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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1211876 |
審判番号 | 不服2008-23195 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-10 |
確定日 | 2010-02-12 |
事件の表示 | 特願2003- 91773「袋」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月28日出願公開、特開2004-299689〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 ・本願発明 本願は、平成15年3月28日の出願であって、その請求項1ないし5に係る発明は、平成20年1月31日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものと認める。 「オレフィン系樹脂シートを圧延した後延伸した、延伸倍率20?35倍の延伸オレフィン系樹脂シートである形状保持性シートが袋状体の開口部に積層されてなり、形状保持性シートを折り曲げることにより開口部が開口されるようになされていることを特徴とする袋。」 2.引用発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成10年11月17日に頒布された「特開平10-305849号公報 」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「本願請求項1記載の発明は、フィルム、布等の柔軟材料からなる・・・袋状物の少なくとも一部に可燃性を有する形状保持体を付設し、該形状保持体を必要時に変形することにより、・・・袋状物の開口部の開口および閉口状態を保持させ得るようにした・・・袋状物の形状保持体を提供するものである。」(段落【0012】参照) (2)「【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施形態を示すシート状物または袋状物の形状保持体の斜視図であり、・・・袋状物においては開口部3に可燃性を有する形状保持体4を付設し、形状保持体4を必要時に変形するこれにより、前記・・・袋状物2の任意の形状を保持するものである。」(段落【0017】参照) (3)「前記形状保持体4は、袋状物2の開口部3に両面テープによる接着、熱融着・・・などの方法よって付設されるが、その方法は、袋状物の形態によって適宜採択すれば良い。・・・」(段落【0020】参照) (4)「また、形状保持体4は、可燃性で形状保持性を有する素材であれば特に限定がないが、通常、ポリエチレンやその他のポリオレフィン、ポリアセタールなどが使用される。また、形状保持体4は、上記した可燃性で形状保持性を有する素材に他の特性を有する熱可塑性樹脂を熱融着した複合系塑性変形物であることがさらに好ましい。 【0024】すなわち、この複合系塑性変形物は、芯材がポリエチレンまたは該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物である第1成分からなり、鞘材が第1成分以外の熱可塑性樹脂を実質的主成分とした第2成分からなり、これら第1成分と第2成分との組み合わせからなる複合延伸物によって構成され、そこにその特徴がある。 【0025】前記芯材を構成する第1成分のポリエチレンは、・・・特に高密度ポリエチレンが好ましい。・・・ 【0028】前記第2成分は、・・・低密度あるいは中密度ポリエチレン・・・等が例示される。」(段落【0023】-【0025】参照) (5)「・・・この複合延伸物の断面形状は円形、矩形、円形と矩形との組み合わせ等、特に限定がない。・・・」(段落【0030】参照) (6)「次に、複合系塑性変形物の製造方法は、ポリエチレンまたは該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物である第1成分を溶融し一方のオリフィスから押し出し、これに合わせて前記第1成分以外の熱可塑性樹脂を実質的主成分とした第2成分を溶融し他方のオリフィスから押し出して、前記第1成分と第2成分とを両者組み合わせ複合未延伸物とし、その複合未延伸物を7ないし16倍に延伸して塑性変形性を付与して複合延伸物とし、・・・」(段落【0032】参照) 以上の記載によると、引用例には、 「複合未延伸物を7ないし16倍に延伸した複合延伸物である形状保持体4が袋状物2の開口部3に付設されてなり、 上記複合延伸物は、第1成分と第2成分との組み合わせからなり、また、その断面形状は矩形であり、 上記第1成分は、高密度ポリエチレンであり、 上記第2成分は、低密度あるいは中密度ポリエチレンであり、 上記形状保持体4の上記袋状物2への付設は、両面テープによる接着、熱融着などの方法によってなされ、 上記形状保持体4を必要時に変形することにより、上記袋状物2の上記開口部3の開口および閉口状態を保持する袋状物2。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「袋状物2」は本願発明の「袋状体」及び「袋」に、引用発明の「形状保持体4」は本願発明の「形状保持性シート」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「複合未延伸物」及び「複合延伸物」を構成する、第1成分の高密度ポリエチレン及び第2成分の低密度あるいは中密度ポリエチレンは、いずれもオレフィン系樹脂であるので、引用発明の「複合未延伸物」及び「複合延伸物」は、それぞれ本願発明の「オレフィン系樹脂シート」及び「延伸オレフィン系樹脂シート」に相当する。 よって、両者は、 「オレフィン系樹脂シートを延伸した延伸オレフィン系樹脂シートである形状保持性シートが袋状体の開口部に積層されてなり、形状保持性シートを折り曲げることにより開口部が開口されるようになされている袋。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点;本願発明では、オレフィン系樹脂シートの延伸が圧延の後になされ、また、延伸オレフィン系樹脂シートの延伸倍率が20?35倍であるのに対し、引用発明では、そのような圧延がなされていなく、また、上記延伸倍率が7?16倍である点。 4.判断 上記相違点について検討すると、 樹脂製シートを延伸する際に、延伸を圧延の後になすことは、本願出願前に周知の技術である(例えば、特開平11-320777号公報の段落【0017】-【0022】及び特開平2000-94509号公報の段落【0023】参照)ので、延伸の前に圧延をなすか否かは、延伸倍率及び延伸するオレフィン系樹脂の種類等を考慮して、当業者が設計上適宜に選択し得ること、 引用発明においても延伸倍率が7?16倍と、20?35倍と近い数値範囲を有すること、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂において20?35倍の延伸が可能であることは、本願出願前に技術常識である(例えば、上記周知の技術として例示した各文献参照)こと、最適な延伸倍率は、延伸するオレフィン系樹脂の種類及びシートの厚さ等により異なるものであり、当業者が実験等により適宜に決定し得るものであること、しかも、本願の明細書及び図面中に、本願発明の数値範囲の境界値である20倍及び35倍が臨界的意義を有することを示すデータが示されているものでもないことより、 引用発明において、上記周知の技術を採用した上で、設計上の変更を施すことにより、上記相違点の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。 また、本願発明の作用効果は、引用発明から、予測し得る程度のものである。 以上のとおりであるから、本願発明は、上記周知の技術及び技術常識を勘案すれば、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 5.むすび したがって、原査定の理由は妥当で、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-26 |
結審通知日 | 2009-12-01 |
審決日 | 2009-12-15 |
出願番号 | 特願2003-91773(P2003-91773) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 真 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
千馬 隆之 佐野 健治 |
発明の名称 | 袋 |
代理人 | 山本 拓也 |