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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47B
管理番号 1212055
審判番号 不服2008-899  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-10 
確定日 2010-02-18 
事件の表示 特願2004-127608「厨房装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月4日出願公開,特開2005-304881〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成16年4月23日の出願であって,平成19年12月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年1月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,その後,当審において,平成21年8月21日付けで拒絶理由の通知がなされたところ,同年10月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1,2に係る発明は,平成21年10月22日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。

「シンクまたは調理機器の後方に水や油のはねを防止するはね防止板がカウンター面に対して略垂直に立設された厨房装置において、はね防止板の少なくとも一部の領域に透過型スクリーンが設けられ、この透過型スクリーンに向けて画像を投影するプロジェクターが、はね防止板の後方に配設されていることを特徴とする厨房装置。」


第3.引用刊行物とそれの記載事項
(1)当審における拒絶理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-149150号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「厨房装置」に関して,図面(特に図1,2)とともに,次の記載がある。
(1a)「【0013】図1は本発明の実施例の厨房装置の外観斜視図、図2は同厨房装置を示す縦断面図である。
【0014】図において、キッチン部Aに設置された5は第1のカウンターで、第1のカウンター5には作業スペース5’と水槽6およびコンロ7が設置されて厨房装置を形成している。第2のカウンター8はダイニング部Bに設置されており、第1のカウンター5と背面側が向かい合うように配列されており、また、第1のカウンター5より高さ寸法が低く設定されている。第1のカウンター5の上端と第2のカウンター8の間には昇降可能な遮蔽板9を有する間仕切りユニット10が設置されており、…昇降可能な遮蔽板9は半透過性で、キッチン部とダイニング部を程よく間仕切るようになっている。また、間仕切りユニット10と第2のカウンター8の高さ寸法差に対応する間仕切りユニット10のダイニング部側露出表面部は耐汚性パネル11で構成されている。…」
(1b)「【0015】…キッチン部Aで作業する場合、昇降可能な遮蔽板9を上昇させることにより、…キッチン部Aからの水はねを防止することが実現できる。…」
(1c)「【0018】…本実施例において間仕切りユニット10の遮蔽板9を半透過性としたが、この遮蔽板9に、テレビやインターネット等の情報モニター機能を付加することにより、遮蔽板9に写る料理番組やレシピを見ながら、楽しくキッチン作業を行うことができる。また、遮蔽板9を液晶ガラスで形成することにより、透過と無透過を用途、場面に応じて、使い分けることができる。…」
(1d)図1,2をみると,遮蔽板9が第1のカウンター5面に対して略垂直に立設されていることが明らかである。

これら(1a)?(1d)の記載及び図1,2の記載を含む刊行物1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば,刊行物1には,次の発明(以下,「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「作業スペース5’と水槽6およびコンロ7が設けられてキッチン部Aに設置される第1のカウンター5が形成され,当該第1のカウンター5の背面側に,上昇時にキッチン部Aからの水はねを防止する昇降可能な遮蔽板9が第1のカウンター5面に対して略垂直に立設された厨房装置において,遮蔽板9に,テレビやインターネット等の情報モニター機能を付加することにより,遮蔽板9に写る料理番組やレシピを見ながら,楽しくキッチン作業を行うことができる厨房装置。」

(2)同じく,特開平11-266944号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「プロジェクター付きシステムキッチン及び調理場」に関して,図面(特に図1,5)とともに,次の記載がある。
(2a)「【0016】…図5は本実施形態のシステムキッチン1の下部(調理台2,加熱調理部3,シンク部4)のみを示した内部概略図であり、システムキッチン1の前方より見たところを示している。
【0017】この場合、基体9内にはプロジェクター5が上方に映像を投影するように設けられている。…」
(2b)「【0020】プロジェクター5からの映像は、反射ミラー8a,8bを経て調理台2の天板2aの裏側に投影される(図中、矢印A)。調理台2の天板2aは透過型スクリーンや、安価にしようとするとすりガラスでもよく、使用者はプロジェクター5の映像を調理台2越しに見ることができる。…
【0021】第1実施形態のように上方から映像が投影されていると、スクリーンとなる部分に物を置けないのでスペースの制限を受ける。また、不用意な動作で映像を遮ることがある。これに対して、本実施形態では調理台2の天板2aの裏側から映像が投影されるので、このような問題が解消される。
【0022】尚、本実施形態は調理台2に加熱調理部3とシンク部4を設けたシステムキッチンとしているが、これに限られるものではなく、調理設備であればどのようなものでもよい。また、プロジェクター5の設置位置も、調理台2天板2aの透過型スクリーンに映像が投影される位置であればどこでもよく、さらに透過型スクリーンの形成位置も上記構成に限られるものではない。」
(2c)「【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のプロジェクター付きシステムキッチン及び調理場では、プロジェクターによって投影された映像を使用者は作業姿勢のまま見ることができる。これによって、レシピやテレビの料理番組を見ながら作業しても無駄な動作がなくなり、能率よく作業が行える。

【0027】
また、調理台の上方より映像が投影されている場合は不用意な動作によって映像が切れたり、物を置くスペースが限られてしまうが、請求項3のプロジェクター付きシステムキッチンによると、調理台は透過型スクリーンとなって下方より映像が投影されるので、上記の問題は解消される。」

これら(2a)?(2c)の記載及び図1,5の記載を含む刊行物2全体の記載並びに当業者の技術常識によれば,刊行物2には,次の発明(以下,「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「シンク部4と加熱調理部3と調理台2を設けたシステムキッチン1において,調理台2の天板2aを透過型スクリーンにし,この透過型スクリーンに向けて映像を投影するプロジェクター5が,上記天板2aの裏側に配設され,使用者がプロジェクター5によって投影された映像を作業姿勢のまま見ることができ,映像を見ながら能率よく作業を行えるようにしたシステムキッチン1。」


第4.対比・判断
(1)本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「水槽6」は本願発明の「シンク」に相当し,以下同様に,「第1のカウンター5」は「カウンター」に相当し,「(第1のカウンター5の)背面側」は「(シンクの)後方」に相当し,「(上昇時にキッチン部Aからの水はねを防止する昇降可能な)遮蔽板9」は「(水のはねを防止する)はね防止板」に相当する。
また,刊行物1記載の発明の「遮蔽板9に,テレビやインターネット等の情報モニター機能を付加する」と本願発明の「はね防止板の少なくとも一部の領域に透過型スクリーンが設けられ、この透過型スクリーンに向けて画像を投影するプロジェクターが、はね防止板の後方に配設されている」とは「はね防止板に情報モニター機能を付加する」で共通する。

そうすると,両者は,
「シンクの後方に水のはねを防止するはね防止板がカウンター面に対して略垂直に立設された厨房装置において,はね防止板に情報モニター機能を付加する厨房装置。」の点で一致し,次の点で相違する。

<相違点>
はね防止板に情報モニター機能を付加する構成について,
本願発明が,「はね防止板の少なくとも一部の領域に透過型スクリーンが設けられ、この透過型スクリーンに向けて画像を投影するプロジェクターが、はね防止板の後方に配設されている」のに対して,
刊行物1記載の発明では,「遮蔽板9」(はね防止板)に,「テレビやインターネット等の情報モニター機能を付加する」ものの,その具体的手段が定かでない点。

(2)相違点の検討
上記相違点について検討する。
刊行物2記載の発明は,上記「第3.(2)」で説示したとおり,「シンク部4と加熱調理部3と調理台2を設けたシステムキッチン1において,調理台2の天板2aを透過型スクリーンにし,この透過型スクリーンに向けて映像を投影するプロジェクター5が,上記天板2aの裏側に配設され,使用者がプロジェクター5によって投影された映像を作業姿勢のまま見ることができ,映像を見ながら能率よく作業を行えるようにしたシステムキッチン1。」であるところ,
当該発明の「シンク部4と加熱調理部3と調理台2を設けたシステムキッチン1」は本願発明の「厨房装置」に相当し,以下同様に,「映像」は「画像」に相当し,また,同発明の「調理台2の天板2aを透過型スクリーンにし」と本願発明の「はね防止板の少なくとも一部の領域に透過型スクリーンが設けられ」とは「(使用者がプロジェクターによって投影された画像を作業姿勢のまま見ることができる)厨房装置部分の少なくとも一部の領域に透過型スクリーンが設けられ」で共通し,同発明の「透過型スクリーンに向けて映像を投影するプロジェクター5が,天板2aの裏側に配設され」と本願発明の「透過型スクリーンに向けて画像を投影するプロジェクターが、はね防止板の後方に配設され」とは「透過型スクリーンに向けて画像を投影するプロジェクターが,厨房装置部分の少なくとも一部の領域の後方に配設され」で共通するから,
「使用者がプロジェクターによって投影された画像を作業姿勢のまま見ることができる厨房装置部分の少なくとも一部の領域に透過型スクリーンが設けられ,上記領域の後方に,上記透過型スクリーンに向けて画像を投影するプロジェクターが配設されている厨房装置。」との技術は,本願出願時点において,既に公知のものであったということができる。

ところで,刊行物1記載の発明の「遮蔽板9」は,既に説示しているように,本願発明の「はね防止板」に相当するものであり,当該「遮蔽板9」に写る「料理番組やレシピを見ながら,楽しくキッチン作業を行うことができる」もの,つまり,本願発明の「はね防止板」が「調理者は、透過型スクリーンに映った画像を見ながら調理作業を行うことができる」(本願出願当初明細書,段落【0011】を参照。)位置に設けられているのと同様に,作業姿勢のまま見ることができる位置に設けられているものであって,これに,「テレビやインターネット等の情報モニター機能を付加」したものであり(請求人が主張しているように,「人の視線が当然そちらに向かうであろうところに情報モニター機能を付加することは記載されていない」(意見書,2頁下から4?3行)というものではない。),
一方,刊行物2記載の発明の「透過型スクリーン」は,「調理者が覗き見ることのできる位置に設けられている」(本願出願当初明細書,段落【0002】(【特許文献1】の説明)を参照。)ものであり,しかも,刊行物2の「透過型スクリーンの形成位置も上記構成に限られるものではない」(上記(2b)の記載を参照。)との記載に照らすならば,当該「透過型スクリーン」を,「調理台2の天板2a」に形成すること以外に,使用者がプロジェクターによって投影された画像を作業姿勢のまま見ることができ,映像を見ながら能率よく作業を行える位置であれば,「システムキッチン1」(厨房装置)の適宜の位置に形成できることが伺えるものであることからすると,
刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とは,技術的に同等なものとして考慮することができるものといえる。

そして,略垂直に立設された壁状部材の一部の領域に透過型スクリーンを設け,当該透過型スクリーンの後方に画像を投影するプロジェクターを配設することは,例えば,特開2000-24128号公報(防煙壁1の一部の領域に透過型のスクリーン部11を設け,当該スクリーン部11の後方に映像投射機12を配設している。図1,2を参照。),特開2002-162686号公報(ガラスGの一部の領域に透過スクリーン1を設け,当該透過スクリーン1の後方にプロジェクター2を配設している。図1を参照。),登録実用新案第3068901号公報(ガラス板3の一部の領域に透過式スクリーン装置を構成するフィルム2を設け,当該フィルム2の後方にプロジェクター14を配設している。図1,2を参照。)に記載されているように,画像投影の技術分野において従来から周知の技術である。

以上の事情を考慮するならば,刊行物1記載の発明の「遮蔽板9」(はね防止板)に,情報モニター機能を付加するにあたり,刊行物2記載の発明の技術及び画像投影の技術分野における周知の技術を適用することについては,当業者にとって格別に困難なことであったとは認められない。

してみると,本願発明の上記相違点に係る構成は,刊行物2記載の発明の技術及び画像投影の技術分野における周知の技術から,当業者が容易に想到し得たことといえる。

(3)作用効果・判断
そして,本願発明の全体の構成により奏する作用効果は,刊行物1,2記載の発明及び画像投影の技術分野における周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって,本願発明は,刊行物1,2記載の発明及び画像投影の技術分野における周知の技術に基づいて,当業者が格別の技術的困難性を要することなしに容易に発明をすることができたものである。


第5.むすび
以上のとおりであり,本願発明は,刊行物1,2記載の発明及び画像投影の技術分野における周知の技術に基づいて,当業者が格別の技術的困難性を要することなしに容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-09 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願2004-127608(P2004-127608)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 関根 裕
宮崎 恭
発明の名称 厨房装置  
代理人 西澤 利夫  

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