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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1213944
審判番号 不服2007-22263  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-10 
確定日 2010-03-25 
事件の表示 特願2003-119823「需要動向予測装置及び需要動向予測システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-326411〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成15年4月24日の出願であって,平成19年4月13日付けで拒絶理由通知がなされ,これに対して,同年6月18日付けで意見書の提出と共に手続補正がなされたが,同年7月10日付けで拒絶査定がなされた。これに対し,同年8月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同年9月10日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成19年9月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲は,
「【請求項1】
気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段を設けた気象情報を取得する気象情報取得手段と,
取得した気象情報から,消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した気象要素を抽出する気象要素抽出手段と,
前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売数量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売数量との相関関係を予め設定しておき,予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売数量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売数量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売数量を予測する予測手段と,
予測された販売数量を消費者の需要動向として出力する出力手段とが設けられたことを特徴とする需要動向予測装置。
【請求項2】
供給者側のサーバからの販売データを取得する手段を備え,それから得られた商品毎の販売数量を目的変数として,前記相関関係を導き出すことを特徴とする請求項1に記載の需要動向予測装置。
【請求項3】
前記気象要素は,
ア)各地域ごとにおいて,寒冷需要となる気温と暑熱需要となる気温との境界である中立気温と,気温との差
イ)中立気温と体感気温との差
ウ)前日との最高気温の温度差が3℃以上あること
エ)前日との最高気温の温度差が5℃以上あること
オ)前日との最低気温の温度差が5℃以上であること
カ)日較気温差が8℃以上であること
キ)24時間以内の気圧変化が10hPa以上であること
ク)降水量及びその降水時刻
ケ)日照量
コ)異常気象
のうちから選ばれる1又は2以上の情報を要素とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の需要動向予測装置。
【請求項4】
前記予測手段と前記出力手段との間に加工手段が設けられ,該加工手段は,前記予測手段で予測された需要動向を所望の形態の情報に加工し,前記出力手段は,加工された情報を出力することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の需要動向予測装置。
【請求項5】
前記説明変数として,店舗の立地条件又は時期的条件を加えたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の需要動向予測装置。
【請求項6】
前記説明変数として,店舗の催事,周辺地域の運動会,祭り等の地域特別条件を加えたことを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の需要動向予測装置。
【請求項7】
気象庁等の気象情報データベースと,前記請求項1?6のいずれかに記載の需要動向予測装置と,供給者側閲覧用端末と,これをつなぐ通信ネットワークとで構成される需要動向予測システムであって,
前記気象情報データベースは,気象情報を前記需要動向予測装置に送信する気象情報送信手段を有し,
前記需要動向予測装置の前記気象情報取得手段は,前記気象情報データベースからの気象情報を受信し,前記出力手段は,予測された消費者の需要動向を前記供給者側閲覧用端末に出力し,
前記供給者側閲覧用端末は,前記需要動向予測装置により出力された消費者の需要動向を受信する需要動向受信手段と,消費者の需要動向を表示する需要動向表示手段とを有することを特徴とする需要動向予測システム。
【請求項8】
供給者側閲覧用端末の前記需要動向受信手段は,前記需要動向予測装置より出力された加工された情報を受信し,前記需要動向表示手段は,加工された情報を表示することを特徴とする請求項7に記載の需要動向予測システム。」と補正された。

(2)請求項1の補正について
まず,特許請求の範囲の請求項1においてする本件補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるか否かについて検討する。

本件補正は,請求項1について,
(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「気象情報を取得する気象情報取得手段」を,本件補正後の請求項1の「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段を設けた気象情報を取得する気象情報取得手段」とする補正事項を含むものである。
(イ)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「消費者の生体機能の変化に影響を与える気象要素」を,本件補正後の請求項1の「消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した気象要素」とする補正事項を含むものである。
(補正箇所を示す下線は,いずれも手続補正書記載のものを援用した。)
これを検討すると,上記(ア)?(イ)は,いずれも「気象情報取得手段」,「気象要素」の態様について限定する補正と解することができる。
したがって,特許請求の範囲の請求項1においてする本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,特許請求の範囲の請求項1においてする本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)原査定の拒絶の理由について
原審の拒絶査定の
『この出願については,平成19年4月13日付け拒絶理由通知書に記載した理由A,Bによって,拒絶をすべきものである。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討したが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。』の記載からみて,

原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりと認められる。

『A.この出願の下記の請求項に係る発明は,下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので,特許を受けることができない。

-中略-
B.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

-以下略-』

(4)請求人の主張
平成19年10月19日付けの手続補正書(方式)により補正された平成19年8月10日付けの審判請求書における審判請求人の主張の概要は以下のとおりである。
『<理由Aについて>
-中略-
3.請求項1は,将来の消費者の需要動向としての商品毎の販売数量を予測するために,コンピュータを利用した需要動向予測装置であって,気象情報取得手段により気象庁等の気象情報データベースからコンピュータ内に自動的に取り込んだ気象情報から,消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した気象要素を抽出し,この気象要素を説明変数とし商品毎の販売数量を目的変数とした,気象要素と販売数量との相関関係をこれまでのデータに基づいて予め設定し記憶しておく操作を行います。これらの操作はコンピュータ操作における技術常識としてコンピュータに組み込まれたソフトウェアによって行われます。そして,消費者の需要動向予測時における気象情報(予報情報)から抽出した気象要素(予測気象要素)に基づき,予測時の販売数量(予測数量)を,前記予め設定しておいた気象要素と販売数量との相関関係から読み出して出力するというものであります。これらの操作もコンピュータ操作における技術常識としてコンピュータに組み込まれたソフトウェアによって行われることはいうまでもありません。
なお,拒絶査定の備考欄で「気象要素抽出手段の具体的な情報処理が特定されておらず,「気象要素」がどのようなデータであるのか不明である・・・」とされている点についてですが,消費者の生体機能の変化に影響を与える気象要素は予め選定されており,気象要素抽出手段において,その選定された気象要素を気温,降水量,気圧等の気象情報から抽出する処理は,明示するまでもなく周知のコンピュータ処理技術をもってすれば容易に行えるものであり,請求項の記載内容は十分であると思料します。例えば,気象要素が「前日との最高気温の温度差が3℃以上であること」の場合には,ある特定の日の最高気温と,その前日の最高気温との差を演算して,それが3℃以上であるかないかを比較し判断するということを行いますが,これは周知のコンピュータ処理技術をもって容易に行うことができます。また,消費者の生体機能に変化を与える「気象要素」とは,明細書中において具体的に述べており(例えば,段落0054?0078参照),これらを総称して捉えているものであって,十分に明確であると思料します。
このように,請求項1に係る発明は,消費者の需要動向を予測するという目的が,気象要素と販売数量との相関関係を予め設定し記憶しておき,そこに予測時の気象要素を当てはめることによって,予想される販売数量を読み出すという,ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的な手段により実現されているため,ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されています。したがって,本願発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作」,すなわち「発明」であり,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を充足するものと思料致します。
-中略-
<理由Bについて>
次に,本願発明の引用文献1及び2に対する進歩性について以下に述べます。なお,本願発明は,補正によってコンピュータの情報処理に関する技術的特徴を表すものであると思料致します。
1.引用発明の説明
引用文献1には,天気予報や立地条件により販売数を予測することが記載されています。
引用文献2には,天候と降水確率,過去の実績データより販売見込量を予測することが記載されています。
2.本願発明と引用発明との対比
以下に,本願発明と引用文献との対比について述べます。
ア.本願請求項1に係る発明と,引用文献1及び2に記載の発明との対比
引用文献1及び引用文献2には,天気予報等を利用して販売数量を予測する点が記載されています。具体的には,引用文献1では,販売数を予測するためのデータとして,「晴れ」「曇りのち雨」などの14種類の天候パターンが用いられています。また,引用文献2では,販売見込量を予測するためのデータとして,晴,曇り,雨(雪)等の予想される天候と降水確率が用いられています。
しかしながら,用いられているのは通常の天候データであって,このような単純なデータからは正確に将来の販売数量を予測することはできません。
これに対し,本願発明は,そのような単純なデータではなく,気象情報から生体機能に影響を与えるものとして選定した気象要素を抽出し,それを用いて需要動向を予測することを特徴とするものです。人の欲求は,生体機能が正常に働くように生体機能自体が求める正常化のための欲求であります。したがって,生体機能に変化が与えられると,生体機能を正常化させようとして人の欲求が起こり,それが需要動向となって表れます。
本願発明はこの点に着目したものであって,気象情報から生体機能に影響を与えるものとして選定した気象要素を抽出し,これを用いることにより,消費者の需要動向の予測制度を高めることができるという顕著な技術的効果を奏します。
なお,拒絶査定の備考欄において,「「消費者の生体機能の変化に影響を与える気象要素」の定義が明確でなく,引用文献に記載のものも文言上該当するものと認める」とされている点についてですが,先にも述べたとおり,消費者の生体機能の変化に影響を与える「気象要素」については明細書中において具体的に述べており(例えば,段落0054?0078参照),これらを総称して捉えているものであって,十分に明確であると思料します。また,本願発明における気象要素について単純な気象予報(たとえば,雨が降るか降らないか)ではない旨を明細書において明確に述べているのであるから(段落0013,0072参照),引用文献1及び2の単純な気象予報とは全く異なるものであります。 さらに,拒絶査定の備考欄において,「具体的な予測式は経験に基づき適宜決定し得る」とされている点についてですが,需要動向の予測を正確に行うには,どのような情報を基(説明変数)にするのかが重要なのであり,生体機能の変化に影響を与える気象要素を用いるという思想が一切記載も示唆もされていない引用文献の記載から,本願発明に容易に想到できるものではありません。したがって,本願発明は,統計的手法に基づき解析したもので単なる経験ではありません。
以上のように,生体機能に影響を与える気象要素に着目して消費者の需要動向を正確に予測するという本願発明の思想は,いずれの引用文献にも記載されておらず,いずれの引用文献からも容易に相当し得るものではありません。
-中略-
D.むすび
以上述べましたように,本願発明は,発明として成立するものであり,特許法第29条第1項柱書に規定の要件を充足するものと確信致します。
また,本願発明は引用文献1及び2のいずれによっても示唆されない新規な構成と優れた効果を有するものであり,決して特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではないと確信致します。
因って請求の趣旨記載通りのご審決を賜りますようお願い申し上げます。』

(5)発明該当性(特許法29条1項柱書に規定する要件)について
本願補正発明の「需要動向予測装置」は,明細書の記載から明らかなように,需要動向予測装置が,気象情報取得手段と,気象要素抽出手段と,予測手段と,出力手段を用いた発明であって,気象要素抽出手段と,予測手段での処理にソフトウエアを必要とする,いわゆる,コンピュータ・ソフトウエア関連発明であると認められる。
このコンピュータ・ソフトウエア関連発明においては,「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合,当該ソフトウエアと協働して動作するデータ処理装置は「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。ここで,「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは,ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより,使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。
そこで,請求項1の記載において,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより,使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることが提示されているかどうか,請求項1の記載を便宜上以下のとおり(A)?(D)に分けて検討する。
(A)「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段を設けた気象情報を取得する気象情報取得手段」
(B)「取得した気象情報から,消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した気象要素を抽出する気象要素抽出手段」
(C)「前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売数量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売数量との相関関係を予め設定しておき,予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売数量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売数量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売数量を予測する予測手段」
(D)「予測された販売数量を消費者の需要動向として出力する出力手段」

上記(A)の記載について検討すると,上記(A)には,本願補正発明の「需要動向予測装置」の「気象情報取得手段」が「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段」を備えていることと,「気象情報を取得する」こととが記載されているものの,いずれの記載も,どのように情報処理して「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する」かの情報処理が具体的に記載されていないので,全体として「需要動向予測装置」の機能を,「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する」ことと,「気象情報を取得する」ことに特定するに留まる。
上記(B)の記載について検討すると,上記(B)には,「需要動向予測装置」の「気象要素抽出手段」が「取得した気象情報から,消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した気象要素を抽出する」ことが記載されている。
しかしながら,「取得した気象情報」から「選定し」て「抽出する」情報処理がなされることが記載されているものの,どのような情報を,どのように取得し,どのように情報処理して,「選定し」て「抽出する」かの情報処理が具体的に記載されていないので,全体として「需要動向予測装置」の機能を「取得した気象情報から,消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した気象要素を抽出する」ことに特定しているに留まる。
上記(C)の記載について検討すると,上記(C)には,「需要動向予測装置」の「予測手段」が「前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売数量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売数量との相関関係を予め設定して」おくことと,「予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売数量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売数量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売数量を予測する」こととが記載されている。
しかしながら,「前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売数量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売数量との相関関係を予め設定して」おく機能については,ソフトウェアによる情報処理と何ら関係しておらず,「需要動向予測装置」が備える機能を「前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売数量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売数量との相関関係を予め設定して」おくことに特定したに留まる。さらに,「予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売数量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売数量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売数量を予測する」情報処理については,「前記予め設定した気象要素と商品毎の販売数量との相関関係」を情報処理に用いることが記載されているものの,当該「相関関係」や「気象要素」をどのように記憶し,どのように情報処理して「商品毎の販売数量を予測する」かの情報処理が具体的に記載されていないので,全体として「需要動向予測装置」の機能を「予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売数量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売数量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売数量を予測する」ことに特定しているに留まる。
上記(D)の記載について検討すると,上記(D)には,需要動向予測装置の出力手段が「予測された販売数量を消費者の需要動向として出力する」ことが記載されているものの,ソフトウェアによる情報処理と何ら関係しておらず,全体として「需要動向予測装置」が備える機能を「予測された販売数量を消費者の需要動向として出力する」ことに特定したに留まる。

よって,上記(A)?(D)の記載では,「気象情報取得手段」,「気象要素抽出手段」,「予測手段」,「出力手段」に関する記載により特定されたそれぞれの機能が,どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのか具体的に記載されておらず,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

さらに,上記(A)?(D)の記載について,明細書の全体を参酌しても,何れの機能も情報処理が具体的に記載されていないので,「需要動向予測装置」の機能を特定しているに留まる。

そして,請求項1の記載では,全体としても,どのようなハードウエア資源を用いてどのように情報処理するのか具体的に記載されていないため,各手段に関する記載は,「需要動向予測装置」の機能をそれぞれ特定するにすぎず,各手段に関する記載では,各手段に関する記載により特定された機能を実現するために,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

審判請求書における審判請求人の主張についても検討したが,本願補正発明が,コンピュータ操作における技術常識としてコンピュータに組み込まれたソフトウェアによって行われるもので,気象要素抽出手段において,その選定された気象要素を気温,降水量,気圧等の気象情報から抽出する処理は,明示するまでもなく周知のコンピュータ処理技術をもってすれば容易に行えるものであるとして,明細書全体を参酌しても,特許請求の範囲の記載において,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより,使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されるまで記載されているとは認められない。

したがって,本願補正発明は,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより,使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されたものということはできないから,「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエアを用いて具体的に実現されている」とはいえず,審判請求人の上記主張を採用することができないので,本願補正発明は,特許法第2条でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しない。

(6)進歩性(特許法29条2項に規定する要件)について
さらに,本願補正発明が,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていると仮定して,本願補正発明が,特許法第29条第2項の規定の規定を満たしているかを検討する。

(6-1)引用例
(6-1-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-329351号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の下記(a)-(e)の事項が記載されている。
(a)「【産業上の利用分野】本発明は商品の販売見込量を予測し当該商品の仕入れを電話回路網を介して卸センタ等の発注先に自動的に発注するPOS自動発注システムに関するものである。」(段落【0001】)
(b)「【発明が解決しようとする課題】(中略)翌日の天候は晴,雨,曇りの3区別を入力するのみで,天気予報が外れた場合,販売見込量と実際の販売量が大きく異なり,(中略)と云う問題があった。(中略)本発明は上述の点に鑑みてなされたもので,予想される天候と降水確率(中略)を使用することにより,より正確な販売見込量を予測し商品を自動発注するPOS自動発注システムを提供することを目的とする。」(段落【0004】?【0005】)
(c)「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は,データ入力手段及び発注量算出手段を具備し,商品の発注に必要なデータを前記データ入力手段により入力することにより,前記発注量算出手段で商品の発注量を算出し電話回線網を介して発注先に自動的に発注するPOS自動発注システムであって,過去の商品別の月別/天候別売上げ実績デ-タを記憶した実績記憶手段を設け,デ-タ入力手段より発注する商品名,販売する月日,当該販売月日に予想される天候と降水確率をデータとして入力し,発注量算出手段は実績記憶手段に記憶された商品の月別/天候別売上げ実績デ-タとデータ入力手段で入力したデータとから商品の販売見込量を予測して発注量を算出し,電話回線網を介して発注先に自動的に発注することを特徴とする。(中略)本発明は上記構成を採用することにより,過去の商品別の月別/天候別売上げ実績デ-タと,当該商品の販売日の晴,曇り,雨(雪)等の予想される天候と降水確率より商品の販売見込量を予測し発注量を決定するので,従来の天気予報のデ-タを使用してファジィ推論で発注量を予測するのに比べ,簡単で正確に発注量を決定することが可能になる。」(段落【0006】?【0007】)
(d)「【実施例】以下,本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のPOS自動発注システムの構成例を示す図である。図示するように,本POS自動発注システムはス-パ-等の商店1で,POS装置1-2を電話装置の主装置1-1を介して電話回線網2へ接続し,POS装置1-2から電話回線網2を通して卸売センタ3へ自動発注するシステムである。(以下略)」(段落【0008】)
(e)「次に発注量算出方法を説明する。(中略)キ-ボ-ド1-2-9から商品名と販売月日(通常は翌日)の天気予報より予想される天候と降水確率が入力されると,POS装置1-2は前記過去の商品別の月別/天候別売上げ実績デ-タファイルの当該商品の該当する月の該当する天候の売上げ実績を求め,次式より発注量が計算される。
発注量(%)=100-{(100-該当売上げ実績)/100}×降水確率(中略)
例えば,該当日が2月で,予想される天候が雨で降水確率が20%とすると発注量(%)=100-{(100-30)/100}×20=86となり,通常時の発注量nの86%を卸売センタ3へ自動発注する。以上の計算及び発注はメモリ1-2-7に格納されたプログラム(省略)をCPU1-2-1が実行することにより行なわれ,発注伝票はプリンタ1-2-6から出力される。(以下略)」(段落【0013】?【0015】)

上記摘記事項(a),(e)から,引用例1のPOS自動発注システムは,商品の販売見込量を予測し当該商品の仕入れを電話回路網を介して卸センタ等の発注先に自動的に発注するPOS自動発注システムに関する発明であって,キ-ボ-ドから販売月日の天気予報より予想される天候と降水確率が入力されると,発注量が計算されるのであり,入力する予想される天候と降水確率が,商品の販売見込量を予測するのに用いる気象に関する要素であると考えるのが自然であるので,引用例1には,気象要素を入力する気象情報入力手段が設けられたPOS自動発注システムが開示されている。

また,上記摘記事項(e)より,引用例1のPOS自動発注システムは,発注量(%)=100-{(100-該当売上げ実績)/100}×降水確率の計算式で発注量を計算していることから,気象要素である降水確率を説明変数とし発注量を目的変数とした,気象要素と発注量との相関関係を予め設定することが開示されている。また,商品の販売見込量を予測し当該商品の仕入れを電話回路網を介して卸センタ等の発注先に自動的に発注していることから,発注量が商品毎に計算されることと,発注量と商品の販売見込量が略一致すると考えるのが自然である。よって,引用例1には,前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売見込量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売見込量との相関関係を予め設定しておき,予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売見込量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売見込量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売見込量を予測する予測手段が開示されている。

また,上記摘記事項(d),(e)より,引用例1のPOS自動発注システムは,POS装置から電話回線網を通して卸売センタへ自動発注がなされるのであり,発注伝票がプリンタから出力されるのであるから,引用例1には,予測された販売数量を出力する出力手段が開示されている。

そうすると,上記摘記事項(a)-(e)によれば,引用例1には,
「気象要素を入力する気象情報入力手段と,
前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売見込量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売見込量との相関関係を予め設定しておき,予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売見込量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売見込量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売見込量を予測する予測手段と,
予測された販売数量を出力手段とが設けられたことを特徴とするPOS自動発注システム。」の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

(6-1-2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された「西 雄大,強い中小企業 たねや,日経情報ストラテジー,日本,日経BP社,2002年12月24日,第129号,p.152-155」(以下「引用例2」という。)には,以下の下記(f),(g)の事項が記載されている。
(f)「たねやの需要予測システムは,(中略)廃棄ロスを可能な限りなくすことが第1の狙い。」(154頁左列8-11行目)
(g)「まず本社で毎日,過去1週間分の販売実績から1日当たりの平均販売数個数を計算する。その値に独自の曜日係数と天候補正値をかけ合わせて,翌日の本社推奨発注量を決定する。それをインターネット経由で各店のパソコンに送信。店長は,本社の推奨発注量を見ながら,店ごとの要素を加えて最終発注量を決定し,午後3時までに本社に回答する。」(154頁左列6行目?中列7行目)
上記摘記事項(g)の推奨発注量は,廃棄ロスを可能な限りなくすだけの発注量なのであるから,推奨発注量と消費者が購入する見込みの販売個数が略一致すると考えるのが自然であるので,上記摘記事項(f),(g)によれば,引用例2には,
「予測された販売数量を消費者の需要動向として出力する出力手段を備えた需要予測システム」の発明(以下「引用例2発明」という。)が開示されていると認められる。

(6-2)対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比すると,引用例1発明の「販売見込量」は,本願補正発明の「販売数量」に相当する。
また,引用例1発明の「気象情報を入力する気象情報入力手段」は,以下の相違点があるものの,気象情報をシステムが取得するように機能する点で,本願補正発明の「気象情報を取得する気象情報取得手段」の概念と共通する。
また,引用例1発明の「POS自動発注システム」は,以下の相違点があるものの,販売月日に予想される天候に関する情報を用いて商品の販売見込量を予測している点で,本願補正発明の「需要動向予測装置」の概念を包含している。
してみれば,本願補正発明と引用例1発明とは,以下の点で一致し,[相違点1],[相違点2],[相違点3]の点で相違する。

[一致点]
「気象情報を取得する気象情報取得手段と,
前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売数量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売数量との相関関係を予め設定しておき,予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売数量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売数量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売数量を予測する予測手段と,
予測された販売数量を出力する出力手段とが設けられたことを特徴とする需要動向予測装置。」

[相違点1]
本願補正発明では,「気象情報取得手段」が「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段を設けた気象情報を取得」し,かつ,「取得した気象情報から,気象要素を抽出する気象要素抽出手段」を備えているのに対し,引用例1発明では,人間が選定した気象要素を入力しているために,「気象情報取得手段」が「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段を設けた気象情報を取得」しておらず,かつ,「取得した気象情報から,気象要素を抽出する気象要素抽出手段」を備えていない点。

[相違点2]
本願補正発明の「気象要素」が「消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した」要素であるのに対し,引用例1発明の「気象要素」は,天候と降水確率であって,消費者の生体機能の変化に影響を与えるものであるかどうか明記されていない点。

[相違点3]
本願補正発明では,出力手段が,予測された販売数量を「消費者の需要動向として出力する」のに対して,引用例1発明の出力手段では,予測された販売数量をそのような動向として出力していない点。

(6-3)当審の判断
[相違点1]について
気象情報を利用するコンピュータシステムにおいて,気象庁等の気象情報システムから気象情報を自動的に取得し,取得した気象情報から,必要な気象情報の要素を抽出して用いることは,例えば,国友隆一,セブン-イレブンの情報システム,株式会社ぱる出版,1998年9月25日,p.141-152(以下,「周知例1」という。)に,セブン-イレブンの店舗端末において,「民間気象情報会社から情報を得ることにより,気象庁の半分の二十キロ四方の網の目で国内を分割した情報を得ている。」ことや,特開2000-135034号公報(以下,「周知例2」という。)の段落【0026】に農業用水管理システムにおいて,「補正条件設定部300には,気象情報取得用通信回線15を介して取得される気象庁からのオンライン気象予報310(中略)より取得される気象現況(気象観測データ)320(中略)が補正条件情報として格納される。」こと,特開2002-222370号公報(以下,「周知例3」という。)の段落【0041】に,屋外施設利用料設定システムにおいて,「サーバは,インターネットを介して気象庁用サーバ9に接続され,該気象庁用サーバから降水確率を取得するようになっている。」ことが開示されているように,当業者に周知の技術事項である。
引用例1のPOS自動発注システムは,上記摘記事項(d)に記載されてるように電話回線網で外部装置と接続されており,外部装置との連携を自動化させることは当業者が通常考慮することであるから,当該周知の事項を参酌して,引用例1記載のPOS自動発注システムを気象庁等の気象情報サーバやデータベースと連携させ,必要な情報を自動的に選択・取得することは,当業者にとって容易である。すなわち,引用例1発明の「気象情報取得手段」を「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段を設けた気象情報を取得」するように構成し,「取得した気象情報から,気象要素を抽出する気象要素抽出手段」を備えさせることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
よって,引用例1発明において,相違点1に係る本願補正発明の構成を得ることは,当業者が容易になし得た事項である。

[相違点2]について
例えば,衣料品や食品において,急に寒くなった日に,暖かい又は温かい商品の販売数が増え,急に暑くなった日に,涼しい又は冷たい商品の販売数が増えるといったことが商売において周知されているように,消費者の生体機能の変化に影響を与える気象の変化が販売数に影響することは,当業者における商売上の周知の事項である。
引用例1に記載されたPOS自動発注システムにおいて,商品の販売数を予測する際に,商売上の周知の事項を参酌して決定することは当業者が通常考慮することにすぎないので,引用例1発明の気象要素の選定に際して,当該周知の事項を参酌して選定することは当業者にとって容易である。すなわち,引用例1発明の「気象要素」を「消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した」気象要素とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
よって,引用例1発明において,相違点2に係る本願補正発明の構成を得ることは,当業者が容易になし得た事項である。

[相違点3]について
引用例2には,引用例1記載のPOS自動発注システムと同一技術分野に属する需要予測システムにおいて,「予測された販売数量を消費者の需要動向として出力する出力手段」が記載されており,引用例1記載の出力手段に引用例2記載の機能を付加して,出力手段が予測された販売数量を「消費者の需要動向として出力する」ように構成することは,当業者が容易に想到し得た事項である。
よって,引用例1発明において,相違点3に係る本願補正発明の構成を得ることは,当業者が容易になし得た事項である。

審判請求書における審判請求人の主張についても検討したが,本願補正発明が,気象情報から生体機能に影響を与えるものとして選定した気象要素を抽出し,それを用いて需要動向を予測することを特徴とするものとしても,上記「[相違点2]について」で検討したとおり,消費者の生体機能の変化に影響を与える気象の変化が販売数に影響することは,当業者における商売上の周知の事項であり,引用例1発明の気象要素の選定に際して,当該周知の事項を参酌して選定することが,当業者が容易に想到し得たことであるので,当該主張を採用することができない。

(6-4)まとめ
以上のとおり,本願補正発明は,引用例1?2に記載された発明並びに周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(7)まとめ
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明について
平成19年9月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年6月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「気象情報を取得する気象情報取得手段と,
取得した気象情報から,消費者の生体機能の変化に影響を与える気象要素を抽出する気象要素抽出手段と,
前記気象要素を説明変数とし商品毎の販売数量を目的変数とした,気象要素と商品毎の販売数量との相関関係を予め設定しておき,予測時における気象情報から抽出した気象要素に対応する商品毎の販売数量を,前記予め設定した気象要素と商品毎の販売数量との相関関係から読み出すことにより,商品毎の販売数量を予測する予測手段と,
予測された販売数量を消費者の需要動向として出力する出力手段とが設けられたことを特徴とする需要動向予測装置。」

(2)発明該当性(特許法29条1項柱書に規定する要件)について
本願発明の「需要動向予測装置」は,実質的にコンピュータ・システムであると認められるので,本願発明が,いわゆるコンピュータ・ソフトウエア関連発明として,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしているかどうかを以下に検討する。
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明から,「気象情報取得手段」の限定事項である「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段を設けた」ことを省き,「気象要素」の限定事項である「消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した」ことを,「消費者の生体機能の変化に影響を与える」こととしたものである。(補正箇所を示す下線は,手続補正書記載のものを援用した。)
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,明細書全体を参酌しても,前記2.(5)に記載したとおり,ソフトウェアによる情報処理が,ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていると認められないのであるから,本願発明も同様の理由により,ソフトウェアによる情報処理が,ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていると認められない。
よって,本願発明は,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので,特許を受けることができない。

(3)進歩性(特許法29条2項に規定する要件)について
さらに,本願発明が,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていると仮定して,本願発明が,特許法第29条第2項の規定の規定を満たしているかを検討する。

(3-1)引用例1?2
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1?2及びその摘記事項(a)-(g)は,前記2.(6-1)に記載したとおりである。

(3-2)対比・判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明から,「気象情報取得手段」の限定事項である「気象庁等の気象情報データベースから気象情報を自動的に取得する受信手段を設けた」ことを省き,「気象要素」の限定事項である「消費者の生体機能の変化に影響を与えるものとして選定した」ことを,「消費者の生体機能の変化に影響を与える」こととしたものである。(補正箇所を示す下線は,手続補正書記載のものを援用した。)
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.(6)に記載したとおり,引用例1?2に記載された発明並びに周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例1?2に記載された発明並びに周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第2条でいう特許法上の「発明」である「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないので,特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。また,仮に,本願発明が,特許法第2条でいう特許法上の「発明」である「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するとしても,本願発明は,引用例1?2に記載された発明並びに周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項の発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-22 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-08 
出願番号 特願2003-119823(P2003-119823)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 14- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 齋藤 哲
山本 章裕
発明の名称 需要動向予測装置及び需要動向予測システム  
代理人 稗苗 秀三  
代理人 小原 順子  
代理人 後藤 誠司  
代理人 大島 泰甫  

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