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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1212145
審判番号 不服2008-6871  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-21 
確定日 2010-02-19 
事件の表示 特願2001- 95095「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 8日出願公開、特開2002-291986〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件の経緯概要は以下のとおりである。

特許出願 平成13年3月29日
審査請求 平成17年1月24日
拒絶理由 平成19年10月31日
手続補正 平成19年12月26日
拒絶査定 平成20年2月15日
審判請求 平成20年3月21日
手続補正 平成20年4月10日

第2 平成20年4月10日付の手続補正についての補正却下の決定

[結論]

平成20年4月10日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正前後の請求項の記載

本件補正前(平成19年12月26日付の手続補正書)の請求項1と、本件補正後(平成20年4月10日付の手続補正書)の請求項1は、それぞれ次のとおりである。

[本件補正前の請求項1]
「遊技に必要な複数種類の図柄を可変表示するための複数のリールと、
該複数のリールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
前記複数のリールに対応して設けられ、前記複数のリールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
前記スタートスイッチが操作されたことに基づいて複数種類の入賞態様の中から入賞態様を抽選する入賞態様抽選手段と、
該入賞態様抽選手段による抽選の結果と前記ストップスイッチの操作とに基づいて所定の図柄数の範囲内で前記図柄を停止表示させる停止制御手段と、
該停止制御手段による停止制御の結果、前記複数のリールにおける前記図柄の停止表示態様が前記複数種類の入賞態様のいずれかの図柄の組み合わせである場合に遊技者に利益を付与するための利益付与手段と、
前記入賞態様抽選手段により決定された入賞態様を遊技者に対して報知する報知手段とを備え、
前記複数種類の入賞態様は、
通常遊技状態と比較して遊技者にとって有利な特別遊技状態の開始条件であり、前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が次遊技以降に持ち越し可能な特別入賞態様と、
前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が次遊技以降に持ち越されない複数の小役の入賞態様であって、該入賞態様各々の図柄の組み合わせを構成する前記図柄が複数のリールの少なくとも一において前記所定の図柄数の範囲を超えて配置された所定の入賞態様と、
前記特別入賞態様および前記所定の入賞態様とは異なる特定の入賞態様とを含み、
前記報知手段は、通常遊技状態と比較して遊技者にとって有利でありかつ前記特別遊技状態とは異なる特定遊技状態であるときには、前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が前記所定の入賞態様であるとその旨を報知し、
前記特定遊技状態は、前記通常遊技状態中の予め定められた移行可能期間において、前記特定の入賞態様の図柄の組み合わせが所定回数停止表示された場合に移行することを特徴とする遊技機。」

[本件補正後の請求項1]
「遊技に必要な複数種類の図柄を可変表示するための複数のリールと、
該複数のリールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
前記複数のリールに対応して設けられ、前記複数のリールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
前記スタートスイッチが操作されたことに基づいて複数種類の入賞態様の中から入賞態様を抽選する入賞態様抽選手段と、
該入賞態様抽選手段による抽選の結果と前記ストップスイッチの操作とに基づいて所定の図柄数の範囲内で前記図柄を停止表示させる停止制御手段と、
該停止制御手段による停止制御の結果、前記複数のリールにおける前記図柄の停止表示態様が前記複数種類の入賞態様のいずれかの図柄の組み合わせである場合に遊技者に利益を付与するための利益付与手段と、
前記入賞態様抽選手段により決定された入賞態様を遊技者に対して報知する報知手段とを備え、
前記複数種類の入賞態様は、
通常遊技状態と比較して遊技者にとって有利な特別遊技状態の開始条件であり、前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が次遊技以降に持ち越し可能な特別入賞態様と、
前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が次遊技以降に持ち越されない複数の小役の入賞態様であって、該入賞態様各々の図柄の組み合わせを構成する前記図柄が複数のリールの少なくとも一において前記所定の図柄数の範囲を超えて配置された所定の入賞態様と、
前記特別入賞態様および前記所定の入賞態様とは異なる小役の入賞態様である特定の入賞態様とを含み、
前記入賞態様抽選手段は、前記特別入賞態様が持ち越されている場合であっても、前記特別入賞態様以外の入賞態様を抽選可能に構成され、
前記停止制御手段は、前記特別入賞態様よりも前記小役の入賞態様を優先して停止表示させるように停止制御を行い、
前記報知手段は、通常遊技状態と比較して遊技者にとって有利でありかつ前記特別遊技状態とは異なる特定遊技状態であるときには、前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が前記所定の入賞態様であるとその旨を報知し、
前記特定遊技状態は、前記通常遊技状態中の予め定められた移行可能期間において、前記特定の入賞態様の図柄の組み合わせが所定回数停止表示された場合に移行することを特徴とする遊技機。」

2.本件補正の検討

本件補正前の請求項1に対して、本件補正後の請求項1は次の(a)、(b)で変更されている。
(a)本件補正前の「特定の入賞態様」を「小役の入賞態様である特定の入賞態様」に変更
(b)「前記入賞態様抽選手段は、前記特別入賞態様が持ち越されている場合であっても、前記特別入賞態様以外の入賞態様を抽選可能に構成され、前記停止制御手段は、前記特別入賞態様よりも前記小役の入賞態様を優先して停止表示させるように停止制御を行い」という記載を追加

これについて検討すると、少なくとも(a)の変更点は特定の入賞態様について具体的に限定しているものであるから限定的減縮に該当する。よって、請求項1にかかる本件補正は限定的減縮を含む補正と認められるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。

3.引用例

原査定の拒絶の理由において引用された特開2001-79147号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

【請求項1】 外周面に複数の図柄を表示した回転リールを有するリールユニットと、
前記リールユニットの駆動を開始させるためのスタートスイッチと、
前記リールユニットの駆動を停止させるためのストップスイッチと、
前記スタートスイッチ及び前記ストップスイッチの操作により、前記回転リールの回転及び停止を制御するための遊技制御装置とを備えるようにしたスロットマシンにおいて、
遊技として、通常遊技と、抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも設け、
前記遊技制御装置は、
予め設定された抽選確率に基づいて入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段と、
前記通常遊技を行わせるための通常遊技制御手段と、
前記入賞抽選手段の抽選結果に基づいて開始する前記特別遊技を行わせるための特別遊技制御手段と、
前記特別遊技が集中して発生した場合に所定の演出を行わせるための特別遊技集中演出制御手段とを備え、
前記特別遊技集中演出制御手段は、当該特別遊技から直前の所定の回数の特別遊技までの通常遊技の遊技回数の合計が所定の遊技回数以内である場合に演出を行うようにしていることを特徴とするスロットマシン。
【0007】すなわち、請求項4記載の発明は、特別遊技の集中発生に対して、演出に加えて、いわゆるチャレンジタイム(CT)が行われ、遊技者の特別遊技の集中発生への期待感をさらに高めることができるスロットマシンを提供しようとするものである。
【0033】すなわち、メダルの投入を条件に、スタートスイッチ30を操作すると、リールユニット60が駆動され、三個の回転リール40が回転を開始する。その後、ストップスイッチ50の一個を操作すると、当該対応する回転リール40の回転が停止する。そして、ストップスイッチ50を三個全て操作すると、三個の回転リール40の回転が全て停止する。このとき、表示窓12の有効入賞ライン上に、予め設定された図柄61が停止すると、ホッパーユニット65を介して所定枚数のメダルが払い出される。なお、メダルを払い出す代わりに、クレジットしても良い。
【0034】入賞には、遊技者に利益を付与する小役入賞と、この小役入賞よりもさらに大きな利益を遊技者に付与する特別入賞とを備えている。そして、抽選結果が特別入賞である場合に、特別入賞フラグが成立し、この特別入賞フラグ成立中に、リールユニット60の回転リール40の停止図柄61の組み合わせが、予め定められた所定の特別入賞図柄61(例えば、有効入賞ライン上に「7」が三個揃うもの)と一致したことを条件に入賞が確定し、遊技者に有利な特別遊技を行わせるように形成されている。そして、抽選により特別入賞フラグが成立したが、回転リール40の停止図柄61の組み合わせが特別入賞図柄61と一致していない場合、それ以後の遊技に特別入賞フラグ成立の権利が持ち越されるように設定されている。

引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「外周面に複数の図柄を表示した回転リールを有するリールユニットと、
前記リールユニットの駆動を開始させるためのスタートスイッチと、
前記リールユニットの駆動を停止させるためのストップスイッチと、
前記スタートスイッチ及び前記ストップスイッチの操作により、前記回転リールの回転及び停止を制御するための遊技制御装置とを備えるようにしたスロットマシンにおいて、
遊技として、通常遊技と、抽選結果に基づいて開始する特別遊技とを少なくとも設け、
前記遊技制御装置は、予め設定された抽選確率に基づいて入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段を備え、
メダルの投入を条件に前記スタートスイッチを操作すると、前記リールユニットが駆動され三個の回転リールが回転を開始し、その後ストップスイッチの一個を操作すると、当該対応する回転リールの回転が停止し、そして前記三個の回転リールの回転が全て停止したとき表示窓の有効入賞ライン上に予め設定された図柄が停止すると、所定枚数のメダルが払い出され、
前記入賞には、遊技者に利益を付与する小役入賞と、この小役入賞よりもさらに大きな利益を遊技者に付与する特別入賞とを備え、
前記入賞抽選手段による抽選結果が前記特別入賞である場合に特別入賞フラグが成立し、この特別入賞フラグ成立中に、リールユニットの回転リールの停止図柄の組み合わせが、予め定められた所定の特別入賞図柄(例えば、有効入賞ライン上に「7」が三個揃うもの)と一致したことを条件に入賞が確定し、遊技者に有利な特別遊技を行わせ、また抽選により特別入賞フラグが成立したが、回転リールの停止図柄の組み合わせが特別入賞図柄と一致していない場合、それ以後の遊技に特別入賞フラグ成立の権利が持ち越されるものであり、
当該特別遊技から直前の所定の回数の特別遊技までの通常遊技の遊技回数の合計が所定の遊技回数以内である場合に、チャレンジタイム(CT)が行われるようにしたスロットマシン。」

4.対比

ここで引用発明と本願補正発明を対比する。
引用発明における「スロットマシン」は本願補正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、「回転リール」は「リール」に、「入賞抽選手段」は「入賞態様抽選手段」に、「小役入賞」は「小役の入賞態様」に、「特別入賞」は「特別入賞態様」に、「チャレンジタイム(CT)」は「特定遊技状態」に、それぞれ相当する。
引用発明の「図柄」も、「予め設定された図柄が停止すると、所定枚数のメダルが払い出され」るものであるから「遊技に必要」であることは明らかである。よって、引用発明の「複数の図柄」とは本願補正発明の「遊技に必要な複数種類の図柄」に相当する。
引用発明の「回転リールの回転」とは、図柄の「可変表示」に相当することは当然のことである。
引用発明も「ストップスイッチの一個を操作すると、当該対応する回転リールの回転が停止し」とあるから、ストップスイッチが「前記複数のリールに対応して設けられ」ていることは明らかである。
引用発明も、小役入賞と特別入賞を抽選しているから、「複数種類の入賞態様の中から入賞態様を抽選する」ものであることは明らかである。
引用発明の「遊技制御装置」は「回転リールの回転及び停止を制御するため」のものであるから、本願補正発明の「停止制御手段」に相当する。

引用発明から以下の点も云える。
引用発明の「前記三個の回転リールの回転が全て停止したとき表示窓の有効入賞ライン上に予め設定された図柄が停止する」場合とは、本願補正発明の「該停止制御手段による停止制御の結果、前記複数のリールにおける前記図柄の停止表示態様が前記複数種類の入賞態様のいずれかの図柄の組み合わせである場合」に相当することは明らかである。
引用発明の「所定枚数のメダルが払い出され」とは本願補正発明の「遊技者に利益を付与する」点に相当し、その手段を備えることは明らかである。
引用発明も「特別入賞」が確定することによって「遊技者に有利な特別遊技を行わせ」るものであるから、引用発明の「特別入賞」は本願補正発明の「特別遊技状態の開始条件」である点を満たすものである。
引用発明も「抽選により特別入賞フラグが成立したが、回転リールの停止図柄の組み合わせが特別入賞図柄と一致していない場合、それ以後の遊技に特別入賞フラグ成立の権利が持ち越される」ものであるから、本願補正発明の「前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が次遊技以降に持ち越し可能」である点を具備している。
さらに、引用発明において「当該特別遊技から直前の所定の回数の特別遊技までの通常遊技の遊技回数の合計が所定の遊技回数以内である場合」とあるが、これはすなわち通常遊技の「所定の遊技回数」以内において「所定の回数の特別遊技」となった場合のことである。ここで『通常遊技の「所定の遊技回数」』とは本願補正発明の「通常遊技状態中の予め定められた移行可能期間」に相当する。また、特別遊技となるためには「停止図柄の組み合わせが、予め定められた所定の特別入賞図柄」となる必要があるから、上記の『「所定の回数の特別遊技」となった』とは「予め定められた所定の特別入賞図柄の組み合わせが所定の回数停止表示された」ことに該当するから、よってこれは、引用発明の「特定の入賞態様の図柄の組み合わせが所定回数停止表示された」点と対応するものであって、引用発明の「予め定められた所定の特別入賞図柄」も本願補正発明の「特定の入賞態様の図柄」も、「予め定められた入賞の図柄」である点で共通している。

また、技術常識を踏まえれば、引用発明の「入賞抽選手段」が「スタートスイッチが操作されたこと」に基づいて抽選を行うこと、引用発明の「回転リールの停止」の制御にあたっては「抽選の結果」に基づくこと、及び「所定の図柄数の範囲内」で停止させること、及び引用発明の「小役入賞」について「抽選の結果が次遊技以降に持ち越されない」こと、いずれも常識事項に過ぎない。

よって、引用発明と本願補正発明は、
「遊技に必要な複数種類の図柄を可変表示するための複数のリールと、
該複数のリールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
前記複数のリールに対応して設けられ、前記複数のリールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
前記スタートスイッチが操作されたことに基づいて複数種類の入賞態様の中から入賞態様を抽選する入賞態様抽選手段と、
該入賞態様抽選手段による抽選の結果と前記ストップスイッチの操作とに基づいて所定の図柄数の範囲内で前記図柄を停止表示させる停止制御手段と、
該停止制御手段による停止制御の結果、前記複数のリールにおける前記図柄の停止表示態様が前記複数種類の入賞態様のいずれかの図柄の組み合わせである場合に遊技者に利益を付与するための利益付与手段とを備え、
前記複数種類の入賞態様は、
通常遊技状態と比較して遊技者にとって有利な特別遊技状態の開始条件であり、前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が次遊技以降に持ち越し可能な特別入賞態様と、
前記入賞態様抽選手段による抽選の結果が次遊技以降に持ち越されない小役の入賞態様とを含み、
前記入賞態様抽選手段は、前記特別入賞態様が持ち越されている場合であっても、前記特別入賞態様以外の入賞態様を抽選可能に構成され、
前記停止制御手段は、前記特別入賞態様よりも前記小役の入賞態様を優先して停止表示させるように停止制御を行い、
通常遊技状態と比較して遊技者にとって有利でありかつ前記特別遊技状態とは異なる特定遊技状態は、前記通常遊技状態中の予め定められた移行可能期間において、予め定められた入賞の図柄の組み合わせが所定回数停止表示された場合に移行する遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明においては、「入賞態様抽選手段により決定された入賞態様を遊技者に対して報知する報知手段」を備え、また「小役の入賞態様」として「該入賞態様各々の図柄の組み合わせを構成する図柄が複数のリールの少なくとも一において所定の図柄数の範囲を超えて配置」された複数の「所定の入賞態様」を含み、また前記報知手段は「特定遊技状態であるときには、入賞態様抽選手段による抽選の結果が所定の入賞態様であるとその旨を報知」するのに対して、引用発明の「チャレンジタイム(CT)」についてかかる構成がない点。

[相違点2]
本願補正発明においては、「小役の入賞態様」として「特別入賞態様および所定の入賞態様とは異なる特定の入賞態様」とを含み、また上記一致点における「予め定められた入賞の図柄」として「特定の入賞態様の図柄」を採用しているのに対して、引用発明においては小役入賞についてはかかる構成はなく、また上記一致点における「予め定められた入賞の図柄」として「特別入賞図柄」を採用している点。

[相違点3]
本願補正発明においては「入賞態様抽選手段は、特別入賞態様が持ち越されている場合であっても、特別入賞態様以外の入賞態様を抽選可能に構成され、停止制御手段は、特別入賞態様よりも小役の入賞態様を優先して停止表示させるように停止制御を行」うものであるのに対して、引用発明においては不明である点。

5.相違点の判断

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
相違点1にかかる構成は、パチスロ機「ゲゲゲの鬼太郎SP」(例えば、パチスロ攻略マガジン2000年6月号、双葉社、132?133ページ参照)における「3種類の9枚役」及び「アシストタイム(AT)」や、パチスロ機「獣王」(例えば、パチスロ必勝ガイド2001年2月号、白夜書房、123ページ参照)における「12種類の15枚役」及び「サバンナチャンス」、後記のパチスロ機「インディジョーズ2」における「12種類の15枚役」及び「スーパーAT」にあるように従来周知の構成(以下「周知例1」という。)に過ぎない。
そして、引用発明の「チャレンジタイム(CT)」も、上記パチスロ機の「アシストタイム」、「サバンナチャンス」又は「スーパーAT」(以下、これらをまとめて「AT遊技」という。)も、通常遊技状態と特別遊技(ボーナス)状態の他に設けられた第3の遊技(特定遊技)状態として共通しているものであるから、引用発明において「チャレンジタイム(CT)」に代えて周知例1のAT遊技にかかる構成を適用して、本願補正発明の相違点1にかかる構成とすることは当業者にとって容易に想到できたことでえる。

[相違点2について]
パチスロ機「インディジョーズ2」(例えば、パチスロ必勝ガイド2001年3月号(2001年1月29日工業所有権情報研修館受入)、白夜書房、91-93ページや、パチスロ必勝ガイドMAX2001年3月号(2001年2月14日には発売されたものと推定される。)、白夜書房、38-41ページ参照。また、パチスロ必勝ガイド2001年4月号(2001年2月28日工業所有権情報研修館受入)、白夜書房、8ページには「ついに全国のホールへと進撃を開始した…『インディジョーズ2』」という記載があり、2001年2月末頃には実機がホールに導入されていたと推認できる。)においては、所定の14ゲームの間において時折出現(15枚役が内部当選した場合に一定の割合で発生)する確変チャンスと呼ばれるゲームで15枚役に入賞した回数に応じてAT遊技への突入抽選を行っている(当該回数が多ければAT当選確率が高い)ように、特定遊技状態への移行にあたり所定の小役の入賞回数に基づくことも従来周知のルール(以下「周知例2」という。)である。
なお、周知例2においては対象となる所定の小役の「15枚役」はAT遊技において報知される小役と同じものとなっているが、そもそも「一定の割合」とする(すなわち何らかの発生抽選を行う)ことによって確変チャンスの出現を制御しているものであるから、結果として「確変チャンスの出現率」は「15枚役の内部当選確率」とはその確率が異なっているものである。とすれば、いずれにせよ発生抽選等によって、確変チャンスの出現率(すなわちAT突入の契機となる対象となる所定の小役の確率)を制御している以上、当該所定の小役は特段「15枚役」に限られる必要性は全くないのであって、そして周知例1で示したAT遊技を備えたパチスロ機においてもAT遊技において報知の対象となる小役以外にも小役(以下、「他の小役」という。)を備えており、さらに他の小役について、その内部当選確率(すなわち入賞確率)を適宜設定できることは言うまでもない(なお、当該内部当選率を適切な確率に設定すれば、周知例2のような発生抽選が不要となって技術的効率性あるいはルール上の明確性に資することも当業者であれば当然考慮できることである。)から、AT突入の契機となる対象の小役を「他の小役」とすることに何ら技術的困難性はなく、当業者にとって適宜設計できたことである。

よって、引用発明及び周知例1,2に基づき、引用発明の特別入賞図柄に代えて他の小役の図柄を採用して、本願補正発明の相違点2にかかる構成とすることは当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点3について]
相違点3における「特別入賞態様以外の入賞態様を抽選可能に構成」する点は、例を挙げるまでもなくパチスロ機における周知慣用手段に過ぎず、複数の入賞フラグが存在した場合にいずれを優先して停止表示させるかは当業者の設計事項に過ぎない。なお、必要であれば例として、パチスロ必勝ガイド1994年7月号(白夜書房、1994年7月1日発行日)の60ページにおける「ビッグチャンスフラグ成立時には、ビッグチャンスの他に小役が同時に成立するケースがあるが、この場合には小役を優先する仕組みだ。」という記載や、パチスロ攻略マガジン1993年12月号(双葉社、1993年12月1日発行日)の110,115ページにおける「ニューパルサー卒業試験 あなたの知識度をチェック…Q9 BIGのフラグ成立時に、小役のフラグが立った場合、優先する順は?」、「試験の答え ニューパルサー…A9=フラグ成立時でも小役が優先される」という記載を参照(以上「周知例3」という。)。
よって、引用発明及び周知例3に基づいて、本願補正発明の相違点3にかかる構成とすることは当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点の判断のむすび]
よって、引用発明及び周知例1?3に基づいて、本願補正発明の上記相違点にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できることである。
また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知例1?3から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知例1?3に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.補正却下の決定におけるむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1.に[本件補正前の請求項1]として記載されたとおりのものである。

2.引用例

引用文献1及びその記載事項は、上記第2[理由]3.に記載したとおりのものである。

3.対比・判断

上記第2[理由]2.及び5.において検討したように、本願発明に限定的減縮を加えたと認められる本願補正発明が、引用発明及び周知例1?3に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。
とすれば、本願補正発明から限定を解除した本願発明も同様に、引用発明及び周知例1?3に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、本件補正は却下され、そして、本願発明は原査定の拒絶の理由に基づいて特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-15 
結審通知日 2009-12-16 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願2001-95095(P2001-95095)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤坂 祐樹  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 池谷 香次郎
森 雅之
発明の名称 遊技機  
代理人 川野 宏  

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