• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47B
管理番号 1213762
審判番号 不服2008-12277  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-15 
確定日 2010-03-19 
事件の表示 特願2002-326061「ワークステーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日出願公開、特開2004-159713〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成14年11月8日の出願であって、平成20年4月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、さらに、同年6月2日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成21年4月27日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成21年7月13日付けで回答書が提出された。

【2】平成20年5月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年5月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成20年5月15日付けの手続補正は、補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項1を、以下のように補正しようとする補正事項を含むものである。
「床上に設けた横長の支持ユニットの上面に、脚杆支持部をなす多数の嵌合孔を、長手方向に並べて設け、任意の嵌合孔に、前記支持ユニットの長さより同方向の長さを小としたテーブル、仕切りパネル、及び棚の中の複数種類のワークステーション構成要素の下端部に設けた脚杆の中の少なくとも一部を嵌合して支持させることにより、前記支持ユニットに沿って、複数のワークステーション構成要素を、集中して支持させることができるようにしたことを特徴とするワークステーション装置。」

上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定する「テーブル」について「支持ユニットの長さより同方向の長さを小とした」との限定を付すものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本願の補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平10-71025号公報(以下、「引用文献1」という。)には、下記の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】本体に対して独立した天板を有する机であって、該天板の前後の一端部は、本体に対する傾斜角度を変更可能なアームと回動自在に連結し、他端部は、本体から上方に出没可能なリフターと回動自在に連結することを特徴とする机。
【請求項2】 前記本体と天板との間に所定の空間を設け、該天板とアームとの連結点、および、該天板とリフターとの連結点を、該天板に対し前後に摺動可能とすることを特徴とする請求項1に記載の机。」、
(1b)「【0008】図2は、本発明の実施の形態に係る机の主要部品を分解して示したものである。この図2に示される机は、サイドフレーム1およびハウジング2からなる本体3と、天板4とを有する。そして、天板4の前端部4aはアーム5で本体3と連結し、後端部4bはリフター6で本体3と連結することにより、天板4を本体3に対して独立させている。アーム5は、後述するような角度変更機構を有し、リフター6は、後述するような突出量の調節機構を有している。そして、アーム5およびリフター6を動かすことによって、天板の高さおよび角度を変更することができる。さらに、本体3には脚7を着脱自在に固定することができる。」、
(1c)「【0045】以上の構造を有するリフター6を、図1および図2に示すように、サイドフレーム1の後端部近傍に設けられた貫通穴1aに嵌め込む。そして、ハウジング601のフランジ600をサイドフレーム1の上面に密着させて、上下方向の位置決めを行い、サイドフレーム1に対する固定を行う。
【0046】また、天板4に対しては、リフター6のプランジャ602に固定された回動軸603を、天板4の後端部に位置するヒンジ10と係合させている。この、天板4とリフター6との連結点の様子を、図1および図17に基づいて説明する。図1に示すように、ヒンジ10はレール8の後端部に設けられている。また、図17に示すようにヒンジ10は二股のアーム101を有し、その間にリフター6を通している。アーム101には、回動軸603と係合するための切り欠き102が設けられている。この切り欠き102は、アーム101の対向面および下面で開口するものである。そして、ヒンジ10を回動軸603に対して上方から被せ、回動軸603を切り欠き102に嵌め込む。この状態で切り欠き102が回動軸603に対して摺動可能となっているので、切り欠き 102は回動軸603の軸受として機能する。さらに、二股のアーム101の先端を結ぶように、略U字状の抜け止めピン18を差し込み、かつ、回動軸603の下方を通るように切り欠き102を貫通させる。この止めピン18が、切り欠き102に対する回動軸603の抜け止めとなる。」、
(1d)「【0051】次に、角度および高さ調整が自在な天板4と共に使用され、本体3に対して高さの変更が容易な周辺機器を、図18に例示して説明する。図18には、天板をより広くするための拡張天板19、書類ホルダー20、ブックホルダー21、電話台22、コンピュータ台23、電気スタンド24等が図示されている。
【0052】図19には、電話台22の高さ調整を可能とする構造が示されている。図2にも示されているが、机の本体3の後端部には、複数の開口25が形成されており、それぞれに、樹脂等で形成されたキャップ26が嵌め込まれている。キャップ26は樹脂等からなり、筒状部26aの一端部にフランジ26bを設けたものである。この筒状部26aには、パイプ27を嵌め込むことができる。パイプ27には、複数の穴271が形成されており、ストッパー28を穴271に係合させて嵌め込むことができる。パイプ27に対するストッパー28の位置を変更すると、本体3に対するパイプ27の突出量を変更することができる。このパイプ27の先端に、電話台22との連結アーム29を嵌め込むことにより、電話台22の高さ調整を行うことかできる。」、
(1e)「【0056】次に、図22および図23に基づいて、天板4のスライド機構についての説明を行う。図6に示したように、本発明の実施の形態に係る机は、天板4のみを前方にスライドさせることができる。図22には、この天板4のスライドを可能とする為のスライド機構の透視図を示している。スライド機構は、天板4、レール8、ガイド31、ロック部材32からなる。このなかで、斜線で示すガイド31およびロック部材32は、天板4の下面に直接固定されている。また、前述のごとくレール8の後端部にはヒンジ10が設けられ、ヒンジ10とリフター6の回動軸603とが連結している。また、レール8にはスライド受け部9が設けられ、このスライド受け部9とアーム5のスライド軸501とが連結している(図1参照)。すなわち、天板4とアーム5との連結点をレール8後端部のヒンジ10に設置し、かつ、天板4とリフター6との連結点をレール8に設けられたスライド受け部9に設置することにより、レール8はアーム5およびリフター6を介して、本体3に対して取付けられる。
【0057】ところで、天板4に固定されたガイド31は、レール8に対して摺動自在に係合している。また、ロック部材32は、天板4がスライドしていない状態で、レール8の先端を覆うことができる位置に設けられている。そして、本体3に取付けられたレール8に対し、天板4、ガイド31およびロック部材32がスライドする。このように、天板4をレール8に対して摺動自在とすることによって、本体3、アーム5およびリフター6の位置はそのままで、天板4のみを前後に摺動させることができる。」。
(1f)図2には、横長の本体3の上面に、パイプ嵌入部となる複数の開口25を、長手方向に並べて設けたことが、図18には、本体3の長さより同方向の長さを小とした拡張天板19、書類ホルダー20、ブックホルダー21、電話台22又はコンピュータ台23、が記載され、書類ホルダー20、ブックホルダー21又はコンピュータ台23の下部及び、拡張天板19又は電話台22の前後側端部に、下方に向けてパイプが設けられていること、これらが、本体3に沿って、集中して支持させることができることが示されている。
(1g)図19には、本体3の上面には、リフター6の嵌入部となる貫通孔1aが開口25と並べて設けられていること、天板は、本体3の長さより同方向の長さが大であることが記載されている。

引用文献1記載の脚部7が床上に設けられることは明らかであるから、これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「床上に設けた脚部7を固定した横長の本体3の上面に、リフター6の嵌入部となる貫通孔1aやパイプの嵌入部となる複数の開口25を、長手方向に並べて設け、天板4の後側端部に設けられているヒンジ10を介して係合され下方に伸びるリフター6を貫通孔1aに嵌め込んで固定させると共に、任意の開口25に、前記本体3の長さより同方向の長さを小とした書類ホルダー20、ブックホルダー21、及び拡張天板19等の周辺機器の下部や前後の側端部下方に設けたパイプを嵌め込むことにより、前記本体3に沿って、天板4と共に、書類ホルダー20、ブックホルダー21、拡張天板19等の周辺機器を、集中して支持させることができるようにした周辺機器を有する机。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

3.対比
補正発明1と引用文献1記載の発明とを対比する。
引用文献1記載の発明の「脚部7を固定した本体3」は、補正発明1の「支持ユニット」に相当し、同じく、「貫通孔1a」及び「開口25」は、「嵌合孔」に、「天板4」及び「拡張天板19」は、「テーブル」に、「書類ホルダー20」及び「ブックホルダー21」は、「棚」に、「リフター6」及び「パイプ」は、「脚杆」に相当する。
また、引用文献1記載の発明の「天板4、書類ホルダー20、ブックホルダー21、拡張天板19等の周辺機器」、「周辺機器を有する机」は、それぞれ、補正発明1の「ワークステーション構成要素」、「ワークステーション装置。」に相当する。
さらに、補正発明1において、「ワークステーション構成要素の下端部」として、棚8の前後方向に向く水平杆の後端(【図1】参照)、仕切りパネルの前後の側端部下面(段落【0034】参照)が含まれており、「ワークステーション構成要素の下端部」には、構成要素の前後の側端部の下方も含まれていることは明らかである。
したがって、両者は、
「床上に設けた横長の支持ユニットの上面に、脚杆支持部をなす多数の嵌合孔を、長手方向に並べて設け、嵌合孔に、テーブル、前記支持ユニットの長さより同方向の長さを小とした棚の中の複数種類のワークステーション構成要素の下端部に設けた脚杆の中の少なくとも一部を嵌合して支持させることにより、前記支持ユニットに沿って、複数のワークステーション構成要素を、集中して支持させることができるようにしたワークステーション装置。」
の点で一致し、次の各点で相違している。
<相違点1>
ワークステーション構成要素の一つとして、補正発明1では、仕切りパネルが選択できるのに対して、引用文献1記載の発明では、仕切りパネルを選択できることは示されていない点。
<相違点2>
補正発明1では、ワークステーション構成要素はすべて、支持ユニットの長さより同方向の長さが小であり、任意の嵌合孔に、ワークステーション構成要素の脚杆を嵌合して支持させるものであるのに対して、引用文献1記載の発明では、ワークステーション構成要素のうち、棚及び、テーブルの一つである拡張天板19は、支持ユニットの長さより同方向の長さが小であり、その脚杆を、任意の嵌合孔に嵌合して支持させるものであるものの、テーブルの一つである天板4は、支持ユニットの長さより大であり、その脚杆(リフター6)を、設定された嵌合孔(貫通孔1a)に嵌め込んで固定されるものである点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1について>
テーブルの後部や側部に仕切りパネルを設けることは周知の技術であり、刊行物1記載の発明において、ワークステーション構成要素の一つとして、仕切りパネルを採用し、棚及び、テーブル(拡張天板19)と同様に脚杆を、任意の嵌合孔に支持させるようにすることは、当業者が適宜なしうることである。
<相違点2について>
引用文献1には、天板4を前後方向に移動可能とすることが記載されているが(記載事項(1e))、使用形態に応じて、天板4の位置を左右方向に移動させる場合も容易に想定され、引用文献1記載の発明において、ワークステーション装置全体を移動させることに代えて、別のテーブル(拡張天板19)と同様に、テーブル(天板4)を本体に対して左右の任意の位置に設置可能とすることは、当業者が容易に想到しうることであり、そのために、テーブル(天板4)の長さを支持ユニットの長さより小とし(支持ユニットの長さをテーブルの長さより大とし)、テーブル(天板4)の脚杆を、任意の嵌合孔に選択して嵌合させることは、当業者が適宜なしうることである。
そして、補正発明1全体の効果も、引用文献1記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができないから、補正発明1は、引用文献1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、平成20年5月15日付けの手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】平成20年6月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年6月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成20年6月2日付けの手続補正は、補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項1を、以下のように補正しようとする補正事項を含むものである。
「床上に設けた横長の支持ユニットの上面に、脚杆支持部をなす多数の嵌合孔を、長手方向に並べて設け、任意の嵌合孔に、前記支持ユニットの長さより同方向の長さを小としたテーブル、仕切りパネル、及び棚の中の複数種類のワークステーション構成要素の下端部に設けた脚杆の中の少なくとも一部を嵌合して支持させることにより、前記支持ユニットに沿って、複数のワークステーション構成要素を、集中して支持させることができるようにしたことを特徴とするワークステーション装置。」
なお、上記【2】のとおり平成20年5月15日付けの手続補正は補正の却下の決定がされたので、補正前の明細書は、平成20年3月14日付け手続補正で補正された明細書である。

2.補正の適否の判断
上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定する「テーブル」について「支持ユニットの長さより同方向の長さを小とした」との限定を付すものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本願の補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、検討すると、補正発明2は、上記【2】で検討した補正発明1と同一であり、補正発明1が、上記【2】4.で述べたとおり、引用文献1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明2も、同じ理由により、引用文献1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおり、平成20年6月2日付けの手続補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【4】本願発明について
1.本願発明
平成20年5月15日付け及び平成20年6月2日付けの手続補正は上記のとおり補正の却下の決定がされたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成20年3月14日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】床上に設けた横長の支持ユニットの上面に、脚杆支持部をなす多数の嵌合孔を、長手方向に並べて設け、任意の嵌合孔に、テーブル、仕切りパネル、及び棚の中の複数種類のワークステーション構成要素の下端部に設けた脚杆の中の少なくとも一部を嵌合して支持させることにより、前記支持ユニットに沿って、複数のワークステーション構成要素を、集中して支持させることができるようにしたことを特徴とするワークステーション装置。」(以下、「本願発明」という。)

1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献1の記載事項及び引用文献1記載の発明は、上記【2】2.に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明1を特定するのに必要な事項である「支持ユニットの長さより同方向の長さを小とした」との限定事項を削除したものであって、本願発明を特定するのに必要な事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明1が、上記【2】4.で述べたとおり、引用文献1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-08 
結審通知日 2010-01-19 
審決日 2010-02-02 
出願番号 特願2002-326061(P2002-326061)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47B)
P 1 8・ 121- Z (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 山本 忠博
伊波 猛
発明の名称 ワークステーション装置  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ