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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1214167
審判番号 不服2008-14514  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-09 
確定日 2010-03-29 
事件の表示 平成11年特許願第505202号「電気的な駆動ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月 7日国際公開、WO99/00885、平成12年12月19日国内公表、特表2000-517160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1998年6月5日(優先権主張外国庁受理、1997年6月26日、ドイツ国)の出願であって、平成20年3月3日に拒絶査定がなされ同年6月9日に審判請求がなされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は平成20年1月11日付手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「特に自動車のワイパのための電気的な駆動ユニットであって、ほぼコップ状のモータケーシング又はポールケーシング(10)内に取付けられた電機子を備えた駆動モータと、伝動装置エレメント(21,22)の受容のためのほぼコップ状の伝動装置ケーシング(20)とを備えており、伝動装置ケーシングが、端面側でモータケーシング(10)に固定されており、かつ伝動装置カバー(50)により閉鎖可能である形式のものにおいて、伝動装置ケーシング(20)に、閉鎖可能な開口(31)が設けられており、この開口を通して、炭素ブラシ(42,43,44)を備えたブラシ支持体(40)が半径方向に駆動モータの整流子(11)へ押込み可能であり、前記開口(31)が伝動装置ケーシング(20)に配置されており、かつ伝動装置ケーシングと一緒に伝動装置カバー(50)によって閉鎖可能であり、ブラシ支持体(40)が伝動装置カバー(50)に固定可能であり、かつ伝動装置カバーと一緒に組付け可能である電気的な駆動ユニット。」

2.引用刊行物
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、独国特許出願公開第4233156号明細書(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(当審翻訳)
・「自動車内の位置調整装置用の電動モータ駆動部、例えば図1に側面図で示した窓開閉モータはケーシング10を有している。このケーシング10は、整流子モータ13を収容するキャップ状のモータケーシング11と変速ギヤ14を収容するギヤケーシング12から構成されている。図1、図3及び図4からわかるように、モータケーシング11は、正面側で封止リング54を介在させた状態でギヤケース12に載置されており、モータケーシング11に構成されているアイ16を貫通するねじ15によって、ギヤケーシング12にねじ止めされている。ここで2極構成の整流子モータ13は公知の方法で永久磁石の磁極17、18を担持するステータ19及びロータ20を備えている。このロータはモータケーシング11に回転可能に支持されているロータシャフト21に固着されてステータ19内で回転する。」(明細書第2欄60行?第3欄9行)
・「整流子22により、ロータ巻線23に電流を供給するために、2つのブラシ24、25(図2)を有する。このブラシは2つの管26,27で軸方向に移動可能に案内されており、押圧ばねによって整流子22に押圧されている。スペースを節約するために、押圧ばねは、ロールばね28,29として構成されている。管26,27及びロールばね28,29は、ブラシホルダとなる保持板30上に設けられている。この保持板は、導電板として構成されており、ケーシング10内に保持されている。整流子モータ13の整流子22とロータ巻線23の巻線端がギヤケーシング12内に突出しているため、保持板30は管26,27及びロールばね28,29がギヤケーシング12内になるように設けられている。保持板30を挿入するために、ギヤケーシング12内には、ロータシャフト21に対して径方向に延在するケーシング開口部31が設けられている。このケーシング開口部を貫通して,保持板30がギヤケーシング12内に正確な位置でロータシャフト21に対して径方向に挿入することができる。この場合保持板30の寸法は、該保持板30が図1及び図2に図示されている最終取付位置において、ケーシング開口部31を超えて外方に突出するようなものになっている。保持板30の上部領域は,プラスチックからなる蓋32によって覆われており、この蓋32の端面縁部は、ギヤケーシング12とケーシング開口部31を覆った状態で挿入されており、また、蓋の輪郭線は、モータケーシング11を超えて径方向に突出するギヤケーシング12に適合させている。」(明細書第3欄19?48行)
・「保持板30を軸方向に固定するために、蓋32内にもギヤケーシング12内にも案内溝35及び36または37及び38が形成されている(図2)。これら案内溝は保持板30を縁部側で受け取るようになっている。保持板30はロータシャフト21を超えて最終位置まで移動することができるようにするために、挿入方向に開く切り欠き部39を有している(図2)。保持板30は最終位置にくるとゴム部材40によってギヤケーシング12の底部に支持されるとともに、ゴム部材41によって蓋底部に支持される。これによって、適度に揺することで保持板30をギヤケーシング12から結合解除できる。」(明細書第3欄54?66行)

また、これらの記載によれば、2極構成の整流子モータ13は公知の方法で永久磁石の磁極17、18を担持するステータ19及びロータ20を備えていることから、2極構成の整流子モータ13である駆動モータはモータケーシング11内に取付けられた電機子を備えているといえる。
さらに、これらの記載と図1から4の記載によれば、ブラシの保持板30は蓋32と一緒に組み付けられてギヤケーシングに固定されていることが示されている。

したがって、引用刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「自動車の窓開閉用の位置調整装置であって、キャップ状のモータケーシング11内に取付けられた電機子を備えた駆動モータと、変速ギヤ14を収容するギヤケーシング12とを備えており、ギヤケーシング12が一端でモータケーシング11にねじ止めされており、かつ蓋32で覆われているものにおいて、ギヤケーシング12にケーシング開口部31が設けられており、このケーシング開口部を貫通して,ブラシ24、25を備えた保持板30がギヤケーシング12内に正確な位置でロータシャフト21に対して径方向に挿入することができ、前記開口部31がギヤケーシング12に配置されており、かつギヤケーシングとケーシング開口部31を覆った状態で挿入されており、かつ保持板30が蓋32と一緒に組み付け可能である位置調整装置。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「自動車の窓開閉用の位置調整装置」と、前者の「特に自動車のワイパのための電気的な駆動ユニット」とは「自動車に用いる電気的な駆動ユニット」である点で共通している。
また、後者の「キャップ状のモータケーシング11」は前者の「ほぼコップ状のモータケーシング又はポールケーシング(10)」に相当し、以下同様に「変速ギヤ14」は「伝動装置エレメント(21,22)」に、「を収容する」態様は「の受容のための」態様に、「ギヤケーシング12」は「伝動装置ケーシング(20)」に、「一端でモータケーシング11にねじ止め」は「端面側でモータケーシング(10)に固定」に、「蓋32」は「伝動装置カバー(50)」に、「で覆われている」は「により閉鎖可能である形式の」に、「ケーシング開口部31」は「閉鎖可能な開口(31)」に、「貫通して」は「通して」に、「ブラシ24、25」は「炭素ブラシ(42,43,44)」に、「保持板30」は「ブラシ支持体(40)」に、「ギヤケーシング12内に正確な位置でロータシャフト21に対して径方向に挿入することができ」る態様は「半径方向に駆動モータの整流子(11)へ押込み可能であ」る態様に、「ギヤケーシングとケーシング開口部31を覆った状態で挿入されて」いる態様は「伝動装置ケーシングと一緒に伝動装置カバー(50)によって閉鎖可能であ」る態様に、「保持板30が蓋32と一緒に組み付け可能である」態様は「ブラシ支持体(40)が伝動装置カバー(50)に固定可能であり、かつ伝動装置カバーと一緒に組付け可能である」態様に、「位置調整装置」は「電気的な駆動ユニット」に、それぞれ相当する。

したがって両者は、
[一致点]
「自動車に用いる電気的な駆動ユニットであって、ほぼコップ状のモータケーシング又はポールケーシング内に取付けられた電機子を備えた駆動モータと、伝動装置エレメントの受容のための伝動装置ケーシングとを備えており、伝動装置ケーシングが、端面側でモータケーシングに固定されており、かつ伝動装置カバーにより閉鎖可能である形式のものにおいて、伝動装置ケーシングに、閉鎖可能な開口が設けられており、この開口を通して、炭素ブラシを備えたブラシ支持体が半径方向に駆動モータの整流子へ押込み可能であり、前記開口が伝動装置ケーシングに配置されており、かつ伝動装置ケーシングと一緒に伝動装置カバーによって閉鎖可能であり、ブラシ支持体が伝動装置カバーに固定可能であり、かつ伝動装置カバーと一緒に組付け可能である電気的な駆動ユニット。」で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「自動車に用いる電気的な駆動ユニット」が、本願発明では「特に自動車のワイパのための電気的な駆動ユニット」であるのに対し、引用発明では「自動車の窓開閉用の位置調整装置」である点。

[相違点2]
「伝動装置ケーシング」に関して、本願発明が「ほぼコップ状」としているのに対して引用発明ではこのような特定がない点。

4.相違点に対する判断
相違点1について
自動車に用いる電気的な駆動ユニットとして「自動車のワイパのための電気的な駆動ユニット」は周知の事項である。そして、引用発明の、自動車の窓開閉用の「位置調整装置」として用いる電気的な駆動ユニットが自動車のワイパのために用いることができることは自明の事項であって、この点の相違は単なる用途の選択に過ぎず、奏する効果も用途に付随するものにすぎない。
したがって、引用発明において、電気的な駆動ユニットの負荷として自動車のワイパを選択することで相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

相違点2について
そもそもケーシングの形状は、その中に収納される部品とケーシングを配置する部分の形状などによって任意に決定し得る事項に過ぎず、引用発明においても「伝動装置ケーシング」の形状を「ほぼコップ状」とすることは当業者が適宜設計し得る事項と認められる。
そうすると、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
また、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明及び上記周知の事項から予測し得る程度のものと認められる。

なお請求人は,平成20年7月8日付の請求の理由の「3.(2)引用例の説明」において、引用文献では、伝動装置ケーシングはブラシ保持体が固定された伝導装置カバーで閉鎖されるようにはなっていない旨主張するが、引用文献に記載された発明において、特に図4を参照すれば保持板30(ブラシ保持体)は蓋32(伝導装置カバー)の溝に嵌って固定されており、ギヤケーシング12(伝動装置ケーシング)は、引用文献の明細書第3欄19?48行に記載されるとおり、この蓋32の端面縁部は、ギヤケーシング12とケーシング開口部31を覆った状態で挿入されているものであるから、伝動装置ケーシングはブラシ保持体が固定された伝導装置カバーで閉鎖されるようになっているといえる。そして、引用文献の図1を見れば、保持板30の下端がギヤケーシング12にも嵌っていることが窺われるものの、伝動装置ケーシングはブラシ保持体が固定された伝導装置カバーで閉鎖されていることに相違はなく、本願発明が特定しないブラシ保持体下端の支持部の有無によって電気的な駆動ユニットの構成に相違を認めることはできない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-30 
結審通知日 2009-11-06 
審決日 2009-11-17 
出願番号 特願平11-505202
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 大河原 裕
片岡 弘之
発明の名称 電気的な駆動ユニット  
代理人 杉本 博司  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 矢野 敏雄  

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