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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62J
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B62J
管理番号 1213797
審判番号 不服2009-3284  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-13 
確定日 2010-03-18 
事件の表示 特願2003-322322号「自動二輪車」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日出願公開、特開2005- 88659号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】手続の経緯
本願は、平成15年9月12日の出願であって、原審での拒絶理由通知に対して平成20年8月8日付けで意見書の提出と共に手続補正をした後、更に、本願について拒絶査定がされたところ、拒絶査定不服の本件審判を請求するとともに、本件審判請求と同日の平成21年2月13日付けで手続補正(前置補正)をしたものである。

【第2】平成21年2月13日付け手続補正の却下について
[補正却下の決定の結論]
平成21年2月13日付けの手続補正を却下する。
[補正却下の決定の理由]
1.平成21年2月13日付けの手続補正(以下「本件手続補正」という。)の趣旨
(1)本件手続補正の前後における、それぞれの請求項1に係る発明は次のとおりである。(なお、それぞれの請求項1中の下線は、本件手続補正の内容を明らかにするために当審で加入した。)
<本件手続補正前>の請求項1に記載された発明
「【請求項1】
アウターパイプとその上方に位置するインナーパイプとでフロントフォークを構成し、この左右一対をなすフロントフォークの間に前輪上方を覆うフロントフェンダを配置した自動二輪車において、
前記アウターパイプの上部に前記フロントフェンダを取り付け、
前記フロントフェンダに、前記アウターパイプの上部から前記インナーパイプの一部の少なくとも前側を覆う左右一対のフォークカバーを一体形成し、
前記フォークカバーは、車体側面視において、後縁が前記フロントフェンダの中央部よりも上方に延び、そこから上縁が前方に向かい前記フロントフェンダの中央部よりも下方に向かって延びており、
前記フロントフェンダの後方にラジエータを配置したことを特徴とする自動二輪車。」
<本件手続補正後>の請求項1に記載された発明
「【請求項1】
アウターパイプとその上方に位置するインナーパイプとで構成されたフロントフォークを左右一対に有し、この左右一対をなすフロントフォークの間に前輪上方を覆うフロントフェンダを配置した自動二輪車において、
前記アウターパイプの上部に前記フロントフェンダを取り付け、
前記フロントフェンダに、前記アウターパイプの上部から前記インナーパイプの一部の少なくとも前側を覆う左右一対のフォークカバーを一体形成し、
前記フォークカバーは、車体側面視において、後縁が前記フロントフォークに沿って上方に延び、車体側面視において上縁が前記後縁の最上端から前方に向かって延びており、
前記上縁の前端は車両前後方向に関して前記前輪の中央部より前方に位置し、 前記フロントフェンダの後方にラジエータを配置したことを特徴とする自動二輪車。」

2.上記の補正の内容は、補正前の請求項1にあった下線部の記載事項を削除し、これに代えて新たな事項(補正後の請求項1における下線部の事項)を付加しようとするものであって、このような内容の補正は、その目的が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされることにより適用される、同法による改正前の特許法第17条の2第4項の第1ないし4号に掲げる目的(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明)のいずれに該当するものとも認められない。

3.したがって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされることにより適用される、同法による改正前の特許法第17条の2第4項柱書きの規定に違反するので、特許法第159条第1項において一部読み替えて準用する同第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の結論のとおり決定する。

【第3】本願の発明について
1.本願の発明
上記のとおり、平成21年2月13日付けの本件手続補正は却下されたので、本願の発明は、平成20年8月8日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1及び2のそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
アウターパイプとその上方に位置するインナーパイプとでフロントフォークを構成し、この左右一対をなすフロントフォークの間に前輪上方を覆うフロントフェンダを配置した自動二輪車において、
前記アウターパイプの上部に前記フロントフェンダを取り付け、
前記フロントフェンダに、前記アウターパイプの上部から前記インナーパイプの一部の少なくとも前側を覆う左右一対のフォークカバーを一体形成し、
前記フォークカバーは、車体側面視において、後縁が前記フロントフェンダの中央部よりも上方に延び、そこから上縁が前方に向かい前記フロントフェンダの中央部よりも下方に向かって延びており、
前記フロントフェンダの後方にラジエータを配置したことを特徴とする自動二輪車。」(以下「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願前に頒布された刊行物である、実願昭61-14042号(実開昭62-127085号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、次の(a)及び(b)の事項が記載されている。
(a)「 フロントフエンダ(7)のフロントサスペンシヨン前方位置に、フロントフエンダ(7)の上面から上方及び側方に延びるフロントサスペンシヨンカバー(9)を一体に設けたことを特徴とする自動二、三輪車用フロントフエンダ。」(明細書部分第1頁第5?9行)
(b)「(実施例)
第1図ないし第3図において、自動二輪車(1)は、車体(2)と前輪(3)の間にフロントサスペンション(4)を有し、該サスペンション(4)は、摺動自在に嵌合しかつ弾性体を介在させたボトムケース(5)とフォークパイプ(6)を備え、前輪(3)の上端を覆うフロントフェンダ(7)が取付部(8)によってボトムケース(5)に固定されている。
フロントフェンダ(7)の上面には、・・・フロントサスペンシヨンカバー(9)、(9)が一体に設けられている。このカバー(9)は、第2図に示すように、フロントフェンダ(7)にボルト(10)で固定・・・してもよいし、第3図に示すように、フロントフェンダ(7)と一体に成形してもよく、その高さhは、フォークパイプ(6)の最大ストロークとほぼ等しくは、幅wは、フォークパイプ(6)の直径より若干大きくする。」(同第3頁第15行?第4頁第13行)

更に、引用例には、上記(a)、(b)の記載事項のほか、その第1図に、フロントフェンダ(7)がボトムケース(5)の上方に固定されると共に、フロントサスペンシヨンカバー(9)は、ボトムケース(5)の上部からフォークパイプ(6)の一部の前側を覆うものであることが示されており、また、同じくその第3図に、フロントサスペンシヨンカバー(9)は、その前縁と後縁との中間部が上方に立ち上がり、また、前記の前縁と後縁とを、フロントフェンダ(7)の上面から側面に向かう移行部分(第3図で、フロントサスペンシヨンカバー(9)の前縁と後縁から延びるように2本線で表現されている部分)と一致するように、フロントサスペンシヨンカバー(9)とフロントフェンダ(7)とを一体に成形した状態が示されており、これらの事項を総合すると、上記引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「フロントフエンダ(7)のフロントサスペンシヨン前方位置に、フロントフエンダ(7)の上面から上方及び側方に延びるフロントサスペンシヨンカバー(9)を、フロントフエンダ(7)と一体に成形した自動二輪車用フロントフエンダであって、
自動二輪車(1)は、車体(2)と前輪(3)の間にフロントサスペンション(4)を有し、該サスペンション(4)は、摺動自在に嵌合しかつ弾性体を介在させたボトムケース(5)とフォークパイプ(6)を備え、前輪(3)の上端を覆うフロントフェンダ(7)が取付部(8)によってボトムケース(5)の上部に固定されると共に、フロントサスペンシヨンカバー(9)は、ボトムケース(5)の上部からフォークパイプ(6)の一部の前側を覆うように設けられており、
フロントサスペンシヨンカバー(9)は、その前縁と後縁との中間部が上方に延びており、また、前記の前縁と後縁とは、フロントフェンダ(7)の上面から側面に向かう移行部分と一致するように、フロントサスペンシヨンカバー(9)とフロントフェンダ(7)とを一体に成形した自動二輪車用フロントフエンダ。」(以下「引用発明」という。)

3.発明の対比
(1)上記の本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明でいう「フロントサスペンション(4)」は、本願発明でいう「フロントフォーク」に相当し、以下同様に「ボトムケース(5)とフォークパイプ(6)」は、「アウターパイプとその上方に位置するインナーパイプ」に、「フロントサスペンシヨンカバー(9)」は「フォークカバー」に、それぞれ相当する。また、引用発明においても、上記のフロントサスペンション(4)は「左右一対をなす」ように設けられて、その間に「前輪上方を覆う」ようにフロントフェンダが配置されることは明らかである。
更に、「自動二輪車用フロントフエンダ」を開示する引用発明は、また、当該フロントフエンダを備える「自動二輪車」を開示する発明とみることもできる。

(2)以上の対比から認められる、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]「アウターパイプとその上方に位置するインナーパイプとでフロントフォークを構成し、この左右一対をなすフロントフォークの間に前輪上方を覆うフロントフェンダを配置した自動二輪車において、
前記アウターパイプの上部に前記フロントフェンダを取り付け、
前記フロントフェンダに、前記アウターパイプの上部から前記インナーパイプの一部の少なくとも前側を覆う左右一対のフォークカバーを一体形成した自動二輪車。」である点。
[相違点1] 前記フォークカバーについて、本願発明では「車体側面視において、後縁が前記フロントフェンダの中央部よりも上方に延び、そこから上縁が前方に向かい前記フロントフェンダの中央部よりも下方に向かって延びており、」としているのに対して、引用発明では「前縁と後縁との中間部」が上方に延びており、また、フォークカバー(フロントサスペンシヨンカバー(9))の前縁を「フロントフェンダ(7)の上面から側面に向かう移行部分と一致する」ようにしているものの、「上縁が前方に向かい前記フロントフェンダの中央部よりも下方に向かって延び」ることについては明確な言及がない点。
[相違点2] 本願発明では、「前記フロントフェンダの後方にラジエータを配置し」するのに対して、引用発明では、ラジエータを配置する位置について言及がない点。

4.当審の判断
(1)上記の[相違点1]を検討すると、
引用発明において、フロントサスペンシヨンカバー(9)(フォークカバー)と、当該カバーによって保護されるフロントサスペンション(4)(フロントフォーク)とは相当程度に近接している方が好ましいことは明らかであり、そのような両者の近接した配置が可能となるように、フロントサスペンシヨンカバー(9)の後縁が上方に延びるようにすることは、当業者であれば容易に想到できるし、また、フロントサスペンシヨンカバー(9)の前縁と一致する「フロントフェンダ(7)の上面から側面に向かう移行部分」は、通常、フロントフェンダの「中央部よりも下方」に位置することになる部分である。そうすると、引用発明において、上記相違点1で指摘した本願発明と同様の構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度の設計事項といえる。
(2)上記の[相違点2]を検討すると、
自動二輪車において、ラジエータをフロントフェンダの後方に配置するのは常套的な設計事項であって、上記相違点2は格別のものとはいえない。
(3)更に、上記二つの相違点に係る構成を備える本願発明の作用効果について検討しても、上記の引用例の記載事項からは、当業者にとって予測し難いといえるような格別なものがない。
したがって、本願発明は引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.請求人の主張について
請求人は、平成20年8月8日付けの意見書、及び審判請求の理由において、本願の発明に係るフォークカバーは、前輪が巻き上げる小石等がフロントフォークに当接することを防ぐだけでなく、「ラジエータに当たる空気の流れを整えて冷却性能を向上させる」という効果も奏する旨の主張をしている。
しかし、上記のようなフォークカバーの構成とラジエータの冷却性能との関係については、出願当初の明細書では全く言及されていなかったというばかりでなく、本願の図1には、ラジエータ96が、フォークカバー903から相当離れた位置に配置されることが示されていて、請求人の上記主張の裏付けとなるべきものの存在が明確ではないし、また、そのような主張をすること自体の妥当性や正当性も疑わしいといわざるをえない(上記の主張を認めると、「空気の流れを整えて冷却性能を向上させる」ようなラジエータの配置状態が、出願当初から開示されていたことを認めることになる)。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-19 
結審通知日 2010-01-21 
審決日 2010-02-02 
出願番号 特願2003-322322(P2003-322322)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62J)
P 1 8・ 57- Z (B62J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 金丸 治之
小関 峰夫
発明の名称 自動二輪車  
代理人 鶴若 俊雄  

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