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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1215050
審判番号 不服2007-17421  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2010-04-09 
事件の表示 平成 9年特許願第228916号「電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 9日出願公開、特開平11- 67606〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年8月11日の出願であって、平成19年5月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「陽極タブ、陰極タブがそれぞれ接続された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して形成したコンデンサ素子に電解液を含浸し、該コンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納するとともに、該外装ケースの開口端部を封口体で封口してなる電解コンデンサにおいて、前記電解液として四級化環状アミジニウムイオンをカチオン成分とし酸の共役塩基をアニオン成分とする塩からなる少なくとも1種の溶質を含む電解液を用い、前記陰極箔として少なくとも前記電解液中における電極電位が前記陰極タブよりも貴な電位を示す箔を用いたことを特徴とする電解コンデンサ。」

第3 刊行物に記載された発明
1 刊行物1:特開平7-302734号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には、「電解コンデンサ」(発明の名称)に関して、図1,図2及び図3とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下同様。)
「【請求項1】陽極タブ、陰極タブがそれぞれ接続された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して形成したコンデンサ素子に電解液を含浸し、該コンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納するとともに、該外装ケースの開口端部を封口体で封口してなる電解コンデンサにおいて、前記陰極箔として少なくとも前記電解液中におけける電極電位が前記陰極タブよりも貴な電位を示す箔を用いたことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】コンデンサ素子に含浸する電解液として、テトラアルキルアンモニウムイオン又はテトラアルキルホスホニウムイオンをカチオン成分とし、酸の共役塩基をアニオン成分とする塩からなる少なくとも1種の溶質を含む電解液を用いたことを特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ。」
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は電解コンデンサ、特に電解液として、テトラアルキルアンモニウムイオン等をカチオン成分に用いたいわゆる4級塩の電解液を用いた電解コンデンサの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】電解コンデンサは一般的には図1に示すような構成を取っている。すなわち、帯状に形成された高純度のアルミニウム箔を化学的あるいは電気化学的にエッチングを行って拡面処理するとともに、拡面処理したアルミニウム箔をホウ酸アンモニウム水溶液等の化成液中にて化成処理することによりアルミニウム箔の表面に酸化皮膜層を形成させた陽極箔2と、同じく高純度のアルミニウム箔を拡面処理した陰極箔3をセパレータ8を介して巻回してコンデンサ素子が形成される。なお、図2に示すように陽極箔2、陰極箔3にはそれぞれ電気的に引き出すのための陽極タブ4、陰極タブ5が機械的手段により接続され、それぞれの電極タブにはさらに外部と連絡する陽極リード線6、陰極リード線7が接続されている。そしてこのコンデンサ素子1には駆動用の電解液が含浸され、金属製の有底筒状の外装ケース10に収納される。さらに外装ケース10の開口端部は弾性ゴムよりなる封口体9が収納され、さらに外装ケース10の開口端部を加締めて封口を行い、電解コンデンサを構成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】コンデンサ素子に含浸される駆動用電解液には使用される電解コンデンサの性能によって種々のものが知られており、その中でγ-ブチロラクトンを主溶媒とし、溶質としてテトラアルキルアンモニウムイオン、又はテトラアルキルホスホニウムイオンをカチオン成分とし、酸の共役塩基をアニオン成分とした塩、いわゆる4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩を溶解させたものがある。
【0004】この4級アンモニウム塩等を用いた電解液は電気抵抗が低く、かつ熱安定性が優れているが、封口体の陰極リード線のための貫通孔より電解液が液出しやすいという傾向がある。このため、4級アンモニウム塩等を用いた電解液自体の安定性は高いのだが、電解液が液出することにより、電解コンデンサの静電容量の低下等の電気的特性の悪化を招き、結果として電解コンデンサとしての寿命が短いものとなってしまう欠点があった。
【0005】この発明はこの欠点を改善するもので、4級アンモニウム塩等を用いた電解コンデンサの液出を防止し寿命特性の向上を図ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決しようとする手段】そこでこの発明では、電極タブがそれぞれ接続された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して形成したコンデンサ素子に電解液を含浸し、該コンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納するとともに、外装ケースの開口端部を封口体で封口してなる電解コンデンサにおいて、陰極箔として少なくとも電解液中におけける電極電位が陰極タブよりも貴な電位を示す箔を用いたことを特徴とする。
【0007】コンデンサ素子に含浸する電解液としては、テトラアルキルアンモニウムイオン又はテトラアルキルホスホニウムイオンをカチオン成分とし、酸の共役塩基をアニオン成分とする塩からなる少なくとも1種の溶質を含む電解液を用いることができる。
【0008】また、陰極タブとしてアルミニウムを用いるとともに、陰極箔としてアルミニウムを母材とし、チタン、マグネシウム、マンガン、ケイ素のうちより選択される少なくとも1種以上の元素を含有する金属材料を用いた箔とすると好適である。
【0009】あるいは、陰極タブとしてアルミニウムを用いるとともに、陰極箔として高純度のアルミニウム箔の表面にチタン又は窒化チタンよりなる層を設けた箔を用いると好適である。
【0010】
【作用】4級アンモニウム塩等を溶解した電解液が、陰極リード部より液出するメカニズムについては未だ明らかでない部分が多いため、この発明の構成による液出防止のメカニズムも同様に明確ではない。一般的には液出のメカニズムは次のように考えられている。すなわち、電解コンデンサは陽極箔に形成された酸化皮膜の損傷等により、直流電圧を印加した際には陽極と陰極との間で漏れ電流が流れる。電流が流れることにより陰極側では水素の還元反応が起こり、電解液中の水酸化物イオンの濃度が高くなっているものと考えられる。これは陰極箔と陰極タブの両方で発生している現象である。特に陰極タブ近傍での水酸化物イオン濃度の上昇、すなわち塩基性度の上昇により、陰極タブと接触している封口ゴムが損傷し、リード線と封口ゴムの密着精度が悪化し、液出しているものと考えられている。」
以上から、刊行物1には、「陽極タブ、陰極タブがそれぞれ接続された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して形成したコンデンサ素子に電解液を含浸し、該コンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納するとともに、該外装ケースの開口端部を封口体で封口してなる電解コンデンサにおいて、前記電解液としてテトラアルキルアンモニウムイオンをカチオン成分とし、酸の共役塩基をアニオン成分とする塩からなる少なくとも1種の溶質を含む電解液を用い、前記陰極箔として少なくとも前記電解液中における電極電位が前記陰極タブよりも貴な電位を示す箔を用いたことを特徴とする電解コンデンサ。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

2 刊行物2:特開平8-321440号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2には、「電解液およびそれを用いた電気化学素子」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電解コンデンサや電気二重層コンデンサ、イオンの電荷移動による充電/放電機構を有する電池、エレクトロクロミック表示素子などに使用する電解液およびそれを用いた電気化学素子に関するものである。」
「【0004】そしてまた、第4級アンモニウム塩を電解質とした電解液は、第4級アンモニウムの電気化学的な変質により、コンデンサを構成する材料である樹脂やゴム、金属を劣化させたり、腐食させる等の不具合があった。」
「【0009】
【作用】通常のアミン塩およびその4級化アンモニウム場と異なり、本発明のイミダゾリン化合物を陽イオン成分とする塩は非局在化したN-C-Nのアミジン基が4級化されているため、陽イオンが共鳴安定化してイオン解離が促進され、高い電導度が得られる。
【0010】また、イミダゾリン環の2位や4位にアルキル基を導入することにより、イミダゾリン環の熱的な安定性が向上することになるため、ガス発生も少ない。
【0011】さらには、電解液中で電気化学反応により水酸化物イオンが生じた場合にも、水酸化物イオンとN-C-Nのアミジン基との反応、分解開環により速やかに電解生成物が消失するため、コンデンサを構成する材料である樹脂やゴム、金属を劣化させたり、腐食させることはなくなる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0013】本発明の基本は、(化4)で示されるイミダゾリン化合物を陽イオン成分とする塩を電解質とした電解液である。」

第4 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
両者は、
「陽極タブ、陰極タブがそれぞれ接続された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して形成したコンデンサ素子に電解液を含浸し、該コンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納するとともに、該外装ケースの開口端部を封口体で封口してなる電解コンデンサにおいて、前記電解液として酸の共役塩基をアニオン成分とする塩からなる少なくとも1種の溶質を含む電解液を用い、前記陰極箔として少なくとも前記電解液中における電極電位が前記陰極タブよりも貴な電位を示す箔を用いたことを特徴とする電解コンデンサ。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]本願発明は、電解液として「四級化環状アミジニウムイオン」をカチオン成分としているのに対し、引用発明は、電解液として「テトラアルキルアンモニウムイオン」をカチオン成分としている点。

[相違点1について]
(a)刊行物2の【0004】には、「第4級アンモニウム塩を電解質とした電解液は、第4級アンモニウムの電気化学的な変質により、コンデンサを構成する材料である樹脂やゴム、金属を劣化させたり、腐食させる等の不具合があった。」と記載されるように、電解液として「テトラアルキルアンモニウムイオンをカチオン成分とした塩」を含む電解液に相当する「第4級アンモニウム塩」を電解質とした電解液を用いると、コンデンサを構成する材料である樹脂やゴム、金属を劣化させたり、腐食させる等の不具合があることが示されている。
(b)これを防ぐため、刊行物2の【0011】?【0013】には、N-C-Nのアミジン基を有するイミダゾリン化合物を陽イオン成分とする、すなわち四級化環状アミジニウムイオンをカチオン成分とする塩を電解質とした電解液を用いることが記載されている。
(c)よって、引用発明において、電解液として「テトラアルキルアンモニウムイオン」をカチオン成分とする代わりに、電解液として「四級化環状アミジニウムイオン」をカチオン成分とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(d)なお、請求人は、審判請求書の3頁14?19行の記載において、「してみると、陰極箔として少なくとも電解液中における電極電位が陰極タブよりも貴な電位を示す箔を用いて4級アンモニウム塩の液出防止を達成した電解コンデンサである引用文献1に、そもそも電解液の液出のない四級化イミダゾリン化合物を陽イオン成分とする塩を電解質とした引用文献2の電解液を組み合わせる必要性はない、すなわち、引用文献2では通常の陰極箔で十分に液出は防止され、当業者であればこのような電解コンデンサを想到することはない。」と主張している。
しかし、引用文献2(刊行物2)の技術による液失防止の効果も完壁というものではなく、従来技術に対する相対的なものと考えられ、引用文献1(刊行物1)又は引用文献2(刊行物2)それぞれの技術を単独で用いて電解コンデンサを製造して長期間使用してみれば、電解液の液出を完全に防止することができないことは、当業者が容易に分かることであるから、電解液の液出を防止するための異なる技術である引用文献1(刊行物1)と引用文献2(刊行物2)の技術を組み合わせて液出防止効果をより十全なものとすることは、当業者に普通に期待できることである。したがって、上記請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-05 
結審通知日 2010-02-10 
審決日 2010-02-23 
出願番号 特願平9-228916
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸本 泰広  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 大澤 孝次
橋本 武
発明の名称 電解コンデンサ  
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