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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B |
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管理番号 | 1213658 |
審判番号 | 不服2007-2475 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-18 |
確定日 | 2010-03-18 |
事件の表示 | 特願2003-295000「アルミナセメント組成物及びそれを用いた不定形耐火物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日出願公開,特開2005- 60191〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成15年8月19日の出願であって,平成18年11月15日付けで拒絶理由通知書が起案され,同年12月1日付けで意見書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され,同年12月25日付けで拒絶査定が起案され,これに対して,平成19年1月18日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに,明細書の記載に係る手続補正書が提出され,平成21年6月1日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が起案され,同年8月3日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成19年1月18日付けの手続補正について 当該補正は、特許請求の範囲の記載について、 「【請求項1】 鉱物相としてCaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),12CaO・7Al_(2)O_(3)を含有するカルシウムアルミネートとα-アルミナからなり、且つ、CaO含有量が5?25%のアルミナセメント、ヒドロキシカルボン酸類、式(1)及び/又は式(2)に示す構成単位を有する混和剤とを含有してなるアルミナセメント組成物、並びに、耐火骨材としてマグネシアとアルミナを含有することを特徴とする溶鋼取鍋用不定形耐火物。 【化1】 【化2】 【請求項2】 アルミナセメント100部に対して、ヒドロキシカルボン酸類を0.1?1部、式(1)及び/又は式(2)に示す構成単位を有する混和剤を0.1?5部配合することを特徴とする請求項1記載の溶鋼取鍋用不定形耐火物。 【化3】 【化4】 」を, 「【請求項1】 鉱物相としてCaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),12CaO・7Al_(2)O_(3)を含有するカルシウムアルミネートとα-アルミナからなり,且つ,CaO含有量が5?25%のアルミナセメント,ヒドロキシカルボン酸類,式(1)及び/又は式(2)に示す構成単位を有する混和剤とを含有してなるアルミナセメント組成物,並びに,耐火骨材としてマグネシアとアルミナを含有することを特徴とする焼成強度の高い溶鋼取鍋用不定形耐火物。 【化1】 【化2】 【請求項2】 アルミナセメント100部に対して、ヒドロキシカルボン酸類を0.1?1部、式(1)及び/又は式(2)に示す構成単位を有する混和剤を0.1?5部配合することを特徴とする請求項1記載の焼成強度の高い溶鋼取鍋用不定形耐火物。 【化3】 【化4】 」と補正するものである。 そして,上記補正は,請求項1及び2において,「溶鋼取鍋用不定形耐火物」を「焼成強度の高い溶鋼取鍋用不定形耐火物」に補正するものである。 そこで,上記補正の適法性について検討すると,上記補正は,拒絶査定において,「その効果も引用例記載の発明から予測しうる範囲のものである。」と指摘されたことに対し,本願発明を明確にすることを目的としたものと認められる。したがって,特許請求の範囲に係る上記補正は,特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当する補正であり,同法第17条の2第4項の規定を満たす。 よって,平成19年1月18日付けの手続補正は適法なものである。 3.本願発明 本願請求項1?2に係る発明は,平成19年1月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲第1?2項に記載された事項に特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,次のとおりのものである。 「【請求項1】 鉱物相としてCaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),12CaO・7Al_(2)O_(3)を含有するカルシウムアルミネートとα-アルミナからなり,且つ,CaO含有量が5?25%のアルミナセメント,ヒドロキシカルボン酸類,式(1)及び/又は式(2)に示す構成単位を有する混和剤とを含有してなるアルミナセメント組成物,並びに,耐火骨材としてマグネシアとアルミナを含有することを特徴とする焼成強度の高い溶鋼取鍋用不定形耐火物。 【化1】 【化2】 」 4.引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用例2として引用した本願出願前頒布された刊行物である特開平7-61843号公報(以下「引用文献」という。)には,以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 鉱物組成が,CaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),及び12CaO・7Al_(2)O_(3)の水硬性成分からなり,化学成分が,CaO20?40重量%,Al_(2)O_(3)80?60重量%である水硬性物質20?95重量部と,α-アルミナ80?5重量部とを配合してなるアルミナセメント。 【請求項2】 請求項1記載のアルミナセメントと,カルボン酸類,炭酸塩,ポリアクリル酸類,ポリメタクリル酸類,アクリル酸類-メタクリル酸類共重合体,及びホウ酸類からなる群より選ばれた一種又は二種以上の添加剤とを含有してなるアルミナセメント組成物 ・・・ 【請求項4】 請求項2記載のアルミナセメント組成物と耐火骨材とを配合してなる不定形耐火物。」(特許請求の範囲) (イ)「本発明者は,前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果,特定の鉱物組成と化学成分からなる水硬性物質を配合したアルミナセメントが,高強度発現性と流動性に優れ,適度の可使時間や硬化性が得られることを知見して本発明を完成するに至った。」(段落【0015】) (ウ)「α-アルミナを配合した段階での成分比が,CaO30?1重量%,Al_(2)O_(3)70?99重量%の割合になるように調合することが重要である。特に,本発明においては,CaO20?2重量%,Al_(2)O_(3)80?98重量%になるように調合することが好ましく,CaO20?3重量%,Al_(2)O_(3)80?97重量%がより好ましい。」(段落【0035】) (エ)「本発明に係るカルボン酸類とは,カルボン酸又はそのアルカリ塩である。ここで,カルボン酸とは,オキシカルボン酸であって,具体的には,クエン酸,酒石酸,コハク酸,乳酸,及びグルコン酸等が挙げられる。また,カルボン酸のアルカリ塩としては,ナトリウム塩,カリウム塩,及びカルシウム塩等が挙げられる。」(段落【0036】) (オ)「本発明は,アルミナセメントに,カルボン酸類,炭酸塩,ポリアクリル酸類,ポリメタクリル酸類,アクリル酸類-メタクリル酸類共重合体,及びホウ酸類からなる群より選ばれた一種又は二種以上の添加剤を併用するものである。 添加剤の種類の組み合わせは,アルミナセメントによって,適宜選択できるもので,特に限定されるものではないが,カルボン酸類-炭酸塩-ポリアクリル酸類,カルボン酸類-炭酸塩-ホウ酸類,及びカルボン酸類-炭酸塩-ポリアクリル酸類-ホウ酸類の組み合わせが,流動性,硬化性,及び強度発現性のバランスが確保できる面から好ましい。」(段落【0042】?【0043】) (カ)「特に,本発明の不定形耐火物においては,耐食性,耐用性,及び耐火性の面から,マグネシア,マグネシアスピネル,アルミナ,及び超微粉の中から選ばれた一種又は二種以上の耐火骨材を使用することが好ましい。また,スラグの不定形耐火物中への浸透抑制面から,マグネシアとアルミナの組み合わせや,マグネシアスピネルとアルミナの組み合わせが好ましい。」(段落【0048】) (キ)「実施例1 Al_(2)O_(3)源として仮焼アルミナを,CaO源として石灰石粉を,生成物の鉱物組成比が表1に示すように配合し,ボールミルで混合粉砕し,ロータリーキルンで1,000?1,600℃の温度にて焼成後,放冷してクリンカーを製造した。製造したクリンカーの化学成分を表1に併記する。」(段落【0064】) (ク)【表1】には,「クリンカーNo.」が「14」のものについて,「鉱物組成比」の「CA_(2)」が「1.5」,「C_(12)A_(7)」が「1.0」と記載されている。そして,「鉱物組成比のCA_(2)とC_(12)A_(7)は各々CA1.0に対する組成比」と記載されている。 (ケ)「実施例3 製造したクリンカーNo.10,14と,α-アルミナとを表4に示す割合で配合したこと以外は実施例2と同様に行った。結果を表4に併記する。」(段落【0075】) (コ)【表4】には,「実験No.」が「3-6」のものについて,「クリンカー」の「No.」が「14」,「化学成分(重量%)」の「CaO」が「18.2」と記載されている。 (サ)「実施例10 実施例3の表4の実験No.3-6のアルミナセメント,耐火骨材cの5?3mm品40重量部,耐火骨材c3?1mm品45重量部,耐火骨材dの1mm下品8重量部,及び耐火骨材dの200メッシュ下品7重量部,添加剤を表11に示すように配合し,千代田技研社製オムニミキサーで,20分間混合し,不定形耐火物を製造したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表11に併記する。 <使用材料> 耐火骨材c:電融アルミナ,昭和電工社製 耐火骨材d:焼結マグネシア,宇部化学社製 添加剤R :ポリアクリル酸,市販品」(段落【0098】?【0099】) (シ)「表11から明らかなように,本発明の不定形耐火物は,アルミナセメント組成物の配合量が少なく,また,不定形耐火物中のCaO含有量が少ないにもかかわらず,優れた流動性と硬化時間を有するものであり,養生強度,乾燥強度,及び焼成強度が高く,スラグの侵食が少ないものであった。」(段落【0102】) (ス)「【発明の効果】実施例から明らかなように,本発明のアルミナセメント,アルミナセメント組成物,及び不定形耐火物は,従来品に無い,高強度発現性,高流動性,高耐食性,及び耐摩耗性を有するものである。」(段落【0111】) (セ)「本発明のアルミナセメント,アルミナセメント組成物,及び不定形耐火物は,これまでアルミナセメントが使用されてきた,高炉や電気炉などの炉周辺はもちろんのこと,吹き付け材,圧入材,及び樋材等の不定形耐火物や,混銑車,トピード,タンディッシュ,取り鍋,及びランス材等,さらには,均熱炉,加熱炉,及びコークス炉等の製銑設備や製鋼設備,並びに,セメントキルン関連設備等に使用でき,転炉や特殊精錬鍋など,従来のアルミナセメントでは不定形化が困難であった,塩基性煉瓦の分野の不定形化が可能になり,従来品に無い高耐久性が期待できる。」(段落【0113】) 5.対比・判断 引用文献には,記載事項(ア)から,「鉱物組成が,CaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),及び12CaO・7Al_(2)O_(3)の水硬性成分からなり,化学成分が,CaO20?40重量%,Al_(2)O_(3)80?60重量%である水硬性物質20?95重量部と,α-アルミナ80?5重量部とを配合してなるアルミナセメント」「と,カルボン酸類,炭酸塩,ポリアクリル酸類,ポリメタクリル酸類,アクリル酸類-メタクリル酸類共重合体,及びホウ酸類からなる群より選ばれた一種又は二種以上の添加剤とを含有してなるアルミナセメント組成物」「と耐火骨材とを配合してなる不定形耐火物」が記載されているといえる。そして,記載事項(ウ),(キ)?(サ)から,α-アルミナを配合した段階での成分比が CaO18.2重量%のアルミナセメント,添加剤として「ポリアクリル酸」を含むアルミナセメント組成物,及び,耐火骨材として「電融アルミナ」及び「焼結マグネシア」を含む不定形耐火物が記載されているといえる。更に,記載事項(セ)には,「取り鍋・・・等の製銑設備や製鋼設備・・・に使用でき」ることが記載されている。これらの記載事項からみて,引用文献には,「鉱物組成が,CaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),及び12CaO・7Al_(2)O_(3)の水硬性成分からなる水硬性物質と,α-アルミナとを配合してなり,α-アルミナを配合した段階での成分比がCaO18.2重量%のアルミナセメントと,添加剤としてのポリアクリル酸とを含有してなるアルミナセメント組成物と,耐火骨材としての焼結マグネシア及び電融アルミナを配合してなる,取り鍋等の製鋼設備に使用できる,不定形耐火物」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 そこで,本願発明1と引用発明とを対比すると,後者の「鉱物組成が,CaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),及び12CaO・7Al_(2)O_(3)の水硬性成分からなる水硬性物質」は,前者の「鉱物相としてCaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),12CaO・7Al_(2)O_(3)を含有するカルシウムアルミネート」に相当し,後者の耐火骨材としての焼結マグネシア及び電融アルミナは,前者の耐火骨材として含有されるマグネシア及びアルミナに相当する。そして,本願発明1におけるCaO含有量は,単に%で表記されているが,本願明細書の段落【0002】に,「本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。」と記載されていることからみて,質量%であると認められ,引用発明のCaO18.2重量%が,本願発明1のCaO含有量5?25質量%に含まれることは明らかである。また,本願発明1の式(1)において,R_(1)及びM_(1)が水素の場合がポリアクリル酸であるから,引用発明の,添加剤としてのポリアクリル酸は,本願発明の,式(1)に示す構成単位を有する混和剤に相当する。そして,引用発明の「取り鍋等の製鋼設備に使用できる」ことは,本願発明1の「溶鋼取鍋用」であることに相当する。更に,本願発明1の「焼成強度の高い」ことについては,平成21年8月3日付け回答書に記載されているとおり,発明の本質ではないところ,他方,引用文献には,記載事項(シ)に,「本発明の不定形耐火物は,・・・焼成強度が高く」と記載されていることから,引用発明も本願発明1と同じく「焼成強度の高い」ものであるといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「鉱物相としてCaO・Al_(2)O_(3),CaO・2Al_(2)O_(3),12CaO・7Al_(2)O_(3)を含有するカルシウムアルミネートとα-アルミナからなり,且つ,CaO含有量が18.2%のアルミナセメント,式(1)にR_(1)及びM_(1)が水素の場合として示す構成単位を有する混和剤とを含有してなるアルミナセメント組成物,並びに,耐火骨材としてマグネシアとアルミナを含有する焼成強度の高い溶鋼取鍋用不定形耐火物」である点で一致し,以下の点で相違している。 相違点:本願発明1では,アルミナセメント組成物にヒドロキシカルボン酸類を含有するのに対し,引用発明では,ヒドロキシカルボン酸類を含有しない点 そこで,上記相違点について検討する。 引用発明は,アルミナセメント組成物に式(1)に示す構成単位を有する混和剤に相当するポリアクリル酸のみを含有し,同時にヒドロキシカルボン酸類を含有するものではない。しかしながら,引用文献には,記載事項(ア)に,アルミナセメント組成物は「カルボン酸類,炭酸塩,ポリアクリル酸類,ポリメタクリル酸類,アクリル酸類-メタクリル酸類共重合体,及びホウ酸類からなる群より選ばれた一種又は二種以上の添加剤」を含有することが記載されている。すなわち,ポリアクリル酸類とカルボン酸類とを併用し得ることが記載されているといえる。ここでカルボン酸類とは,記載事項(エ)から,本願発明1のヒドロキシカルボン酸類に相当する,クエン酸,酒石酸,コハク酸,乳酸,及びグルコン酸等のオキシカルボン酸又はそのアルカリ塩である。更に,記載事項(オ)には,「添加剤の種類の組み合わせは,・・・カルボン酸類-炭酸塩-ポリアクリル酸類,カルボン酸類-炭酸塩-ホウ酸類,及びカルボン酸類-炭酸塩-ポリアクリル酸類-ホウ酸類の組み合わせが,流動性,硬化性,及び強度発現性のバランスが確保できる面から好ましい。」と記載されており,カルボン酸類とポリアクリル酸類とを同時に含むことが好ましいことも記載されているといえる。これらの記載に接した当業者において,引用発明に,添加剤として同時にカルボン酸類も添加することは,格別の困難なくなし得たことである。 そして,本願発明1による効果については,本願明細書の段落【0010】には,「本発明のアルミナセメント組成物は,硬化時間の温度依存性が極めて少なく,減水効果,流動性,強度発現性及び耐食性に優れ,しかも,適度な可使時間を有するという,従来品では到底なし得なかった優れた性能を有する。そして,このアルミナセメント組成物に,耐火骨材,特にマグネシアとアルミナを配合して不定形耐火物にすると,溶鋼取鍋用として好適であり,温度依存性が少なく,減水効果に優れ,流動性や強度発現性,耐食性が向上するという効果を奏する。」と記載されており,本願発明1によってこれらの効果が奏されると認められる。これに対して引用文献には,開示された発明の効果として,高強度発現性と流動性に優れ,適度の可使時間や硬化性が得られること(記載事項(イ)),耐食性,耐用性,及び耐火性の面,そしてスラグの不定形耐火物中への浸透抑制面において好ましいこと(記載事項(カ)),優れた流動性と硬化時間を有し,養生強度,乾燥強度,及び焼成強度が高く,スラグの侵食が少ないこと(記載事項(シ)),高強度発現性,高流動性,高耐食性,及び耐摩耗性を有すること(記載事項(ス))が記載されており,本願発明1の,減水効果,流動性,強度発現性,耐食性及び適度な可使時間に関する効果は,引用文献から当業者が予測し得るものである。 また,硬化時間の温度依存性が少ないという効果については,確かに引用文献には記載が無い。この点について検討すると,上述のように引用発明はヒドロキシカルボン酸類を含有しない点においてのみ本願発明1と相違するものであるところ,出願人は,審判請求書において,「特定のアルミナセメント,ヒドロキシカルボン酸類,及び特定の構成単位を有する混和剤とを含有してなるアルミナセメント組成物,並びに,耐火骨材としてマグネシアとアルミナの両方を含有する」という本願発明の特徴的構成により,前記効果が奏される旨主張している。しかしながら,本願明細書には,硬化時間の温度依存性に関し,実施例1にかかる記載において,【表1】に示されたC_(12)A_(7)を含まないアルミナセメント13,並びに,CaO含有量5?25%の範囲外となるアルミナセメント14及び15を用いた場合,すなわちアルミナセメントに関して本願発明1の特定事項を満足しない場合に,【表2】に示されたとおり温度依存性が好ましくなかった旨記載されるのみであり,その他に,所望の温度依存性が得られない場合に関する記載は見あたらない。そうすると,硬化時間の温度依存性に関する効果は,本願発明1の特定事項全体によって得られる効果であると認める根拠に欠けるといわざるを得ず,出願人の前記主張は採用することができない。したがって,本願発明1による効果が引用発明と比較して格別のものと認めることはできない。 6.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。 したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願発明は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-14 |
結審通知日 | 2010-01-19 |
審決日 | 2010-02-01 |
出願番号 | 特願2003-295000(P2003-295000) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塩見 篤史、武重 竜男 |
特許庁審判長 |
大黒 浩之 |
特許庁審判官 |
深草 祐一 松本 貢 |
発明の名称 | アルミナセメント組成物及びそれを用いた不定形耐火物 |