数のメダルを排出する。第2図に本発明のリール停止機構の一実施例のブロックダイヤグラムを示す。ハンドル(2)が引かれると、スイッチ(4)がONとなり信号を発するが、この信号はチャタリングやノイズを含んでいるため波形成形部(5)で波形を成形したのちタイマ(6)に送られる。スイッチ(4)と波形成形部(5)とタイマ(6)とはハンドル信号検出部(7)を構成している。タイマ(6)の出力信号は乱数発生回路(8)のラッチ(9)にデータラッチ信号として入力される。一方ラッチ(9)には、発振器(10)のフリーランにより常にフリーランの状態になっているカウンタ(11)からの高速で更新されているデータ信号が入力されている。このようにフリーランの状態のデータが常に入力されているラッチ(9)に前記タイマ(6)からのハンドル信号が入力すると、ハンドル信号の入力時のデータに基づく乱数情報(配当テーブルメモリ(13)のアドレス情報)がラッチ(9)から比較演算部(12)に送られる。比較演算部(12)は、絵柄の組合せおよびそれに対応する配当のテーブルがストアされている配当テーブルメモリ(13)から、乱数情報に基づくアドレスにストアされている絵柄の組合せおよび配当を読み取る。」(第2頁右上欄第1行?左下欄第9行)
「ディスク(14)が回転し始めるとフォトセンサ(15a)、(15b)により通過した絵柄のコマ数だけコマパルス信号が生ずる。このコマパルス信号は絵柄位置検出部(20)の波形成形部(21)に送られ波形が成形されたのち、カウンタ(22)に入力される。一方、基準孔(19)がフォトセンサ(16a)、(16b)を通過するごとに基準パルス信号が生じ、波形成形部(23)に送られ波形を成形したのちカウンタ(22)に入力される。カウンタ(22)では基準パルス信号が入力されるごとにコマパルス信号を零に戻す。したがってカウンタ(22)からの出力には現在フォトセンサ(15a)、(15b)を通過している絵柄が基準の絵柄から何番目であるかという絵柄位置情報が含まれている。この絵柄情報は前記比較演算部(12)に送られる。比較演算部(12)では前記乱数によりランダムに決定された絵柄の組合せ情報と絵柄位置検出部(20)からの現在位置情報とを比較演算し、リール停止位置情報をリール停止部(24)のダウンカウンタ(25)に出力する。リール停止位置情報は、リールを所定回数回転させたのち絵柄表示位置から所定のコマ数以内に目的とする絵柄が入ったときに出力される。ダウンカウンタ(25)では入力されたリール停止位置情報をフォトセンサ(15b)でえられる1コマごとのカウント信号によりカウントダウンする。カウントダウンされた信号はコンパレータ(27)に送られ、コンパレータ(27)はその内容が零になったときタイマ(28)を介してソレノイド(29)に停止信号を送り、リールを目的とする絵柄が表示される位置で停止せしめる。」(第2頁右下欄第4行?第3頁左上欄第14行)

甲第20号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明は電動型スロットマシンの絵柄停止位置制御装置に関する。」(第2頁右上欄第11?12行)
「電動型スロットマシンは、スタートスイッチの作動により周囲に多数の絵柄が表示されている3本のリールをステッピングモータで回転駆動し」(第2頁右上欄第15?18行)
「乱数発生手段(a)では、スタートスイッチ(1)の作動信号が入力されると乱数を通常の手段により発生せしめる。発生せしめる乱数の数は、後述するごとく絵柄組合せテーブルメモリ(4)の記憶内容によって1個または3個である。発生した乱数は停止絵柄情報読取手段(b)に送られ、種々の絵柄の組合せまたは種々の絵柄が記憶されている絵柄組合せテーブルメモリ(4)から前記乱数に基づいてランダムに停止絵柄の組合せを読取り、決定する。絵柄組合せテーブルメモリ(4)の内容は、前記のごとく絵柄の組合せそのものであってもよいし、絵柄自体であってもよい。絵柄の組合せを記憶しておくばあいは、すべての絵柄の組合せを記憶させてもよいし、メダルの払出しを受けられる組合せ(以下、アタリの組合せという)とメダルの払出しを受けられない組合せ(以下、ハズレの組合せという)とを適当な数ずつ記憶させてもよい。後者のばあいは、アタリの組合せの数とハズレの組合せの数とを適宜調整することにより、アタリの回数を制御することが可能になる。なお、絵柄の組合せを記憶させておくばあいには、乱数発生手段(a)で発生せしめる乱数は1つでよい。一方、絵柄自体を記憶させておくばあいでは、各リールの表示絵柄に対応した絵柄が記憶されている3つのテーブルを用いてもよいし、各絵柄ごとに個数を適宜選定して同種の絵柄を1個ないし複数個記憶させておいてもよい。後者のばあいはテーブルは1つでよく、同じテーブルから3回絵柄を読取る。なお、絵柄自体を記憶させておくばあいには、3つの乱数が必要になる。」(第2頁右下欄第8行?第3頁左上欄第20行)
「かくして停止絵柄情報読取手段(b)で決定された停止絵柄情報は停止絵柄位置情報発生手段(c)に送られ、リールに表示されている絵柄の位置情報に変換されて比較手段(d)に送られる。比較手段(d)には、各リールにおける停止絵柄位置情報と表示絵柄位置検出手段(6)から常時送られてくる各リールの現在の表示絵柄位置情報とストップスイッチ(5)の作動信号が入力される。比較手段(d)では1個のストップスイッチ(5)から作動信号が入力されると、そのリールの現在の表示絵柄位置情報とそのリールの停止絵柄位置情報とを比較して両者の位置関係情報をタイミング手段(e)に出力する。タイミング手段(e)では、比較手段(d)からの位置関係情報に基づいて、ストップスイッチ(5)が作動したリールの停止時の表示絵柄があらかじめ決められた停止絵柄となるようなタイミングで励磁パルス停止信号をドライバー手段(2)に出力する。ドライバー手段(2)では該停止信号により励磁パルスの発生を停止してステッピングモータ(3)を停止せしめる。その結果、停止したリールの表示絵柄は、ストップスイッチ(5)の作動のタイミングとは無関係に乱数に基づいて決められた絵柄となる。」(第3頁右上欄第1行?左下欄第4行)
「1本のリールには通常15?25個(絵柄の種類は2?10種)の絵柄が表示されている。」(第3頁右下欄第15?17行)

甲第21号証には、以下の事項が記載されている。
「XXではビッグチャンスかレギュラーボーナスの前兆に入ると、スタートレバーを叩いたとき、1回だけ、リールが一瞬遅れてスタートするという特性がある。この遅れは3本のリール何れにも生じるが、とりわけ左リールの遅れが大きい。遅れは100%の前兆現象なので、これを知らないと、前兆に入っているのにみすみす台をあけ渡すことにもなりかねない。遅れを知らない人は、次の要領で、それを見分ける目を養うことだ。通常の場合、リールは、レバーを叩くと同時にスタートする。ところが、遅れがあるときは、叩いた瞬間と、リールのスタートとのタイミングが、約0.1秒くらいズレるのだ。」(106頁第3段?第4段)
「遅れがあったら、その周で「スイカ」か「BAR」を有効ライン上に目押しすることだ。レギュラーボーナスがきている場合は一発でそろう。また、このとき最後の1個が有効ラインの1つまたは2つ上にとまれば、ビッグチャンスがきていると判断できる。ただし、その場合は、「7」が揃うまでにまだ時間がかかる。さらに1000円強(51?54枚)のコインを投入したところで、払い出し枚数14?15枚相当の小役が集中的に4?6回続き、その直後に目押しをすれば、「7」が一発でそろう。この「遅れ」から「小役集中」までに投入するコイン枚数(51?54枚)とは、「マシン側に吸い取られる枚数」という意味だ。だから、途中で小役がそろったりすると、その払い出し枚数分のコインを再びマシン側に奪い返されることになる。「小役の集中」が、それだけ遅れるというわけだ。」(106頁第4段?107頁第2段)
「ほかの客がコインをつぎ込んでくれたことで「遅れ」が近々きそうだと思える台」(107頁第3段)


そして、参考例1?8は、請求人が「保留玉」に関する周知技術を示すために提示したものであって、「始動入賞領域に打玉が入賞すればこれを「保留玉」として記憶しておく「保留玉」機」が記載されていると認められる。また、参考例9?14はFIFO技術が周知技術であることを示すために提示したものである。

(2)引用発明について

甲第14号証において「ボーナスゲームとなるシンボルの組み合わせ」と「「7」-「7」-「7」の組み合わせ」の両者の表現があるが、両者は同じ意味を表すと認められるから、簡単のため後者の表現に統一する。
よって、請求人が提示した甲第14号証の記載事項を参酌すれば、甲第14号証には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「各リール上にシンボルが配列され、メダル投入口2から所定枚数のメダルを投入し、スタートレバー3を操作することによってリール4?6が回転し、ゲームが開始され、遊技者が任意のタイミングで各リールごとに設けられたストップボタン11?13を操作してゆくと、リール4?6がその都度停止され、そして、観察窓7?9から観察される各リール相互間のシンボルの組み合わせが、投入されたメダルの枚数によって有効化された入賞ライン上で、所定の組み合わせになっていると、入賞の種類に応じた枚数のメダルが受け皿14に払い出され、「7」-「7」-「7」の組み合わせであるときには、規定枚数のメダルが払い出された後、ボーナスゲームが開始されるスロットマシンであって、
スタートレバー3が操作された時点を基準にして、一定時間後に、乱数発生回路35から発生される乱数値を、乱数値サンプリング回路36によりサンプリングし、サンプリングされた乱数値は、カウンタ37にストアされ、
リクエスト信号発生回路38は、こうして得られた乱数値をROM39のデータを比較し、一定範囲内のときにはリクエスト信号を出力し、
前記リクエスト信号発生回路38から前記リクエスト信号が出力されると、各リール4?6の駆動を制御するモータ制御回路40?42のそれぞれは、リール4?6がシンボル「7」を表示した位置で停止させるようにモータM1?M3を制御し、
前記リクエスト信号発生回路38から前記リクエスト信号が発生されたときには、表示ランプ駆動回路55に駆動信号が出力され、この結果、配当パネル15内に設けられた表示ランプ16が点灯動作してリクエスト信号の発生、すなわち「7」-「7」-「7」の組み合わせが得やすいようにリール4?6が停止制御される状態になっていることを表示し、
リクエスト信号が発生されたときには、リールの回転速度を低下させるようにするスロットマシン。」

(3)対比

ここで、本件特許発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「シンボル」は、複数種類のものからなることは自明であるから、本件特許発明の「複数種類の識別情報」に相当する。
引用発明のリールの「回転」及び「停止」は本件特許発明の「可変表示」に相当するから、引用発明の「リール」は本件特許発明「可変表示装置」に相当する。
引用発明における、入賞ライン上でのリール相互間の「シンボルの組み合わせ」とは、本件特許発明の「表示結果」に相当し、引用発明はシンボルの「所定の組み合わせ」として「「7」-「7」-「7」の組み合わせ」もさらに備え、そのときには「ボーナスゲームが開始される」ものであるから、引用発明における「「7」-「7」-「7」の組み合わせ」とは本件特許発明の「特定の識別情報」に、引用発明における「ボーナスゲームが開始される」とは本件特許発明の「遊技者に有利な状態に制御される」点に相当するものである。
引用発明の「前記リクエスト信号発生回路38から前記リクエスト信号が出力されると、…リール4?6がシンボル「7」を表示した位置で停止させるようにモータM1?M3を制御し、」において、シンボル「7」が表示されるということは「表示結果」であり、リクエスト信号の出力の有無によってシンボル「7」が表示されるか否か「決定」されるということができるから、引用発明の「リクエスト信号」は本件特許発明の「表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データ」に相当し、引用発明の「リクエスト信号発生回路38」は「表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段」に相当する。

また引用発明について次の点も云える。
引用発明の「スロットマシン」と本件特許発明の「パチンコ遊技機」とは、「遊技機」である点で共通している。
引用発明において「前記リクエスト信号発生回路38から前記リクエスト信号が出力されると、各リール4?6の駆動を制御するモータ制御回路40?42のそれぞれは、リール4?6がシンボル「7」を表示した位置で停止させるようにモータM1?M3を制御し」という点については、リールの回転を開始した後にリクエスト信号に応じてリールを停止させる制御を行って表示結果を導出表示させるのであるから、引用発明のこの制御は、本件特許発明の「前記可変表示装置を可変開始させた後前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御」であると云え、引用発明の「モータ制御回路40?42」は本件特許発明の「可変表示制御手段」に相当する。
また、引用発明において「前記リクエスト信号発生回路38から前記リクエスト信号が発生されたときには、表示ランプ駆動回路55に駆動信号が出力され、この結果、配当パネル15内に設けられた表示ランプ16が点灯動作してリクエスト信号の発生、すなわち「7」-「7」-「7」の組み合わせが得やすいようにリール4?6が停止制御される状態になっていることを表示する」ものであり、また「リクエスト信号が発生されたときには、リールの回転速度を低下させるようにする」ものであるから、ここで「表示ランプ16」の「点灯動作」や「リールの回転速度」の「低下」は、リクエスト信号が発生した場合に、そのリールの回転停止前に、これから「7」-「7」-「7」の組み合わせが表示される可能性があることを示すものである。そうすると、引用発明の「表示ランプ16の点灯動作」や「リールの回転速度の低下」は、本件特許発明の「前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものである場合に該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行うための事前報知手段」に相当するものである。

よって、本件特許発明と引用発明とは
「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報となった場合に遊技者に有利な状態に制御される遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段と、
前記可変表示装置を可変開始させた後前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行う可変表示制御手段と、
前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものである場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行うための事前報知手段とを含む、遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「遊技機」について、本件特許発明は「パチンコ遊技機」であり、引用発明は「スロットマシン」である点。そして、本件特許発明は「打玉の始動領域への入賞により」可変表示を行うのに対して、引用発明は、スタートレバー3及びストップボタン11?13の操作に基づいて可変表示を行うものである点。また、「表示結果決定用データ」について、本件特許発明は「打玉」が「始動入賞領域へ入賞」したときに「記憶」又は「生成」されるのに対して、引用発明は「スタートレバー3が操作された時点を基準」にして乱数値をサンプリングし、これに基づきリクエスト信号を出力するものである点。

[相違点2]
本件特許発明は、「表示結果決定用データ生成手段」が、前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを「打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から」表示結果決定用データを生成可能なものであるのに対して、引用発明においては、「表示結果決定用データ生成手段」についてかかる構成がない点。

[相違点3]
本件特許発明は、「可変表示制御手段」が、「前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう」のに対して、引用発明においては「可変表示制御手段」についてかかる構成がない点。

[相違点4]
本件特許発明は、「事前報知手段」が、前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、かつ「該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に」「前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合」に、「前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示」において遊技者に報知する事前報知を行うものを含むのに対して、引用発明においては「事前報知手段」についてかかる構成がない点。

(4)相違点についての検討

[相違点1について]
相違点1として挙げた構成の相違は、技術常識を踏まえれば、それぞれパチンコ遊技機又はスロットマシンが当然備える基本的構成に伴う相違であるから、要は、相違点1とは、「パチンコ遊技機」と「スロットマシン」との相違に他ならない。
そして、パチンコ遊技機とスロットマシンとは、遊技場において遊技に供される遊技機として両者共に広く使用されているものであり、多くの共通技術を有しているから、一方の技術を他方に転用することは、何らかの阻害要因(例えば、請求人が主張するような「独立した特有の技術」である等。)がない限り当業者にとって当然検討すべき事項であるから、相違点1を当業者にとって想到困難とする理由がない。
よって、相違点1は当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点2,4について]

相違点2,4については、以下まとめて検討する。

甲第15号証には、「このようにシンボルマークをチェックして、すでにセットアップされたヒットリクエストに対応するシンボルマークの組み合わせを得るのに必要なシンボルマークがその5個のチェック範囲内にあればそこでリールを停止させることになる」、「P14のストップコントロール処理では、すでに得られているヒットリクエストを得るためのシンボルマークが、ストップボタンの操作時に前記した4個の範囲内に存在するかコードナンバーに基いてを判別し、存在する場合にはさらに何パルスだけモータに送り出せばよいかを算出する」といった記載があるから、ストップボタンの停止時、つまりまだ可変表示結果が得られていない段階でヒットリクエストがすでに発生していることは明らかである。また、甲第15号証には「ヒットリクエストが発生されながらも入賞なしとなった場合にはそのヒットリクエストを次回のゲームまで保存するようにすればよい」という記載もあるから、ヒットリクエストの保存手段が記載されていることも明らかである。
しかし、甲第15号証は「任意時点でのゲーム開始後に特定の乱数値がサンプリングされ」るものであるから、可変表示の結果が出る以前にヒットリクエストが記憶されることが明らかであったとしても、あくまでヒットリクエストはそのゲーム開始後にしか発生しないから、甲第15号証には、そのゲームより前から結果を決定し、かつそれを記憶することは記載されていない。また、ヒットリクエストを保存することに関しても、当該保存手段は、その回のゲームにおいて発生した大ヒットのヒットリクエストについて、その回に入賞がなかった場合に次のゲームまで保存するというものであるから、すなわちヒットリクエストが発生したゲームにおいて入賞があった場合は次のゲームまで保存されるものではないから、大ヒットとなるゲームの「数ゲーム前」の段階から当該ヒットリクエストが生成されるものではない。
また、甲第15号証には「複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておく」ことに関する記載は全く存在しない。
よって、引用発明及び甲第15号証に基づき、大ヒットのヒットリクエストを数ゲーム前の段階で記憶させること、すなわち「当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能」であること、及び「複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておく」ことは想定できないから、相違点2について当業者が容易に想到できたとすることはできない。

甲第15号証における上記保存手段は、その回のゲームで大ヒットに入賞しなかった(図柄が揃わなかった)場合にそのヒットリクエストを持ち越すものであるから、その回のゲームはそもそも「大ヒットとなるゲーム」なのであって、結果的にハズレとはなったとしても、元々「ハズレとなるゲーム」ではない。
とすれば、引用発明に甲第15号証を適用して、大ヒットリクエストが生成されたものの結果的にハズレとなったゲームにおいて事前報知(引用発明における「表示ランプ16の点灯動作」又は「リールの回転速度の低下」)を行ったとしても、そのゲームはそもそも「当該表示結果(大当り)を導出表示するための可変表示」に該当するものであって、そして本件特許発明のような「該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に…データが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合」に該当するものではない。
また、甲第15号証には「前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータ(が前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合)」に関する記載は全く存在せず、「前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示」において事前報知を行うことに関する記載は記載は全く存在しない。すなわち、「特定エリアデータ」に基づいた可変表示において事前報知を行うことは、記載も示唆もない。
更に、本件特許発明は、「特定エリアデータ」に基づいた可変表示において、及び該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示において、2段階の事前報知を行うものであるが、この点についても甲第15号証には記載も示唆もない。
よって、相違点4についても、引用発明及び甲第15号証に基づき、当業者が容易に想到できるものではない。

また、請求人は、弁駁書において参考例1?8を提示すると共に保留玉機は周知であると主張している(弁駁書第19頁第23行?第21頁第9行)から検討すると、参考例1?8を例に示されるように、パチンコ遊技機において、遊技球がいわゆる始動口に入賞することによって可変表示が開始されるが、当該可変表示の進行とは関係なく遊技球を発射でき、そして可変表示の途中(可変表示が終了していない段階)で始動口に入賞した場合は、その入賞を無効とするのではなく、所定個数までは、遊技球が始動口に入賞したことを記憶(いわゆる「始動記憶」)しておき、現在の可変表示の終了後当該始動記憶に基づき可変表示結果として導出することは、請求人が主張しているように周知技術であると認められる。
一方、引用発明のようなスロットマシンは、「メダル投入口2から所定枚数のメダルを投入し、スタートレバー3を操作することによってリール4?6が回転し、ゲームが開始され」るものであって、かつ「各リールごとに設けられたストップボタン11?13を操作してゆくと、リール4?6がその都度停止され」るものであるから、メダルを投入してスタートスイッチを操作することによって「1ゲーム」が開始され、リールが全て停止することによって「1ゲーム」が終了するものであって、すなわち1ゲームが終了しないと、次のゲームのメダルの投入やスタートスイッチの操作ができないものである。特に、引用発明は「スタートレバーの操作時点を基準にしてサンプリングされた乱数値が一定範囲内のときにリクエスト信号が出力され、そのゲームで出力されたリクエスト信号に基づいて、ボーナスゲームが得やすいように停止制御される状態」となるものであって、スタートレバーの操作時点を基準にして乱数値をサンプリングするのであるから、1ゲームの途中で次回以降のゲームのための乱数値をサンプリングすることを全く想定することができない。
すなわち、パチンコ遊技機の1回の可変表示と、スロットマシンの1ゲームは、その表示結果に応じて大当りか否かを決定する点で共通するものであるが、パチンコ遊技機とスロットマシンとではゲームの進行が全く異なっており、特にスロットマシンは1ゲーム1ゲームが独立し、それぞれにおいて抽選を行う点で、パチンコ遊技機の始動記憶に関する技術とは大きく異なっているから、スロットマシンにおいて、1ゲーム毎に抽選を行うのではなく数回前のゲームの段階から結果を決定し、かつそれを記憶する必要性も意義も見あたらず、パチンコ遊技機において可変表示結果を数回分保留しておくことが可能な保留玉機が周知であるとしても、その技術をスロットマシンである引用発明に適用する動機付けは存在しないというべきである。
よって、参考例1?8で示される周知技術の存在によって、相違点2,4について引用発明から当業者が容易に想到できるものではない。

さらに、請求人は甲第21号証にあるように、スロットマシンにおいても事前報知は周知であると主張している(弁駁書第22頁第10?13行)。
確かに、甲第21号証には次の旨の記載があることが認められる。
・ビッグチャンスの前兆に入るとリールのスタートタイミングのズレによって報知を行う。
・該報知によって、ビッグチャンスがきていると判断できる場合には、さらに1000円強(51?54枚)のコインを投入したところで、払い出し枚数14?15枚相当の小役が集中的に4?6回続き、その直後に「7」(ビッグチャンス)がでそろう。
ここで「さらに1000円強(51?54枚)のコインを投入」とは全てハズレでも17?18ゲームを要すると判断でき、さらに「払い出し枚数14?15枚相当の小役が集中的に4?6回続き」とあるからここでも4?6ゲームを要すると解される。とすれば、甲21号証から、ビッグチャンスの報知から20数ゲーム程度を要してからビッグチャンスが揃うという点を理解することはできる。
しかし、甲第21号証においては、実際に20数ゲーム後にビッグチャンスを揃えることを可能にするために、具体的にどのような制御を行っているのか不明である。そもそも、ビッグチャンスがそのゲームで揃うことをどのようにして決定しているのか全く不明であり、甲第21号証には「ほかの客がコインをつぎ込んでくれたことで「遅れ」が近々きそうだと思える台」という記載もあり、投入されたコイン数に応じて図柄が揃う(例えばリールの制御を変更する)ようなスロットマシンの可能性も想定され、引用発明のような1ゲーム毎に乱数で抽選を行ってヒットリクエスト信号を発生するスロットマシンとは異なる技術であるとすれば単純適用できない可能性もある。さらに、仮に甲第21号証が各ゲームにおいて何らかの抽選の形でビッグチャンスとなることを決定するデータを生成するとしても、実際に20数ゲーム前から当該データを記憶しているかどうかは、何ら記載がなく不明である(全ての条件が揃ってから、そのようなデータが作成されるかもしれない)。
すなわち、甲第21号証は、スロットマシンにおいて事前報知が周知であることを示すとしても、当該事前報知を行うための制御や方法について何ら具体的に記載されていないのであるから、甲第21号証が、可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを「当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から」表示結果決定用データを生成可能であることを示す証拠にはならない。よって、相違点2について、引用発明及び甲第21号証に基づいて、当業者が容易に想到できたものとすることはできない。
さらに、甲第21号証における「この「遅れ」から「小役集中」までに投入するコイン枚数(51?54枚)とは、「マシン側に吸い取られる枚数」という意味だ。だから、途中で小役がそろったりすると、その払い出し枚数分のコインを再びマシン側に奪い返さえることになる。「小役の集中」が、それだけ遅れるというわけだ。」という記載からも、事前報知(「遅れ」)時点ではビッグチャンスとなるゲームが具体的に特定されていない(変動し得る)こととなるから、事前報知時がビッグチャンスとなるゲームの前であって、特定のエリアデータに基づいた可変表示において行われるか不明である。そもそも甲第21号証にはその事前報知がハズレ時に行われるとの記載もないから、少なくとも「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示」において行われることを示すものではない。
すなわち、甲21号証は、スロットマシンにおいて事前報知が周知であることを示すとしても、どのような具体的手段によって事前報知を行うのかは全く開示されていないのであり、一方、本件特許発明においては、事前報知の数回後(実施例では1?4ゲーム後)に大当りとするために、「該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に」「前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合」と限定した上で、かつ「該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示」を特定して事前報知を行っているのであって、そのような相違点4に係る構成は甲第21号証に記載されておらず、さらにそのような具体的構成を、甲第21号証の記載に基づき、当業者が容易に想到できたとすることはできない。

さらに、請求人の挙げた他の甲16?20号証にも、相違点2,4について、これを示唆する記載は見あたらない。

なお、請求人は、「「事前報知」を具体的にいつ行なうかのゲーム上での選択的な細かな違いがあるだけであって、かかる違いは当業者の設計事項に過ぎない。」(弁駁書19頁第17?22行)と主張しているが、報知をいつ行うかは適宜決定できるとしても、上述したようにスロットマシンは独立した1ゲームで抽選を行うからパチンコ遊技機の始動記憶に関する技術とは大きく異なっており、すなわちスロットマシンにおいて数ゲーム前から抽選結果を決定し、かつそれを記憶する技術が請求人提示の各甲号証に記載がない以上、大当りの数ゲーム前に報知を行う具体的な方法が想定できないのであって、これを設計事項と認めることはできない。
以上により、本件特許発明の相違点2,4に係る構成について、引用発明、甲第15?21号証及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

[相違点3について]
「記憶装置内に格納されているデータを取り出す時に、先に格納されたデータから先に取り出す、すなわち、格納されているデータの古いものから順に取り出す」ということは、FIFO(First-In First-Out)方式として、参考例9?14にも示されるように、従来周知と認められる。
しかし、引用発明はスロットマシンであって、1ゲーム毎に抽選を行うものであって、抽選の結果を複数記憶する必要性も意義も見あたらないものであるから、たとえ、FIFO方式が周知技術であっても、抽選結果のデータを複数格納することのないスロットマシンである引用発明に周知技術を適用する動機付けは存在しないというべきである。
よって、参考例9?14で示される周知技術の存在によって、相違点3について引用発明から当業者が容易に想到できるものではない。
また、請求人の挙げた他の甲第15?21号証にも、相違点3についてこれを容易とすべき記載はない。

以上により、本件特許発明の相違点3に係る構成について、引用発明、甲第15?21号証及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

(5)進歩性についての検討のまとめ

以上によれば、相違点2,3,4については当業者が容易に想到できたものではないから、本件特許発明は、請求人の主張した証拠(甲第14?21号証及び参考例)によって、当業者が容易に想到できたとは認めることはできない。

第6.むすび

以上のとおりであるから、本件特許発明は、請求人の主張及び証拠方法によっては、特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、全額を請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パチンコ遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報となった場合に遊技者に有利な状態に制御されるパチンコ遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段と、
前記可変表示装置を可変開始させた後、前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段とを含むことを特徴とする、パチンコ遊技機。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、パチンコ遊技機に関し、詳しくは、打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報となった場合に遊技者に有利な状態に制御されるパチンコ遊技機に関する。
[従来の技術]
この種のパチンコ遊技機において、従来から一般的に知られているものに、たとえば、打玉が始動入賞領域に入賞する等の所定の条件が成立することに基づいて可変表示装置が可変表示され、所定時間の経過または所定時間の経過以前におけるストップスイッチの押圧操作等の予め定められた停止条件が成立したことに基づいて可変表示装置が停止制御され、その停止した可変表示装置の表示結果が予め定められた識別情報になっていることに基づいて所定個数の賞品玉の払出し等の所定の遊技価値を遊技者に与えるように構成されたものがあった。そしてこの可変表示装置により停止時の表示結果がいかなる識別情報になるかという期待感を遊技者に与えんとしていた。
[発明が解決しようとする課題]
しかし、この種の従来のパチンコ遊技機においては、可変表示装置による予め定められた特定の識別情報が何の前兆もなく表示されるため、可変表示装置の可変表示の停止以前から遊技者の期待感を盛り上げることがあまりできず、せっかく可変表示装置を設けたにもかかわらずその可変表示装置の面白さを十分に演出できないという欠点を有していた。
本発明は、かかる実情に鑑みて可変表示装置による可変表示の面白さを十分に演出し遊技者の期待感をより一層向上することのできるパチンコ遊技機を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明は、打玉の始動入賞領域への入賞により複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報となった場合に遊技者に有利な状態に制御されるパチンコ遊技機であって、
前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段と、
前記可変表示装置を可変開始させた後、前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段と、
打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段とを含むことを特徴とする。
[作用]
本発明によれば、表示結果決定用データ生成手段の働きにより、可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに複数のデータ記憶エリアのうちのいずれかのエリアに記憶しておくことにより、当該表示結果を導出表示するための可変表示の数回前の可変表示の段階から表示結果決定用データを生成することが可能となる。また、可変表示制御手段の働きにより、可変表示装置を可変開始させた後、前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうちで最も早い時期に生成された前記表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させるよう制御が行なわれる。また、事前報知手段の働きにより、打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知が行なわれる。
つまり、特定の識別情報が導出表示されることが、特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示において、および特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知が行なわれるため、特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示から遊技者の期待感が高まる。
[発明の実施例]
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図は、パチンコ遊技機を示す全体正面図である。パチンコ遊技機1の前面枠2には、扉保持枠3が設けられている。そして、パチンコ遊技機1の遊技盤11によって形成されている遊技領域13を開閉するガラス扉枠4と前面板5とが前記扉保持枠3に対し開閉自在に設けられている。パチンコ遊技機1の図示右下隅には、打球操作ハンドル9が設けられており、この打球操作ハンドル9を遊技者が操作することにより打球発射装置46(第2図参照)が作動し、パチンコ玉を1つずつ打球誘導レール12aと遊技領域形成レール12bとの間を通して前記遊技領域13に打込むように構成されている。
遊技領域13には、そのほぼ中央に可変表示装置14が設けられているとともに、その下方に可変入賞球装置20が配設されている。可変表示装置14には、複数種類の識別情報を可変表示できる識別情報表示部15a,15b,15cが設けられている。そして遊技領域13に形成されている始動入賞口27a,27b,27cのいずれかにパチンコ玉が入賞することにより最大4個まで始動入賞記憶が行なわれ、始動入賞記憶のあることに基づいて、識別情報表示部15a,15b,15cが可変表示を開始し、所定時間の経過または、所定時間の経過以前における遊技者による停止操作ボタン8の押圧操作に基づいて前記識別情報表示部15a,15b,15cが順次停止制御されるように構成されている。なお、可変表示が1回行なわれる毎に前記始動入賞記憶が1ずつ減算される。そして停止したときの可変表示装置14による表示結果が予め定める特定の組合わせ(特定の識別情報)になれば、大当りとなり可変入賞球装置20の開閉板22を開成して遊技者にとって有利となる第1の状態に駆動制御される。この可変入賞球装置20により、前記可変表示装置14の停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報になったことに基づいて所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段が構成されている。なお、この遊技価値付与手段は、可変表示装置14の表示結果が予め定められた特定の識別情報になったことに基づいて所定数の賞品玉や得点を直接遊技者に与えるものであってもよい。なお、前記可変表示装置14は、常時可変表示されパチンコ玉の始動入賞を条件としてその後所定時間の経過または遊技者の停止操作ボタン8の押圧操作に基づいて停止制御されるものであってもよい。この場合には、始動入賞に伴って可変表示の速さや明るさ等を切換えて可変表示態様を切換えて可変開始を報知することが望ましい。可変表示装置14には、可変入賞球装置20の開閉板22の開成回数を表示するための開成回数表示器18,パチンコ玉の始動入賞の記憶値(後述する)を表示するための始動入賞記憶表示器16a?16d,特定の組合わせが成立した当りラインを表示するための当りライン表示器17a?17fならびに入賞口19が設けられている。
可変入賞球装置20の前記第1の状態は、所定期間(たとえば30秒)が経過することまたは可変入賞球装置20内へ入賞したパチンコ玉が所定個数(たとえば10個)に達することのうちいずれか早い方の条件が成立することに基づいて終了し、開閉板22が閉成される。前記開閉板22の開成状態で開放される入賞空間21には、特定入賞口23が形成されており、可変入賞球装置20の第1の状態の期間中にパチンコ玉がその特定入賞口23に入賞すれば、前記第1の状態が更新されて繰返し継続制御される。その繰返し継続制御は、その回の第1の状態が終了するまで待って行なわれる。なお、パチンコ玉が特定入賞口23に入賞して繰返し継続条件が成立した時点で即座に前記繰返し継続制御を行なってもよい。この繰返し継続回数の上限は10回に設定されている。なお、前記入賞空間21に形成された特定入賞口23の左右両側には通常入賞口24a,24bが形成されている。可変入賞球装置20には、さらに可変入賞球装置20に入賞した入賞玉の個数を表示するための入賞個数表示器25ならびに通常の通過口26が設けられている。なお、本発明においては、前記可変入賞球装置20の開成時間(30秒)や入賞個数(10個)ならびに繰返し継続回数(10回)は前記実施例に限定されるものではない。さらに、前記可変入賞球装置20は、開閉板22が前方に開閉するものを示したが、本発明はこれに限らず、1対の開閉翼片が左右に開閉するものや1対の摺動片が左右に摺動するものでもよく、また駆動源としてソレノイドの代わりにモータを用いてもよい。
前記遊技領域13には、さらに通常の入賞口28a,28b,29a,29b,大当りの発生時等に点灯または点滅する遊技効果ランプ31a,31bが設けられている。また、遊技領域13に打込まれたパチンコ玉がいずれの入賞口にも入賞しなかった場合には、アウト玉としてアウト口30から回収される。図中、32a,32bは大当り時に点灯または点滅する遊技効果ランプである。
パチンコ玉の入賞に伴ってその入賞ごとに所定個数(たとえば13個)の賞品玉が打球供給皿6内に払出される。そしてこの打球供給皿6内のパチンコ玉が遊技者の打球操作ハンドル9の操作に基づいて1つずつ打球発射位置に供給されて遊技領域13内に弾発発射される。この打球供給皿6の下方には余剰玉受皿10が設けられており、前記打球供給皿6内のパチンコ玉が満杯となりそれ以上貯留できなくなった余剰玉がこの余剰球受皿10内に放出される。図中、7はスピーカであり、大当り発生時等に効果音を発生させたり異常事態発生時に警報音を発生したりするものである。また55は当り予告表示器であり、後述する表示結果決定用データ生成手段により生成された可変表示装置14の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データに基づいて、可変表示装置14によって特定の識別情報が表示される可能性が高まったことを遊技者に事前に報知するためのものである。なお、前記可変入賞球装置20は、可変表示装置14の表示結果が後述する中当りの識別情報になった場合にも所定時間(たとえば1.4秒)開成するが、この場合には前述した繰返し継続制御は行なわれない。
第2図は、パチンコ遊技機の一部内部構造を示す全体背面図である。パチンコ遊技機1の下方一側方には、打球発射装置46が設けられている。そして、前記第1図に示した打球操作ハンドル9を遊技者が操作することにより、この打球発射装置46が作動してパチンコ玉が1つずつ遊技領域13内に弾発発射されるように構成されている。遊技盤保持枠(図示せず)に対し遊技盤11と機構板40とが着脱自在に取付けられている。この遊技盤11裏面には入賞玉集合カバー体33が取付けられている。この入賞玉集合カバー体33は、遊技盤11前面側に形成されている各種入賞口から入賞した入賞玉を所定箇所に誘導して集合させるためのものである。この入賞玉集合カバー体33には中継端子板34が設けられている。この中継端子板34は、ゲーム制御に関する電気的装置と制御基板との接続を中継するものである。また図中45は制御基板ボックスであり、景品玉払出制御に関する電気的装置と制御基板との接続を中継するものであり、機構板40に設けられている。なお、41は開口である。前記入賞玉集合カバー体33のほぼ中央にはドラム機構収納ボックス35が設けられており、可変表示装置14の後部のドラム機構が収納される。前記入賞玉集合カバー体33によって集合された入賞玉は、入賞玉集合樋42によって入賞玉処理機構43に誘導される。そして入賞玉処理機構43により入賞玉を1つずつ処理し、その入賞玉毎に賞品玉払出機構44を作動させ、入賞玉1個につき所定個数(たとえば13個)の賞品玉を打球供給皿6(第1図参照)内に払出す。
図中、39a,39b,39cは、始動入賞口27a,27b,27c(第1図参照)にそれぞれ入賞した入賞玉を検出するための始動入賞玉検出器である。また36は可変入賞球装置20の開閉板22(第1図参照)を開閉させるためのソレノイドである。さらに、37は特定入賞玉検出器であり、特定入賞口23(第1図参照)に入賞した入賞玉を検出するためのものである。38は可変入賞球装置20の入賞空間21(第1図参照)に入賞した入賞玉を検出するための入賞個数検出器である。
第3図は、可変表示装置14の内部構造を示す斜視図である。ドラム機構収納部35内には、回転ドラム49a,49b,49cが設けられている。この回転ドラム49a,49b,49cは、それぞれに、ステッピングモータ48a,48b,48cにより回転されるように構成されている。前記ステッピングモータ48a?48cは、それぞれモータ取付板47a?47cに取付けられている。また、回転ドラム49a?49cには、ドラム位置を検出するための切欠部50a?50cがそれぞれに形成されている。ドラム機構収納ボックス35の前記切欠部50a?50cに対応する位置には、透孔51a?51cがそれぞれ形成され、その透孔51a?51cに、ドラム位置検出器(ホトトランジスタ)53a?53cがそれぞれ挿入される。このドラム位置検出器(ホトトランジスタ)53a?53cは、中継端子板54に固定される回路基板52に設けられている。そして、前記ドラム位置検出器53a?53cによりそれぞれの切欠部50a?50cを検出することにより、それぞれの回転ドラム49a?49cの回転角度が検出可能となる。
前記それぞれの回転ドラム49a?49cの外周面には、たとえば16個の識別情報が描かれており、5つの前記当りライン(第1図参照)上に特定の識別情報(本実施例では、「777」「FEVER FEVER FEVER」「BAR BAR BAR」「SANKYO SANKYO SANKYO」)のいずれかが揃えば大当り状態が発生する。この大当り状態が発生する識別情報の特定の組合わせは、大当りの組合わせが4種類ありかつ当りラインが5本あるために、4×5=20通りとなる。そして大当りの確率は、16種類の識別情報が描かれた回転ドラムが3個あるために、20/16^(3)=1/204.8となる。一方、前記可変入賞球装置20を比較的短い所定時間(たとえば1.4秒)開成できる中当りは、「7○7」「FEVER ○ FEVER」「BAR ○ BAR

16種類であり、16種類×5ライン=80通りとなる。そして中当りとなる確率は80/16^(3)=1/51.2である。
以上説明した可変表示装置14は、本実施例ではドラム型のものを示したが、本発明はこれに限らず、液晶などを用いたデジタル表示のものであってもよく、また、リーフ式あるいはエレクトロルミネセンスによる表示であってもよい。さらに、複数のランプやLEDを配設し、ランプやLEDを循環させて走行点灯させながら可変表示を行なういわゆるルーレット式のものであってもよい。また、円盤形の複数のディスクにそれぞれ複数種類の識別情報を書込み、それぞれのディスクの1カ所の識別情報を表示するようにしたディスク式のものであってもよい。さらに、ドラム型やデジタル式を組合わせるなど、前記種々の可変表示部材を2つ以上組合わせたものであってもよい。また、ベルト式やドットマトリックスでもよい。なお、本実施例では、表示部の数を3個としたが、1個または2個もしくは4個以上であってもよい。
第4図は、回転ドラム49a?49cの外周に描かれた図柄と図柄に対応する16進数ならびにステップカウンタのカウント値との対応を説明するための説明図である。回転ドラム49a?49cは図示反時計方向に回転する。そして、図示左側に情報表示部が形成され、遊技者が視認可能に構成されている。図中、

、図柄中心に対応するステップカウンタのカウント値であり、後述する制御に用いられる。
第5図は、停止図柄決定用カウンタ90を説明するための説明図である。この停止図柄決定用カウンタは、後述するマイクロコンピュータのRAM63(第7図参照)内に設けられている。この停止図柄決定用カウンタ90は、2バイトで構成され上位4ビットは使用しない。そして、D_(0)?D_(3)が左回転ドラムの図柄用のものであり、D_(4)?D_(7)が中央の回転ドラムの図柄用であり、D_(8)?D_(11)が右側の回転ドラムの図柄用である。そしてそれぞれに、000?FFF(第4図に示した16進数)まで、16^(3)=4096通りのすべての組合わせで停止制御可能に構成されている。なお、本実施例では有効ラインが5ラインあるが(第1図参照)、制御においてはすべて中央ラインの図柄のデータをもとにする。この停止図柄決定用カウンタ90は、後述する第8A図のステップS(以下単にSと記載する)8によりカウントアップされる。
第6図は、第4図に示した16進数と各回転ドラムの中央ラインに表示される図柄との対応を説明するための説明図である。なお、はずれ図柄の内容は省略している。
この図からもわかるように、たとえば、16進数がFの場合には、左の回転ドラムの図柄が7となり、中央の回転ドラムの図柄がSANKYOとなる。また16進数がEの場合には、右の回転ドラムの図柄がFEVERとなる。そしてこの図からもわかるように、第1図に示された「777」の表示の組合わせの停止図柄決定用カウンタの値を16進数で表わした場合には「ABF」となり、これを2進数で表わせば「101010111111」となる。一方、本発明に係るパチンコ遊技機では可変表示装置14によりリーチ目が表示される。このリーチ目とは、大当りが発生する可能性が高まったことを可変表示装置14により表示するためのものであり、たとえば「SANKYO 7 FEVER」のように表示される。リーチ目表示用の停止図柄データ(「SANKYO 7 FEVER」に対応)は、16進数で表わせば「EB4」となりこれを2進数で表わせば「111010110100」となる。後述するように、始動入賞時の停止図柄決定用カウンタの値が大当りまたは中当りに対応する値である場合には、停止図柄データ記憶エリアのエリア4(第9図参照)の停止図柄データを「EB4」に変更することにより、大当りまたは中当りの前兆としてリーチ目を表示する。
第7図は、パチンコ遊技機に使用される制御回路を示すブロック図である。
マイクロコンピュータ60は以下に述べるような各種機器の動作を制御する機能を有する。このため、マイクロコンピュータ60は、たとえば数チップのLSIで構成されており、その中には制御動作を所定の手順で実行することのできるMPU61と、MPUの動作プログラムデータを格納するROM62と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM63とを含む。
さらに、マイクロコンピュータ60は入力信号を受けてMPU61に入力データを与えるとともにMPU61からの出力データを受けて外部に出力する入出力回路64と、MPU61から音データを受けるサウンドジェネレータ65と、電源投入時にMPU61にリセットパルスを与えるパワーオンリセット回路66と、MPU61にクロック信号を与えるクロック発生回路67と、クロック発生回路67からのクロック信号を分周してリセットパルスを定期的(たとえば2msec毎)にMPU61に与えるパルス分周回路(定期リセット回路)68と、MPU61からのアドレスデータをデコードするアドレスデコード回路69とを含む。
アドレスデコード回路69はMPU61からのアドレスデータをデコードし、ROM62,RAM63,入出力回路64,サウンドジェネレータ65にそれぞれチップセレクト信号を与える。
なお、この実施例では、ROM62は、その内容の書き換え、すなわち、必要が生じた場合には、その中に格納されたMPU61のためのプログラムデータを変更することができるようにプログラマブルROMが用いられる。そして、MPU61がこのROM62内に格納されたプログラムデータに従って、かつ以下に述べる各制御信号の出力に応答して、種々の機器に対し制御信号を与える。
マイクロコンピュータ60は、入力信号として、次のような信号が与えられる。
まず、遊技者の停止操作ボタン8(第1図参照)の押圧操作に伴って停止操作検出器8aがONになり、それに応答して検出回路70から停止操作信号がマイクロコンピュータ60に与えられる。パチンコ玉の始動入賞に伴って始動入賞玉検出器39a?39cがONしたことに応答して、検出回路71から始動入賞玉検出信号がマイクロコンピュータ60に与えられる。パチンコ玉が特定入賞口23(第1図参照)に入賞したことに伴って特定入賞玉検出器37がONになり、それに応答して検出回路72から特定入賞玉検出信号がマイクロコンピュータ60に与えられる。パチンコ玉が可変入賞球装置20の入賞空間21内に入賞したことに伴って入賞個数検出器38がONになり、それに応答して検出回路73から入賞個数検出信号がマイクロコンピュータ60に与えられる。左ドラム位置検出器53a,中ドラム位置検出器53b,右ドラム位置検出器53cがそれぞれ切欠部50a?50cを検出することに伴って、検出回路74からそれぞれの検出信号がマイクロコンピュータ60に入力される。
次に、マイクロコンピュータ60は以下の回路および装置に制御信号を与える。まず、モータ駆動回路75を介してそれぞれのステッピングモータ48a?48cにモータ駆動用制御信号を与える。このモータ駆動回路75とマイクロコンピュータ60とにより、前記可変表示装置を可変開始させた後、後述する表示結果決定用データ生成手段により生成された前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データに従って決定された表示結果を導出表示させるように制御を行なう可変表示制御手段が構成されている。ソレノイド駆動回路76を介してソレノイド36にソレノイド励磁用制御信号を与える。ランプ駆動回路77を介してそれぞれのランプ31a,31b,32a,32bにランプ点灯用制御信号を与える。また、ランプ駆動回路77を介して当り予告表示器55に当り予告用制御信号を与える。LED駆動回路78を介して、始動入賞記憶表示器16a?16dに始動入賞記憶表示用制御信号を与えるとともに、当りライン表示器17a?17fに当りライン表示用制御信号を与える。セグメントLED駆動回路79を介して、入賞個数表示器25に入賞個数表示用制御信号を与えるとともに、開成回数表示器18に開成回数表示用制御信号を与える。さらに、アンプ80を介してスピーカ7に音発生用制御信号を与える。なお、前記各種機器および制御回路には電源回路81から所定の直流電源が供給される。
第8A図ないし第8D図は、第7図に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
第8A図はメインルーチンを示し、前記パルス分周回路68からたとえば2msec毎に発振されるリセットパルスが与えられるごとに1回実行される。第8A図に示したS3の処理内容は後述する第8B図に示すが、当り予告表示器以外のコントロール処理の詳細は省略する。また、S4の処理内容の詳細は省略する。またS6のスイッチチェック処理は、後述する第8D図?第8F図に示すが、特定入賞玉検出器37および入賞個数検出器38のチェック処理の詳細は省略する。次に、S8により、停止図柄決定用カウンタのカウントアップがなされるが、このS8の処理は、リセット待ち時間(S1?S7までのメイン処理が済んでからリセットパルスが入力されるまでの時間)の間繰返し行なわれる。なお、メイン処理(S1?S7)1回の処理時間が遊技状態によって変化するため、S8の処理回数は一定ではない。そしてS8の処理が1回なされるごとに停止図柄決定用カウンタが「+1」ずつカウントアップされる。
第8B図は、前記S3により定義されたサブルーチンプログラムのうち当り予告表示器のコントロールのためのプログラムを示すフローチャートである。まずS9により当り予告フラグがセットされているか否かの判断が行なわれる。この当り予告フラグは後述する第8C図のS22によりセットされるものである。そして当り予告フラグがセットされている場合にはS11に進み、当り予告表示データがセットされて、前記S3に従って当り予告表示器55(第1図参照)を点灯または点滅させて当り予告の表示が行なわれる。一方、当り予告フラグが未だにセットされていない場合または後述するS50により当り予告フラグがクリアされた場合には、S9によりNOの判断がなされてS10に進み、ランプをOFFにする制御がなされ、それを受けてS7に従って当り予告表示器55による当り予告が停止制御される。なお、前記当り予告表示器55による点灯または点滅表示に代えて、可変表示装置14の可変表示を特定の態様で行なわせる(たとえば可変表示の速さや明るさ等を変化させる)ものであってもよい。また、本実施例においては、前記事前報知手段により事前報知が行なわれた場合に、中当りや小当りとなって必ずしも大当りが発生しないものを示すが、一旦事前報知手段により事前報知が行なわれれば必ず大当りが発生するものであってもよい。
第8C図は前記S5により定義されたモータコントロール処理のプログラムを示すフローチャートである。S12ないしS14により、モータ減速フラグ,モータ定速フラグならびにモータ加速フラグのそれぞれがセットされているか否かの判断がなされ、それらすべてのフラグがセットされていない場合にはS15に進む。ここに、モータ減速フラグとは、回転ドラムを回転駆動するためのステッピングモータ48a?48c(第3図参照)をスムーズに減速させるためのものであり、後述するS29によりセットされS52によりクリアされるものである。モータ定速フラグとは、前記ステッピングモータを一定の速度で回転させるためのものであり、後述するS25によりセットされS29によりクリアされるものである。また、モータ加速フラグとは、前記ステッピングモータをスムーズに加速させるためのものであり、後述するS23によりセットされS25によりクリアされるものである。S15では、大当りフラグまたは中当りフラグがセットされているか否かの判断がなされる。この大当りフラグは後述するS48によりセットされ、中当りフラグは後述するS50によりセットされるものである。そして大当りフラグまはた中当りフラグが既にセットされている場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、未だにセットされていない場合にはステップS16に進み、始動記憶カウンタが「0」か否かの判断がなされ、「0」である場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが「0」でない場合にはS17に進み、外れインターバルタイマが終了したか否かの判断がなされる。この外れインターバルタイマは、可変表示装置の停止時の識別情報が外れの場合にそれを遊技者に認識させるために必要となる1秒程度の時間を計時するためのものであり、後述するS51によりセットされるものである。そしてこの外れインターバルタイマが未だに終了していない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了する。そしてこの外れインターバルタイマが終了しない間はこのサブルーチンプログラムが実行される毎にS17によりNOの判断がなされるが、外れインターバルタイマが終了した段階でS17によりYESの判断がなされてS18に進み、停止図柄データ記憶エリアのエリア1の停止図柄データを呼出して別エリアに記憶する処理がなされる(第9図参照)。たとえば、第9図に示す1個目始動入賞時に停止図柄データ記憶エリアのエリア1に記憶されている停止図柄データがbであり、S18の処理によりこのbの停止図柄データが別エリア(今回表示)に呼出されて記憶されるのである。この別エリアに記憶されるのは、今回の可変表示における予定停止図柄のデータということになる。なお、前記停止図柄データは、前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データの一例である。次にS19により始動記憶カウンタを1減算し、S20により停止図柄データ記憶エリアの記憶内容をそっくり8から1の方向に1つずつシフトさせる。たとえば、第9図に示す1個目始動入賞時の停止図柄データ記憶エリアの停止図柄データがこのS20の処理がなされると1回目可変表示時の停止図柄データ記憶エリアに記憶されるようなデータとなる。次にS21に進み、別エリアのデータが大当りまたは中当りの値か否かの判断がなされ、大当りまたは中当りの値である場合にはS22により当り予告フラグがセットされるが、大当りまたは中当りでない場合にはS23に進み、基本タイマのセット,モータ加速フラグのセットならびにモータ加速パターンデータのセットがなされる。この基本タイマは可変表示装置の自動停止の場合の基本時間を計時するためのものであり、たとえば4.9秒程度の時間を計時する。次にS44によりステッピングモータのステップ数をカウントする処理がなされてサブルーチンプログラムが終了する。前記S21により、後述する表示結果決定用データ生成手段により生成された表示結果決定用データが前記予め定められた特定の識別情報に対応するものであることを判定する特定識別情報判定手段が構成されている。
このモータコントロールのサブルーチンプログラムはたとえば2msec毎に1回実行されるのであり、前回の実行に際してS23により既にモータ加速フラグがセットされているために、今回の実行に際してはS14によりYESの判断がなされてS24に進む。S24では、モータ加速パターンデータが終了したか否かの判断がなされる。このモータ加速パターンデータは、ステッピングモータをスムーズに正確に加速させるための制御用データであり、そのモータ加速パターンデータが終了するまでステップS24によりNOの判断がなされ、S44に進みステップ数のカウントがなされてサブルーチンプログラムが終了する。そしてステッピングモータが十分加速されてモータ加速パターンデータが終了したと判断された場合にはS25に進み、モータ加速フラグがクリアされるとともにモータ定速フラグがセットされてS44に進む。
そしてそれ以降のモータコントロールサブルーチンプログラムが実行されるに際しては、既にS25によりモータ定速フラグがセットされているために、S13によりYESの判断がなされてS26に進み、基本タイマが終了したか否かの判断がなされる。この基本タイマは前記S23によりセットされているものであり、終了していない段階ではS27に進みストップフラグがセットされたか否かの判断がなされ、ストップフラグがセットされていない場合には前記S44に進む。このストップフラグは、遊技者の停止操作ボタン8(第1図参照)の押圧操作に基づいて後述するS72によりセットされるものである。そして、基本タイマが終了するかまたはその終了以前において遊技者が停止操作ボタン8(第1図参照)を押圧操作した場合にS28に進み、以降の可変表示装置の停止制御が行なわれる。まず、S28により図柄途中か否かの判断がなされる。このS28による判断は、停止条件の成立時に図柄が中心位置にない場合にその中心位置に図柄が来るまで待つためのものであり、図柄が中心位置に来た段階でNOの判断がなされてS29に進む。S29では、ストップフラグのクリア,モータ定速フラグのクリアならびにモータ減速フラグのセットの処理がなされる。そしてS30に進み、現在図柄と予定停止図柄とに基づいて各モータの減速パターンデータを選択してセットする。現在図柄とは、S30の処理が行なわれる段階で可変表示装置の中央表示ラインに位置する図柄であり、予定停止図柄とは前記S18により別エリアに記憶されている停止図柄データに従った停止図柄である。各ステッピングモータの減速パターンデータが選択セットされれば、各ステッピングモータが同時に減速パターンに入るように構成されている。また、この減速パターンデータは、各モータに対応して16通りずつ予め用意される。またどのような組合わせで停止させる場合であっても必ず左ドラム用のステッピングモータA、右ドラム用のステッピングモータC、中央のドラム用のステッピングモータBの順で停止するように設定されている。
前記S30によりそれぞれの各モータA,C,Bの減速パターンデータが選択されてセットされているため、次回のモータコントロールサブルーチンプログラムの実行に際しては、S12によりYESの判断がなされることとなる。そしてS31に進み、モータA減速パターンデータが終了したか否かの判断がなされ、終了していない場合にはS32に進み、今回終了するか否かの判断がなされ、今回終了しない場合にはS44に進む。そして今回終了する場合にはS33に進み、ステッピングモータAを停止制御させた後にS44に進む。そして次回のモータコントロールサブルーチンプログラムの実行に際しては、ステッピングモータAの減速パターンデータが終了するために、S31によりYESの判断がなされてS34に進み、モータCの減速パターンが終了したか否かの判断がなされ、未だに終了していない場合にはS35に進み、今回終了するか否かの判断がなされ、そして今回終了する場合にはS36に進み、モータCを停止制御してS37に進む。S37では、左右の停止図柄が大当り条件を満足しているか否かの判断がなされ、満足していない場合にはそのままS44に進むが、満足している場合にはS38に進み、リーチフラグをセットした後にS44に進む。このS37によりYESの判断がなされる場合の具体例としては、たとえば大当りの図柄の組合わせが「777」である場合に、左回転ドラムおよび右回転ドラムの停止時の図柄がともに「7」であった場合である。
次回のモータコントロールサブルーチンプログラムの実行に際しては、S34によりYESの判断がなされてS39に進むこととなり、モータB減速パターンが終了したか否かの判断がなされ、未だに終了していない場合にはS40に進み今回終了するか否かの判断がなされ、今回終了する場合にはS41に進み、リーチフラグがセットされているか否かの判断がなされる。リーチフラグがセットされていない場合にはS46に進みそのままステッピングモータBの停止制御がなされるが、前記S38によりリーチフラグがセットされている場合にはS42に進み、3回転増データのセットがなされてS44に進む。この3回転増データがセットされることにより、中央の回転ドラムが停止する前にゆっくりと通常より長い時間回転することになり、遊技者の期待感をより一層盛り上げる効果が期待できる。
次回のモータコントロールサブルーチンプログラムの実行に際しては、S39によりYESの判断がなされてS43に進み、3回転増データが終了したか否かの判断がなされる。そして未だに終了していない場合にはS43によりNOの判断がなされるのであり、3回転増データが終了するまでの間モータコントロールサブルーチンプログラムが実行される毎にS43によりNOの判断がされ続けることになる。そして3回転増データが終了した段階でS43によりYESの判断がなされてS45に進み、リーチフラグをクリアしてS46に進み、ステッピングモータBの停止制御がなされる。そしてS47に進み、左,中,右の停止図柄が大当り条件を満足しているか否かの判断がなされ、大当り条件を満足している場合にS48に進み、当り予告フラグをクリアし、大当りフラグをセットするとともに大当りインターバルタイマをセットする。この大当りインターバルタイマは、可変入賞球装置20(第1図参照)の開閉板22が開成するまでの待ち時間である。一方、左,中,右の停止図柄が大当り条件を満足していない場合にはS49に進み、左,中,右の停止図柄が中当り条件を満足しているか否かの判断がなされ、中当り条件を満足している場合にはS50に進み、当り予告フラグをクリアするとともに中当りフラグをセットしさらに中当りインターバルタイマがセットされる。また、大当り条件と中当り条件の両者ともに満足していない場合にはS51に進み、外れインターバルタイマがセットされる。また、大当りフラグか中当りフラグがセットされた場合には、それに基づいて可変入賞球装置の開閉板22(第1図参照)を開成制御するためにソレノイド36をコントロール処理するのであるが、そのソレノイドのコントロール処理のプログラムは省略する。このソレノイドのコントロール処理のプログラムにおいて、大当り制御または中当り制御が終了すれば前記S48またはS50によりセットされた大当りフラグや中当りフラグがクリアされる。次にS52に進み、モータ減速フラグがクリアされてサブルーチンプログラムが終了する。
第8D図は、前記S6で定義されたスイッチチェック処理のうちのスタートスイッチチェックのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S53により、スタートスイッチ(始動入賞玉検出器39a?39b)がONになっているか否かの判断がなされる。そしてパチンコ玉が始動入賞口27a?27cのいずれかに入賞すれば、S53よりYESの判断がなされS55に進み、スタートスイッチチェックカウンタが最大か否かの判断がなされる。このスタートスイッチチェックカウンタは、このスタートスイッチチェックサブルーチンプログラムが実行される毎にS56により「1」ずつ加算されるものであり、その最大値はたとえば「255」である。そして未だに最大に達していない場合にはS56に進み、チェックカウンタが1インクリメントされ、S57に進み、スタートスイッチチェックカウンタ=「3」であるか否かの判断がなされる。そして未だに「3」に達していない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、「3」に達した場合にはS58に進み、始動記憶カウンタ=「4」であるか否かの判断がなされる。始動記憶カウンタの上限値は「4」であるため、既にその上限値である「4」に達している場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するのであるが、未だに「4」に達していない場合にはS59に進み、始動入賞が発生したことに伴う始動入賞カウンタの「1」の加算処理がなされる。次にS60では、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値を停止図柄データとして始動記憶カウンタの値に対応する停止図柄データ記憶エリアに記憶する処理がなされる。たとえば、第9図に示すように、始動記憶カウンタが「1」の場合には、停止図柄データ記憶エリアのエリア5に現在のカウント値に対応する停止図柄データ「a」が記憶される。なお、始動記憶カウンタの値に対応する停止図柄データ記憶エリアとは、始動記憶カウンタの値が「1」の場合にはエリア5となり、始動記憶カウンタが「2」である場合にはエリア6となり、始動記憶カウンタが「3」である場合にはエリア7となり、始動記憶カウンタが「4」である場合にはエリア8となる。次にS61に進み、停止図柄データ記憶エリアのエリア1?4が空き状態であるか否かの判断がなされ、空き状態でない場合には直接S63に進むが、空き状態の場合にはS62に進む。つまり、始動記憶カウンタがたとえば「1」である場合に、そのカウント値に対応するエリア5に停止図柄データ「a」が記憶され、エリア1?4に全くデータが記憶されていない場合には、S61によりYESの判断がなされてS62に進み、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値に基づいて4回分の停止図柄データを決定しエリア1?4に記憶させる処理がなされる。このS62による処理がなされた状態が、第9図の1個目始動入賞時の停止図柄データ記憶エリアに示されている。
次にS63に進み、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値が大当りまたは中当りの値であるか否かの判断がなされる。この「現在のカウント値」とは前記S60で記憶した値と同じものである。そして大当りまたは中当りの値でないと判断された場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了する。一方、大当りまたは中当りの値になっている場合にはS64に進み、エリア4に記憶されている停止図柄データが大当りまたは中当りの値になっているか否かの判断がなされ、大当りまたは中当りの場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、大当りまたは中当りの値でない場合にはS65に進み、エリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更する処理がなされてサブルーチンプログラムが終了する。このS65による変更処理がなされた状態が、第9図のたとえば4個目始動入賞時におけるエリア4に示されている。この4個目始動

=「EB4」である。このS65による変更処理がなされるため、リーチ目が可変表示装置で表示されてから1?4回後の可変表示により大当りまたは中当りが発生することになる。前記S60により、前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段が構成されている。なお、本実施例では、始動入賞時に表示結果決定用データを生成するものを示したが、本発明はこれに限らず、可変表示の開始時や停止条件成立時に表示結果決定用データを生成するものであってもよい。また、本実施例では、表示結果決定用データ生成手段により生成される表示結果決定用データが可変表示装置により表示される識別情報自体に対応するものであったが、本発明はこれに限らず、識別情報に対応するものまでは生成されずに可変表示装置の表示結果の当り外れのみを決定するもの、つまり、可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報であるか否かのみに対応するものであってもよい。
前記S63により、前記表示結果決定用データ生成手段により生成された表示結果決定用データが前記予め定められた特定の識別情報に対応するものであることを判定する特定識別情報判定手段が構成されている。
なお、前記S65では、常にエリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更するように構成したが、これに代えて、エリア4に記憶されている停止図柄データが大当りまたは中当りの値であった場合にはエリア3に記憶されている停止図柄データをチェックし、大当りまたは中当りの値でない場合にそのエリア3をリーチ目表示部の停止図柄データに変更してもよく、また、エリア3のチェックの結果エリア3に記憶されている停止図柄データが大当りまたは中当りの値であった場合にはエリア2をチェックし、そのエリア2がさらに大当りまたは中当りの値であった場合にはさらにエリア1をチェックし、大当りまたは中当りでないエリアを捜してそのエリアをリーチ目表示用の停止図柄データに変更するように制御してもよい。
第8E図は、前記S6により定義されたスイッチチェック処理のうちストップスイッチチェックのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。遊技者が停止操作ボタン8(第1図参照)を押圧操作すれば、ストップスイッチがONになりステップS66によりYESの判断がなされてS68に進み、ストップスイッチカウンタが最大になっているか否かの判断がなされる。このストップスイッチカウンタは、このストップスイッチチェックサブルーチンプログラムが実行される毎にS69により「1」ずつ加算されるものであり、その最大値はたとえば「255」である。そしてストップスイッチチェックカウンタが未だに最大になっていない場合にはS69に進み、ストップスイッチチェックカウンタを「1」インクリメントし、S70に進む。S70では、ストップスイッチチェックカウンタ=「3」であるか否かの判断がなされ、未だに「3」になっていない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、「3」になっている場合にはS71に進み、モータ定速フラグがセットされているか否かの判断がなされる。このモータ定速フラグは、前記S25によりセットされS29によりクリアされるものである。そしてモータ定速フラグがセットされていない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、モータ定速フラグがセットされている場合にはS72に進み、ストップフラグをセットしてサブルーチンプログラムが終了する。モータ定速フラグがセットされていない場合すなわち既にモータが減速段階に入っている場合にストップフラグがセットされない理由は、既にステッピングモータが減速段階に入っているために遊技者が停止操作ボタン8を押圧操作したとしても遅すぎるためである。このS72によりセットされたストップフラグに基づいて前記S27によりYESの判断がなされて以降の可変表示装置の停止制御に移行する。一方、ストップスイッチがONでない場合にはS67に進み、ストップスイッチチェックカウンタをクリアしてサブルーチンプログラムが終了する。前記S70によりストップスイッチチェックカウンタが「3」に達して初めて以降のストップフラグがセットされるように制御する理由は、遊技場に発生したノイズ等によりストップスイッチが瞬間的にONになる場合があり、そのようなノイズによる誤動作に基づいてストップフラグをセットしないようにするために、ストップスイッチチェックサブルーチンプログラムが3回実行されて3回ともストップスイッチがONになっている場合にのみストップフラグをセットするように制御したのである。前記S66ないしS72ならびに前記S26およびS27により、前記可変表示装置の可変表示を停止するための予め定められた停止条件が成立したことに基づいて停止指令信号を発生する停止指令信号発生手段が構成されている。
第8F図は、前記S6により定義されたスイッチチェック処理のうちドラム位置スイッチチェックのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。まずS73により、ステップカウンタA=「96」であるか否かの判断がなされる。この「96」はステップカウンタの最大値である(第4図参照)。またステップカウンタBならびにステップカウンタCが「96」であるか否かの判断がそれぞれS76とS79によりなされる。そしてすべてのステップカウンタA,B,Cが「96」でない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了する。一方、ステップカウンタAが「96」である場合にはS74に進み、ドラム位置スイッチAがONであるか否かの判断がなされる。第3図および第4図に示すように、ステップカウンタAが最大値である「96」である場合には、ドラム位置スイッチA(ドラム位置検出器53a)がONになっているはずであり、もしONになっていないとすれば、ステッピングモータの故障か回転ドラムが不正に強制的に停止されたことが考えられるため、その場合にはS82に進みアラームフラグをセットしてサブルーチンプログラムが終了する。このアラームフラグのセットに従ってスピーカ7(第1図参照)等から警報音が発せられる。なお、ドラム位置スイッチBおよびドラム位置スイッチCに対しても同様にS77ならびにS80によりONになっているか否かの判断がなされてONになっていない場合にはS82に進みアラームフラグがセットされる。そして、S74によりYESの判断がなされた場合にはS75に進み、ステップカウンタAをクリアする。またステップカウンタBおよびステップカウンタCについても同様にS78とS81によりそれぞれクリアする。つまり、ステップカウンタが最大値である「96」に達すれば回転ドラムが1回転したことになるため、その時点でステップカウンタをクリアし、再び0からステップカウンタをカウントアップし始めるのである。
第9図は、始動記憶カウンタと停止図柄データ記憶エリアと別エリアとの記憶情報の関係を示す説明図である。
まず電源投入時においては、始動入賞が発生していないために始動記憶カウンタは「0」となっており、停止図柄データ記憶エリアおよび別エリアには何も記憶されていない状態である。そして、1個目の始動入賞に伴って始動記憶カウンタが「1」となり、それに基づいて停止図柄データ記憶エリアのエリア5に、現在の停止図柄決定用カウンタのカウント値に対応する停止図柄データ「a」が記憶される(S60参照)。そしてこの状態では停止図柄データ記憶エリアのエリア1?4が空き状態となっているために、S62に従って、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値に基づいて4回分の停止図柄データが決定されてエリア1?4に記憶される。この状態が1回目始動入賞時の行に示されている。次に1回目可変開始時においては、前記S18に従ってエリア1の停止図柄データ「b」が別エリアに呼出されるとともに、S20により停止図柄データ記憶エリアが1つずつシフトされる。その状態が1回目可変開始時の行に示されている。次に2個目始動入賞時においては、始動記憶カウンタの値が再び「1」となり、それに対応する停止図柄データ記憶エリアのエリア5に停止図柄決定用カウンタのカウント値に応じた停止図柄データ「f」が記憶される。さらに3個目始動入賞時においては、始動記憶カウンタの値が「2」となり、それに対応する停止図柄データ記憶エリアのエリア6に停止図柄データ「g」が記憶される。このように、始動入賞に伴って始動記憶カウンタが1ずつ加算され、その始動記憶カウンタのカウント値に応じた停止図柄データ記憶エリアのエリアに所定の停止図柄データが記憶され、可変表示装置の可変開始が行なわれる毎に停止図柄データ記憶エリアの記憶情報が1ずつ図示左方向にシフトされる。
次に、4回目始動入賞時において、始動記憶カウンタが「2」となっており、それに応じたエリア6に記憶される停止図柄データが大当りの停止図柄データ

置においてリーチ目の表示がなされる。次に、7個目始動入賞時において、始動記憶カウンタの値が「1」となっており、それに対応するエリア5の記憶される

れ、可変表示装置の可変表示の最中に当り予告表示器55(第1図参照)により当り予告がなされるとともに、その回の可変表示装置の停止時においては大当り目(たとえば「777」)の表示が行なわれる。

別エリアに記憶され、可変表示装置によりリーチ目が表示される。そして11回目の可変開始時においては、可変表示の最中に前記当り予告表示器55により当

別情報が表示される。なお、4回目始動入賞時および7回目始動入賞時においてそれぞれエリア4の停止図柄データ「f」,「j」をリーチ目の停止図柄データ

合にはリーチ目の変更は行なわれない(前記S64参照)。
次に、本発明の別実施例を説明する。
第10図は、前記第8A図のS6により定義されたスイッチチェック処理のうちスタートスイッチチェック処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。この第10図におけるS53ないしS59までの処理は前記第8D図に示したS53ないしS59の処理と同様であるため、説明の繰返しを省略する。S83により、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値が大当りまたは中当りの値であるか否かの判断がなされ、大当りまたは中当りでない場合にはS87に進み、始動記憶カウンタ≦記憶エリアカウンタの判断が行なわれる。この「記憶エリアカウンタ」は、第11図に示す停止図柄データ記憶エリアのうち既に停止図柄データが記憶されているエリアの個数である。そして、始動記憶カウンタが記憶エリアカウンタ以下である場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了する。なお、前記停止図柄データは、前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データの一例である。一方、パチンコ玉が始動入賞して始動記憶カウンタが「1」になった瞬間においては、始動入賞カウンタが「1」であり記憶エリアカウンタが「0」になっているため、S87によりNOの判断がなされてS88に進み、停止図柄データ記憶エリアの最下位空きエリアに停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値を停止図柄データとして記憶する処理がなされる。この処理がなされた状態が、たとえば第11図の1個目始動入賞時の行に示されている。次にS89に進み、記憶エリアカウンタを1インクリメントしてサブルーチンプログラムが終了する。
一方、停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値が大当りまたは中当りの値であった場合には、前記S83によりYESの判断がなされてS84に進み、記憶エリアカウンタ≧「4」の判断が行なわれる。そして、記憶エリアカウンタが「4」以上になっている場合には直接前記S88に進み、停止図柄データ記憶エリアの最下位空きエリアに停止図柄決定用カウンタの現在のカウント値つまり大当りまたは中当りの値を停止図柄データとして記憶する処理がなされる。前記S83により、後述の表示結果決定用データ生成手段により生成された表示結果決定用データが前記予め定められた特定の識別情報に対応するものであることを判別する特定識別情報判別手段が構成されている。一方、記憶エリアカウンタが「4」未満である場合には、S85に進み、停止図柄データ記憶エリアの空きエリアの下位から4回分の前兆パターン図柄データを記憶する処理がなされる。そしてS86により記憶エリアカウンタを「4」加算する処理がなされて前記S88に進む。前記S85による「前兆パターン図柄データ」は、大当りの発生の可能性が高まったことを遊技者に報知するための可変表示装置の図柄に関するデータ

お、この別実施例においては、前記第8C図に示したモータコントロールサブルーチンプログラムにおけるS19で、始動記憶カウンタを「-1」するとともに記憶エリアカウンタを「-1」する処理を行なうこととなる。
以上説明したように、この別実施例においては、始動記憶カウンタ≦記憶エリアカウンタである場合でかつ、始動入賞時の停止図柄決定用カウンタのカウント値が外れの値である場合(第11図のd?g,i,k?m)は、その外れの値が可変表示に用いられず、大当りまたは中当りの値でありかつ記憶エリアカウンタ

合(第11図のj)は、前兆パターン図柄データを作ることなく空きエリアに記憶する。前記S88により、前記可変表示装置の表示結果の決定に用いられる表示結果決定用データを生成可能な表示結果決定用データ生成手段が構成されている。なお、この別実施例においては、始動入賞時に表示結果決定用データを生成する実施例を示したが、本発明はこれに限らず、可変表示装置の可変開始時や停止条件成立時に表示結果決定用データを生成するものであってもよく、また、表示結果決定用データとして可変表示装置の具体的な識別情報に対応するものを示したが、本発明はこれに限らず、可変表示装置の表示結果の当り外れのみを決定するもの、つまり、可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の識別情報であるか否かのみに対応するものであってもよい。
第11図は、始動記憶カウンタ,記憶エリアカウンタ,停止図柄決定用カウンタ,停止図柄データ記憶エリアならびに別エリアにそれぞれ記憶されているデータの関係を示す説明図である。
まず、電源投入時においては始動入賞がまだ行なわれていないために、始動記憶カウンタが「0」となっており、停止図柄決定用カウンタ,停止図柄データ記憶エリアならびに別エリアのそれぞれには全くデータが記憶されていない状態である。そして停止図柄データ記憶エリアに情報が全く記憶されていないために記憶エリアカウンタの値は「0」となっている。この状態で、1個目の始動入賞時においては、始動記憶カウンタが「1」となり、この段階でS87によりNOの判断がなされてS88による記憶処理がなされ、停止図柄決定用カウンタの現在の値「a」が停止図柄データ記憶エリアの最下位空きエリアすなわちエリア1に記憶される。次に、1回目の可変表示開始時においては、第8C図に示した前記S18に従って「a」が別エリアに記憶されるとともに、前記S20に従って停止図柄データ記憶エリアの情報が図示左方向に1つシフトされる。次に、3回目始動入賞時のように、停止図柄決定用カウンタが大当りの停止図柄のカウント値

て、停止図柄データ記憶エリアの空きエリアの下位から4回分の前兆パターン図

される。次に、4回目始動入賞時においては、停止図柄決定用カウンタが「d」であったとしても、この「d」が外れの値でありかつ始動記憶カウンタ≦記憶エリアカウンタであるために、その停止図柄決定用カウンタの値「d」は何ら停止図柄データ記憶エリアに記憶されない。

記憶され、可変表示装置の停止時の図柄にこの前兆パターンの図柄が表示される

表示される。一方、8回目始動入賞時においては、停止図柄決定用カウンタが中

」未満であるため、前記S85に従って前兆パターン図柄データが停止図柄データ記憶エリアに記憶される。
次に、10回目始動入賞時においては、停止図柄決定用カウンタが中当りの値

あるためにS84によりYESの判断がなされ、S85による前兆パターン図柄データの記憶処理はなされない。なお、11回目可変開始時のように前兆パター

となり、必ずしも大当りが発生しない場合がある。
前兆パターン図柄の具体的例としては以下のようなものが考えられる。

ある場合には、

また、第11図に示すhの値が「196」(図柄 BAR ☆ BARが中央ラインに揃う)である場合には、

S21,S22ならびに前記S9,S11,S7に従って制御される当り予告表示器55により、さらには、前記S65に従ってリーチ目を表示する可変表示装置14により、打玉が前記始動入賞領域へ入賞したときに生成された前記表示結果決定用データが前記特定の識別情報に対応するものであり、該特定の識別情報に対応する表示結果決定用データが生成される前に前記複数のデータ記憶エリアに記憶されている表示結果決定用データのうち特定のデータ記憶エリアに記憶されている特定エリアデータが前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果を示す場合に、前記特定の識別情報が導出表示されることを、該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示のうち、前記特定エリアデータに基づいた前記特定の識別情報に対応するものでない表示結果となる可変表示において、および該特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知を行なうための事前報知手段が構成されている。前述した2つの実施例においては、前兆パターンとして或る定められた停止図柄で可変表示装置を停止させるように表示制御するものを示したが、本発明はこれに限らず専用の表示器によって前兆を可視表示させるか、それに代えてあるいはそれに加えて特有の音によって前兆を報知するようにしてもよい。また可変表示中以外のときに前兆を報知してもよい。さらに、可変表示装置の可変表示を特有の態様(たとえば明るさや速さを変化させる等)で行なわせることにより前兆を報知してもよい。さらに、前記2つの実施例においては、事前報知手段により報知が行なわれた場合に、必ず大当りが発生するのではなく、中当りや小当りとなり大当りが発生しない場合や、可変表示装置である定められた停止図柄で予告する場合において、偶然にその停止図柄になった場合のように全く大当りや中当りさらには小当りにならない場合が生ずるものを示した。しかし、本発明はこれに限らず、一旦事前報知手段により報知がなされた場合には、必ず大当りが発生するものであってもよい。また、中当りや小当りがなく大当りのみあるものであっもよい。また、前記2つの実施例においては、前兆報知手段を有するパチンコ遊技機を示したが、本発明はこれに限らず、前兆報知手段を有さないパチンコ遊技機であってもよい。その場合には、前記価値内容事前決定手段によって決定される価値内容を、前記可変表示の或る所定の回の可変表示中に決定しその同じ回の可変表示の停止時にその決定された価値内容に従った識別情報になるように可変表示装置を停止制御してもよい。また、前記可変表示装置の停止順序は実施例に示したもの以外であってもよく、またそれぞれの回転ドラムが同時あるいはほぼ同時に停止するものであってもよい。
[発明の効果]
本発明は、特定の識別情報が導出表示されることが、特定の識別情報が導出表示される回の可変表示が行なわれる前の回までの可変表示において、および特定の識別情報が導出表示される回の可変表示における当該特定の識別情報が導出表示される以前において遊技者に報知する事前報知が行なわれるため、遊技者の期待感を高めることができ、可変表示装置の面白さを十分に演出し遊技者の期待感をより一層向上することのできるパチンコ遊技機を提供し得るに至った。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係るパチンコ遊技機を示す全体正面図である。
第2図は、パチンコ遊技機の一部内部構造を示す全体背面図である。
第3図は、可変表示装置の内部構造を示す斜視図である。
第4図は、回転ドラムの図柄に対応する16進数と図柄中心に対応するステップカウンタのカウント値との対応を示す説明図である。
第5図は、停止図柄決定用カウンタを説明するための説明図である。
第6図は、図柄に対応する16進数とそれぞれの回転ドラムの図柄との対応を説明するための説明図である。
第7図は、パチンコ遊技機に使用される制御回路のブロック図である。
第8A図ないし第8F図は、前記第7図に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
第9図は、始動記憶カウンタと停止図柄データ記憶エリアと別エリアとのそれぞれの記憶データの関係を説明するための説明図である。
第10図は別実施例を示し、スタートスイッチチェックサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
第11図は別実施例を示し、始動記憶カウンタ,停止図柄決定用カウンタ,記憶エリアカウンタ,停止図柄データ記憶エリアならびに別エリアの各記憶データの関係を説明するための説明図である。
図中、14は可変表示装置、8は停止操作ボタン、55は当り予告表示器、20は可変入賞球装置、60はマイクロコンピュータ、90は停止図柄決定用カウンタである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-10-30 
結審通知日 2009-11-05 
審決日 2009-11-30 
出願番号 特願平1-210414
審決分類 P 1 113・ 841- YA (A63F)
P 1 113・ 113- YA (A63F)
P 1 113・ 121- YA (A63F)
P 1 113・ 4- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 池谷 香次郎
森 雅之
登録日 1998-05-22 
登録番号 特許第2781921号(P2781921)
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 深見 久郎  
代理人 塚本 豊  
代理人 振角 正一  
代理人 森田 俊雄  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 中田 雅彦  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 塚本 豊  
代理人 川下 清  
代理人 中田 雅彦  

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