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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1214428
審判番号 不服2008-11765  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-08 
確定日 2010-03-31 
事件の表示 特願2006-214897「網戸用ネットの押さえ部材」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月16日出願公開、特開2007-205153〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯・本願発明
本願は、平成18年8月7日の出願であって、平成20年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月8日に審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、平成19年12月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「方形の網戸用枠体におけるネット張設面に沿う一面の内周に内向き突縁により口部を狭窄化して形成した係止用溝に、網戸用ネットとともに押入することにより該ネットを固定するための合成樹脂製の押さえ部材であって、
上記押さえ部材は、係止用溝を覆う覆板に、該係止用溝に対してその内向き突縁に圧接する状態で嵌る弾性変形可能な脚部を備えることにより構成され、
上記脚部は、上記押さえ部材の係止用溝内へ上記ネットを介して押入する際に、その外側における上記ネットの滑動を許容するものとして構成され、
上記覆板における脚部の外側に、上記係止用溝における内向き突縁の外面との間に挟持したネットに圧接する軟質の圧接部を一体に形成し、
該圧接部に、上記係止用溝における内向き突縁の外面との間に最終的な固定の段階で挟持したネットに弾性的に圧接する尖頭状の突条が突設され、
該突条がネット表面の凹凸により変形する弾性を有している、
ことを特徴とする網戸用ネットの押さえ部材。」(以下「本願発明」という。)


【2】引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭50-76641号(実開昭51-155538号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1a)「この考案は上述の欠点を解決するために考案したもので、その目的とする所は、長手中央部を硬質製の合成樹脂を使用し、挿着部には相対する脚部を形成し、その頭部の網体を直接押える部分の左右両端を軟質製の合成樹脂を以つて一体的に構成せしめ、網体の張着時の弾圧挿入の容易さと、軟質樹脂部材によつて四季に於ける温度の変化に対する網体の膨張収縮を充分に調整して網体の抜け出し及び亀裂の生ずるのを完全に防止し、張着後の安定化を計ると共に、網体の引張を弾性的に調整し、網止部材及び網体が枠体より脱離するのを確実に防止するものである。」(2頁5?16行)
(1b)「・・・合成樹脂製よりなる長手方向の網止部材(1)は、その主体となる中央部分を硬質樹脂部材(2)とし、該硬質樹脂部材(2)の頭部には長手方向に対する両端に軟質樹脂部材(3)(3)を一体に突設形成せしめる。また硬質樹脂部材(2)の下部の挿着部には凹弧溝(4)を設けて相対向した二叉状の脚部(9)(9)を形成せしめ、該脚部(9)(9)には枠体(6)に係止される外方に突き出た膨出部(5)(5)を突設せしめてある。該枠体(6)には網体(11)の縁を挿入して支持する凹溝(7)を設けると共に該凹溝(7)を形成する縁口が突設した側辺(8)(8)が構成される。符号(10)は網戸を示したものである。
この考案は上記のように構成され、第2図に示す如く枠体(6)の凹溝(7)に網体(11)を載置し、網止部材(1)を頭部の上面より押圧して押込むか、または頭部の硬質樹脂部材(2)をハンマー等で軽く叩けば脚部(9)(9)と膨出部(5)(5)は弾性に抗して挿嵌し網体(11)の縁を枠体(6)に支持する。この時硬質樹脂部材(2)の両端に設けた軟質樹脂部材(3)(3)が適宜順応して網体(11)を適度の張りで張付けするものである。」(2頁18行?3頁17行)
(1c)第1図には、枠体6によって、方形の網戸10が構成されていることが示されている。また、第4及び6図には、枠体6の凹溝7の開口端に内向きに突出する部分が設けられ、凹溝の開口端が狭くなっていることが示されている。同じく、第4図には、硬質樹脂部材2の両端に設けた軟質樹脂部材3が、上記枠体6の凹溝7の開口端に内向きに突出する部分との間に挟持した網体11に圧接するようすが示されている。さらに、第5図には、網止部材1の脚部9の先端の膨出部5が、外側になだらかな山型に形成されていることが示されている。

これらの記載事項及び図面等を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「方形の網戸(10)の枠体(6)の網体(11)張設面側の内周の凹溝(7)に、該凹溝の開口端に内向きに突出する部分が設けられ、凹溝の開口端が狭くなっており、凹溝に網体とともに押込むことにより該網体を固定するための合成樹脂製の網止部材(1)であって、
上記網止部材は、凹溝を覆う頭部の中央部分を硬質樹脂部材(2)とし、硬質樹脂部材の下部に形成され凹溝に挿嵌する硬質樹脂で弾性変形可能な脚部であって、その先端の膨出部(5)が、外側になだらかな山型に形成されている脚部(9)を備えることにより構成され、
上記脚部は、上記網止部材の凹溝内へ上記網体を介して押込むものとして構成され、
上記頭部における脚部の外側で硬質樹脂部材の長手方向両端に、枠体の凹溝の開口端に内向きに突出する部分との間に挟持した網体に圧接する軟質樹脂部材(3)を一体に形成している、
網戸用の網止部材。」(以下「引用文献1記載の発明」という。)

【3】対比・判断
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明の「枠体」、「内向きに突設する部分」、「凹溝の開口端が狭くなっており」、「網体」、「凹溝」、「押込む」、「網止部材」、「頭部」、「挿嵌する」、「軟質樹脂部材」、「網戸用の網止部材」は、それぞれ、本願発明の「網戸用枠体」、「内向き突縁」、「狭窄化して形成した係止用溝」、「ネット」、「係止用溝」、「押入する」、「押さえ部材」、「覆板」、「嵌る」、「軟質の圧接部」、「網戸用ネットの押さえ部材」に相当する。また、本願発明における「脚部は、上記押さえ部材の係止用溝内へ上記ネットを介して押入する際に、その外側における上記ネットの滑動を許容するものとして構成され」とは、本願明細書の【0005】の「上記一対の脚条の先端部外側が、上記係止突部の先端部外側の斜面と係止縁の斜面によってなだらかな山型に形成されるので、上記押さえ部材の脚部を網戸用枠体の係止用溝内に押入してネットを固定する際に、該ネットは両脚条の先端部外側の上記両斜面上を適度に滑るため、・・・」の記載を参酌すれば、引用文献1記載の発明の「その先端の膨出部が、外側になだらかな山型に形成されている脚部を備えること」に相当する。
してみると、両者は、
「方形の網戸用枠体におけるネット張設面に沿う一面の内周に内向き突縁により口部を狭窄化して形成した係止用溝に、網戸用ネットとともに押入することにより該ネットを固定するための合成樹脂製の押さえ部材であって、
上記押さえ部材は、係止用溝を覆う覆板に、該係止用溝に対して嵌る弾性変形可能な脚部を備えることにより構成され、
上記脚部は、上記押さえ部材の係止用溝内へ上記ネットを介して押入する際に、その外側における上記ネットの滑動を許容するものとして構成され、
上記覆板における脚部の外側に、上記係止用溝における内向き突縁の外面との間に挟持したネットに圧接する軟質の圧接部を一体に形成した網戸用ネットの押さえ部材。」
の点で一致し、下記の各点で相違している。
(相違点1)
覆板の脚部が、本願発明では、係止用溝に対してその内向き突縁に圧接する状態で嵌るのに対し、引用文献1記載の発明では、内向き突縁に圧接するかどうか不明な点。
(相違点2)
本願発明では、圧接部に、係止用溝における内向き突縁の外面との間に最終的な固定の段階で挟持したネットに弾性的に圧接する尖頭状の突条が突設され、該突条がネット表面の凹凸により変形する弾性を有しているのに対し、引用文献1記載の発明では、そのような突条を有していない点。

上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
本願発明における「脚部は、係止用溝に対してその内向き突縁に圧接する状態で嵌り」の指し示す技術的意味は、必ずしも明確ではないが、段落【0013】の「係止用溝18に対する押さえ部材14の押入がほぼ完了する時点では、斜面状の係止縁16cが開口の内向き突縁19にネット12を介して圧接し、前記軟質の圧接部15aとの間で上記内向き突縁19及びネット12を挟持する」という記載、及び請求項2に記載の事項に対応するものとすれば、係止用溝に弾性変形可能な部材を嵌入する構成の固着手段において、溝の縁に設けた突縁を嵌入部材の頭部と嵌入部とで挟持、圧接することは、周知技術である(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭61-94393号(実開昭63-1197号)のマイクロフィルムの第6図は、そのような構成を示唆している。)から、引用文献1記載の発明において、その嵌合部に相違点1に係る構成を付加することは、当業者が容易になし得る事項である。
(相違点2について)
挟持、押圧部材による摩擦を用いた滑り防止機構において、挟持、押圧部分にすべり防止のための尖頭状の突条を設けることは、広く行われている周知技術である(例えば上記(相違点1について)で示した、原査定の拒絶の理由に引用された文献の第7図の凹凸14は、そのような構成を示唆している。)。
該周知技術を、引用文献1記載の発明の軟質樹脂部材に採用することは、当業者がその必要に応じて適宜なし得ることにすぎない。また、それによって、凹溝における内向きに突設した縁口の外面との間に最終的な固定の段階で挟持した網体に弾性的に圧接することは、当業者にとって自明の事項である。

そして、本願発明全体の効果も、引用文献1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

なお、請求人は、審判請求書において、個々の構成が公知であったとしても、それらの構成の有機的な結合により目的を達成しているから本願発明は進歩性を有する、と主張しているが、上記【3】のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

【4】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-25 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-15 
出願番号 特願2006-214897(P2006-214897)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻野 安人  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 山本 忠博
宮崎 恭
発明の名称 網戸用ネットの押さえ部材  
代理人 林 宏  
代理人 堀 宏太郎  
代理人 林 直生樹  
代理人 林 直生樹  
代理人 堀 宏太郎  
代理人 林 宏  

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