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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1212029
審判番号 不服2007-11844  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-25 
確定日 2010-02-18 
事件の表示 特願2000-229522「シリコン単結晶ウエーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 8日出願公開、特開2002- 43318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年7月28日の出願であって、平成18年11月28日付けで手続補正がなされ、平成19年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成18年11月28日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】 格子間酸素を含有するシリコン単結晶ウエーハに熱処理を施すことにより酸素誘起欠陥を有するシリコン単結晶ウエーハを製造する方法において、前記熱処理は、少なくとも、抵抗加熱式の熱処理炉を用いて、水素雰囲気、不活性ガス雰囲気、或いはこれらの混合ガス雰囲気で熱処理する工程と急速加熱・急速冷却装置を用いて熱処理する工程とを有することを特徴とするシリコン単結晶ウエーハの製造方法。」

3.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内で頒布された特開平11-67781号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図1とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当合議体にて付加したものである。以下同じ。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、シリコン半導体基板のDZ-IG熱処理方法の改善に係り、基板の表層に無欠陥層を形成させたのち、非酸化性雰囲気内で急速加熱および急速冷却の高温、短時間熱処理を施し、その後低温、短時間の核形成熱処理を施すことにより、効率よく基板内部にIG効果の期待できる程度の微小欠陥を析出させるシリコン半導体基板の熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体基板の製造工程において、金属不純物を半導体基板中に取り込む方法として、Intrinsic Gettering(以後、IGと記載)法が知られており、これはシリコン半導体基板中の微小欠陥(Bulk Micro Defect,以後、BMDと記載)を利用する方法である。
【0003】また、シリコン半導体基板をデバイス工程で適用するためには、予め酸化性雰囲気内で1100℃以上の高温熱処理を施し、シリコン半導体基板の表層格子間酸素を外方拡散させ無欠陥層(Denuded Zone,以後、DZ層と記載)を形成した後、低温処理にてシリコン半導体基板内部にBMDを形成させ、IG効果をもたせる必要があり、この一連の熱処理はDZ-IG処理と呼ばれている。
【0004】しかし、上述のIG処理に関しては、シリコン半導体基板の格子間酸素濃度及び比抵抗によりBMDの析出量が異なるため、様々なIG処理ヒートシーケンスが利用される。特に、シリコン半導体基板のドーパントとしてアンチモン(以下Sbと記載)を用いた場合、比抵抗が0.001?0.1(Ωcm)のものについては、酸素析出物が非常に成長し難い特性があり、そのため析出熱処理に長時間を要し、生産性の面で問題がある。」
「【0009】この発明は、例えば、酸素析出物が非常に成長し難い特性を有するSbドープされた比抵抗が0.001?0.1(Ωcm)のシリコン半導体基板に対して、基板の表層に無欠陥層を形成させかつ基板内部にIG効果の期待できる程度の微小欠陥を析出させる、すなわち、酸素析出物が成長し難い基板に効率よく短時間でDZ-IG処理が可能なシリコン半導体基板の熱処理方法の提供を目的としている。」
「【0012】
【発明の実施の形態】この発明は、シリコン半導体基板の格子間酸素濃度が11?17×10^(17)(atoms/cm^(3))のシリコンウェーハを、窒素希釈の酸化性雰囲気内で1100℃以上の高温熱処埋を数時間施し、基板表面付近に無欠陥層を形成させた後、ランプアニール炉等の急速加熱および急速冷却可能な熱処理炉において、非酸化性雰囲気内で、昇降温速度10?200℃/secで1200℃以上の高温熱処理を5?300秒間施し、その後500?900℃の低温、短時間の核形成熱処理を行うことによりシリコン半導体基板内部に十分なIG効果を期待できる程度のBMDが得られ、且つ処理時間も著しく短縮できることを特徴とする。
【0013】この発明において、対象とするシリコン半導体基板は、その基板の格子間酸素濃度が11?17×10^(17)atoms/cm^(3)、比抵抗が0.001?100Ωcmであり、好ましくは、Sbドープされたシリコン半導体基板で、比抵抗が0.001?0.1Ωcmのものである。先の比抵抗値の範囲を対象とするのは、酸素析出物が非常に成長し難いためであり、また、初期酸素濃度が11?17×10^(17)atoms/cm^(3)の範囲外であると、例えばBMD密度が、1×10^(8)(cm^(-3))となり、ゲッタリング効率が弱くなる。又、BMD密度が、1×10^(8)(cm^(-3))以上では、シリコン半導体基板の機械的強度が弱くなる可能性がある。
【0014】以下に、この発明の熱処理方法を図1のヒートパターン図に基づいて説明する。この発明において、第一段階の無欠陥層を形成させる熱処理は、窒素希釈の酸化性雰囲気内で1100℃以上の高温処理を数時間行うとよく、1100℃より低い温度では酸素の外方拡散が遅いため、長時間の処理を要し、また、無欠陥層の品質も十分なものは得られない。従って、1100℃以上の温度が必要であり、好ましくは、1100℃?1150℃、で2?5時間保持する処理である。」

(2)したがって、引用刊行物には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。

「シリコン半導体基板の格子間酸素濃度が11?17×10^(17)(atoms/cm^(3))のシリコンウェーハを、窒素希釈の酸化性雰囲気内で1100℃以上の高温熱処埋を数時間施し、基板表面付近に無欠陥層を形成させた後、ランプアニール炉等の急速加熱および急速冷却可能な熱処理炉において、非酸化性雰囲気内で、昇降温速度10?200℃/secで1200℃以上の高温熱処理を5?300秒間施し、その後500?900℃の低温、短時間の核形成熱処理を行うことにより、基板内部に微小欠陥(BMD)を析出させるシリコン半導体基板の熱処理方法。」

4.対比
(1)刊行物発明の「シリコン半導体基板の格子間酸素濃度が11?17×10^(17)(atoms/cm^(3))のシリコンウェーハ」、「ランプアニール炉等の急速加熱および急速冷却可能な熱処理炉」及び「シリコン半導体基板の熱処理方法」は、各々本願発明の「格子間酸素を含有するシリコン単結晶ウエーハ」、「急速加熱・急速冷却装置」及び「シリコン単結晶ウエーハの製造方法」に相当する。

(2)引用刊行物の「この発明は、例えば、酸素析出物が非常に成長し難い特性を有するSbドープされた比抵抗が0.001?0.1(Ωcm)のシリコン半導体基板に対して、基板の表層に無欠陥層を形成させかつ基板内部にIG効果の期待できる程度の微小欠陥を析出させる、すなわち、酸素析出物が成長し難い基板に効率よく短時間でDZ-IG処理が可能なシリコン半導体基板の熱処理方法の提供を目的としている。」(【0009】段落)という記載からみて、刊行物発明における「微小欠陥(BMD)」は、「酸素析出物」による、いわゆる「酸素誘起欠陥」であり、刊行物発明における「シリコン半導体基板の熱処理方法」が「酸素誘起欠陥を有するシリコン単結晶ウエーハを製造する方法」であることは、明らかである。

(3)よって、本願発明と刊行物発明は、
「格子間酸素を含有するシリコン単結晶ウエーハに熱処理を施すことにより酸素誘起欠陥を有するシリコン単結晶ウエーハを製造する方法において、前記熱処理は、熱処理炉を用いて熱処理する工程と、急速加熱・急速冷却装置を用いて熱処理する工程とを有することを特徴とするシリコン単結晶ウエーハの製造方法。」である点で一致し、以下の2点で相違する。

(相違点1)
前段の高温熱処理工程において、本願発明では、「少なくとも、抵抗加熱式の熱処理炉を用いて、」「熱処理する」のに対して、刊行物発明では、どのような熱処理炉を用いるのかについては、特定されていない点。

(相違点2)
前段の高温熱処理工程において、本願発明では、「水素雰囲気、不活性ガス雰囲気、或いはこれらの混合ガス雰囲気で熱処理する」のに対して、刊行物発明では、窒素希釈の酸化性雰囲気内で、高温熱処理を施す点。

5.判断
(1)相違点1について
シリコン半導体基板の表層格子間酸素を外方拡散させ無欠陥層を形成するためのアニール処理を、抵抗加熱式の炉を用いて行うことは、以下の周知例1、2に記載されるように従来周知である。

(ア)周知例1:特開2000-77352号公報には、以下の事項が記載されている。
「【0052】(水素アニールによる低欠陥層形成工程)通常、CZシリコンウエハには、10^(18)atoms/cm^(3)程度の酸素が含まれるが、これを水素アニールすると、ウエハ中の酸素は外方拡散し、ウエハ表面及びその近傍の酸素濃度は低減する。
【0053】この酸素濃度の低減により、ウエハ表層部の改質が進み、COP、OSF等の欠陥が低減された表層部22(以下、表層部を「低欠陥層」という場合もある。)を形成することができる。
【0054】また、COPに関しては、CZシリコンウエハには、10^(5)?10^(7)/cm^(3)の密度で、COPが存在し、例えば8インチのCZウエハの場合、表面近傍には、単位ウエハ当たり400?500個程度のCOPが存在する。しかしながら、このCZシリコンウエハを水素アニールすると、COPの数は激減し、表面近傍でのその数は、10個程度になる。すなわち実質的に無欠陥の層(DZ層;Denuded Zone)が形成される。なお、本発明にいう「単位ウエハ当たり」とは、一枚のウエハが占める表面積当たりのCOP等の数を意味する。例えば、8インチウエハの場合、凡そ324cm^(2)当たりのCOPの数である。」
「【0067】水素アニールに用いる炉としては、通常用いられる縦型熱処理炉や、横形熱処理炉を用いることができる。ヒーターとしては、抵抗加熱器や高周波加熱器等を用いることができる。」

(イ)周知例2:特開2000-58552号公報には、図1とともに、以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】図1は、従来例のシリコンウェーハに対する水素ガス雰囲気中での高温アニールを説明するもので、この熱処理方法で使用する縦型拡散炉の模式構成図を示す。この高温アニール用拡散炉は、熱処理対象のシリコンウェーハSWを積載・保持するシリコン製ボート1を石英製炉心管2内に配置し、この炉心管2内にプロセスガス導入管3を介して水素ガスを送ると共に、その炉芯管2を囲う灼熱管4の外部にヒータ5を配置し、このヒータ5で炉内を所定の温度シーケンスで昇温することにより、ボート1上のウェーハSWに対して高温アニールを実施するものである。
【0003】このように水素雰囲気中で高温アニールを行えば、還元ガス雰囲気であるためにシリコンウェーハ中にふくまれる酸素が外方拡散してその濃度が低下する。その結果、この場合ではデバイス活性層であるウェーハ表層を無欠陥化できるといった利点がある。加えて、チョクラルスキー法で得られるシリコン単結晶によるウェーハの場合では、同様の水素ガスを用いた高温アニールにより結晶バルク中にふくまれる欠陥の一つであるCOP(Crystal Originated Particle)も低減 できる。その結果、この場合ではウェーハ表層部にCOPがほとんど存在しない領域を形成させて酸化膜耐圧などを飛躍的に高めることができる。」

したがって、刊行物発明における前段の高温熱処理である「1100℃以上の高温熱処埋」を行うに際して、抵抗加熱式の熱処理炉を用い、本願発明のように、「抵抗加熱式の熱処理炉を用いて、」「熱処理する」ことは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
よって、相違点1は、当業者が容易に想到し得る範囲に含まれる程度のものである。

(2)相違点2について
シリコン半導体基板の表層格子間酸素を外方拡散させ無欠陥層を形成するためのアニール処理を、水素雰囲気、不活性ガス雰囲気で行うことは、上記周知例1、2及び以下の周知例3、4に記載されるように従来周知である。

(ウ)周知例3:特開2000-178098号公報には、図2とともに、以下の事項が記載されている。
「【0018】本実施形態例では、上述のようにして得たシリコンウエハに次の条件で水素アニール処理を施す。1100℃から1200℃の範囲の温度で、100%水素雰囲気下で、10?30分程度の熱処理を行い格子間酸素を外方拡散させる。図2は、本実施形態例のウエハの熱処理方法で行う水素アニール処理の作用を説明する模式図である。即ち、水素雰囲気下で熱処理を施すことにより、次の式に示すように、Si表面層の酸化膜を除去し、Si表層の欠陥(Siの酸化物)を分解する。
SiO_(X) →Si+O_(2) (ガス)・・・・・欠陥の分解
SiO_(2 )+2H_(2 )→Si+2H_(2) O・・・酸化膜の除去
【0019】水素アニール処理の熱処理温度及び処理時間は、シリコンウエハのSi結晶中の酸素濃度によって決定される。例えば、
1)酸素濃度が11.0×10^(17)atms/ cm^(3)程度のシリコンウエハでは、
熱処理温度:1100℃?1200℃
熱処理時間:10分程度
2)酸素濃度が13.0×10^(17)atms/ cm^(3)程度のシリコンウエハでは、
熱処理温度:1100℃?1200℃
熱処理時間:30分程度
以上の条件で水素アニール処理をシリコンウエハに施すことにより、図3に示すように、10μm以上のDZ層(無欠陥層)がウエハ表層域に生成する。尚、図3はウエハ表層域に存在するDZ層を示す模式図である。」

(エ)周知例4:特開2000-68279号公報には、図1とともに、以下の事項が記載されている。
「【0003】特にシリコンウェーハのIGとしては、ウェーハ内に過飽和に存在する格子間酸素を熱処理により部分的に析出させて析出核を形成し、その周囲に発生する歪場を重金属不純物のゲッターサイトとする方法がある。この方法では、ウェーハ表面付近に無欠陥層を形成させるためシリコンウェーハに過飽和に存在する格子間酸素を外方拡散させる外方拡散熱処理、シリコンウェーハ内部に酸素析出核を形成する酸素析出核形成熱処理、酸素析出核を成長させるための酸素析出核成長熱処理の三段階の熱処理が行われる。
【0004】外方拡散熱処理は、1100℃以上の高温で2時間から5時間程度行われ、酸素析出核形成熱処理は、500℃?700℃の比較的低温で数時間?50時間程度行われ、酸素析出核成長熱処理は、900℃?1050℃の中温で3時間?10時間程度行われ、これらの熱処理は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気で行われる。なお、IG処理に続いてエピタキシャル成長を行う場合には、エピタキシャル成長工程でウェーハが1100℃以上の高温に加熱されることより、外方拡散層がエピタキシャル層の下部に形成されるので、外方拡散熱処理を省略することもある。」

したがって、刊行物発明における前段の高温熱処理である「1100℃以上の高温熱処埋」の雰囲気として、水素雰囲気、不活性ガス雰囲気を採用し、「水素雰囲気」又は「不活性ガス雰囲気」「で熱処理する」ことは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
よって、相違点2は、当業者が容易に想到し得る範囲に含まれる程度のものである。

(3)まとめ
よって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-09 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2009-12-28 
出願番号 特願2000-229522(P2000-229522)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 周治  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 小野田 誠
近藤 幸浩
発明の名称 シリコン単結晶ウエーハの製造方法  
代理人 好宮 幹夫  

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