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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1212113
審判番号 不服2008-16698  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-01 
確定日 2010-02-15 
事件の表示 平成10年特許願第122162号「ディーゼルエンジン用排気ガス浄化システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月26日出願公開、特開平11- 22453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯及び本願発明
本願出願は、平成10年5月1日(パリ条約による優先権主張1997年5月2日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成19年8月20日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成20年2月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年7月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年2月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、次のとおりのものである。

「平行な流路を有し、その壁面に触媒活性皮膜を備えているハニカム体の形の2つの直列に接続されたディーゼル排気ガス触媒に排気ガスを導くことにより、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化する方法において、上流に存在する第一触媒が断面積1cm^(2)あたり80までの流路のセル密度を有し、下流に配置された第二触媒のセル密度が第一触媒のセル密度よりも大きいことを特徴とする、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化する方法。」


[2]理由1
1.刊行物
(1)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-18123号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a)「[産業上の利用分野]
本発明は、車両等に用いられるエンジンの排気系に装備されて、排気ガス中の有害成分を浄化処理する触媒コンバータに関する。」(公報第1ページ左欄第13ないし16行)

b)「第1図ないし第3図は本発明の第1実施例に係り、第1図は触媒コンバータの断面図、第2図はモノリス触媒のセル密度を示す説明図、第3図は排気ガスの流れを示す説明図である。
本実施例による触媒コンバータ21は、略円筒状のコンバータケース22と、このコンバータケース22内に軸方向端面間に空隙を有する状態で直列に収納された複数、例えば2つのモノリス触媒、すなわち、上流側モノリス触媒23及び下流側モノリス触媒24とから構成されている。前記コンバータケース22は、筒状の胴部25と、この胴部25の上流側に前記胴部25より細径に形成され、図示しないエンジンの排気系に連通する入口部26と、前記胴部25の下流側に例えば前記入口部26と同径に形成された出口部27とを有している。」(公報第2ページ右下欄第13行ないし同第3ページ左上欄第8行)

c)「この上流側モノリス触媒23及び下流側モノリス触媒24は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、または、これらの組み合せ等が用いられ、酸化触媒あるいは三元触媒として作用する。また、この上流側モノリス触媒23及び下流側モノリス触媒24には、第2図(a)及び
(b)に示すように、それぞれ、例えば格子状に区画形成されたセル31及びセル32によって、軸方向に排気ガス通路が形成されている。
本実施例では、前記上流側モノリス触媒23のセル31の寸法が、前記下流側モノリス触媒24のセル32の寸法よりも大きく(セル31の密度がセル32の密度より小さく)形成されている。例えば、下流側モノリス触媒24のセル密度が400セル/in^(2)であるのに対して上流側モノリス触媒23のセル密度が200セル/in^(2)、あるいは、下流側モノリス触媒のセル密度が600セル/in^(2)であるのに対して上流側モノリス触媒のセル密度が300セル/in^(2)であるようになっている。」(公報第3ページ左上欄第19行ないし同右上欄第19行)

d)「なお、本発明は前記実施例によって限定されず、例えば、モノリス触媒のセルは格子状のものに限らず、ハニカム状や渦巻状等であっても良い。」(公報第4ページ左欄第9ないし11行)

(2)ここで、上記(1)b)ないしd)、及び第1図ないし第3図の記載より、次のことが分かる。

ア)(1)c)及びd)、並びに第1図及び第3図の記載より、モノリス触媒が、ハニカム状の形であって、平行な排気ガス通路を有し、その壁面に触媒を備えていることが分かる。

イ)(1)b)及びc)、並びに第1図及び第3図の記載より、2つのモノリス触媒が直列に接続されていることが分かる。

ウ)(1)b)及びc)、並びに第1図ないし第3図の記載より、直列に接続されている2つのモノリス触媒のうち、上流に存在する上流側モノリス触媒23のセル密度が200セル/in^(2) 又は300セル/in^(2)であるのに対し、下流に配置された下流側モノリス触媒24のセル密度が400セル/in^(2) 又は600セル/in^(2)であり、下流側モノリス触媒24のセル密度を上流側モノリス触媒23のセル密度よりも大きくしていることが分かる。

(3)刊行物1に記載された発明
したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物1に記載された発明>
「平行な排気ガス通路を有し、その壁面に触媒を備えているハニカム状の形の2つの直列に接続されたモノリス触媒に排気ガスを導くことにより、エンジンの排気ガスを浄化する方法において、上流に存在する上流側モノリス触媒23が200セル/in^(2) 又は300セル/in^(2)のセル密度を有し、下流に配置された下流側モノリス触媒24のセル密度が上流側モノリス触媒23のセル密度よりも大きいこととする、エンジンの排気ガスを浄化する方法。」

2.対比・判断
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物1に記載された発明における「排気ガス通路」は本願発明における「流路」に相当する。また同様に、刊行物1に記載された発明における「ハニカム状の形」は本願発明における「ハニカム体の形」に、「上流側モノリス触媒23」は「第一触媒」に、「下流側モノリス触媒24」は「第二触媒」にそれぞれ相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「触媒」と本願発明における「触媒活性皮膜」とは、「触媒活性材」である限りにおいて一致する。
さらに、刊行物1に記載された発明における「モノリス触媒」と本願発明における「ディーゼル排気ガス触媒」とは「排気ガス触媒」である限りにおいて一致する。
そして、刊行物1に記載された発明における「エンジン」は、本願発明における「ディーゼルエンジン」の上位概念である。
それから、刊行物1に記載された発明における「200セル/in^(2) 又は300セル/in^(2)のセル密度」は、「約31セル/cm^(2) 又は約47セル/cm^(2) のセル密度」と換算され、これは「断面積1cm^(2)あたり約31又は約47の流路のセル密度」と言い換えることができるから、刊行物1に記載された発明における「200セル/in^(2) 又は300セル/in^(2)のセル密度」と本願発明における「断面積1cm^(2)あたり80までの流路のセル密度」とは、「断面積1cm^(2)あたり約31又は約47の流路のセル密度」である限りにおいて相違はない。

してみると、本願発明と刊行物1に記載された発明とは、
「平行な流路を有し、その壁面に触媒活性材を備えているハニカム体の形の2つの直列に接続された排気ガス触媒に排気ガスを導くことにより、エンジンの排気ガスを浄化する方法において、上流に存在する第一触媒が断面積1cm^(2)あたり約31又は約47の流路のセル密度を有し、下流に配置された第二触媒のセル密度が第一触媒のセル密度よりも大きいこととする、エンジンの排気ガスを浄化する方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、触媒活性材が「触媒活性被膜」であって「被膜」とされているのに対し、刊行物1に記載された発明では、触媒活性材である「触媒」が「被膜」とされているか否かが明らかではない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
本願発明では、排気ガス触媒が「ディーゼル排気ガス触媒」であり、また、エンジンが「ディーゼルエンジン」であるのに対し、刊行物1に記載された発明では、排気ガス触媒である「モノリス触媒」がディーゼル用であるか否かが明らかではなく、また、エンジンが「ディーゼルエンジン」であるか否かが明らかではない点(以下、「相違点2」という。)。

上記相違点1及び2について検討する。
<相違点1について>
触媒活性材を被膜とする技術は、触媒技術分野において一般的に用いられている技術(必要であれば、特開平6-288223号公報(【特許請求の範囲】の【請求項1】等参照。)、特開平4-358539号公報(段落【0009】及び【0010】等参照。)、特開平6-182219号公報(段落【0046】及び【0063】等参照。)、及び特開平1-315340号公報(公報第2ページ右下欄第18行ないし同第3ページ左上欄第6行の記載等参照。)参照。)であるから、刊行物1に記載された発明における触媒活性材である「触媒」を被膜とし、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
刊行物1に記載された発明における「モノリス触媒」は、刊行物1の公報第1ページ左欄第17行ないし同第2ページ左下欄第5行、及び公報第3ページ左上欄第19行ないし同右上欄第19行の記載からみて、HCやCOを浄化する酸化触媒を備えていることが分かるが、HCやCOを浄化する酸化触媒をディーゼルエンジンに適用する技術は周知(以下、「周知技術」という。例えば、特開平3-210008号公報(公報第1ページ右欄第16ないし20行及び公報第2ページ右下欄第3ないし18行の記載等参照。)、特開平6-288223号公報(【特許請求の範囲】の【請求項1】等参照。)及び特開平4-358539号公報(段落【0001】、【0009】及び【0010】等参照。)参照。)である。
よって、刊行物1に記載された発明に、上記周知技術を適用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、刊行物1に記載された発明及び上記周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


[3]理由2
1.刊行物
(1)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平3-210008号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a)「(1)ディーゼル排ガス中のパティキュレートを除去するためのフィルタを備えたディーゼル排ガス処理装置において、卑金属系触媒を担持した目の細かいフィルタからなる第1のフィルタと、貴金属系触媒を担持すると共に第1のフィルタよりも目の粗いフィルタからなる第2のフィルタとを、排ガスの流れ方向に対して直列に組合せて設置したことを特徴とするをディーゼル排ガス処理装置。
(2)前記第1のフィルタのセル平均径が1mm以下であることを特徴とする請求項(1)記載のディーゼル排ガス処理装置。
(3)前記第2のフィルタのセル平均径が1mmよりも大きいことを特徴とする請求項(1)記載のディーゼル排ガス処理装置。
(4)第2のフィルタを排ガス上流側に設置し、第1のフィルタを排ガス下流側に設置したことを特徴とする請求項(1)記載のディーゼル排ガス処理装置。」(2.特許請求の範囲の請求項(1)ないし(4))

b)「〔産業上の利用分野〕
本発明はディーゼル排ガス処理装置に係り、特に排ガス中のパティキュレートを効率良く除去するためのフィルタを備えた装置に関する。」(公報第1ページ右欄第11ないし14行)

c)「第1図は本発明のディーゼル排ガス処理装置の一実施例を示す概略的構成図である。
このディーゼル排ガス処理装置は、フランジ部5で連結されたケーシング4内の排ガスの上流側から下流側に蓄熱体1,目の粗いフィルタからなる第2のフィルタ2、目の細かいフィルタからなる第1のフィルタ3が順次配設されている。
ここで、フィルタの材質はコージェライト,ムライト,ジルコニア,アルミナ,シリカ,チタニア,炭化ケイ素,窒化ケイ素等の多孔質セラミックが好適であるが、これらに限定されるものではない。目の細かいフィルタ(第1のフィルタ)3としては、3次元網目状構造のパティキュレートを捕集する効果が高く圧力損失の低いフィルタが好ましく、セル平均径が1mm以下のセラミックフォームが適している。
また、目の粗いフィルタ(第2のフィルタ)2としては、パティキュレートを捕集効果を具備する必要はなく、したがって圧力損失の少ない構造であれば特に限定されないが、セル平均径が1mmよりも大きいセラミックフォーム,セラミックハニカム等が好適である。
また目の細かいフィルタ(第1のフィルタ)3に担持する触媒成分としては、卑金属系の銅,マンガン,コバルト,鉄,ニッケル,バナジウム,モリブデン,タングステン,ビスマス,ランタン,セリウム,クロム,ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,バリウム,亜鉛,鉛,錫から選ばれた少なくとも1種の金属の化合物が好適に用いられるが、これらの混合化合物及び複合化合物でも良い。
また目の粗いフィルタ(第2のフィルタ)2に担持する触媒成分としては、貴金属系触媒である白金,パラジウム及びロジウムから選ばれた少なくとも1種以上の金属の化合物が好適であるが、さらに上記の卑金属系触媒の1種以上を同時に担持してもよい。」(公報第3ページ右上欄第17行ないし同右下欄第13行)

d)「次に本発明を試験例によってさらに詳細に説明する。なお、本実施例及び比較例で用いた触媒フィルタは以下のように調整した。
〔フィルタA〕
コージェライト質の3次元網目状構造のセラミックフィルタ(セル平均径0.5mm)を活性アルミナスラリに浸漬し、120℃で4時間乾燥後500℃で5時間焼成した。これを硝酸マンガン水溶液に浸漬し、120℃で4時間乾燥後500℃で2時間焼成し、Mnをフィルタ1l当たり1g担持したフィルタAを得た。
〔フィルタB〕
コージェライト質の3次元綱目状構造のセラミックフィルタ(セル平均径0.5mm)を活性アルミナスラリに浸漬し、120℃で4時間乾燥後500℃で5時間焼成した。これを硝酸コバルト水溶液に浸漬し、120℃で4時間乾燥後500℃で2時間焼成し、Co担持量が1g/lのフィルタBを得た。
〔フィルタC〕
住友化学製γ-アルミナハニカム(200セル/in^(2) )を硝酸パラジウム水溶液に浸漬し、120°Cで4時間乾燥後500°Cで2時間焼成した。これをさらに水蒸気流中で400℃で2時間還元して、Pdを2g/l担持した触媒フィルタCを得た。」(公報第4ページ左上欄第7行ないし同右上欄第12行)

e)「これらの触媒フィルタと蓄熱材は、組合せを変えて第2図に示すような実施例及び比較例のパティキュレート除去用触媒フィルタとし、下記の試験を行った。」(公報第4ページ右下欄第5ないし8行)

(2)ここで、上記(1)a)ないしe)、並びに第1図及び第2図の記載より、次のことが分かる。

ア)(1)a)、c)、d)及びe)、並びに第1図及び第2図の記載より、第1のフィルタ3及び第2のフィルタ2が、流路を有し、その壁面に触媒を担持していることが分かる。

イ)(1)a)、c)、d)及びe)、並びに第1図及び第2図の記載より、第1のフィルタ3及び第2のフィルタ2は、直列に接続されていることが分かる。

ウ)(1)a)ないしc)の記載より、第1のフィルタ3及び第2のフィルタ2は、ディーゼルエンジン用であり、排ガスが導かれることにより、ディーゼルエンジンの排ガス中のパティキュレートを除去して、排ガスを浄化していることが分かる。

エ)(1)a)、c)、d)及びe)、並びに第1図及び第2図の記載より、直列に接続されている第1のフィルタ3及び第2のフィルタ2のうち、上流に存在する第2のフィルタ2はハニカムの形であって200セル/in^(2 )のセル密度を有し、下流に配置された第1のフィルタ3のセル平均径が第2のフィルタ2のセル平均径より小さいことが分かる。また、第2のフィルタ2はハニカムの形であるので、流路が平行であることが分かる。

(3)刊行物2に記載された発明
したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物2に記載された発明>
「流路を有し、その壁面に触媒を担持している2つの直列に接続されたディーゼルエンジン用の第1のフィルタ3及び第2のフィルタ2に排ガスを導くことにより、ディーゼルエンジンの排ガスを浄化する方法において、上流に存在する第2のフィルタ2は流路が平行であるハニカムの形であって200セル/in^(2 )のセル密度を有し、下流に配置された第1のフィルタ3のセル平均径が第2のフィルタ2のセル平均径より小さいこととする、ディーゼルエンジンの排ガスを浄化する方法。」

本願発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物2に記載された発明における「ディーゼルエンジン用の第1のフィルタ3及び第2のフィルタ2」は本願発明における「ディーゼル排気ガス触媒」に相当する。また同様に、刊行物2に記載された発明における「排ガス」は本願発明における「排気ガス」に、「第2のフィルタ2」は「第一触媒」に、「第1のフィルタ3」は「第二触媒」にそれぞれ相当する。
また、刊行物2に記載された発明における「触媒を担持し」と本願発明における「触媒活性皮膜を備え」とは、「触媒活性材を備え」である限りにおいて一致する。
さらに、刊行物2に記載された発明における「第2のフィルタ2は流路が平行であるハニカムの形であって」と本願発明における「平行な流路を有し、」「ハニカム体の形の」「ディーゼル排気ガス触媒」とは、「第一触媒は流路が平行であるハニカム体の形であって」という限りにおいて一致する。
そして、刊行物2に記載された発明における「200セル/in^(2) のセル密度」は、「約31セル/cm^(2) 」と換算され、これは「断面積1cm^(2)あたり約31の流路のセル密度」と言い換えることができるから、刊行物2に記載された発明における「200セル/in^(2) のセル密度」と本願発明における「断面積1cm^(2)あたり80までの流路のセル密度」とは、「断面積1cm^(2)あたり約31の流路のセル密度」である限りにおいて相違はない。
それから、刊行物2に記載された発明における「第1のフィルタ3のセル平均径が第2のフィルタ2のセル平均径より小さい」は、「セル密度」という観点から見た場合、「第1のフィルタ3のセル密度が第2のフィルタ2のセル密度よりも大きい」と言い換えることができるから、本願発明における「第二触媒のセル密度が第一触媒のセル密度よりも大きい」に相当する。

してみると、本願発明と刊行物2に記載された発明とは、
「流路を有し、その壁面に触媒活性材を備えている2つの直列に接続されたディーゼル排気ガス触媒に排気ガスを導くことにより、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化する方法において、上流に存在する第一触媒は流路が平行であるハニカム体の形であって断面積1cm^(2)あたり約31の流路のセル密度を有し、下流に配置された第二触媒のセル密度が第一触媒のセル密度よりも大きいこととする、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化する方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点3>
第一触媒の下流に配置された第二触媒が、本願発明では、流路が平行であるハニカム体の形であるに対し、刊行物2に記載された発明では、そのような構成となっていない点(以下、「相違点3」という。)。

<相違点4>
本願発明では、触媒活性材が「触媒活性被膜」であって「被膜」とされているのに対し、刊行物2に記載された発明では、触媒活性材である「触媒」が「被膜」とされているか否かが明らかではない点(以下、「相違点4」という。)。

上記相違点3及び4について検討する。

<相違点3について>
触媒を流路が平行であるハニカム体の形とする技術は、触媒技術分野において一般的に用いられている技術(必要であれば、特開平6-288223号公報(段落【0022】等参照。)、特開平4-358539号公報(段落【0009】等参照。)、特開平6-182219号公報(段落【0038】及び【0073】等参照。)、及び特開平1-315340号公報(公報第2ページ右下欄第18行ないし同第3ページ左上欄第6行の記載等参照。)参照。)であるから、刊行物2に記載された発明における「触媒」を流路が平行であるハニカム体の形とし、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点4について>
触媒活性材を被膜とする技術は、触媒技術分野において一般的に用いられている技術(必要であれば、特開平6-288223号公報(【特許請求の範囲】の【請求項1】等参照。)、特開平4-358539号公報(段落【0009】及び【0010】等参照。)、特開平6-182219号公報(段落【0046】及び【0063】等参照。)、及び特開平1-315340号公報(公報第2ページ右下欄第18行ないし同第3ページ左上欄第6行の記載等参照。)参照。)であるから、刊行物2に記載された発明における「触媒活性材」である「触媒」を被膜とし、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、刊行物2に記載された発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


[4]まとめ
上記[2]理由1及び[3]理由2により、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-16 
結審通知日 2009-09-18 
審決日 2009-09-30 
出願番号 特願平10-122162
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 加藤 友也
八板 直人
発明の名称 ディーゼルエンジン用排気ガス浄化システム  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
代理人 杉本 博司  
代理人 山崎 利臣  

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