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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A47L
管理番号 1212839
判定請求番号 判定2009-600036  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2010-04-30 
種別 判定 
判定請求日 2009-09-10 
確定日 2010-03-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第3957207号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号物件説明書に示す「電動式洗浄機」は,特許第3957207号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨

本件判定の趣旨は,イ号物件の説明書に示す電動式洗浄機は,特許第3957207号発明の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

第2 本件発明

1.本件発明

特許3957207号発明(以下「本件発明」という。)は,特許明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであって,これを構成要件に分説すると,次のとおりのものと認める。

(A)ハウジングと,このハウジング内に設けられた重量物としての電動機と,前記ハウジング外に突出した出力軸に対して着脱自在に取り付けられるブラシ体と,前記電動機の動力源となる電源部と,前記電源部から電動機へ電力を供給する回路を開閉するスイッチと,把持部とを有する電動式洗浄機において,
(B)前記ブラシ体を構成するブラシ毛の先端部に,このブラシ毛自体の先端部が長さ方向に裂けることで前記ブラシ毛自体よりも細く形成された分枝部を設け,
(C)この分枝部が末広がり形状に形成されていると共に,
(D)前記ブラシ毛の分枝部が,少なくとも隣接する前記ブラシ毛の分枝部と重なり合っている
(E)ことを特徴とする電動式洗浄機。

なお,請求人は,上記構成要件(B)?(D)を,判定請求書において,次の構成要件B及びCに分説している

B.前記ブラシ体を構成するブラシ毛の先端部に,このブラシ毛自体の先端部が長さ方向に裂けることで前記ブラシ毛自体よりも細く形成された分枝部を設け,この分枝部が末広がり形状に形成されていると共に,
C.前記ブラシ毛の分枝部が,少なくとも隣接する前記ブラシ毛の分枝部と重なり合っている

しかしながら,構成要件Bに含めている「この分枝部が末広がり形状に形成されている」は,分枝部の状態を特定したものであるから,構成要件Cで特定している「ブラシ毛の分枝部が,少なくとも隣接する前記ブラシ毛の分枝部と重なり合っている」という分枝部の状態を特定したものと同種の特定事項であり,かつ,これらの分枝部の状態を特定した構成要件は,出願当初の請求項2にあった構成を,本件発明の出願手続において,請求項1に取り入れた構成であることからも,上記構成要件(B)?(D)に分説することが適当であると認められる。

2.本件発明の作用効果

本件特許明細書の記載によれば,本件発明は,次の作用効果を奏する(段落【0006】参照,番号及び下線は当審にて付与,以下同様。)。

(1)適当に高い剛性をブラシ毛自体に持たせつつ,被洗浄部に当接する細い分枝部の剛性が相対的に低くなり大きく曲がる。これによって,前記ブラシ毛の先端部の分枝部が被洗浄部を引っ掻くような形にならず,従って,被洗浄部に傷を付けにくくすることができる。
(2)また,前記ブラシ毛の先端部が,このブラシ毛自体よりも細い分枝部となっていることによって,細目のブラシのように泡立ち性が良くなり,これによって,被洗浄部が泡によって十分に保護され,被洗浄部に傷を付けにくくすることができる。
(3)また,前記ブラシ毛の先端において,重なり合った前記分枝部によって邪魔されることで,水或いは泡が垂れたり飛散したりしにくくすることができるばかりでなく,重なり合った前記分枝部によって,隣接する前記ブラシ毛同士が支え合う形になるため,前記ブラシ体が床或いは壁に当接したとしても,前記ブラシ毛が変形しにくく,従って,前記ブラシ毛に癖を付けにくくすることができる。

なお,これらの記載からみて,上記(1)及び(2)の作用効果は,主に,「ブラシ毛の先端にブラシ毛自体よりも細く形成された分枝部を設けた」ことによるものであり,また,上記(3)の作用効果は,主に,「ブラシ毛の分枝部が,少なくとも隣接するブラシ毛の分枝部と重なり合っている」ことによるものである。

第3 イ号物件

1.イ号物件説明書の記載事項

判定請求書に添付されたイ号物件説明書には,次の事項が記載されている。
(ア)「a.ハウジング1と,このハウジング1内に設けられた重量物としての電動機(図示せず)と,前記ハウジング1外に突出した出力軸2に対して着脱自在に取り付けられるブラシ体3(ワイドソフトブラシ)と,前記電動機の動力源となる充電式電源部(図示せず)と,前記電源部から電動機へ電力を供給する回路(図示せず)を開閉するスイッチ4と,把持部5とを有するお風呂用電動ブラシにおいて,
b.前記ブラシ体3を構成する大半のブラシ毛の先端部に,このブラシ毛自体の先端部を長さ方向に裂くことで前記ブラシ毛自体よりも細く形成された分枝部を設け,この分枝部が末広がり形状となるように形成する(写真9参照)と共に,
c.大半の前記ブラシ毛の分枝部が,隣接する前記ブラシ毛の分枝部,又は隣接するブラシ毛の先端部と重なり合う([写真6],[写真8]参照)
d.ことを特徴とする電動式洗浄機。」(イ号物件説明書の<構造等の説明>)

2.当審によるイ号物件の認定

イ号物件説明書を検討すると,イ号物件について,次の事項が認められる。
(a)【写真2】,【写真10】及び【写真13】には,「ハウジングと,このハウジング内に設けられた重量物としての電動機と,前記ハウジング外に突出した出力軸に対して着脱自在に取り付けられるブラシ体と,前記電動機の動力源となる電源部と,前記電源部から電動機へ電力を供給する回路を開閉するスイッチと,把持部とを有する電動式洗浄機」が示されている。

また,【写真3】,【写真4】には,ブラシ体の中央部の表面は,細い毛のようなブラシ毛とされていることが示されているが,この細い毛のようなブラシ毛は,【写真5】,【写真6】によれば,波状のブラシ毛の先端部が,その長さ方向に裂けるように分枝していると共に,それぞれの分枝の長さ,太さが一様でなく,不規則な方向に延びて先端が広がった形状である部分(以下,本件発明に倣って「分枝部」という。)であることがわかる。
そして,【写真5】,【写真6】には,分枝部はその多くが隣接するブラシ毛の分枝部と重なり合っていることが示されている。
さらに,【写真7】,【写真8】には,ブラシ体の外周縁部におけるブラシ毛として,先端部が,その長さ方向に裂けるように分枝していると共に,それぞれの分枝の長さ,太さが一様でなく,不規則な方向に延びて先端が広がった形状である分枝部が示されているものの,ブラシ体の中央部におけるブラシ毛と比べて,分枝の数や太さが異なり,さらに,分枝部の重なりもそれほど多くないことが示されている。
加えて,【写真9】には,採取されたブラシ毛の先端部が,その長さ方向に裂けるように分枝していると共に,それぞれの分枝の長さ,太さが一様でなく,不規則な方向に延びて先端が広がった形状である分枝部が示されている。

これらを総合すると,イ号物件のブラシ毛について,以下のことがいえる。
(b)ブラシ体の位置によって,分枝の数や太さは異なるものの,いずれのブラシ毛も先端部に,このブラシ毛自体の先端部が裂けることでブラシ毛自体よりも細く形成された分枝部を有している。

(c)分枝部が,それぞれの分枝の長さ,太さが一様でなく,不規則な方向に延びて先端が広がった形状である。

(d)ブラシ体の位置によって程度は異なるものの,ブラシ毛の分枝部が隣接するブラシ毛の分枝部と重なり合っている。

そうしてみると,イ号物件は,その構成を本件発明の分説に合わせて,構成a?eに分説すると,次のとおりのものと認められる。

a.ハウジングと,このハウジング内に設けられた重量物としての電動機と,前記ハウジング外に突出した出力軸に対して着脱自在に取り付けられるブラシ体と,前記電動機の動力源となる電源部と,前記電源部から電動機へ電力を供給する回路を開閉するスイッチと,把持部とを有する電動式洗浄機において,
b.前記ブラシ体を構成するブラシ毛の先端部に,このブラシ毛自体の先端部が長さ方向に裂けることで前記ブラシ毛自体よりも細く形成された分枝部を設け,
c.この分枝部が,それぞれの分枝の長さ,太さが一様でなく,不規則な方向に延びて先端が広がった形状であると共に,
d.前記ブラシ毛の分枝部が,少なくとも隣接するする前記ブラシ毛の分枝部と重なり合っている
e.電動式洗浄機。

第4 当審の判断

イ号物件の構成が,本件発明の各構成要件を充足するか否かについて検討する。

1.構成要件(A)及び(E)について

イ号物件の構成a及びdは,本願発明の構成要件(A)及び(E)に該当することは,明らかであって,当事者間に争いもない。

よって,イ号物件は,本件発明の構成要件(A)及び(E)を充足する。
2.構成要件(B)について

イ号物件の構成bは,「前記ブラシ体を構成するブラシ毛の先端部に,このブラシ毛自体の先端部が長さ方向に裂けることで前記ブラシ毛自体よりも細く形成された分枝部を設け」るものであるから,本件発明の構成要件(B)に該当する。

よって,イ号物件は,本件発明の構成要件(B)を充足する。

3.構成要件(D)について

イ号物件の構成dは,「前記ブラシ毛の分枝部が,少なくとも隣接する前記ブラシ毛の分枝部と重なり合っている」ものであるから,本件発明の構成要件(D)に該当する。

よって,イ号物件は,本件発明の構成要件(D)を充足する。

4.構成要件(C)について

本件発明の構成要件(C)に関して,本件特許明細書には,次の事項が記載されている。

(1)「前記ブラシ体11について詳述する。このブラシ体11は,ブラシ基体19と,このブラシ基体19の外面に放射状に植設されたブラシ毛20とで構成されている。なお,このブラシ毛20は,ポリプロピレン等の合成樹脂によって形成されている。また,前記ブラシ毛20は,全体として略裁頭円錐形となるように,前記ブラシ基体19に植設されている。そして,前記ブラシ毛20は,図4に示すように,その先端部に分枝部21が形成されている。この分枝部21は,前記ブラシ毛20の先端部が,その長さ方向に裂けるように分枝していると共に,末広がり形状となるように形成されている。また,前記分枝部21は,前記ブラシ毛20自体よりも細く形成されている。更に,このように末広がり形状に形成された前記分枝部21は,隣接する前記ブラシ毛20の分枝部21と重なり合っている。」(段落【0010】)

(2)「また,前述したように,前記分枝部21が末広がり形状に形成されており,この分枝部21が隣接する前記ブラシ毛20の分枝部21と重なり合っていることで,複数の前記ブラシ毛20同士は前記分枝部21によって支え合う形になっている。このため,前記電動機6等の重量物が内蔵された前記駆動部2に前記ブラシ体11を取り付けたまま,このブラシ体11が床或いは壁に当接して前記駆動部2の重量を前記ブラシ毛20が受けるような状況があったとしても,このブラシ毛20は変形しにくく,従って,このブラシ毛20は癖が付きにくい。そして,このように前記ブラシ毛20に癖が付きにくい前記ブラシ体11は,前記被洗浄部Wの洗浄効率の低下を引き起こしにくい。」(段落【0014】)

(3)「更に,被洗浄部Wの洗浄中に,前記ブラシ体11が前記出力軸8回りに回転することで,前記ブラシ体11が含む水や洗剤の泡等は遠心力を受け,前記ブラシ体11の外方に飛散しようとする。しかしながら,前述したように,前記分枝部21が末広がり形状に形成されており,この分枝部21が隣接する前記ブラシ毛20の分枝部21と重なり合っているので,前記水や泡等は,前記ブラシ体11が回転することで遠心力を受けたとしても,前記ブラシ体11の外側に飛散することが,重なり合った前記分枝部21によって邪魔される。このため,前記ブラシ体11は,前記水や泡等をブラシ体11の外側に飛散しにくくすることができ,また,飛散したとしても飛距離を短くすることができる。これによって,洗浄する必要のない範囲まで水や泡が飛散して洗浄効率を落としてしまったり,使用者に水や泡等がかかってしまったりするなどといった問題を解決することができる。同様に,被洗浄部Wの洗浄後に,前記ブラシ体11が含む水や洗剤の泡等は,重力によって前記ブラシ体11から垂れようとするが,重なり合った前記分枝部21によって邪魔される。このため,前記ブラシ体11は,前記水や泡等を垂れにくくすることができる。」(段落【0015】)

また,本件発明の出願手続で,審判請求書(乙6号証参照。)において,拒絶理由に引用された特開平3-284453号公報(乙第3号証参照。)の第4図に分枝部が末広がり形状に形成されていることを認めた(第3ページ末行-第4ページ第1行)上で,「甲第3号証には,ブラシローラーを円筒部に巻き付けた状態でも隣り合う非束ね部の剛毛同士が重なり合うことについては,開示も示唆もありません。・・・即ち,何れの解釈を採用しても,決して本願発明の図1の拡大部分に示すような構造ではありません。」(第8ページ第22-26行)旨,述べるとともに「重なり合った前記分枝部によって,隣接するブラシ毛同士が支え合う形になることで,床或いは壁に前記ブラシ体が当接し,このブラシ体に重量物としての電動機が内蔵されたハウジングの重量が加わっても,ブラシ毛が変形しにくいので,ブラシ毛に癖を付けにくくすることができるという作用・効果を奏するものであります。」(第9ページ第8-13行)と述べている。

そこで,構成要件(C)について検討する。

上記本件特許明細書の記載及び審判請求書における主張からみて,構成要件Cの「末広がり形状」は,本件発明の作用効果である「分枝部が隣接するブラシ毛の分枝部と重なり合」うことで,「複数のブラシ毛同士を分枝部によって支え合う形」とするための前提となる構成として,ブラシ毛の分枝部の形状を特定したものといえる。

また,広辞苑(第3版:1978年12月6日発行)によれば,「末広がり」とは「次第に末の方のひろがってゆくこと。」である。

そして,本件特許明細書には,分枝部の「末広がり形状」を特定する具体的な記載はなく,本件特許図面において,第1図及び第4図に,それぞれの分枝が一定方向に裂けて延びることで「次第に末の方にひろがってゆく」形状が図示されているのみである。

なお,特許図面は発明の内容を明らかにするための説明図にとどまるものであるが,上記のとおり末広がり形状について,明細書に具体的な記載がない以上,参酌せざるを得ない。

以上のことから,本件特許明細書又は図面から特定することができる「末広がり形状」は,「次第に末の方にひろがってゆく」ものであって,本件特許図面の第1図又は第4図に図示されているような形状のみであるから,本件発明の構成要件(C)における「末広がり形状」は,本件特許図面の第1図又は第4図に示されるような,それぞれの分枝が一定方向に裂けて延びることで「次第に末の方にひろがってゆく」形状に限定されるものといわざるを得ない。

これに対し,イ号物件の構成cは「この分枝部が,それぞれの分枝の長さ,太さが一様でなく,不規則な方向に延びて先端が広がった形状」であって,分枝部が,本件特許図面の第1図又は第4図に図示されているような,それぞれの分枝が一定方向に裂けて延びることで次第に末の方にひろがってゆく形状に形成されているとはいえず,本件発明の構成要件(C)における「分枝部が末広がり形状に形成されている」ものに該当するとはいえない。

よって,イ号物件は,本件発明の構成要件(C)を充足しない。

なお,請求人は,「末広がり形状」について,次の主張をしている。

「被請求人のB-3についての主張は「不定形」という記載から推測すると,参考図4のような形状のみが末広がりであり,参考図5のような形状は末広がりでないということであると思われる。




しかしながら,両者は,ブラシ毛から分枝部が分枝し,その先端が広がっている以上,「末広がり形状」である。そして,両者は,分枝部が隣接するブラシ毛の分枝部と重なり合うことが可能である点で,相違がない。従って,参考図4の形状に限定される理由はない。」(判定事件弁駁書第5ページ第41-第6ページ第4行)

しかしながら,上述のとおり,本件発明における「末広がり形状」は,ブラシ毛の分枝部が重なり合うことが可能であるだけでなく,それぞれの分枝が一定方向に裂けて延びることで「次第に末の方にひろがってゆく」ものであって,本件特許図面の第1図又は第4図に図示されているような形状に限定されるものであるから,【参考図5】に示される分枝部は,本件発明における「末広がり形状に形成されている」ものとはいえず,上記主張は,採用することができない。

また,被請求人は,本件特許発明は特許性に疑義がある旨の主張もしているが,特許性の有無についての主張は無効審判手続においてなされるべきものであって,特許発明の技術的範囲について判断する判定になじまないので,当該主張については参酌,検討をしない。

第5 むすび

以上のように,イ号物件は,本件発明の構成要件(C)を充足しないから,本件発明の技術範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2010-03-08 
出願番号 特願2003-292597(P2003-292597)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 豊島 唯
長崎 洋一
登録日 2007-05-18 
登録番号 特許第3957207号(P3957207)
発明の名称 電動式洗浄機  
代理人 高橋 知之  
代理人 外山 邦昭  
代理人 牛木 護  
代理人 近藤 彰  
代理人 吉田 正義  
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