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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04D |
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管理番号 | 1214424 |
審判番号 | 不服2007-32616 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-03 |
確定日 | 2010-03-31 |
事件の表示 | 特願2003-125305「複数のインペラを有する送風機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開,特開2004-169681〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年4月30日(パリ条約の例による優先権主張2002年11月21日、台湾)の出願であって、平成19年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年同月12日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 2.本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「送風機であって、 2つのインペラを有し、 隣接した前記2つのインペラは、それぞれ複数のブレードを有し、該ブレードの末端部同士は互いに向き合うように反対方向に延びており、 前記2つのインペラのそれぞれは、該インペラの内部に配置される、対応する駆動手段を有する 送風機。」 と補正された。 上記補正は、実質的に、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「少なくとも2つのインペラ」について「2つのインペラ」と限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 (2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-6497号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】この出願に係る発明は、曝気用や原料空送用等の、流体を昇圧して吐出するための遠心形多翼送風機に関するものである。」 ・「【0014】図1はこの出願に係る発明の実施例を示す遠心形多翼送風機の縦断面図であり、図2は同遠心形多翼送風機の羽根車側回転翼を示す正面図、図3は同遠心形多翼送風機のディフューザ側逆転翼を示す正面図である。 【0015】図示するように、遠心形多翼送風機Fのケーシングとしては、上部に吸込口13を設けて下部に吐出口14を設けたケーシング1と、このケーシング1に取付けてケーシング全体を形成する背板2とから構成されている。 【0016】そして、ケーシング1の内側には吸込口13から中央部に導かれた流体を半径方向に曲げるディフューザ3が設けられ、このディフューザ3に対向した背板2の内側には羽根車5が設けられている。このディフューザ3には吸込口13からの流体を通過させる複数の吸込穴3dが設けられている。この円盤状に形成されたディフューザ3は、中央のボス部3bが押え部材4aをボルト11で固定することにより駆動軸4に取付けられ、駆動機M_(1) によって回転駆動させられる。また円盤状に形成された羽根車5は、中央のボス部5bが押え部材6aをボルト12で固定することにより駆動軸6に取付けられ、駆動機M_(2) によって回転駆動させられる。この羽根車5と上記ディフューザ3との間隙Sで軸方向の流れが半径方向に曲げられる。この実施例では羽根車5と駆動機M_(2) の駆動軸6、及びディフューザ3と駆動機M_(1) の駆動軸4を直結することにより、駆動機M_(1) ,M_(2) の定格回転数でディフューザ3及び羽根車5を回転させるように構成されている。このように直結した場合には、例えば3600rpm 程度の回転数でディフューザ3及び羽根車5が駆動される。 【0017】上記ディフューザ3には、羽根車5に対向するよう羽根車側に逆転翼3aが設けられ、上記羽根車5には、逆転翼3aの間に位置するようディフューザ側に回転翼5aが設けられている。これらの逆転翼3aと回転翼5aは、吸込側iから半径方向外側に向けて回転翼5a,逆転翼3aの順で配置されており、これら翼5a,3aの翼形は、逆回転時に流体を順次昇圧することができるように形成されている。この実施例では、複数段として各々2段の逆転翼3aと回転翼5aの組合せで配設されている。」 ・「【0029】羽根車とディフューザを回転可能に支持して駆動機で互いに逆回転させることにより、これらに設けられた回転翼と逆転翼とによって高い昇圧能力を得ることができるので、小型で高効率の遠心形多翼送風機を提供することが可能となる。しかも、低速で高い昇圧能力を得ることができるので、騒音の低い遠心形多翼送風機を提供することも可能となる。」 ・図1には、隣接した羽根車5とディフューザ3は、それぞれ複数の回転翼5a,3aを有し、該回転翼5a,3aの末端部同士は互いに向き合うように反対方向に延びている構成、及び、羽根車5とディフューザ3のそれぞれは、該羽根車5とディフューザ3の外部に配置される、対応する駆動機M_(1) ,M_(2) を有する構成が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。 「遠心形多翼送風機であって、 羽根車5とディフューザ3を有し、 隣接した前記羽根車5とディフューザ3は、それぞれ複数の回転翼5a,3aを有し、該回転翼5a,3aの末端部同士は互いに向き合うように反対方向に延びており、 前記羽根車5とディフューザ3のそれぞれは、該羽根車5とディフューザ3の外部に配置される、対応する駆動機M_(1) ,M_(2) を有する 遠心形多翼送風機。」 (2-2)同じく、引用された特開2000-145686号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ファンケーシング内にファンを内装したファンユニットの改良に関するものである。」 ・「【0004】・・・本発明の目的は、風量を低下させることなく、コンパクトなファンユニットを提供することにある。」 ・「【0010】図1及び図2に示すように、渦巻き状ファンケーシング1内に、基板5と基板5上に周方向に配設した複数のブレード6とからなるファン3と、ファン3を回転駆動するためのモーター4が内装されている。」 ・図1及び2には、ファン3の内部にモーター4が配置された構成が示されている。 (2-3)同じく、引用された特開2001-241395号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ファン装置に関し、例えば、パソコンの電子部品冷却用のファン装置に関する。」 ・「【0006】本発明は、上記の問題点に鑑み、小型・薄型化を図ることができるファン装置を提供することを目的とする。また、本発明は、風量・静圧・騒音特性に優れたファン装置を提供することを目的とする。」 ・「【0018】ステータ5とロータ4とによって、モータ6が構成される。すなわち、ステータ5の巻線16に電流が供給されると磁界が発生し、駆動用磁石8により発生する磁界との間に磁気作用が生じることによって、ロータ4が回転する。このモータ6は、後述のホール素子11から得られる信号に基づいて制御されるブラシレスモータであって、後述するインペラ7と合わせて、カバー部材2の内壁2b1と上壁2aと回路基板3とで形成される空間に配置されている。 【0019】ロータホルダ12には、インペラ7が周設されている。」 ・図1ないし3には、インペラ7の内部にモータ6が配置された構成が示されている。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者における「遠心形多翼送風機」が前者における「送風機」に相当し、以下同様に、「羽根車5とディフューザ3」が「2つのインペラ」に、「回転翼5a,3a」が「ブレード」に、それぞれ相当している。 また、後者の「羽根車5とディフューザ3の外部に配置される、対応する駆動機M_(1) ,M_(2) 」と前者の「インペラの内部に配置される、対応する駆動手段」とは、「インペラに対して所定位置に配置される、対応する駆動手段」との概念で共通している。 したがって、両者は、 「送風機であって、 2つのインペラを有し、 隣接した前記2つのインペラは、それぞれ複数のブレードを有し、該ブレードの末端部同士は互いに向き合うように反対方向に延びており、 前記2つのインペラのそれぞれは、該インペラに対して所定位置に配置される、対応する駆動手段を有する 送風機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 「インペラに対して所定位置」に配置される駆動手段に関し、本願補正発明は、「インペラの内部」に配置されるとしているのに対し、引用発明は、「インペラの外部」に配置されている点。 (4)判断 上記相違点について以下検討する。 例えば、引用例2及び3にも開示されているように、駆動手段(引用例2の「モーター4」、引用例3の「モータ6」が相当)をインペラ(引用例2では「ファン3」が相当)の内部に配置することで装置全体の小型化を図ることは、送風機の分野における周知技術である。 また、装置全体の小型化は様々な装置に共通する一般的な課題であり、引用発明の送風機においても当然に要求されるべき課題であるといえる。 そうすると、引用発明において、かかる課題の下で上記周知技術を採用して上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。 3.本願の発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18年9月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「送風機であって、 少なくとも2つのインペラを有し、 隣接した前記2つのインペラは、それぞれ複数のブレードを有し、該ブレードの末端部同士は互いに向きあうように反対方向に延びており、 前記少なくとも2つのインペラのそれぞれは、該インペラの内部に配置される、対応する駆動手段を有する 送風機。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、実質的に、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明の「2つのインペラ」の個数に関し,上位概念である「少なくとも2つのインペラ」とするものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-30 |
結審通知日 | 2009-11-04 |
審決日 | 2009-11-17 |
出願番号 | 特願2003-125305(P2003-125305) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F04D)
P 1 8・ 121- Z (F04D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上田 真誠 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
小川 恭司 田良島 潔 |
発明の名称 | 複数のインペラを有する送風機 |
代理人 | 永田 豊 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 遠山 勉 |
代理人 | 川口 嘉之 |