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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1211689
審判番号 不服2007-33737  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-13 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2002-32023「易開封性包装箱」拒絶査定不服審判事件〔平成15年8月19日出願公開、特開2003-231518〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成14年2月8日の出願であって、平成19年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年12月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成20年1月15日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

2 平成20年1月15日付けの明細書を対象とする手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】包装箱の1面および該1面と稜線を介して連設する面にかけて、切れ目を形成し、包装箱の開封時に、前記1面および該1面と稜線を介して連設する面を前記切れ目に沿って切り取ることで、包装箱の一部に初期開口を形成する易開封性包装箱において、
前記包装箱の1面に形成された前記切れ目は、指先で押圧することで前記1面の一部を切り取り可能な、前記稜線を起点とする略弧状の押切用切れ目であって、かつ、前記包装箱の前記1面と稜線を介して連設する面に形成された前記切れ目は、前記稜線を起点とする目視可能な案内切れ目および該案内切れ目と連続に緩曲線を介して斜め方向に形成された目視可能な切開用切れ目であって、
前記押切用切れ目と前記案内切れ目とが、前記稜線に略垂直かつ一直線上に形成されることを特徴とする、易開封性包装箱。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「案内切れ目」及び「切開用切れ目」について、出願当初の図面に基づき、「目視可能な」との限定事項を付加するものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-138744号(実開昭64-47669号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
a「蓋板を重ね合わせシールして成形される6面体形状の包装用カートンにおいて、外蓋板には開曲線により描かれる図形を線上又は点綴線状の切込によって形成すると共に、内蓋板と胴板間の折曲線中央部分から胴板上に刻設されたミシン目状切線により押込片を及び押込片のミシン目状切線の延長として内蓋板の端面に向け拡がる破断線によりなる切込片を夫々形成してなる開封性を改善した容器の構造。」(実用新案登録請求の範囲)
b「この考案は、カートンを開封するのにシール部分を剥がして開封したものを再シールして原状に回復させることは困難にした反面、これを破断開封するのは容易にしたカートンに関するものである。」(明細書1頁15行ないし2頁1行)
c「本考案は、かかる何人かによる不本意な開封・再シールを効果的・合理化な手段をもって防止可能とすると共に需要者にとってみては開封容易とする目的を達したものである。」(同3頁4ないし7行)
d「折曲線21の中央部分を基底として、前板2内にはミシン目状切線15によって押込片17を、そして、内蓋板6、7には破断線20により内蓋板6、7の端面に向けて拡がるように切込片16を、夫々刻設する。なお、破断線20はミシン目状切線15の延長上にあるようにする。」(同6頁16行ないし7頁2行)
e「シール部を剥がそうとすると大抵は外蓋板が数片にちぎれてしまう。つまり、外蓋板の端部と切込の始点間が破断してしまう…再シールしても原状には回復できず……なお、再シールを目的としない通常の開封をするには、押込片17に指をさし込み蓋板を持ち上げれば破断線20に沿って容器は簡単に開被されることとなる。」(同7頁9行ないし8頁2行)
そして、第1図及び第5図には、折曲線21を起点とする略弧状のミシン目状切線15と破断線20とが、折曲線21に略垂直かつ一直線上に形成された態様が図示されている。
以上の記載及び第1図ないし第6図によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「外蓋板に開曲線により描かれる図形を線上又は点綴線状の切込によって形成し、内蓋板と胴板間の折曲線の中央部分から胴板上に折曲線を起点とする略弧状のミシン目状切線を刻設して、折曲線の中央部分を基底とする押込片を形成し、内蓋板にはミシン目状切線の延長として内蓋板の端面に向けて拡がる破断線を刻設し、ミシン目状切線と破断線とは折曲線に略垂直かつ一直線上に形成されており、開封時に、押込片に指をさし込み蓋板を持ち上げて破断線に沿って開被する、開封容易な包装用カートン。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「包装用カートン」、「折曲線」、「胴板」、「内蓋板」及び「開封容易な」は、それぞれ本願補正発明の「包装箱」、「稜線」、「包装箱の1面」、「1面と稜線を介して連設する面」及び「易開封性」に相当する。
そして、引用例記載の発明において、開封時に、押込片に指をさし込み押込片を切り取ることは、当業者にとって明らかであるから、引用例1記載の発明の「ミシン目状切線」は、本願補正発明の「前記包装箱の1面に形成された前記切れ目」に相当するとともに、「指先で押圧することで前記1面の一部を切り取り可能な、前記稜線を起点とする略弧状の押切用切れ目」に相当する。
また、引用例記載の発明の「破断線」は、ミシン目状切線の延長として内蓋板の端面に向けて拡がり、ミシン目状切線とは折曲線に略垂直かつ一直線上に形成されるから、本願補正発明の「前記包装箱の前記1面と稜線を介して連設する面に形成された前記切れ目」に相当するとともに、「稜線を起点とする案内切れ目および該案内切れ目と連続に斜め方向に形成された切開用切れ目」に相当する。
さらに、引用例記載の発明において、開封時に、押込片に指をさし込み蓋板を持ち上げて破断線に沿って内蓋板を切り取って開被することは、当業者にとって明らかである。
そうすると、両者は、
「包装箱の1面および該1面と稜線を介して連設する面にかけて、切れ目を形成し、包装箱の開封時に、前記1面および該1面と稜線を介して連設する面を前記切れ目に沿って切り取ることで、包装箱の一部に初期開口を形成する易開封性包装箱において、
前記包装箱の1面に形成された前記切れ目は、指先で押圧することで前記1面の一部を切り取り可能な、前記稜線を起点とする略弧状の押切用切れ目であって、かつ、前記包装箱の前記1面と稜線を介して連設する面に形成された前記切れ目は、前記稜線を起点とする案内切れ目および該案内切れ目と連続に斜め方向に形成された切開用切れ目であって、
前記押切用切れ目と前記案内切れ目とが、前記稜線に略垂直かつ一直線上に形成される、易開封性包装箱」
である点で一致し、次の点で相違する。
《相違点1》
本願補正発明では、切開用切れ目が案内切れ目と緩曲線を介して連続しているのに対して、引用例記載の発明では、そのように特定されていない点。
《相違点2》
本願補正発明では、案内切れ目及び切開用切れ目が目視可能であるのに対して、引用例記載の発明では、そのように特定されていない点。

(4)相違点の検討
そこで、上記各相違点について検討する。
《相違点1について》
包装箱において、切断方向の異なる切れ目間を、緩曲線を介して連続させることは、例えば、特開平9-193925号公報(特に、段落0026と図3)、特開平6-182906号公報(特に、図3)にみられるように、本願の出願前に周知の技術であるから、引用例記載の発明に上記周知の技術を適用して、案内切れ目と切開用切れ目との連続部分を緩曲線とし、相違点1に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
《相違点2について》
箱体の側端部の閉鎖構造として、破断用の切れ目を目視可能とした状態で、箱体の側端部の各板体を閉鎖することは、例えば、特開平8-253275号公報にみられるように、本願の出願前に周知の技術であるから、破断用の切れ目を側端部に有する箱体に係る引用例記載の発明に上記周知の技術を適用して、案内切れ目及び切開用切れ目を目視可能とし、相違点2に係る本願補正発明の事項とすることは、その適用を阻害する要因もないことを考慮すると、当業者が容易になし得たことといえる。

そして、本願補正発明が奏する効果も、引用例記載の発明及び周知の技術から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成19年5月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】包装箱の1面および該1面と稜線を介して連設する面にかけて、切れ目を形成し、包装箱の開封時に、前記1面および該1面と稜線を介して連設する面を前記切れ目に沿って切り取ることで、包装箱の一部に初期開口を形成する易開封性包装箱において、
前記包装箱の1面に形成された前記切れ目は、指先で押圧することで前記1面の一部を切り取り可能な、前記稜線を起点とする略弧状の押切用切れ目であって、かつ、前記包装箱の前記1面と稜線を介して連設する面に形成された前記切れ目は、前記稜線を起点とする案内切れ目および該案内切れ目と連続に緩曲線を介して斜め方向に形成された切開用切れ目であって、
前記押切用切れ目と前記案内切れ目とが、前記稜線に略垂直かつ一直線上に形成されることを特徴とする、易開封性包装体。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明1は、上記2(1)で検討した本願補正発明から、「案内切れ目」及び「切開用切れ目」について限定する「目視可能な」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-27 
結審通知日 2009-12-01 
審決日 2009-12-15 
出願番号 特願2002-32023(P2002-32023)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 一夫岩田 健一  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 佐野 健治
谷治 和文
発明の名称 易開封性包装箱  
代理人 渡邊 敏  

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