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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1213324
審判番号 不服2008-6877  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-21 
確定日 2010-03-11 
事件の表示 平成11年特許願第212758号「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年2月16日出願公開、特開2001-44226〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年7月27日の特許出願であって、平成19年11月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成20年2月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月21日付けで手続補正書が提出されたものである。

II.平成20年4月21日付け手続補正についての補正却下の決定
<補正却下の決定の結論>
平成20年4月21日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

<理由>
1.本件補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?4は次のとおり補正された。

「【請求項1】
絶縁基板上に複数の半導体チップをバンプ接続する工程と、
上記複数の半導体チップが一つのトランスファーモールド樹脂に覆われるように、上記複数の半導体チップを上記絶縁基板上に封止する工程と、
上記絶縁基板上に上記一つのトランスファーモールド樹脂により樹脂封止された上記複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する工程と、
を含み、
上記封止する工程の前に、上記絶縁基板と上記複数の半導体チップの間にそれぞれ設けられるように個別に分離された取付用絶縁樹脂を形成し、
上記分離する工程において、上記絶縁基板と上記トランスファーモールド樹脂とを同時に切断することにより上記複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
上記バンプ接続するバンプに半田を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
上記バンプ接続するバンプに金を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
上記バンプ接続するバンプに半田を用い、かつ、上記取付用樹脂の中に導電性の微粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。」

2.補正の目的
上記補正は、
(ア)補正前の請求項1、3?5、9を削除し、
(イ)補正前の請求項2における「上記絶縁基板上に樹脂封止された上記複数の半導体チップ」について、「上記絶縁基板上に上記一つのトランスファーモールド樹脂により樹脂封止された上記複数の半導体チップ」と、封止樹脂を限定し、「分離する工程」について、「上記分離する工程において、上記絶縁基板と上記トランスファーモールド樹脂とを同時に切断することにより上記複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する」と分離方法について限定するものであって、
特許法第17条の2第4項1号に規定する請求項の削除、同法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、上記補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下検討する。

3-1.引用文献とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第96/42107号(以下、「引用文献1」という。)、特開平11-102924号公報(以下、「引用文献2」という。)、特開平11-74296号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)国際公開第96/42107号
(1a)「本発明は、・・・半導体装置の製造方法に関する。」(1頁5?8行)
(1b)「本発明の配線基板に使用される基板としては、ポリイミド、エポキシ等の耐熱性樹脂をガラスクロス等の基材に含浸、乾燥させ、銅箔を貼り合わせ硬化させた積層板、または、ポリイミド等の耐熱性樹脂のフィルムに、接着材で銅箔を貼り合わせたもの、あるいは、銅箔にポリイミド等の耐熱性樹脂を塗布し、乾燥、硬化させたフレキシブル基板が使用される。」(15頁21行?16頁3行)
(1c)「配線基板は、チップの搭載や封止工程において、その作業性を効率よくするために、複数のキャビティ(チップ搭載部)を連結させた、フレーム状に加工されるのが一般的である。」(16頁7?10行)
(1d)「図8は、本発明の第5の実施例の半導体装置の製造工程を示す縦断面図である。図8において、8-1はポリイミドフィルム、8-2はバンプ、8-3は配線、8-4は有機異方導電接着材料、8-5は半導体チップ、8-6は封止材、8-7ははんだボールである。」(20頁13?17行)
(1e)「本発明によると、・・・従来のワイヤボンディング方式に比べてパッケージのサイズを小さく出来た。」(21頁16?20行)
(1f)「実施例5
・・・金属突起バンプ付き基板を得た。この基板を金型を用いて打ち抜き、複数のキャビティが連結したフレームを得た。
こうして製作されたフレームのチップ搭載部(バンプ付き配線基板)に、・・・異方性導電接着フィルム・・・を・・・仮圧着した。異方性導電接着フィルムの仮圧着されたフレーム、および、・・・バンプレスのICチップを、フリップチップボンダーに設置し、該チップを反転、異方性導電接着フィルム仮圧着部に位置調整、搭載し、・・・本圧着した。・・・トランスファーモールドして封止品を得た。その後、通常のはんだボール形成設備を用いて、はんだボールを配線基板裏面にアレイ状に形成した後、フレームから切断し製品を得た。」(26頁11行?27頁17行)
(1g)図8には、ポリイミドフィルム8-1と複数の半導体チップ8-5の間にそれぞれ設けられるように個別に分離された異方性導電接着フィルム8-4が示されている。

(2)特開平11-102924号公報
(2a)「【0016】まず、図3にその上面を示すような大判基板を予め用意しておく。この基板は、上述の第1,第2の基板11A,11Bからなる2層構造の基板であって、図3に示すように、半導体装置に対応する領域が多数設けられている。
・・・
【0018】図3において、D1?D7はダイシングのためのラインであって、半導体装置の領域を画定するためのラインである。後の工程でこれらのラインD1?D7から切り出すことにより、図4に示すような複数の半導体チップが切り出される。
・・・
【0020】・・・半導体チップに対応する部分が複数設けられた基板11を、トランスファモールド用の装置に入れる。・・・
【0021】次いで、ランナー部27の上流にある樹脂源26から樹脂がランナー部27に流れ込み、ゲート部28を通ってチップ収納部29に流れ込む。こうして流れ込んだ樹脂がチップの基板上に乗り、基板表面が樹脂によって封止される。このようにして、基板単位でモールドし、従来の様に、チップ単位に切り出した後に樹脂モールドするということはしない。
【0022】このため、特にトランスファモールド法で封止する際には、図10に示すように、基板1個についてゲート部28が一つあるような溝を有する装置を用いることができるので、1個1個のチップごとにゲート部が必要であったために、ゲート部の数が膨大になり、そこで廃棄される樹脂の量も膨大であった従来に比して、廃棄される樹脂の量を大幅に軽減することが可能になる。」

(3)特開平11-74296号公報
(3a)「【0006】この発明に従って、プロセスは、共通基板プレート上に、多数のチップ取り付け領域に対応する接続領域の多数のグループを、マトリックス構造で形成し、チップを共通基板プレートの各々の取り付け領域に取り付け、各々のチップを関連する電気接続領域に電気的に接続して、基板プレートおよび接続されるチップから構成される組立体を得ることを含む。この発明によると、プロセスは、次のステップで、この組立体を型の中に置き、型に容器材料を射出して、1つの成形操作で、六面体のブロックを取得し、次に続くステップで、上記六面体のブロックを、その厚さ方向で、各々が半導体パッケージを構成する複数のユニットに切断することを含む。」
(3b)「【0021】
【発明の効果】本発明の方法によれば、複数の半導体パッケージを1つの型の中で成形することにより、半導体パッケージの製造の生産性を向上させることができる。」

3-2.引用文献に記載された発明
摘示(1a)、(1f)には、金属突起バンプ付き基板を打ち抜いたフレームに異方性導電接着フィルムを仮圧着し、異方性導電接着フィルム仮圧着部にバンプレスのICチップを搭載して本圧着した後に、トランスファーモールドし、フレームから切断する、半導体装置の製造方法が記載されている。
上記金属突起バンプ付き基板に関して、摘示(1d)にはポリイミドフィルムが記載されているほか、摘示(1b)には、ポリイミド、エポキシ等の耐熱性樹脂をガラスクロス等の基材に含浸、乾燥させ、銅箔を貼り合わせ硬化させた積層板、または、ポリイミド等の耐熱性樹脂のフィルムに、接着剤で銅箔を貼り合わせたもの、あるいは、銅箔にポリイミド等の耐熱性樹脂を塗布し、乾燥、硬化させたフレキシブル基板が使用されることが記載されているから、上記金属突起バンプ付き基板は絶縁基板であるといえる。
また、摘示(1g)によれば、ポリイミドフィルム(金属突起バンプ付き基板)と複数の半導体チップ(ICチップ)の間にそれぞれ設けられるように個別に分離された異方性導電接着フィルムを配することが理解できる。

これらを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。
「絶縁基板である金属突起バンプ付き基板を打ち抜いたフレームに、複数の半導体チップの間にそれぞれ設けられるように個別に分離された異方性導電接着フィルムを仮圧着し、異方性導電接着フィルム仮圧着部にバンプレスの半導体チップを搭載して本圧着した後に、トランスファーモールドし、フレームから切断する、半導体装置の製造方法。」

3-3.対比・判断
(1)本願補正発明1と引用文献1発明との対比
本願補正発明1と引用文献1発明を対比すると、引用文献1発明における「絶縁基板である金属突起バンプ付き基板を打ち抜いたフレーム」は、本願補正発明1における「絶縁基板」に相当する。そして、引用文献1発明において「異方性導電接着フィルム仮圧着部にバンプレスの半導体チップを搭載して本圧着」する工程は、フレームに設けられた金属突起バンプを介して半導体チップを電気的に接続するものであるから、本願補正発明1における「絶縁基板上に複数の半導体チップをバンプ接続する工程」に相当する。
引用文献1発明における「トランスファーモールド」する工程と本願補正発明1における「封止する工程」とは、「複数の半導体チップがトランスファーモールド樹脂に覆われるように、上記複数の半導体チップを上記絶縁基板上に封止する工程」である点で一致する。
引用文献1発明における「フレームから切断する」工程と本願補正発明1における「分離する工程」は、「絶縁基板上にトランスファーモールド樹脂により樹脂封止された複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する工程」であって、「絶縁基板を切断することにより複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する」点で、本願補正発明1と一致する。
引用文献1発明における「複数の半導体チップの間にそれぞれ設けられるように個別に分離された異方性導電接着フィルムを仮圧着」する工程は、本願補正発明1における「封止する工程の前に、上記絶縁基板と上記複数の半導体チップの間にそれぞれ設けられるように個別に分離された取付用絶縁樹脂を形成」する工程に相当する。

そうすると、両者は、
「絶縁基板上に複数の半導体チップをバンプ接続する工程と、
上記複数の半導体チップがトランスファーモールド樹脂に覆われるように、上記複数の半導体チップを上記絶縁基板上に封止する工程と、
上記絶縁基板上に上記トランスファーモールド樹脂により樹脂封止された上記複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する工程と、
を含み、
上記封止する工程の前に、上記絶縁基板と上記複数の半導体チップの間にそれぞれ設けられるように個別に分離された取付用絶縁樹脂を形成し、
上記分離する工程において、上記絶縁基板を切断することにより上記複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点:本願補正発明1は、複数の半導体チップが一つのトランスファーモールド樹脂に覆われるように封止するとともに、絶縁基板と上記トランスファーモールド樹脂とを同時に切断するものであるのに対して、引用文献1発明は、複数の半導体チップが個別にトランスファーモールド樹脂に覆われるように封止するとともに、絶縁基板のみを切断するものである点。

(2)相違点についての検討
絶縁基板に搭載された複数の半導体チップをトランスファーモールド樹脂によって封止する工程において、該封止工程の効率化を図るために複数の半導体チップを一つのトランスファーモールド樹脂に覆われるようにすることは、引用文献2、3に記載されているように本願出願前に周知のものである。
そして、引用文献1発明は、複数の半導体チップが個別にトランスファーモールド樹脂に覆われるように封止するものであるものの、摘示(1c)に「配線基板は、・・・封止工程において、その作業性を効率よくするために、複数のキャビティ(チップ搭載部)を連結させた、フレーム状に加工されるのが一般的である。」と記載されているように、トランスファーモールド樹脂による封止工程も効率化しようとするものであるから、該封止工程を効率化できる工程として周知である「複数の半導体チップを一つのトランスファーモールド樹脂に覆われるようにする」工程を採用することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
また、上記封止工程を「複数の半導体チップを一つのトランスファーモールド樹脂に覆われるようにする」ものとすれば、複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する工程において、絶縁基板とトランスファーモールド樹脂とを同時に切断することは、通常想定される一般的な技術手段にすぎない。

また、本願明細書の【0025】に記載された、「個々の半導体装置のサイズを小さくすることが可能となり、また半導体装置の取れ数を増大させることも可能となる。また、生産性を向上させることもできる。」という効果も、引用文献1の摘示(1e)、引用文献2の摘示(2a)、引用文献3の摘示(3b)の記載から予測される範囲のものであって、格別に顕著なものとは認められない。

(3)本件請求人の主張について
本件請求人は、審判請求書の請求の理由において、
「(3-3)・・・バンプ接続で半導体チップを基板に接続すると、そのバンプの高さに対応して半導体チップと基板との間に隙間が生じます。そして一つのトランスファモールド樹脂でバンプ接続された複数の半導体チップを封止する樹脂封止手法において、樹脂の注入口から遠くの位置に配置された半導体チップほど基板との間の隙間にトランスファーモールド樹脂が充填しにくいという新たな技術課題の認識のもと、この課題を解決するために、樹脂封止される前に半導体チップと基板との間に取付用絶縁樹脂を形成しておくことにより、半導体チップと基板との間も確実に樹脂で封止される半導体装置の構造及び製造方法を提供できるといえます。
半導体装置において封止された樹脂内にボイド(空間が残る部分)が残存することは望ましくないことはよく知られており、ボイドが残存すると、樹脂に吸湿された水分がボイドに溜まり、導体装置を実装基板に実装する際に、実装時の熱により水分が膨張しボイドにクラックが生じる、いわゆるリフロークラックが生じます。」

「(6)・・・本発明のごとく、チップの接続パッドの面を基板と対向させ、接続パッドと基板とをバンプ接続するものにおいては、バンプ接続を適用すれば特段、取付用絶縁樹脂がなくとも当該バンプ接続が半導体チップと基板との取り付けを実現できます。しかしながら、
・封止前の状態において半導体チップと基板との間に隙間ができること、
・半導体チップと基板との隙間にもトランスファモールド樹脂を充填しボイドなく封止すること、
・上述のとおり、一つのトランスファモールド樹脂で複数のチップを含む大きな領域を封止するとすれば、半導体チップの配置される場所に依存し、特にトランスファモールド樹脂の注入口から遠い箇所に配置された半導体チップにおいては、基板との隙間にトランスファーモールド樹脂が入り込みにくいこと、
といった本発明発想の基礎となる技術的事項(課題)はそもそも引用文献3から設定しえません。したがって一つのトランスファモールド樹脂で複数の半導体チップを封止する前に、取付用絶縁樹脂を半導体チップと基板との間に形成することは容易に想到できるものではありません。」

との主張をしているが、本願明細書によれば、ワイヤ接続をする複数の半導体チップを絶縁性基板上に搭載する際に、半導体チップと絶縁基板との間に取付用樹脂を用い、更にトランスファーモールド樹脂により複数のチップを一括封止する際に、ワイヤの剥がれ、断線、或いはワイヤを張る領域による半導体サイズの小型化への困難さを課題としていたものであり(【0002】?【0003】)、上記請求の理由において主張する「特にトランスファモールド樹脂の注入口から遠い箇所に配置された半導体チップにおいては、基板との隙間にトランスファーモールド樹脂が入り込みにくいこと、といった本発明発想の基礎となる技術的事項(課題)」は、何ら記載されておらず、本願出願時点において周知の課題でもないから、当該主張を採用することはできない。

なお、本件請求人の主張は、「(5)・・・チップの接続パッドの面を基板と対向させ、接続パッドと基板とをバンプ接続するものにおいては、バンプ接続を適用すれば特段、取付用絶縁樹脂がなくとも当該バンプ接続が半導体チップと基板との取り付けを実現できます。」として、バンプ接続の場合には、そもそも半導体チップと絶縁性基板との間に取付用の樹脂を用いないがために、前記課題が生じるとの主張をしていることになるが、バンプ接続においても導電性樹脂による接続を行うことは、引用文献1等よく知られたものであり、このような接続方法においては、取付用樹脂を用いることが前提であるから、請求人の主張する課題はそもそも当てはまらない。
また、導電性樹脂を用いないバンプ接続であっても、取付用樹脂とトランスファーモールド樹脂とを併用すること自体は、例えば、特開平11-87561号公報等をはじめとして周知のものであり、引用文献1のようなバンプ接続等をも含む本願補正発明1における課題として、本件請求人の主張する課題はこの点からも採用することができない。

したがって、本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本件手続補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成20年4月21日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明(以下、「本願発明1?9」という。)は、平成20年1月24日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、このうち、本願発明1?本願発明2は次のとおりのものである。

「【請求項1】
絶縁基板上に複数の半導体チップをバンプ接続する工程と、
上記複数の半導体チップが一つのトランスファーモールド樹脂に覆われるように、上記複数の半導体チップを上記絶縁基板上に封止する工程と、
上記絶縁基板上に樹脂封止された上記複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する工程と
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
上記封止する工程の前に、上記絶縁基板と上記複数の半導体チップの間にそれぞれ設けられるように個別に分離された取付用絶縁樹脂を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。」

2.引用文献とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献とその主な記載事項は、上記「II.3-1.引用文献とその記載事項」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明2は、本願補正発明1における「上記絶縁基板上に上記一つのトランスファーモールド樹脂により樹脂封止された上記複数の半導体チップ」について「上記一つのトランスファーモールド樹脂により」を削除し、「分離する工程」について「上記分離する工程において、上記絶縁基板と上記トランスファーモールド樹脂とを同時に切断することにより上記複数の半導体チップを個別の半導体装置に分離する」という限定を削除したものに相当する。

そうすると、本願発明2に包含される下位概念の発明に相当する本願補正発明1が、上記「II.3-3.対比・判断」で述べたとおり、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明2についても、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明2は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-06 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-27 
出願番号 特願平11-212758
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鈴木 正紀
國方 康伸
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 高田 守  
代理人 高橋 英樹  

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