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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1214957 |
審判番号 | 不服2007-21716 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-06 |
確定日 | 2010-04-14 |
事件の表示 | 特願2004-311652「モバイル端末機の移動性支援方法及びそのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-130512〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2004年10月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年10月27日、大韓民国)の出願であって、平成19年1月17日付けで手続補正がなされたが、同年4月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年9月3日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年9月3日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正は、平成19年1月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「モバイルインターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)を利用してモバイル(移動)端末機の移動性を支援する方法であって、 アクティブスキャンを遂行して受信電界強度が大きいと判断されるアクセスポイントの識別子を獲得し、該獲得された識別子を以前のアクセスポイント識別子と比較することで、モバイル端末機が他のサブネットに移動することを認識する認識ステップと、 モバイル端末機が他のサブネットに移動したことを認識した場合に、移動した後のサブネットのためのネットワークプリフィックス(prefix)と同じプリフィックスを持つIPアドレスをモバイル端末機に割り当てるステップと、 前記ステップにより割り当てられたIPアドレスを用いて移動後のサブネットにデータパケットを直接ルーティングするステップと、 を含むことを特徴とするモバイル端末機の移動性支援方法。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「モバイルインターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)を利用してモバイル(移動)端末機の移動性を支援する方法であって、 同一サブネットに属するアクセスポイントらを、同じ識別子を有するように予め設定しておくステップと、 アクティブスキャンを遂行して受信電界強度が大きいと判断されるアクセスポイントの識別子を獲得し、該獲得された識別子を以前のアクセスポイント識別子と比較することで、モバイル端末機が他のサブネットに移動することを認識する認識ステップと、 モバイル端末機が他のサブネットに移動したことを認識した場合に、モバイル端末機の情報及びアクセスポイント情報を使用して、移動した後のサブネットのためのネットワークプリフィックス(prefix)と同じプリフィックスを持つIPアドレスをモバイル端末機に割り当てるステップと、 前記ステップにより割り当てられたIPアドレスを用いて移動後のサブネットにデータパケットを直接ルーティングするステップと、 を含むことを特徴とするモバイル端末機の移動性支援方法。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、「モバイル端末機の移動性支援方法」について「同一サブネットに属するアクセスポイントらを、同じ識別子を有するように予め設定しておくステップ」を追加し、「割り当てるステップ」について「モバイル端末機の情報及びアクセスポイント情報を使用して」行うように限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。 (2)引用発明 A.原審の拒絶理由に引用された特開2001-274816号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項(イ)?(ヘ)が記載されている。 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、テレコミュニケーションシステムにおいて移動をサポートする方法及び装置に係る。 【0002】 【従来の技術】ポータブルコンピュータをもつ移動労働人口の割合は、絶えず増加しつづけている。これら移動ユーザは、多数の位置からコンピュータネットワークにアクセスする必要がある。通常のローカルエリアネットワークとは別に、コンピュータネットワークへのワイヤレスアクセスを可能にするワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)が市場に参入している。WLANは、ケーブルを必要としないので、使い易さを与える。典型的に、WLANは、高周波技術を使用するが、例えば、赤外線接続を使用することもできる。セルラーテレコミュニケーションシステムとしては、WLANは、マイクロセルと称するセルを使用してワイヤレス接続を与える。WLANアクセスにはWLANアダプタが設けられ、これらアダプタは、ポータブルコンピュータにおけるPCカード、又はデスクトップコンピュータにおけるISA又はPCIカードとして実施されるか、或いはハンドヘルドコンピュータ内に一体化される。 【0003】ターミナルが布線ネットワーク又はワイヤレスネットワークにアクセスするときには、多数のシステム設定を伴う。一般に、必要な設定は、接続方法の設定、ダイヤルイン設定、IP(インターネットプロトコル)設定、及びアプリケーション設定である。接続方法は、接続の形式、例えば、直接ネットワーク接続又はモデム接続を指定する。ダイヤルイン設定は、少なくともアクセス電話番号及びダイヤルプレフィックスを指定し、IP設定は、IPネットワークにアクセスするための必要なパラメータを含み、そしてアプリケーション設定は、一般的なアプリケーションに必要なパラメータをセットする。布線型LANにアクセスしそしてそれを使用するのに必要とされる通常の設定に加えて、多数のWLAN特有の設定があり、これらは種々のWLANネットワークにおいて異なる。例えば、異なるWLANネットワークにおいて異なるセキュリティキー及びデータレートを使用することができる。通常、これら設定は、使用するネットワークが切り換わるたびに手動で変更することが必要となる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】WLANは、他のワイヤレステレコミュニケーションシステムと同様に、布線ネットワークへのアクセスを移動ターミナルに与えるサポートノードを備えている。WLANにおいて、これらサポートノードは、通常、アクセスポイントと称される。アクセスポイントは、サブネットワークへとグループ編成され、そしてサブネットワークは、論理的ネットワークを形成する。サブネットワークは、同じ論的ネットワークに属するが異なる設定を必要とするWLANセグメントである。特に、異なるサブネットワークは、通常、異なるIPアドレスセグメントを有するので、TCP/IP(搬送制御プロトコル/インターネットプロトコル)設定は、ターミナルがあるサブネットワークのエリアから別のサブネットワークのエリアへ移動するたびに変更する必要がある。ターミナルが第1のサブネットワークのアクセスポイントに接続され、そしてその接続が第2のサブネットワークのアクセスポイントに変更されたときには、ターミナルが第1のサブネットワークから第2のサブネットワークにローミングすると言える。WLANのユーザは、異なるサブネットワークへのアクセスを希望するたびに手動で設定を変更する必要がある。従って、サブネットワーク間(及び論理的ネットワーク間)のローミングは、厄介であり、ユーザの介在を必要とする。これは時間を要し、しばしば、ターミナルを再スタートさせる必要がある。新たなアクセスポイントが異なる論理的ネットワーク内にある場合には、接続の確立に更に時間がかかる。多くのユーザは、異なるネットワーク設定に馴染みがないので、IT(インフォーメーション・テクノロジー)サポート要員に援助を求める必要がある。」(段落【0001】?【0004】) (ロ)「【0011】WLAN移動ターミナルMSは、別のターミナルへの接続を確立するだけで特別なネットワークを形成することができる。特別なネットワークとは、布線ネットワークインフラストラクチャーを必要とせずにインターネットワーク型通信を行う目的でグループ編成された移動ステーションである。特別なネットワークは、基本的サービスセット(BSS)を形成する。インフラストラクチャーネットワークは、移動ターミナルMSに特定のサービス及びレンジ拡張を与えるために確立される。インフラストラクチャーネットワークは、アクセスポイントAP1ないし4とターミナルMSとの間に接続を形成することにより確立される。アクセスポイントAP1-4は、MDへのネットワーク接続を与え、従って、拡張されたサービスセット(ESS)を形成する。最小限、アクセスポイントAP1-4は、移動ターミナルMSと論理的ネットワークNW1、NW2の布線部分との間における送信時間の割り当て、データの受信、バッファリング及び送信を制御する。論理的なWLANネットワークNW1、NW2は、1つ以上のサブネットワークSN1、SN2及びSN3を備えている。サブネットワークは、複数のアクセスポイントAP1-4を含む。例えば、NW1は、2つのサブネットワークSN1及びSN2を備え、サブネットワークSN1は、2つのアクセスポイントAP1及びAP2を備え、そしてSN2は、アクセスポイントAP3を備えている。又、論理的WLANネットワークNW1、NW2は、ポータルPT1、PT2と称する装置を経て、インターネットのような他のネットワークONへのゲートウェイアクセスを与えることもできる。ポータルPT1、PT2は、IEEE802.11特有の論理的ネットワークNW1、NW2が非IEEE802.11ネットワークONと一体化するところの一体化ポイントを特定する論理的エンティティである。通常、論理的WLANネットワークNW1、NW2は、論理的ネットワークNW1においてIPアドレスを割り当てるDHCP(ダイナミック・ホスト・コンフィギュレーション・プロトコル)サーバーのような他のサーバーも備えている。」(段落【0011】) (ハ)「【0013】アクセスポイントAP1-4の個々のマイクロセルは、論理的ネットワークNW1、NW2の布線部分と連続的に通信できるように重畳される。移動ターミナルMSは、次いで、別の地理的エリアへ移動するときに信号強度の良好なアクセスポイントに接続することができる。IEEE802.11 WLANの更なる詳細については、IEEE802.11規格、例えば、「ドラフト・インターナショナル・スタンダードISO/IEC8802-11 IEEE802.11/D10、1999年1月、パート11:ワイヤレスLAN媒体アクセス制御(MAC)及び物理層(PHY)仕様書」を参照されたい。 【0014】ネットワーク及び異なるネットワークリソースにアクセスするのに必要な設定は、一緒に収集して、情報セットとして移動ターミナルMSに記憶することができる。情報セットは、情報セットに属するネットワークを識別するネットワーク名を含むのが好都合である。情報セットは、各論理的WLANネットワークNW1、NW2に対して別々に決定されるのが好都合であり、そしてそれらは、プロファイルとみなされ且つ呼ばれる。情報セットは、基本的に、当該論理的WLANネットワークNW1、NW2にアクセスするのに必要な何らかの種類の設定を含み、そしてそれらは、図2に示す非WLAN特有の設定も含むのが好都合である。ネットワークにアクセスするのに必要な設定とは別に、情報セットは、ネットワークによる異なるサービスを可能にするネットワークリソースにアクセスするのに必要な設定も含む。ターミナルMSは、基本的に、ネットワークにアクセスするときに幾つかのネットワークリソースを常に使用し、例えば、アクセスポイントAP1の送信能力を使用してポータルPT1にデータが転送される。 【0015】オペレーションモード設定は、特別な又はインフラストラクチャーモードを使用できるかどうか定義する。ネットワーク名設定は、情報セットに属するネットワーク名を定義する。論理的WLANネットワークNW1、NW2は、多数のサブネットワークSN1-3にセグメント化されるので、全てのサブネットワークSN1-3がそれら自身のネットワーク名を有するのが好ましい。従って、情報セットは、2つ以上のワイヤレスネットワーク名を含むことができる。使用するオペレーションモードがインフラストラクチャーである場合には、使用するネットワーク名がESSID(拡張サービスセット識別子)と称され、そして使用するオペレーションモードが特別なものである場合には、ネットワーク名は、BSSID(基本的サービスセット識別子)と称される。」(段落【0013】?【0015】) (ニ)「【0020】図3は、記憶された情報セットを用いて論理的ネットワークNW1、NW2にアクセスする1つの考えられる方法を示す。MSのユーザが、ローカルの使用可能な論理的ネットワークNW1、NW2への接続を形成しようとするときには、WLANの機能がアクチベートされる。ターミナルMSの現在位置エリアに使用できる情報セット及びネットワークを見出すために、MSは、使用可能なアクセスポイントAP1-4の走査を実行する。このようなアクセスポイントAP1-4に対する走査は、IEEE802.11規格に定義された基本的機能であり、ここで、MSは、ネットワーク認識要求(プローブ要求)を送信しそしてネットワーク認識応答(プローブ応答)をサーチすることにより無線チャンネルを1つづつチェックする。MSは、プローブ要求301、302、303をローカルアクセスポイント、例えば、AP1、AP2及びAP3へ送信し、そしてプローブ応答を待機する。例えば、アクセスポイントAP1及びAP3は、プローブ要求301、303を受信し、そしてアクセスポイント304、305の情報より成るプローブ応答を返送する。好ましくは、プローブ応答304、305は、アクセスポイントAP1-4が属するサブネットワークSN1-3のネットワーク名を含む。 【0021】MSは、走査された情報を使用して、どの情報セットを使用できるか決定する(306)。例えば、MSは、AP1及びAP3からプローブ応答304、305を受信すると、そのプローブ応答304、305におけるネットワーク名を、記憶された情報セットにおけるネットワーク名と比較し(306)、そしてサブネットワークSN1及びSN2が使用できることを見出す。ネットワーク名のグループは好都合に指定される(例えば、NW1LAN*)ので、同じ情報セットに属するネットワーク名(NW1LAN1、NW1LAN2)を容易に見出すことができる。更に、SN1(NW1LAN1)及びSN2(NW1LAN2)のネットワーク名が見つかるので、SN1の情報セットを完全に使用することができる。単一のサブネットワーク(SN1)に2つ以上のアクセスポイント(AP1、AP2)がある場合には、MSが同じネットワーク名を別々のプローブ応答において何回も受信する。従って、ターミナルMSは、使用可能な論理ネットワーク及び情報セットを確実に決定することができ、通常は、既存のネットワーク名及び認識要求も使用できる。 【0022】ターミナルMSは、使用可能な情報セットが分かると、その使用可能な情報セットについてMSのユーザに通知する(307)。使用可能な情報セットが2つ以上ある場合には、ユーザに、使用されるべき情報セットを選択する機会が与えられる。使用可能であってユーザにより承認された情報セットが、次いで、使用され、そして少なくとも論理的WLANネットワークNW1、NW2が、選択された情報セット内に記憶された設定を用いてアクセスされる(308)。しかしながら、完全に自動的な情報セット選択を使用することもでき、即ち使用可能な情報セットの1つがユーザの介在なしに選択され、そして選択された情報セットの設定を用いて、ネットワークがアクセスされる。」(段落【0020】?【0022】) (ホ)「【0026】図4は、本発明の好ましい実施形態によるアクセスポイントの選択を示す。通常、異なるサブネットワークは、異なるIPアドレスセグメント、ひいては、異なるTCP/IPプロトコル設定を有する。サブネットワークSN1-3間即ち異なるサブネットワークSN1-3のアクセスポイントAP1-4間をローミングする場合には、これらの設定を変更しなければならない。これらTCP/IP設定の変更は、進行中の接続を切断する。本発明の好ましい実施形態によれば、ターミナルMSは、ネットワーク名を使用することにより、接続ができるだけ長く同じサブネットワークSN1-3に維持されることに注意を払う。 【0027】接続は、上述した情報セットを使用して、例えば、現在サービスしているアクセスポイントとで確立される。ターミナルMSは、使用可能なアクセスポイントに関する情報を周期的に収集する(401)のが好都合である。この周期は、好ましくは、調整可能であり、ターミナルMSに基づいて変更することができる。アクセスポイントAP1-4は、通常、アクセスポイントレポートを周期的に送信する。アクセスポイントレポートは、少なくとも、アクセスポイントのネットワーク名と、アクセスポイントAP1-4に関する他の情報とを含む。他の情報は、例えば、アクセスポイント負荷(即ちどれほど多数のターミナルがアクセスポイントを使用しているか)、使用帯域巾に関する情報、サポートされたデータレートに関する情報、又はセキュリティ情報を含む。ターミナルMSは、これらのアクセスポイントレポートを各アクセスポイントAP1-4から収集し、即ちWLAN周波数帯域において確認できる各アクセスポイントから収集することができる。又、ターミナルMSは、アクセスポイントAP1-4に要求を送信し、そして使用可能なアクセスポイントは、アクセスポイント情報を送信することによりそれに応答することも考えられる。 【0028】次いで、ターミナルMSは、収集した情報に基づいて使用可能なアクセスポイントのネットワーク名をチェックする(402)。ある実施形態によれば、MSは、使用可能なアクセスポイントのネットワーク名を、記憶された情報セットのネットワーク名設定と好都合に比較し、そしていずれのネットワーク名設定にもネットワーク名が記述されていないアクセスポイントをドロップする(403)。MSは、現在サービスしているアクセスポイントと同じネットワーク名をもつアクセスポイントの接続属性を比較し、現在サービスしているアクセスポイントとは異なるネットワーク名をもつアクセスポイントの接続属性を比較し、そして最良の接続属性をもつアクセスポイントを選択する。接続属性とは、アクセスポイントへの考えられる接続に関する情報より成るある種の属性である。MSは、現在サービスしているアクセスポイントと同じネットワーク名をもつ使用可能なアクセスポイントのうち、最良の接続属性を有する第1のアクセスポイントを選択する(404)。又、MSは、現在サービスしているアクセスポイントとは異なるネットワーク名をもつ使用可能なアクセスポイントのうち、最良の接続属性を有する第2のアクセスポイントを選択する(405)。 【0029】接続属性は、アクセスポイントに関する収集された情報に基づいて決定され、即ちアクセスポイントレポート及び異なるアクセスポイントの信号レベルに基づいて決定されるのが好都合である。アクセスポイントレポートの場合のように、同じ情報を使用することができ、ターミナルMSは、異なるアクセスポイントレポートから受信した情報を比較することにより異なるアクセスポイントの接続属性を比較することができる。使用可能なアクセスポイントを比較するときには、少なくとも信号レベルが考慮されるのが好ましい。又、アクセスポイントを比較するときには、アクセスポイント負荷、サポートされるデータレート及びセキュリティ情報のようなアクセスポイントレポートからの情報を考慮することもできる。又、特に、アクセスポイント負荷は、重要な接続属性である。信号レベルのみを考慮する場合には、異なるアクセスポイントの信号レベルが単に比較され、そして最も高い信号レベルをもつアクセスポイントが、最良の接続属性をもつアクセスポイントである。2つ以上の接続属性を考慮する場合には、異なる接続属性が異なる重みにされるのが好都合である。アクセスポイントの比較を実行する方法は多数あり、そして接続属性は、種々のユーザに対して異なる重みが付けられる。 【0030】例えば、信号レベルは、最も重要な接続属性(重み80%)であると考えられ、そしてアクセスポイント負荷は、考えられる別の接続属性(重み20%)である。数学的な基準値は、使用可能なアクセスポイントに対し重みに基づいて決定され、そして最も高い値をもつアクセスポイントが、最良のアクセスポイントとして選択される。接続属性の情報は、情報セットに記憶することができる。既に述べたように、最良のアクセスポイントは、現在サービスしているアクセスポイントと同じネットワーク名をもつ使用可能なアクセスポイントの中から選択される(第1のAP、404)と共に、現在サービスしているアクセスポイントとは異なるネットワーク名をもつ使用可能なアクセスポイントの中から別に選択される(第2のAP、405)のが好都合である。 【0031】MSは、第1及び第2のアクセスポイントの1つ以上の接続属性を比較する(406)。第1及び第2のアクセスポイントの比較された接続属性間の差が所定の条件を満足するかどうかチェックされる(407)。この所定の条件は、アクセスポイントの比較に関連した異なる接続属性に対する条件を含む。好ましくは、少なくとも信号レベル差に対する限界が使用され、即ち第1及び第2のアクセスポイントの信号レベルが比較され、そして第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの信号レベルの差が所定の信号レベル限界より高いかどうかチェックされる。信号レベルを使用することにより、ターミナルに最も近いアクセスポイントをしばしば選択することができる。又、他の条件を、例えば、各重み付けされたファクタに対して別々に使用することもできる。所定の条件は、同じネットワーク名をもつアクセスポイントに接続ができるだけ長く保たれるように決定されるのが好都合である。 【0032】差が所定の条件を満足する場合には、好ましい実施形態によれば、ユーザにそれが通知され(408)、そしてユーザが別のサブネットワークの第2のアクセスポイントへ接続を変更しようとするかどうかチェックされる(409)。この場合には、別のサブネットワークの第2アクセスポイントへの接続が、ユーザがその変更を許す場合だけ情報セットにおける設定を使用して好都合に確立される(410)。この場合も、ユーザに充分早く通知がなされるように所定の条件が好都合に調整され、これは、例えば、ユーザが文書をデータベースにセーブしそしてそこからログアウトできるようにする。しかしながら、アクセスポイントが自動的に選択され、即ち差が所定の条件を満足する場合に第2のアクセスポイントへの接続が確立される(410)ようにすることもできる。第2アクセスポイントへの接続は、全ての所定の条件が満足された場合だけ確立されるのが好都合である。第2アクセスポイントへの接続は、情報セットに記述された設定を使用することにより確立されるのが好都合である。第2のアクセスポイントが異なる論理的ネットワーク(NW1、NW2)にある場合には、使用する情報セットが変更される。」(段落【0026】?【0032】) (ヘ)「【0035】異なるサブネットワークの第2のアクセスポイント(現在サービスしているアクセスポイントではない)を接続するときには、通常、少なくともTCP/IP設定を、MSに対して新たなIPアドレスを指定するDHCPサーバーへの接続により更新する必要がある。上記段階は、異なる順序で実施されてもよく、例えば、第1のアクセスポイントの前に第2のアクセスポイントが決定されてもよいことに注意されたい。」(段落【0035】) a.上記摘記事項(イ)の段落【0001】「本発明は、テレコミュニケーションシステムにおいて移動をサポートする方法及び装置に係る。」、段落【0003】「ターミナルが布線ネットワーク又はワイヤレスネットワークにアクセスするときには、多数のシステム設定を伴う。一般に、必要な設定は…IP(インターネットプロトコル)設定」、段落【0004】「WLANは…布線ネットワークへのアクセスを移動ターミナルに与えるサポートノードを備えている。WLANにおいて、これらサポートノードは、通常、アクセスポイントと称される。」という記載によれば、引用例1に開示された方法はインターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)を利用して、移動ターミナルの移動をサポートする方法、すなわち、移動性を支援する方法が開示されていると認められる。 b.上記摘記事項(ロ)の段落【0011】、上記摘記事項(ハ)の段落【0015】の記載、及び、図1によれば、引用例1に開示されたシステムは複数のサブネットワークSN1-3を含み、各サブネットワークSN1-3には1つ乃至2つのアクセスポイントAP1-4が属すように構成されており、全てのサブネットワークSN1-3はそれら自身のネットワーク名を有するようにされていることが分かる。また、上記摘記事項(ニ)の段落【0020】?【0021】には、「MSは、プローブ要求301、302、303をローカルアクセスポイント、例えば、AP1、AP2及びAP3へ送信し、そしてプローブ応答を待機する。例えば、アクセスポイントAP1及びAP3は、プローブ要求301、303を受信し、そしてアクセスポイント304、305の情報より成るプローブ応答を返送する。好ましくは、プローブ応答304、305は、アクセスポイントAP1-4が属するサブネットワークSN1-3のネットワーク名を含む。…単一のサブネットワーク(SN1)に2つ以上のアクセスポイント(AP1、AP2)がある場合には、MSが同じネットワーク名を別々のプローブ応答において何回も受信する。」という記載があるが、特にこの箇所の末文の記載によると、「同一サブネットワークに属するアクセスポイントらを、同じネットワーク名を有するように予め設定しておく」ようにされていることは明らかである。 c.上記摘記事項(ニ)の段落【0020】には、移動ターミナルMSがアクセスポイントに対してプローブ要求を出す旨の記載があるが、このような手法を「アクティブスキャン」と称することは技術常識である。 また、上記摘記事項(ホ)の段落【0028】の「MSは、現在サービスしているアクセスポイントと同じネットワーク名をもつアクセスポイントの接続属性を比較し、現在サービスしているアクセスポイントとは異なるネットワーク名をもつアクセスポイントの接続属性を比較し、そして最良の接続属性をもつアクセスポイントを選択する。」という記載によれば、ネットワーク名を、現在サービスしているアクセスポイントと同じネットワーク名であるか否かで区別しているが、その区別をするために、「アクセスポイントのネットワーク名を獲得し、該獲得されたネットワーク名を現在サービスしているアクセスポイントのネットワーク名と比較」していることは明らかである。ここで、「現在サービスしているアクセスポイント」とは、アクセスポイントの選択をする時点でサービスしているアクセスポイントのことであり、「選択をする以前に使用されていたアクセスポイント」と同じ意味であるから、「以前のアクセスポイント」と言い換えることができる。 さらに、段落【0029】の「最も高い信号レベルをもつアクセスポイントが、最良の接続属性をもつアクセスポイントである。」という記載によれば、信号レベルが大きいと判断されるアクセスポイントが最良の接続属性をもつアクセスポイントとされて選択されていることとなるが、段落【0030】?【0032】の記載も参酌すると、現在サービスしているアクセスポイントに対して同じネットワーク名をもつアクセスポイントと、異なるネットワーク名をもつアクセスポイントとの間では、信号レベルの差が考慮されて選択が行われているから、アクセスポイントは、「所定の条件の下で信号レベルが大きいと判断されて選択される」といえる。 そして、選択されたアクセスポイントのネットワーク名が、以前のアクセスポイントのものと異なっていれば(先にネットワーク名の比較をし、アクセスポイントの区別をしているので、ネットワーク名の異同を認識できることは明らか)、段落【0032】に記載されているように、当該アクセスポイントへの接続が確立され、上記摘記事項(ヘ)の段落【0035】に記載されているように移動ターミナルMSの設定変更も行われることになるから、技術常識を参酌すれば、移動ターミナルMSは、選択されたアクセスポイントによって、他のサブネットワークに移動すること当然に認識しているといいうる。 以上のことから、引用例1には、「アクティブスキャンを遂行してアクセスポイントのネットワーク名を獲得し、該獲得されたネットワーク名を以前のアクセスポイントのネットワーク名と比較し、所定の条件の下で信号レベルが大きいと判断されて選択されたアクセスポイントによって、移動ターミナルMSが他のサブネットワークに移動することを認識する」ことが開示されているといえる。 d.上記摘記事項(ヘ)の段落【0035】の記載によれば、移動ターミナルMSが他のサブネットワークに移動したことを認識した場合に、IPアドレスを移動ターミナルMSに割り当てることが分かる。 したがって、これらの記載事項によると、引用例1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「インターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)を利用して移動ターミナルMSの移動性を支援する方法であって、 同一サブネットワークに属するアクセスポイントらを、同じネットワーク名を有するように予め設定しておくステップと、 アクティブスキャンを遂行してアクセスポイントのネットワーク名を獲得し、該獲得されたネットワーク名を以前のアクセスポイントのネットワーク名と比較し、所定の条件の下で信号レベルが大きいと判断されて選択されたアクセスポイントによって、移動ターミナルMSが他のサブネットワークに移動することを認識する認識ステップと、 移動ターミナルMSが他のサブネットワークに移動したことを認識した場合に、IPアドレスを移動ターミナルMSに割り当てるステップと、 を含む移動ターミナルMSの移動性支援方法。」 B.原審の拒絶理由に引用された特開2000-156682号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項(ト)?(リ)が記載されている。 (ト)「【0014】以下、本発明の一実施形態による無線通信装置を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、ホストサーバである。符号2は、ホストサーバが接続されたネットワークである。符号3-nは、ネットワーク2に接続された無線サーバである。符号2a、2b、2cは、無線サーバ3-nの管理下に構築されたサブネットワークである。符号4-nは、無線サーバ3-nに接続された基地無線機であり、1台の無線サーバ3-nに対して、複数の基地無線機4-nが接続される。ここでは、1台の無線サーバ3-nに対して1台の基地無線機4-nのみを図示する。符号5は、無線サーバ3-nに対して無線通信によって接続される端末装置であり、基地無線機4-nと無線によって通信を行う移動無線機(以下、移動機と称する)5aと、移動機5aに接続されたコンピュータ端末(以下、端末と称する)5bとからなる。なお、ホストサーバ1は、無線によって端末と通信を行う無線サーバであってもよいし、無線通信の機能を必ずしも有していなくてもよい。」(段落【0014】) (チ)「【0016】次に、図1、2、3、4、5及び6を参照して、同実施形態による通信装置の動作を説明する。図2は、無線通信装置の時間変化に応じた動作を示す説明図である。図2において、「Dst」は送信先を表し、「Src」は送信元を表している。図3、4、5、6は無線通信装置の動作手順を示したフローチャートである。 【0017】ここでは、端末装置5のホームサーバは、無線サーバC3-3として、現時点では、端末装置5は、無線サーバA3-1の管理下で稼働しているものとする。 【0018】まず、端末装置5が無線サーバA3-1のサブネットワーク2aから無線サーバB3-2のサブネットワーク2bに移動した場合の動作を説明する。 【0019】まず端末装置5は、無線サーバB3-2に対して、端末登録認証とIPアドレス発行の要求をする(図2(a)及び図3のステップS1参照)。これを受けて、無線サーバB3-2は登録認証とIPアドレス発行を行い(図2(a)、図3ステップS2参照)、これによって、端末装置5は、無線サーバB3-2の管理下で稼働することができる。なお、登録認証動作及びIPアドレス発行動作については後述する。 【0020】次に、無線サーバB3-2は、ホームサーバである無線サーバC3-3に対して端末装置5が、無線サーバA3-1の管理下から無線サーバB3-2の管理下に移動して登録認証が完了したことを通知する(図2(b)、図3ステップS3)。 【0021】次に、ホームサーバである無線サーバC3-3は、無線サーバB3-2からの登録完了通知に応じて、無線サーバA3-1に対して、端末装置5が、無線サーバB3-2の管理下に移動したことを通知する(図3ステップS5)。これによって、無線サーバA3-1は登録完了通知を受信して(図3ステップS4)、端末装置5の管理を中止する(図3ステップS6)。また、無線サーバC3-3(ホーム無線サーバ)は、端末装置5が無線サーバB3-2の管理下になったことを記録して、管理情報を更新する(図3ステップS7)。 【0022】また、端末装置5が移動したことを、ホームサーバである無線サーバC3-3を介して無線サーバA3-1に通知するのは、これによって、端末装置5がどの無線サーバの管理下に移動したかを把握するためである。 【0023】このような動作によって、端末装置5は他の無線サーバの管理下に移動することができる。 【0024】次に、ホストサーバ1が端末装置5に対してパケットを送出する動作を図2、4を参照して説明する。まず、ホストサーバ1は、ネットワーク2を介してIPパケットを送信(図4ステップS11)する。このとき、ホストサーバ1は、端末装置5が無線サーバB3-2の管理下にあることを知らされていないため、ホストサーバ1からの送出パケットは端末装置5が以前接続されていた無線サーバA3-1へ送られる(図2(c))。 【0025】続いて、無線機サーバA3-1はこのパケットを受信して(図4ステップS12)、このパケットが無線サーバB3-2へ送出されるように、無線サーバB3-2へルーティングして(図4ステップS13、図2(d))、無線サーバB3-2はこのパケットを受信する(図4ステップS14)。さらに、無線サーバB3-2は、管理下の端末装置5の移動機5aへルーティング(図4ステップS15)して、移動機5aへ送出する(図2(e)参照)。さらに、このパケットを、端末5bへ送出する(図2(f)参照)。 【0026】これによって、ホストサーバ1より送出されたパケットを、端末装置5が受信することができる。 【0027】次に、端末装置5からホストサーバ1へパケットを送出する動作を図2、5、6を参照して説明する。まず、端末5bは移動機5aに対してパケットを送信する(図2(g))。続いて、移動機5aは、無線サーバB3-2を介して受信したパケットを送信する(図2(h))。 【0028】次に、無線サーバB3-2は、このパケットを受信し(図5ステップS21)、ホストサーバ1へルーティングして、端末装置5から受け取ったIPパケットをホストサーバ1へ送出する(図2(i)、図5ステップS22)。次に、ホストサーバ1は、このパケットを受信する(図5ステップS23)。この時点でホストサーバ1は、このパケットの送信元のアドレスから、端末装置5が無線サーバB3-2の管理下にあることを知ることができる(図5ステップS24)ために、これ以降の端末装置5へのパケット送出は直接無線サーバB3-2へ対して行われる。 【0029】次に、ホストサーバ1から無線サーバB3-2へパケットを送信する場合は、まず、パケットを無線サーバB3-2へ送出する(図2(j)、図6ステップS31)。 【0030】次に、無線サーバB3-2はこのパケットを受信して(図6ステップS32)、端末装置5へルーティングする(図6ステップS33)ことによって、移動機5aへ送信する(図2(k))。さらに、このパケットは、端末装置5へ送信される(図2(l))。 【0031】このように、端末装置5に対してパケットの送受信が行われた時点で、IPパケットの転送をするようにしたので、端末装置5が移動する度にすべてのホストに対して、端末装置5が移動したことを通知する必要がないために、通信回線のトラフィックの集中を防ぐことができる。」(段落【0016】?【0031】) (リ)「【0061】次に、図12を参照して、無線サーバB3-2、基地無線機4-2、4-4?6及び移動機5aのアドレス体系について説明する。図12において、例として無線サーバB3-2のIPアドレスを「172.31.0.254」とし、基地無線機4-2、4-4、4-5、4-6のそれぞれのIPアドレスを「172.31.31.254」、「172.31.47.254」、「172.31.63.254」、「172.31.79.254」とする。 【0062】また、基地無線機4-2、4-4?6に接続される複数の移動機のうち1つの移動機5aのIPアドレスを「172.31.0.1」とする。 【0063】IPアドレスは、通常32ビットで表現され、8ビット毎に「.」(ピリオド)で区切って10進数で表現される。以下の説明において、「.」(ピリオド)によって4つに区切られたIPアドレスの数値のうち、いちばん左の数値を1番目の数値、次を2番目の数値、以下同様に3番目の数値、4番目の数値と称する。 【0064】基地無線機4-2、4-4?6の3番目の数値「31」、「47」、「63」、「79」は、上位4ビットが「0001」、「0010」、「0011」、「0100」となっており、下位4ビットは全て「1111」になるように設定されている。また、全ての基地局の4番目の数値は「11111110」(10進数で254)となるように設定されている。3番目の数値の下位4ビットと4番目の数値で表現される数値「1111 1111 1110」はこの装置が基地無線機であることを示しており、さらに3番目の数値の上位4ビットが基地無線機の区別するための番号である。また、1番目の数値と2番目の数値は、これらの基地無線機4-2、4-4?6が接続されている無線サーバB3-2を示している。 【0065】このように設定することによって、基地無線機4-2、4-4?6がどの無線サーバに接続されており、さらに何番目の基地無線機であるかをIPアドレスによって知ることができる。 【0066】一方、移動機5aは、IPアドレスの32ビットのIPアドレスのうち下位12ビットは無線サーバB3-2が割り当てる数値である。したがって、無線サーバB3-2及び基地無線機4-2、4-4?6が割り当てられているIPアドレスに基づいて移動機5aのIPアドレスを設定することによってどの基地無線機に接続されているかを知ることができる。 【0067】このように、基地無線機に対してもIPアドレスを付与して、図12に示すように無線サーバB3-2と基地無線機4-4の間の通信をISDNルータA、Bを使用することによって、無線サーバB3-2と基地無線機4-4の距離が離れている場合でも、これらの構成を変更することなしに通信を行うことができる。」(段落【0061】?【0067】) e.上記摘記事項(ト)、(チ)、図1乃至6には、端末装置5がサーバA3-1からサーバB-2に移動した場合に、IPアドレスの割り当てを行うこと、また、特に段落【0028】には、端末装置5と通信を行っているホストサーバ1が、端末装置5が無線サーバB3-2の管理下にあることを知った以降は、端末装置5へのパケット送出は直接無線サーバB3-2へ対して行うことが記載されている。 f.上記摘記事項(ト)、(リ)及び図12によると、図12は無線サーバB3-2管理下の一つのサブネットワークを示しているといえるが、ここにおいては全ての構成要素において、IPアドレスの左から1番目と2番目の数値が共通しており、これは移動機の移動前後においてもそのようにされていると認められる。 したがって、これらの記載事項によると、引用例2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「移動した後のサブネットのためのIPアドレスの左から2番目までの数値と、同じ数値を同じ場所に持つIPアドレスが端末装置に割り当てられ、割り当てられたIPアドレスを用いて移動後のサブネットにパケットを直接ルーティングする方法」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明1とを対比する。 a.補正後の発明の「モバイル(移動)端末機」、「サブネット」は、引用発明1の「移動ターミナルMS」、「サブネットワーク」と一致している。 b.引用発明1の「ネットワーク名」は、サブネットワークを識別できるように付与されているものであり、かつ、同一サブネットワークに属するアクセスポイントには同じネットワーク名が付与されているから、補正後の発明の「識別子」と一致している。 c.引用発明1の「信号レベル」は、端末が受信する信号の強度のことであり、技術常識を勘案すれば電界の強度であることも明らかであるから、補正後の発明の「受信電界強度」と一致している。 d.引用発明1の「認識ステップ」は、上記a.?c.の対比結果も参酌すると、「アクティブスキャンを遂行してアクセスポイントの識別子を獲得し、該獲得された識別子を以前のアクセスポイントの識別子と比較したことに基づいて、モバイル端末機が他のサブネットに移動することを認識する」点で、補正後の発明の「認識ステップ」と一致している。 したがって、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「インターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)を利用してモバイル(移動)端末機の移動性を支援する方法であって、 同一サブネットに属するアクセスポイントらを、同じ識別子を有するように予め設定しておくステップと、 アクティブスキャンを遂行してアクセスポイントの識別子を獲得し、該獲得された識別子を以前のアクセスポイントの識別子と比較したことに基づいて、モバイル端末機が他のサブネットに移動することを認識する認識ステップと、 モバイル端末機が他のサブネットに移動したことを認識した場合に、IPアドレスをモバイル端末機に割り当てるステップと、 を含むモバイル端末機の移動性支援方法。」 (相違点1) 利用するプロトコルに関し、補正後の発明では、「モバイルインターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)」であるのに対し、引用発明1では、「インターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)」である点。 (相違点2) 「認識ステップ」に関し、補正後の発明では、「受信電界強度が大きいと判断される」アクセスポイントの識別子を獲得し、比較することで移動を認識しているのに対し、引用発明1では、アクセスポイントの識別子を獲得し、比較した後、「所定の条件の下で信号レベルが大きいと判断されて選択されたアクセスポイント」を求め、これによって移動を認識している点。 (相違点3) 「IPアドレスをモバイル端末機に割り当てるステップ」に関し、補正後の発明では、「モバイル端末機の情報及びアクセスポイント情報を使用して」割り当てるのに対し、引用発明1では、この点が記載されていない点。 (相違点4) 「IPアドレスをモバイル端末機に割り当てるステップ」に関し、補正後の発明では、「移動した後のサブネットのためのネットワークプリフィックス(prefix)と同じプリフィックスを持つ」IPアドレスを割り当てるのに対し、引用発明1では、この点が明確でない点。 (相違点5) 補正後の発明では、「前記ステップにより割り当てられたIPアドレスを用いて移動後のサブネットにデータパケットを直接ルーティングするステップ」を含むのに対し、引用発明1では、このステップは記載されていない点。 まず、上記相違点1について検討する。 引用発明1は移動ターミナル(モバイル端末機)のIP設定に関するものであるから、引用発明1を、モバイル端末のIP設定に係る、RFC2002等により周知の「モバイルインターネットプロトコル」を利用した方法とすることは、適宜なし得たことである。 次に、上記相違点2について検討する。 引用発明1においては、「所定の条件」の下で信号レベルが大きいアクセスポイントを選択しているが、受信電界強度を単に比較してその最大のものを選択するようにするアルゴリズムは、特開2001-94572号公報(段落【0019】、【0050】)、特開2003-264565号公報(段落【0005】)、特開2003-235069号公報(段落【0003】)等に記載されているように、周知技術である。選択アルゴリズムをどのようなものとするかは、所望する仕様に基づく設計事項であるから、引用発明1において「受信電界強度が大きいと判断されるアクセスポイント」が選択されるようにすることは、適宜なし得ることである。 一方、引用発明1では、「所定の条件」の下で判断を行うために、先にアクセスポイントのネットワーク名を獲得し、以前のアクセスポイントのネットワーク名と比較しているが、上述の周知のアルゴリズムとした場合には、そのような条件がないために先に比較する必要性は必ずしもなく、最終的に選択されたアクセスポイントのネットワーク名を獲得し比較することで、他のサブネットへの移動が認識できることは、当業者には明らかである。また、このような手順の変更は、当業者にとって格別困難であるとも認められないから、「認識ステップ」の手順を「アクティブスキャンを遂行して受信電界強度が大きいと判断されるアクセスポイントの識別子を獲得し、該獲得された識別子を以前のアクセスポイント識別子と比較することで、モバイル端末機が他のサブネットに移動することを認識する」とすることは、容易に想到し得たものと認められる。 次に、上記相違点3について検討する。 モバイル端末機の情報及びアクセスポイント情報を使用してIPアドレスを割り当てることは、例えば、特開2003-304255号公報(段落【0014】?【0019】、図2)、特開2000-115172号公報(段落【0022】?【0023】、図8。「利用者端末50B(携帯端末)」についても同様に行われることは明らか)に記載されているように周知技術であるから、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものと認められる。 次に、上記相違点4、5について検討する。 本願発明における「ネットワークプリフィックス(prefix)」は、明細書の段落【0052】によれば、ネットワークのためのIPアドレスの左から3番目までの数値を指していると解釈できる。一方、引用発明2は、IPアドレスの左からいくつかの数値をネットワーク内で同じ値に統一することで、直接ルーティングできるようにするという技術思想であるが、この技術思想の範囲内において、同じとする数値をどの範囲とするかは、適宜設計的に定められることにすぎない。したがって、上記相違点4、5に係る構成とすることは、引用発明1に引用発明2を組み合わせて、当業者であれば容易に想到し得たものと認められる。 以上のとおり、補正後の発明は引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成19年9月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に想到できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に想到できたものである。 第4.むすび したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-12 |
結審通知日 | 2009-11-17 |
審決日 | 2009-11-30 |
出願番号 | 特願2004-311652(P2004-311652) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 羽岡 さやか |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
小宮 慎司 新川 圭二 |
発明の名称 | モバイル端末機の移動性支援方法及びそのシステム |
代理人 | 小川 英宣 |
代理人 | 川上 成年 |
代理人 | 水野 勝文 |
代理人 | 岸田 正行 |