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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1213284
審判番号 不服2007-11400  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-19 
確定日 2010-03-11 
事件の表示 特願2004-548058「空気調和装置のドレン水排出構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月13日国際公開、WO2004/040201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月28日(パリ条約による優先権主張2002年10月29日、日本)を国際出願日とする出願であって、平成19年3月16日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成19年3月20日)、これに対し、平成19年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により平成21年6月17日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成21年6月23日)、平成21年8月24日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年8月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「空気調和装置(1) のケーシング(2) 内に設けられた室内熱交換器(7) で発生するドレン水を、機内ドレン配管(12)と機外ドレン配管(14)とから構成されるドレン排出管(15)で室外に排出するように構成された空気調和装置のドレン水排出構造であって、
上記機内ドレン配管(12)及び機外ドレン配管(14)のうち少なくとも機外ドレン配管(14)が銅管で構成され、
上記機外ドレン配管(14)は、内径が12.7mmであり、
室内熱交換器(7) の下方でドレン水を受けるように配置されたドレンパン(8) と、該ドレンパン(8) に溜まったドレン水をドレン排出管(15)へ送り出すドレンポンプ(11)とを備えていることを特徴とするドレン水排出構造。」

3.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開2001-263711号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

1-a「従来から、空気調和機の室内機において、結露した水を強制的に排水するドレンポンプを備えたものがある。図4及び図5は、いずれもドレン配管9が設置される態様を示し、それぞれ望ましい場合と望ましくない場合を示している。
図4及び図5において天井10の下側には、室内機3を取り付ける開口部を有する天井板20が設けられる。室内機3はその本体32とパネル31とを備えており、本体32からはドレン配管9が延設されている。ドレン配管9は本体32に内蔵された、図示されないドレンポンプによって汲み出される水を排水する。」(【0002】-【0003】)

1-b「図1は本発明の実施の形態の一つにおける処理の流れを示すフローチャートである。また図2は、本体32の構成を概念的に示す断面図である。ケーシング4は室内用ファン8を囲んでいる。そしてドレンパン5はケーシング4の下方に設けられており、ドレンパン5の底近傍にはP板7が設けられている。P板7には室内機3などの動作を司る命令を格納するメモリ71が搭載されている。P板7からは室外機への通信線や、他の室内機が存在する場合にはそれに対する通信線も接続される。ドレンパン5にはドレンポンプ6が配置されており、ドレンポンプ6にはドレン配管9が接続されている。」(【0022】)

空気調和機であることから、室内機には室内熱交換器が設けられているものと認められ、ドレンパンは室内熱交換器の下方に配置されているものと認められる。
ドレン配管は、図面を参照すると、ドレンポンプに接続されて、ケーシング内からケーシング外へ伸びているから、機内ドレン配管と機外ドレン配管が有るものと認められる。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「空気調和機のケーシング内に設けられた室内熱交換器で発生するドレン水を、機内ドレン配管と機外ドレン配管とから構成されるドレン配管で室外に排水するように構成された空気調和装置のドレン水排出構造であって、
室内熱交換器の下方でドレン水を受けるように配置されたドレンパンと、ドレンパンに溜まったドレン水をドレン配管へ送り出すドレンポンプとを備えているドレン水排水構造。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

同じく、当審の拒絶の理由に引用された特開2002-19892号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

2-a「飲料の貯蔵容器から飲料を取り出し、冷却装置の中を供給配管を介して通すことによって飲料を冷却し、前記飲料を開閉可能なノズルにより外部に供給する飲料供給装置において、前記供給配管の少なくとも1部を銅もしくは銅合金とすることを特徴とする飲料供給装置。」(【請求項1】)

2-b「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、飲料供給装置において、飲料注出経路の供給配管内壁にミネラル成分などが付着、堆積を防止する事、さらに飲料の残留物による雑菌の繁殖を防止する抗菌作用をもたせることによって、保守管理が容易でかつ衛生的な飲料供給装置を提供することにある。」(【0003】)

同じく、当審の拒絶の理由に引用された特開平10-202267号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

3-a「給水設備の任意箇所の給水管及び継手に、内面に被膜がほどこされた銅又は銅合金製の給水管(10)及び継手12を用いることにより、銅の持つ抗菌性及び殺菌性を有効に活用すると共に、機械的強度に優れた給水設備を構成することができる。これにより、施主の希望に応じて、任意箇所に銅製管を用いた抗菌性及び機械的強度に優れた給水設備を構成することができる。」(【要約】)


4.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「空気調和機」、「排水」は、各々本願発明の「空気調和装置」、「排出」に相当する。

したがって、両者は、
「空気調和装置のケーシング内に設けられた室内熱交換器で発生するドレン水を、機内ドレン配管と機外ドレン配管とから構成されるドレン排出管で室外に排出するように構成された空気調和装置のドレン水排出構造であって、
室内熱交換器の下方でドレン水を受けるように配置されたドレンパンと、該ドレンパンに溜まったドレン水をドレン排出管へ送り出すドレンポンプとを備えているドレン水排出構造。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明は、機内ドレン配管及び機外ドレン配管のうち少なくとも機外ドレン配管が銅管で構成されているのに対し、引用例1発明は、機内ドレン配管及び機外ドレン配管の材質について特定されていない点。
〔相違点2〕
本願発明は、機外ドレン配管は、内径が12.7mmであるのに対し、引用例1発明は、機外ドレン配管の内径について特定されていない点。


5.判断
〔相違点1〕について
ドレン水に菌等が繁殖すること、及び機外ドレン配管に抗菌剤を施し、抗菌作用でドレン水を処理することは、審判請求人が明細書【背景技術】で示すように周知の事項である。
また、銅が抗菌作用を有することは、引用例を示すまでもなく周知の事項(必要が有れば、引用例2、3及び特開2000-74409号公報参照。)である。
引用例2、3に示されるように、水等の液体の配管(引用例2の供給配管、引用例3の吸水管が相当)に、抗菌作用をもたせるために、材質を銅または銅合金とすることは、周知の事項である。
そうすると、引用例1発明においても、ドレン水に菌等が繁殖し、この繁殖を抑える必要があることは明らかであり、ドレン水が通過する機外ドレン配管に、上記【背景技術】の周知の事項のように抗菌作用を与えることは、当業者が適宜なし得ることと認められ、その際、抗菌作用を与えるために、機外ドレン配管を抗菌剤として周知の銅で形成することは当業者が容易に考えられることと認められる。

〔相違点2〕について
審判請求人は、機外のドレン配管の内径を12.7mmとする理由について、平成21年8月24日付意見書において、
『d.「機外ドレン配管の内径を12.7mmまたはそれ以下に設定した理由」
一般に、配管はインチサイズが基準になっています。空調機においても、1”(25.4mm)、3/4”(19.05mm)、1/2”(12.7mm)、3/8”、1/4”等のインチ規格の配管を用いるのが一般的です。逆に言うと、この規格外の配管(12.8mmや12.6mm)を用いるのは現実的ではありません。本願の特許請求の範囲では、内径が12.8mmや12.6mmの配管での効果の有無は関係なく、わざわざそのような内径の配管を製造してドレン配管に使用するのは非現実的であり、当業者の技術常識から逸脱したものとなってしまうことから、配管の内径をインチサイズ基準で特定しています。
以上がドレン配管の内径を12.7mmまたはそれ以下の寸法に限定した理由です。また、それよりも太い内径のインチ規格の配管では所望の作用効果が得られないため、請求項1,2において配管の内径を12.7mmまたはそれ以下の寸法に限定しています。』
と主張している。
しかし、審判請求人が主張するように、機外ドレン配管の内径がインチサイズが基準であって、インチ規格の配管を用いるのが一般的ならば、当業者であれば、それらインチ規格の配管の内径のサイズのうち、12.7mmを採用することは、適宜選択し得る程度のことと認められる。

そして、本願発明の奏する効果も、引用例1発明及び上記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-07 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-26 
出願番号 特願2004-548058(P2004-548058)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河野 俊二田々井 正吾  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 長浜 義憲
長崎 洋一
発明の名称 空気調和装置のドレン水排出構造  
代理人 嶋田 高久  
代理人 竹内 宏  
代理人 竹内 祐二  
代理人 二宮 克也  
代理人 原田 智雄  
代理人 井関 勝守  
代理人 藤田 篤史  
代理人 前田 弘  
代理人 関 啓  
代理人 今江 克実  
代理人 杉浦 靖也  

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