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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1211936
審判番号 不服2007-8593  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-26 
確定日 2010-02-10 
事件の表示 特願2004-156180号「止血カニューラ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日出願公開、特開2004-290684号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成8年10月24日(パリ条約による優先権主張、1995年10月24日、米国、1995年10月24日、米国)を国際出願日とする特願平9-516789号の一部を平成16年5月26日に新たな特許出願としたものであって、平成18年12月21日付けで拒絶査定がなされたところ、平成19年3月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同年4月25日付けで手続補正がなされたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は平成19年4月25日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「カテーテル(57)を受入れる寸法の通路(11)および当接面(13)を有するハウジング(10″)と、
開口部(70)および前記当接面に隣接する少なくとも1つの内壁(19)を有し、前記ハウジングに組合わされるキャップ(17)と、
柔軟な材料で形成された弁本体(1″)であって、平らな第1の面(6″)、平らな第2の面(6″)および該両面を分離する周縁(4″,5″)を有し、前記第1の面は該第1の面を横断し、少なくとも1箇所で前記周縁(4″)と交差するスリット平面を画成するスリット(2″)を含み、該スリットは前記弁本体の一部のみを貫通して伸長し、前記第2の面から筒形開口(3″)が前記弁本体の一部のみを貫通して伸長し、前記スリットは前記弁本体内で前記筒形開口の底面と交差する弁本体(1″)と、を有し、
前記弁本体は、前記筒形開口のまわりに一体的に形成された柔軟な材料の内側リング(8″)を有し、前記筒形開口の底面と前記内側リングとの間に高さ(HH)を有し、前記内側リングは前記第2の面に隣接して形成され、上側面(8a″)を有し、更に、前記弁本体は、前記第2の面から外側に隆起した外側リング(7″)を有し、該外側リングは、前記筒形開口を包囲し、該外側リングのテーパした内周壁(9″)が前記外側リングの頂部から前記内側リングまで延在し、
前記スリットおよび前記筒形開口は前記キャップの前記内壁および前記ハウジングの前記当接面に接触するように配置される以前の無負荷時に前記弁本体に形成され、
前記弁本体は前記スリット平面に直角な長さ寸法(H2″)と、該長さ寸法に直角な幅寸法(W2″)とを有し、前記長さ寸法は前記幅寸法より大きく、
前記弁本体は、前記キャップの前記内壁が前記弁本体の前記周縁の一部(5″)に接触し、該弁本体の前記平らな両面の片方が前記ハウジングの前記当接面に接触して、前記スリット平面にほぼ直角な方向(8)にのみ前記弁本体を圧縮して前記弁本体を介する液密シールを維持し、
該弁本体が前記キャップの内壁に接触することにより圧縮された時、前記幅寸法が拡大するが、前記弁本体の少なくとも前記周縁の前記スリット平面が交差する箇所は前記内壁と接触しない、
ことを特徴とする止血カニューラ。」

III.引用発明
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国際公開された国際公開95/21642号(以下、「引用例1」という。)には、止血カニューラに関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「Referring now more particularly to the drawings, there is illustrated in FIG.1 and 2 a hemostasis casnnula which includes a housing 10 having a passage 11 therethrough adapted to receive a catheter. Housing 10 is made up of a member 12 having two externally threaded surfaces 15 and 16. A cap 17, which includes recess 18,is threaded down on the member 12 on the threads 15 and is glued in place by a suitable cement or the like. Valve body 1 is received into recess 18 and is sandwiched between cap 17 in member 12. As can be seen in FIG.1 and 2, the face 6 including the cylindrical recess or hole 3 of valve body 1 is directed towards the opening 70 of the cap 17. The cannula housing 10 also includes an internally threaded member 32, the threads of which are suitable for mating engagement with threads on the member12. The function of the member 32 is to receive and fix or hold the flexible tubing 35 to the housing 10. In the assembly procedure, adhesive or cement is placed on the flexible tubing 35 and between the members 12 and 32 for affixing the tubing and members together. The flexible tubing 35 has a flared end 36 which is fixed between the tapered surfaces 37 and 40 of the members 12 and 32.」(『ここでより特別に図面を参照すると、カテーテルを受け入れるのに適した通路11を有するハウジング10を含む止血カニューラが図1、2に図示されている。ハウジング10は、2つの外部にねじが作られた表面15及び16を有する部材12で構成されている。キャップ17は、凹部18を有しており、ねじ15で部材12にねじ込まれており、かつ、適当なセメント又は同様なもので接着されている。弁本体1は、凹部18に受け入れられており、部材12のキャップ17との間でサンドイッチにされている。図1及び2で見られるように弁本体1の筒形開口又は穴3を含む表面6は、キャップ17の開口70の方向を指している。カニューラハウジング10は、また内方にねじを設けられた部材32を含んでおり、そのねじは、部材12のねじ16と係合に適している。部材32の機能は、ハウジング10に受け入れられ、固定し、保持することである。組み立て工程において、接着又はセメントは、可撓性チューブ35及びチューブと部材を一緒に固定するための部材12及び32の間に設けられる。可撓性チューブ35は、部材12及び32のテーパ状表面37及び40の間に固定された朝顔状端部36を有する。』(上記『・・・』は、当審仮訳、以下同じ。)明細書7頁13?34行)

b.「Valve body 1 is oblong in shape and has a height dimension H2 which is greater than the height dimension H1 of recess 18. Therefore, valve body 1 must be compressed in the direction of arrows 8 in order to be received within recess 18. Valve body 1 includes a pair of opposing faces 6 which are separated by a peripheral edge 5. A hole or cylindrical recess 3 is made through one of the faces and extends partially through the valve body as shown in FIG.1. The hole 3 may be formed by molding during the process of forming the disk or punched, cut or drilled in a separate operation. A slit 2 is made through the other face and extends partially through the valve body intersecting hole 3 within the valve body. Valve body 1 is preferably made from silicon rubber or another elastomer having a durometer hardness anywhere between 20 and 90. Referring to FIGS. 5-8, valve body 1 preferably has an oblong shape such that peripheral edge 5 includes a pair of parallel planar surfaces 4 which are perpendicular to the plane defined by slit2. Slit 2 preferably extends completely across one of the faces 6 and extends into the valve body to a depth of between 1/3 and 2/3 the thickness of the valve body. Hole 3 preferably has a diameter between 0.010 and 0.035 inches and, like slit 2, has a depth preferably between 1/3 and 2/3 the thickness of valve body 1. In any event, the combined depth of hole 3 and slit 2 must be sufficient that they intersect within the valve body and create an opening completely through the valve body for receiving a catheter or the like therethrough. Of course, the oblong shape of valve body 1 results in it having a height dimension H2 which is greater than its width dimension W2. FIG. 8 shows the valve body 1 both before and after it has been compressed in order to be positioned in recess 18 of housing 10. Before being compressed, valve body 1 has a height dimension H2 which is greater than height dimension H1 of recess 18 as shown in FIG.2. So that the compression forces on valve body 1 are directed only perpendicularly to slit 2, valve body 1 has a width dimension W2 which is less than the width dimension W1 of recess 18. Planar portions 4 allow valve body 1 to expand in its width dimension without interacting with the recess when it is compressed and received within the recess 18.」(『弁本体1は矩形形状であり、凹部18の高さ寸法H1より大きな高さ寸法H2を有している。それ故、弁本体1は、凹部18内に収容されるために、矢印8の方向に圧縮されなければならない。弁本体1は、周縁部5により分離された一対の対向する面6を包含する。穴又は筒形開口3は、面の一つを通して作られており、図1に示されるように弁本体を通して部分的に伸長している。穴3は、円盤を形成工程、又は、分離操作において、パンチし、切断し、穿孔する間に、成形により形成される。スリット2は、他の面を通して形成され、弁本体内の穴3を横切った弁本体を通して部分的に伸長している。弁本体1は、好ましくは、デュロメータかたさが略20から90を有するシリコンゴム又は他のエラストマーから作られている。
図5?8を参照して、弁本体1は、好ましくは、矩形形状を有する、即ち、周縁5は、スリット2によって区画される平面に垂直な一対の平坦な面4を包含する。スリット2は、好ましくは、面6の一つを完全に横切って伸長し、弁本体の1/3と2/3の間の厚さの深さに弁本体の中に伸長している。穴3は、好ましくは、0.010と0.035インチの間の直径を有し、スリット2のように、弁本体1の好ましくは1/3と2/3の間の厚さの深さを有する。とにかく、穴3とスリット2の組み合わされた深さは、それらが弁本体内で横切り、カテーテル又はそのようなものを受け入れるために弁本体を完全に通過する開口を形成するのに、十分であるべきである。勿論、弁本体1の矩形形状は、その幅寸法W2より大きな高さ寸法H2を有するという結果になる。図8は、ハウジング10の凹部18に配置されるよう、それが圧縮された、前と、後の両方の弁本体1を示している。圧縮される前には、弁本体1は、図2に示されるように、凹部18の高さ寸法H1より大きな高さ寸法H2を有する。弁本体1における圧縮力は、スリット2に対して垂直にのみむけられるので、弁本体1は、凹部18の幅寸法W1よりも小さな、幅寸法W2を有する。平坦な部分4は、それが凹部18内に圧縮され、受け入れられるとき、凹部と影響し合わないように、その幅寸法内に、弁本体1が膨張するのを許容する。』明細書8頁18行?9頁23行)

c.「FIG.13-15A show yet another embodiment of a valve body according to the present invention. FIG. 13 is a front view of a valve body 1’ which is substantially similar to the valve body, with the major difference being the addition of a raised ring or doughnut 7’ which surrounds the hole 3’. The valve body 1’ may be substituted for the valve body 1 in the hemostasis cannula of FIGS. 1 and 2. Likewise, the face 6’ including the cylindrical recess or hole 3’ and the raised ring 7’ of valve body 1’ may be directed towards the opening 70 of the cap 17 (FUGS. 1 and 2). 」(『第13-15Aは、さらに、本発明による弁本体の他の実施例を示す。第13図は、穴3‘の周りは隆起したリング又はドーナツ7’を付加された主要な差異を有する、弁本体1と本質的に類似した弁本体1‘の正面図である。弁本体1’は、第1及び2図の止血カニューラにおいて、弁本体1に置き換えられる。同様に、弁本体1’の円筒状凹部又は穴3’及び 隆起リング7’を含む面は、キャップ17の開口70の方向を向いても良い。(第1及び2図)』明細書10頁23?32行)

d.「Additionally, as can be seen more clearly in FIG. 15A, the inner wall 9' of the raised ring 7' is sloped from the top of the raised ring 7' down to the face 6'.」( 『さらに図15Aでさらにはっきりわかるように、隆起したリング7’の内壁9’は、隆起したリング7’から面6’に向かって傾斜している。』明細書12頁9?11行)

e.上記記載a及び図1を参酌すれば、ハウジングの部材12がキャップ17と協働して弁本体1をサンドイッチにするための当接面を有していることが認められる。

f.上記記載b及び図1を参酌すれば、弁本体1は、シリコンゴム等の柔軟な材料で形成され、一対の平坦な面4のうち、通路11に面し、スリット2が横断する面を第1の平らな面と、穴が形成される面を第2の平らな面と称することができる。

g.上記記載事項b.より、スリット2と筒型開口3は凹部18に収容されるために圧縮される以前の無負荷時に弁本体1に形成されると認められる。

したがって、以上の記載及び図示内容からみて、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が、記載されていると認められる。

「カテーテルを受け入れる寸法の通路11および当接面を有するハウジング10と、
開口70と凹部18を有し、ハウジング10に組み合わされるキャップ17と、
柔軟な材料で形成された弁本体1であって、平らな第1の面、平らな第2の面および両者を分離する周縁部5を有し、第1の面は第1の面を横断し、第1の面を完全に横切って伸長するスリット平面を画定するスリット2を含み、スリット2は、弁本体1を通して部分的に伸長し、筒型開口3は第2の面から弁本体1の一部を通り部分的に伸長し、スリット2と筒形開口3の組み合わされた深さは弁本体1を完全に通過するのに十分である弁本体1と、を有し、
スリット2と筒型開口3は凹部18に収容されるために圧縮される以前の無負荷時に弁本体1に形成され、
弁本体1は第2の面から外側に隆起したリング7’を有し、リング7’は筒型開口3を包囲し、リング7’の内壁9’は第2の面に向かって傾斜し、
弁本体1は、スリット平面に直角な高さ寸法H2と、高さ寸法H2に直角な幅寸法W2とを有し、高さ寸法H2は幅寸法W2より大きく、
弁本体1は、キャップ17の凹部18に受け入れられ、第1の面がハウジング10の当接面に接触して、スリット2に対して弁本体を圧縮し、
弁本体が凹部内に圧縮され、受け入れられるとき、弁本体が膨張するが、凹部と影響しあわない平坦な部分4を有する
止血カニューラ。」


(2)同じく本願の出願前に日本国内で公開された特開平2-243167号公報(以下、「引用例2」という。)には、止血弁ガスケットに関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

h.「(a)弾性材料で形成され且つ中央通路が貫通している円筒形ベース、 (b)前記円筒形ベースから外側に突出し且つ前記円筒形ベースの中央通路と連通する内部中空チャンバーを有するドーム形部材、及び
(c)前記ドーム形部材の外部表面に形成され且つ前記中空チャンバーに向かって内側に延伸する少なくとも1つの弓形スリットであって、器具が前記ベースの中央通路と、内部中空チャンバーと、前記円筒形ベース及び前記ドーム形部材が、器具があるときには前記器具の周りに封止を形成し且つ器具がないときにはこの通路を閉鎖させる構成の自己封止通路とを通過できるように、前記内部チャンバーと該スリットとの間に前記中央自己封止通路を形成するために共通の接線に沿って交わるように延伸しているスリット、
を備えている止血弁ガスケット。」(特許請求の範囲の請求項1)

i.「弁ガスケットは、遠位フランジ部材10と近位ドーム部材11とを備えている。遠位フランジ部材10の形状は必然的に円筒形であり、その厚み寸法を通して延伸し且つカテーテル及び/または案内ワイヤが挿入され得る中央円形開口12を有する。近位ドーム部材11は、偏狭な弓形スリットが設けられたドーム形を有する。近位ドーム部材11内には中空凹部14がある。近位ドーム部材11は、図に示したように遠位セクション10から突出している。ドーム部材11のベース15の直径は、円筒形の遠位フランジ部材10の直径の約1/2?3/4となるように寸法が決められている。ドーム部材11内の中空凹部14と弓形スリット13とは、ドーム部材11の最も中央の部分にある共通の接線に沿って凹部14とスリット13との間に(2?3ミルの)極めて薄い材料の膜が存在するような態様としてある。スリット13によって形成された膜は、案内ワイヤが挿入されたときに容易に破壊され、案内ワイヤはドーム部分を通過できる。しかしながら、この開口は非常に小さく、その幅及び長さは、スリット13の全長よりも著しく小さい。スリット13は、開口内に器具がないときには開口を閉鎖するように、血圧がドーム材料に対して充分な力を加え得る手段を提供するために、ドームを通る開口よりも極めて大きくつくられている。更にスリットによって血圧が、任意の適当なカテーテルまたは案内ワイヤが開口内に存在するときにはそれらの周りで弁を封止させ得る。」(3頁右上欄15行?右下欄6行)

上記の記載において、弁ガスケットは、近位ドーム部材11と遠位フランジ部材10とが弾性材料により一体的に形成されたものであり、本願発明に倣って、止血カニューラの弁本体ということができ、また、近位ドーム部材11内に形成された中空凹部14を、スリット13が交差する開口と称することができる。
特に第2図を参酌すれば、この弁ガスケットには、第2図における左側から右側にカテーテル等が挿入されるようになっており、弁ガスケットの近位ドーム部材11の右側面を、弁本体の第1の面、遠位フランジ部材10の左側面を弁本体の第2の面ということができる。
そして、遠位フランジ部材10は、カテーテル等が挿入される中央円形開口12が設けられており、第2図を参酌すれば、中空凹部14の内壁に、遠位フランジ部材10の左側付近に形成された弾性材料の内側リングを備えているのは明白である。
してみると、引用例2には次のような発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「弁本体の第1の面を横断してスリット13を形成し、スリット13が交差する開口の内壁に、第2の面付近に柔軟な材料の内側リングを形成した止血カニューラ。」

IV.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明1の「カテーテル」は、本願発明の「カテーテル(57)」に相当し、同様に、「通路11」は「通路(11)」に、「当接面」は「当接面(13)」に、「ハウジング10」は「ハウジング(10”)」に、「開口70」は「開口部(70)」に、「ハウジング10に組み合わされるキャップ17」は「ハウジング(10”)に組合わされるキャップ(17)」に、「柔軟な材料で形成された弁本体1」は「柔軟な材料で形成された弁本体1”」に、「平らな第1の面」は「平らな第1の面(6”)」に、「平らな第2の面」は「平らな第2の面(6”)」に、「両者を分離する周縁部5」は「両面を分離する周縁(4”,5”)」に、「第1の面は第1の面を横断し、第1の面を完全に横切って伸長するスリット平面を確定するスリット2を含み」は「第1の面は該第1の面を横断し、少なくとも1箇所で周縁(4″)と交差するスリット平面を画成するスリット(2″)を含み」に、「筒型開口3」は「筒型開口(3”)」に、「スリット2は、弁本体1を通して部分的に伸長し、」は「スリットは弁本体の一部のみを貫通して伸長し」に、「筒型開口3は第2の面から弁本体1の一部を通り部分的に伸長し」は「第2の面から筒形開口(3″)が弁本体の一部のみを貫通して伸長し」に、「リング7’」は「外側リング(7”)」に、「スリット2と筒型開口3は凹部18に収容されるために圧縮される以前の無負荷時に弁本体1に形成され」は「スリットおよび筒形開口はキャップの内壁およびハウジングの当接面に接触するように配置される以前の無負荷時に弁本体に形成され」に、「スリット平面に直角な高さ寸法H2」は「スリット平面に直角な長さ寸法(H2)」に、「高さ寸法に直角な幅寸法W2」は「長さ寸法に直角な幅寸法(W2)」に、「高さ寸法H2は幅寸法W2より大きく」は「長さ寸法は幅寸法より大きく」に、「止血カニューラ」は「止血カニューラ」にそれぞれ相当する。

また、引用発明1は、「スリット2は、弁本体1を通して部分的に伸長し、筒型開口3は第2の面から弁本体1の一部を通り部分的に伸長し、スリット2と筒形開口3の組み合わされた深さは弁本体1を完全に通過するのに十分である」のだから、「スリットは前記弁本体内で前記筒形開口の底面と交差」していると認められる。

また、引用発明1の「リング7’の内壁9’は第2の面に向かって傾斜し」た構成と、本願発明の「外側リングのテーパした内周壁(9″)が前記外側リングの頂部から前記内側リングまで延在し」た構成とは、外側リングのテーパした内周壁は外側リングの頂部から第2の面まで延在する点で共通するものである。

また、引用発明1は「弁本体1は、キャップ17の凹部18に受け入れられ、第1の面がハウジング10の当接面に接触して、スリット2に対して弁本体を圧縮」するから、キャップ17の凹部18が当接面に隣接する内壁を有していることは自明であり、本願発明の「当接面に隣接する少なくとも1つの内壁(19)を有」する「キャップ(17)」の発明特定事項を有する。

また、引用発明1は「弁本体1は、キャップ17の凹部18に受け入れられ、第1の面がハウジング10の当接面に接触して、スリット2に対して弁本体を圧縮」し、「弁本体が凹部内に圧縮され、受け入れられるとき、弁本体が膨張するが、凹部と影響しあわない平坦な部分4を有する」のであるから、引用発明1の弁本体1は、本願発明と同様に「キャップの内壁が弁本体の周縁の一部に接触し、弁本体の平らな両面の片方がハウジングの当接面に接触して、スリット平面にほぼ直角な方向にのみ弁本体を圧縮して弁本体を介する液密シールを維持し、
弁本体がキャップの内壁に接触することにより圧縮された時、幅寸法が拡大するが、弁本体の少なくとも周縁の前記スリット平面が交差する箇所は内壁と接触しない」ものであることは明らかである。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「カテーテルを受入れる寸法の通路および当接面を有するハウジングと、
開口部および当接面に隣接する少なくとも1つの内壁を有し、ハウジングに組合わされるキャップと、
柔軟な材料で形成された弁本体であって、平らな第1の面、平らな第2の面および両面を分離する周縁を有し、第1の面は第1の面を横断し、少なくとも1箇所で周縁と交差するスリット平面を画成するスリットを含み、スリットは弁本体の一部のみを貫通して伸長し、第2の面から筒形開口が弁本体の一部のみを貫通して伸長し、スリットは弁本体内で筒形開口の底面と交差する弁本体と、を有し、
弁本体は、第2の面から外側に隆起した外側リングを有し、外側リングは、筒形開口を包囲し、外側リングのテーパした内周壁は外側リングの頂部から第2の面まで延在し、
スリットおよび筒形開口はキャップの内壁およびハウジングの当接面に接触するように配置される以前の無負荷時に弁本体に形成され、
弁本体は前記スリット平面に直角な長さ寸法と、該長さ寸法に直角な幅寸法とを有し、長さ寸法は幅寸法より大きく、
弁本体は、キャップの内壁が前記弁本体の周縁の一部に接触し、弁本体の平らな両面の片方が前記ハウジングの当接面に接触して、スリット平面にほぼ直角な方向のみ弁本体を圧縮して弁本体を介する液密シールを維持し、
弁本体がキャップの内壁に接触することにより圧縮された時、幅寸法が拡大するが、弁本体の少なくとも周縁のスリット平面が交差する箇所は内壁と接触しない、
止血カニューラ。」

そして、両者は次の相違点で相違する。

(相違点)
本願発明は、「弁本体は、筒形開口のまわりに一体的に形成された柔軟な材料の内側リングを有し、筒形開口の底面と内側リングとの間に高さを有し、内側リングは第2の面に隣接して形成され、上側面を有し」「外側リングのテーパした内周壁が外側リングの頂部から内側リングまで延在」するのに対して、引用発明1は内側リングを有さず、外側リングのテーパした内周壁は外側リングの頂部から第2の面まで延在するものである点。

V.相違点の判断
相違点について、前述のとおり、引用発明2には、「弁本体の第1の面を横断してスリット13を形成し、スリット13が交差する開口の内壁に、第2の面付近に柔軟な材料の内側リングを形成した止血カニューラ。」が示されており、引用発明1も引用発明2も止血用カニューラの弁装置という同じ技術分野に属するものであるから、引用発明1において引用発明2に倣い、弁本体の開口の内壁に第2の面付近において内側リングを形成することは当業者にとって容易になし得る事であるし、そのように構成することで、外側リングのテーパした内周壁が外側リングの頂部から内側リングまで延在することとなるから、引用発明1において、引用発明2を適用して、本願発明の相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易に想到することができたものである。

そして、本願発明による効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-25 
結審通知日 2009-08-26 
審決日 2009-09-29 
出願番号 特願2004-156180(P2004-156180)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長清 吉範岡崎 克彦高田 元樹  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 豊永 茂弘
岩田 洋一
発明の名称 止血カニューラ  
代理人 伊藤 茂  

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