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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20089428 | 審決 | 特許 |
不服200627998 | 審決 | 特許 |
不服200414995 | 審決 | 特許 |
不服20051842 | 審決 | 特許 |
不服20055258 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1214918 |
審判番号 | 不服2007-22257 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-10 |
確定日 | 2010-04-14 |
事件の表示 | 平成6年特許願第523868号「ゴナドトロピンを含有するライオスフィア」拒絶査定不服審判事件〔平成6年11月10日国際公開,WO94/25005,平成8年10月8日国内公表,特表平8-509483〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成6年4月25日(パリ条約による優先権主張1993年4月28日 欧州特許機構)を国際出願日とする出願であって,平成19年5月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し同年8月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願請求項1?7に係る発明は,平成17年8月5日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって,その請求項1は次のとおりである。 「【請求項1】 ゴナドトロピンを含有することを特徴とするライオスフィア。」(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」といい,請求項1に係るライオスフィアを「本願ライオスフィア」ということがある。) 3.引用刊行物及びその記載事項 これに対して,原審で引用された,本願優先権主張日前に頒布されたことが明らかな刊行物A(原審の引用文献1)及び同B(原審の引用文献3)にはそれぞれ次のことが記載されている。 3-1.刊行物A(特開平4-217630号公報) (A-1)【特許請求の範囲】 「【請求項1】安定化されたゴナドトロピンを含有する凍結乾燥品であって,ジカルボン酸塩安定化剤を,前記凍結乾燥品中に存在する量の安定化剤により安定化され得るゴナドトロピンと混合した状態で含有する前記凍結乾燥品。」 (A-2)【0007】?【0008】 「…ゴナドトロピン及びゴナドトロピン誘導体(以下,「ゴナドトロピン」と略す。)は,一般的には,卵胞刺激ホルモン(FSH),甲状腺刺激ホルモン(TSH),ヒト絨毛膜ゴナドトロピン(HCG),又は,黄体形成ホルモン(LH)のようなタンパク質である。前記調製品にはショ糖やトレハロースのような非還元性糖をさらに含ませることができる。 本発明は,また,前記ゴナドトロピンを,溶液中で,前記タンパク質を凍結乾燥状態で安定化するのに十分な量のジカルボン酸塩と混合し,その後,得られた溶液を凍結乾燥し,前記ゴナドトロピンの安定化された凍結乾燥品を調製することから成る,本質的に純粋な,凍結乾燥された状態のゴナドトロピンを安定化する方法を含む。」 (A-3)【0032】 「E.医薬用組成物 本発明の安定な凍結乾燥品は,選択したタンパク質を,水溶液中で,タンパク質を安定化するのに十分な量のジカルボン酸塩安定化剤及び陥没温度を-38℃から-25℃に上昇させるのに十分な量の非還元性糖と混合することで得ることができる。…その後,溶液を濾過し,容器…に入れ,そして,凍結乾燥し,安定化された凍結乾燥品を作る。凍結乾燥技術は当業者によく知られている。」 (A-4)【0039】?【0040】 「【実施例】実施例1 A.様々な二糖を用いたrFSHの安定化150ユニットのrFSHを含む水溶液を調製した。その溶液を三つに分け,それぞれを(1)50mg/mlマルトース及び14.7mg/mlクエン酸ナトリウム,(2)50mg/mlトレハロース及び14.7mg/mlクエン酸ナトリウム,及び(3)50mg/mlショ糖及び14.7mg/mlクエン酸ナトリウムと混合した。三つの溶液すべてに0.2mg/mlのポリソルベート20,NFを含有させた。3群の溶液を凍結乾燥し,えられた凍結乾燥品を60℃に4週間置いた。 その後,凍結乾燥品を,EIA法により測定される活性について試験し,以下の結果を得た。 化合物 (1) (2) (3) 活性百分率 40% 89% 87% この実施例は,非還元性二糖が還元性二糖よりも安定性の助けになることを示している。」 3-2.刊行物B(米国特許第3,932,943号明細書;翻訳文で記載する) (B-1)第1欄第19行?第2欄第4行 「…;例えば酵素及びゼラチンのようなタンパク質;並びに血漿または血清のような制御製品,を含む生物学的に活性な製品は広範な用途に用いられている。この事実にもかかわらず,それらが生産される方法及びそれらが提供される形に関して多くの問題がまだ存在している。たとえば,それらが生物学的に活性であるので,それらは合理的な時間の間,それらの生物活性を保つ形で提供されなければならない。これを達成する1つの方法は,物質を凍らせて,その凍結状態でそれを保持することである。しかし,この方法は物質を常時凍らせておくために必要な,余分の取扱いと器材を伴う。 従来法に代えて,多くの物質は,塊で凍って,その後凍結乾燥された。製品は氷点下でもはや維持される必要はないが,塊で凍結する間に起こる遅い凍結は,他の問題を生じさせる。一つには,遅い凍結は,濃度勾配の進展を促進する。血清又は血漿がゆっくり凍るとき,たとえば,血清又は血漿の中のコレステロールやトリグリセリドの小球は,合体することを強いられる。これらの小球は,水性溶媒中に凍結乾燥された製品を溶解する際には,明確には再分散せず,合体したままである。結局,不均一製品となる。 遅い凍結が引き起こすもう一つの問題は,いろいろな生物学的含有物の分解である。例えば,一般に,酵素溶液を凍らせることは,酵素に分解という影響を及ぼすと思われる。塊で凍結する手法が使われるときに生じる遅い凍結及びそのような製品で増大する濃度勾配は,単にこの分解を増やすだけである。…。 最後に,物質が塊の形態で凍らされた場合,水中で溶解することにより凍結乾燥された物質を再溶解すると,困難に出くわす。そのような再溶解は,しばしば少なくとも20?30分を必要として,しばしば透明性の欠如をもたらす。以降の光度測定の分析がそれらを使って実行されるとき,これは制御製品(例えば血清または血漿)に関する特に厄介な問題となる。さらに,製品が塊の形態で凍結するならば,それらは再溶解された形以外のどの形でも分配するのが難しい。」 (B-2)第2欄第5?28行 「本発明の要約 本発明は,少なくとも1つの生物学的に活性な成分を含む物質からなる均一な凍結乾燥された製品を製造するプロセスを提供することによって,上で記述された欠点を克服する,以下のステップからなる方法を提供する a.その原料の生物活性を損なわない温度で,凍結し,気化する液体に溶かした物質の溶液又はコロイド懸濁液を形成すること; b.約-20°Cよりも低い温度を有するフルオロカーボン冷媒を沸騰させている動浴の中へ,液滴の形で溶液又はコロイド懸濁液を,液滴が凍るように噴霧すること; c.凍結した液滴を真空下におくこと; d.その後,真空を維持している間,液滴中の実質的に全ての液体が昇華して,前記液滴から粒子を形成するような温度に前記液滴をおくこと;そして, e.粒子を室温,大気圧に戻すこと。」 (B-3)第4欄第53?最終行 「本方法によって製造されるならば,血清又は血漿の急速な凍結をもたらし,血清又は血漿内の酵素及び他の生物学的物質のより大きな活性の保持と安定性をもたらす。急速な凍結も大きな氷晶の形成を妨げて,凍結粒子を通して生物学的に活性な成分の均一な分布を生じる。水の結晶領域の均一なサイズと分布,及び,それゆえの小さなサイズと,凍結乾燥されるときにできる孔の均質な分布も,粒子を溶解するときに,溶解時間を短くすることに役立つと考えられる。従来技術の20又は30分に対して,20?30秒の溶解時間が観察された。最後に,この急速な凍結は,その後の溶解の際の優れた透明性をもった凍結乾燥品をもたらす。」 4.対比 刊行物Aの請求項1(A-1)には,「ゴナドトロピンを含有する凍結乾燥品」(以下「引用発明」という。)が記載されている。 ところで,本願発明における「ライオスフィア」とは,当業者にとって技術的に明確な用語であるとすることができず,必ずしもその意味するところが明らかなものではないが,明細書の記載(平成7年10月26日付けで提出された明細書の翻訳文(以下,単に「当初明細書」という。)第1頁第5?12行及び実施例1?5などの記載)からみて,凍結乾燥法自体は,米国特許第3,655,838号明細書及び同第3,932,943号明細書(刊行物B)等に開示された方法,すなわち, 「(ア)凍結乾燥する物質が溶解した溶液又は懸濁液を噴霧することにより小滴化して, (イ)該小滴をそのまま凍結した後, (ウ)その後真空乾燥する」 という方法によって得られる,凍結乾燥した小滴を意味するものと解せられる。 したがって,本願ライオスフィア,すなわち「ゴナドトロピンを含有することを特徴とするライオスフィア」には,上記凍結乾燥法をゴナドトロピン含有溶液に対して適用して得られた凍結乾燥品を,少なくともその典型例として包含されるものである。 これに対して,引用発明では,凍結乾燥法については,「当業者によく知られている」(A-3)方法によるものとされていて,凍結乾燥の際に溶液を噴霧して小滴などといったことについての記載はない((A-2)?(A-4))。 そこで,本願発明と引用発明とを比較すると,両者は「ゴナドトロピンを含有する凍結乾燥品」である点で一致し,以下の点で相違する。 [相違点]本願発明は「ライオスフィア」と称する凍結乾燥品であるのに対して,引用発明は,凍結乾燥法については当業者によく知られた方法を用いて得られた凍結乾燥品である点。 5.検討・判断 上記相違点について検討する。 上記「4.対比」で記載したように,本願ライオスフィアには,ゴナドトロピン溶液を凍結乾燥する際に,米国特許第3,932,943号明細書(刊行物B)に開示された凍結乾燥法(B-2)を適用して得られる凍結乾燥品が,少なくとも含まれるものと解されるので,本願発明が当業者にとって容易になしうるものであるか否かを検討するにあたり,引用発明に対して,刊行物Bに記載の凍結乾燥法を適用することが当業者にとって容易であったか否かを検討することとする。 刊行物Bの記載によれば,該刊行物Bに記載の凍結乾燥法(B-2)は,従来法の塊の形態で凍結乾燥する方法の問題点(B-1)である,凍結乾燥品を再溶解する際に溶液が不均一となること,酵素等の分解が増大すること,さらに,再溶解の際に溶解に時間を要する上,溶液が透明性に欠ける,といった欠点を克服するものであるとされていて(B-2),さらに,このような凍結乾燥法によって,酵素の活性保持と安定性がもたらされ,凍結粒子の溶解時間も短くなることが記載されている(B-3)。 一方,引用発明に係るゴナドトロピンは,酵素と同じタンパク質に分類されるものであって,このような生理活性をもつタンパク質は,通常その活性を保持したまま安定に保存することが困難であることは,この分野においてよく知られていることである。 したがって,刊行物Bに記載の凍結乾燥法が,凍結乾燥品の再溶解の際のメリットばかりでなく,酵素等のタンパク質の分解が抑制され、活性が保持されるというものであれば,生理活性をもつタンパク質という点では酵素と共通するゴナドトロピンに関する引用発明に対して,刊行物Bで示された種々の効果を期待して,該刊行物B記載の凍結乾燥法を適用してみようとすることは,当業者ならばごく自然に考えることである。 したがって,引用発明に対して,刊行物Bに記載の凍結乾燥法を適用することは当業者にとって容易になし得ることである。 また,本願発明による効果も,刊行物A及びBの記載から,当業者が予測しうる程度のものであって,格別顕著なものであるとすることができない。 なお,請求人は,審判請求書の「請求の理由」(平成19年10月24日付け手続補正書)において,本願発明は安定化剤としてのクエン酸ナトリウムの量が少なくて済む旨主張しているが,請求人が言及している本願実施例2,4及び5は,何れも,刊行物Aの実施例1で使用しているFSH(卵胞刺激ホルモン)とは異なる物質(HCG)を用いるものであるのに対して,該刊行物Aの実施例1と同じ物質であるFSHを用いる本願実施例3におけるクエン酸ナトリウムの量をみると,FSHの活性単位あたりのクエン酸ナトリウムの使用量は刊行物1の実施例1と同一(FSH75IUあたりに換算すると,ともに7.35mgのクエン酸ナトリウムを使用している)であるので,請求人の主張は採用されるべきものではない。 6.むすび 以上のとおり,本願発明は,上記刊行物A及びBに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 以上 |
審理終結日 | 2009-11-10 |
結審通知日 | 2009-11-17 |
審決日 | 2009-12-01 |
出願番号 | 特願平6-523868 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上條 のぶよ |
特許庁審判長 |
星野 紹英 |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 川上 美秀 |
発明の名称 | ゴナドトロピンを含有するライオスフィア |
代理人 | 金山 賢教 |
代理人 | 川口 義雄 |
代理人 | 渡邉 千尋 |
代理人 | 坪倉 道明 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 大崎 勝真 |