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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B |
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管理番号 | 1215761 |
審判番号 | 不服2008-3422 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-02-14 |
確定日 | 2010-04-30 |
事件の表示 | 特願2004-216697「冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 9日出願公開、特開2006- 38306〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成16年7月26日の出願であって、平成20年1月10日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月15日)、これに対し、平成20年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成20年3月17日付けで明細書の発明の詳細な説明の手続補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、平成20年3月17日付けの手続補正書により補正された明細書、及び、図面の記載からみて、平成19年9月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 圧縮機、四方弁、空気熱交換器、膨張装置及び利用側熱交換器を冷媒配管で接続して冷凍サイクルを形成し、冷温水をつくる冷凍装置において、 前記利用側熱交換器はプレート式熱交換器であって、前記冷凍サイクルを流れる冷媒はR407Cであり、 前記空気熱交換器と前記膨張装置とを接続する前記冷媒配管途中に補助熱交換器を配置し、該補助熱交換器の入口側又は出口側であって、かつ前記補助熱交換器と前記膨張装置とを接続する前記冷媒配管途中から分岐して前記補助熱交換器を通り、前記四方弁と前記圧縮機の吸入側を接続する前記冷媒配管の途中に接続される分岐配管を設け、該分岐配管の分岐部と前記補助熱交換器との間に補助熱交換器用膨張装置を設けたことを特徴とする冷凍装置。」 2.引用文献 原査定の拒絶の理由に用いられた、特開平11-118266号公報(以下「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 イ.「【発明の属する技術分野】この発明は、冷媒回路に関する。」(段落【0001】) ロ.「【発明の実施の形態】以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。 〔第1実施形態〕図1に、この発明の冷媒回路の第1実施形態を示す。この実施の形態は、室内熱交換器1,閉鎖弁2,四路切換弁3,圧縮機5,室外熱交換器6,ブリッジ整流回路7,レシーバ8,主膨張弁10,閉鎖弁11を備えている。上記閉鎖弁2は、室内熱交換器1と四路切換弁3との間に接続されている。また、上記室外熱交換器6は、上記四路切換弁3とブリッジ整流回路7との間に接続されている。また、上記閉鎖弁11はブリッジ整流回路7と室内熱交換器1との間に接続されている。 そして、上記圧縮機5は、吸入側5Aが四路切換弁3の第1端3Aに接続されており、吐出側5Bが四路切換弁3の第3端3Cに接続されている。また、上記レシーバ8は、その上部8Aが上記ブリッジ整流回路7の第3端7Cに接続されており、その底部8Bが過冷却熱交換器15の被冷却配管15Aに接続されている。この被冷却配管15Aは、主膨張弁10に接続されている。また、この主膨張弁10は、ブリッジ整流回路7の第1端7Aに接続されている。そして、この主膨張弁10と上記第1端7Aとの接続配管17と上記レシーバ8の上部8Aとの間には連絡キャピラリ20が接続されている。また、上記接続配管17には、過冷却用の感温筒式膨張弁21が接続され、この膨張弁21は過冷却熱交換器15の冷却配管15Bに接続されている。そして、この冷却配管15Bは、圧縮機5の吸入側5Aに接続されている。上記過冷却熱交換器15と感温筒式膨張弁21とが過冷却回路30を構成している。 上記ブリッジ整流回路7は、その第1端7Aから第2端7Bに向かって順方向の逆止弁25と、第2端7Bから第3端7Cに向かって順方向の逆止弁26と、第3端7Cから第4端7Dに向かって逆方向の逆止弁27と、第4端7Dから第1端7Aに向かって逆方向の逆止弁28とで構成されている。 上記構成の冷媒回路によれば、上記四路切換弁3が図1の実線経路を形成しているときには、冷房動作を行う。すなわち、圧縮機5が吐出した冷媒は、四路切換弁3を経由して室外熱交換器6に送出され、この室外熱交換器6で放熱する。次に、上記室外熱交換器6で冷やされた冷媒は、ブリッジ整流回路7の第4端7Dから逆止弁27に流入し、第3端7Cからレシーバ8の上部8Aに流入する。そして、このレシーバ8を経て液相となった冷媒は、過冷却熱交換器15の被冷却配管15Aに流入して、冷却配管15Bを流れる冷えた冷媒によってさらに冷やされて過冷却される。次に、この過冷却された冷媒は、主膨張弁10で膨張してから、接続配管17の分岐点17Aで、ブリッジ整流回路7の第1端7Aに向かうメイン流と過冷却用の感温筒式膨張弁21に向かう過冷却流とに分岐する。この過冷却流は、上記感温筒式膨張弁21で膨張されてから過冷却熱交換器15の冷却配管15Bに流入して、被冷却配管15Aを流れる冷媒から熱を奪ってから、圧縮機5の吸入側5Aに流入する。 一方、上記メイン流は、ブリッジ整流回路7の第1端7Aから流入して逆止弁25を経て第2端7Bから流出し、さらに閉鎖弁11を経て室内熱交換器1に達し、この室内熱交換器1で吸熱してから、閉鎖弁2を経由して、四路切換弁3の第2端3B,第1端3Aを経て、圧縮機5の吸入側に流入する。 また、上記四路切換弁3が図1の破線経路を形成しているときには、暖房動作を行う。すなわち、圧縮機5が吐出した冷媒は、四路切換弁3を経由して室内熱交換器1に送出され、この室内熱交換器1で放熱する。次に、上記室内熱交換器1で冷やされた冷媒は、ブリッジ整流回路7の第2端7Bから逆止弁26に流入し、第3端7Cからレシーバ8の上部8Aに流入する。そして、このレシーバ8を経て液相となった冷媒は、過冷却熱交換器15の被冷却配管15Aに流入して、冷却配管15Bを流れる冷えた冷媒によってさらに冷やされて過冷却される。次に、この過冷却された冷媒は、主膨張弁10で膨張してから、接続配管17の分岐点17Aで、ブリッジ整流回路7の第1端7Aに向かうメイン流と過冷却用の感温筒式膨張弁21に向かう過冷却流とに分岐する。この過冷却流は、上記感温筒式膨張弁21で膨張されてから過冷却熱交換器15の冷却配管15Bに流入して、被冷却配管15Aを流れる冷媒から熱を奪ってから、圧縮機5の吸入側5Aに流入する。 一方、上記メイン流は、ブリッジ整流回路7の第1端7Aから流入して逆止弁28を経て第4端7B(7Dの誤記と認められる。)から流出し、室外熱交換器6に達し、この室外熱交換器6で吸熱してから、四路切換弁3の第4端3D,第1端3Aを経て、圧縮機5の吸入側に流入する。・・・<中略>・・・上記過冷却回路30が主膨張弁10の下流から分岐している・・・<中略>・・・ また、この実施の形態では、四路切換弁3を冷房位置(実線)にすれば、冷媒を圧縮機5から室外熱交換器6,整流回路7,レシーバ8,主膨張弁10,室内熱交換器2の順に流して、冷房を行える。一方、四路切換弁3を暖房位置(破線)にすれば、冷媒を圧縮機5から室内熱交換器6,整流回路7,レシーバ8,主膨張弁10,室外熱交換器6の順に流して暖房を行える。さらに、上記冷房時,暖房時の両方において、上記過冷却回路30を働かせて、過冷却による能力向上を図れる。また、この実施の形態では、上記感温筒式膨張弁21の感温筒21Aでもって、過冷却熱交換器15の出口での冷媒温度を検出し、この冷媒温度の高低に応じて、感温筒式膨張弁21の開度を大小に調節して、過冷却度を所定の値に維持できる。」(段落【0037】から【0046】) ハ.「〔第6実施形態〕次に、図3(B)に、この発明の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、主膨張弁10の上流側から過冷却回路30が分岐している点だけが、第1実施形態と異なる。この第6実施形態では、主膨張弁10の開度変化が過冷却回路30の過冷却度に影響を与えることを抑制できる。」(段落【0059】) ニ.「また、上記実施の形態では、冷媒としてR407Cを用いたが、R22等他の冷媒を使用しても良い。もっとも、R407Cを用いた場合には、R407C(非共沸混合冷媒)の特徴を最大限に生かして、過渡時の信頼性を飛躍的に向上できると共に、能力とCOPを向上できる。」(段落【0064】) ホ.引用文献に記載されたものは、圧縮式冷凍装置を用いて、冷房動作及び暖房動作を行うものであるから、冷凍装置に関するものである。 ヘ.引用文献に記載されたものは、蒸発器として作動する熱交換器に流れる冷媒を過冷却することから、蒸発器として作動する熱交換器の冷媒入口側での温度を低くでき、被冷却流体との温度差を大きく確保できるので、冷媒と被冷却流体との熱交換効率を向上できることは明らかである。 また、引用文献に記載されたものは、冷媒と被冷却流体との熱交換効率を向上できることから、蒸発器として作動する熱交換器を流れる冷媒の流量を減少させることができ、蒸発器として作動する熱交換器での圧力損失を小さくすることが可能となることは明らかである。 よって、上記イないしヘ、図1、及び、図3(B)からみて、引用文献には次の発明(以下「引用文献記載の発明」という。)が記載されている。 「圧縮機、四路切換弁、室外熱交換器、主膨張弁及び室内熱交換器を冷媒配管で接続して冷媒回路を形成し、冷房動作及び暖房動作を行う冷凍装置において、 前記冷媒回路を流れる冷媒はR407Cであり、 前記室外熱交換器と前記主膨張弁とを接続する前記冷媒配管途中に過冷却熱交換器を配置し、該過冷却熱交換器の出口側であって、かつ前記過冷却熱交換器と前記主膨張弁とを接続する前記冷媒配管途中から分岐して前記過冷却熱交換器を通り、前記四路切換弁と前記圧縮機の吸入側を接続する前記冷媒配管の途中に接続される過冷却回路の配管を設け、該過冷却回路の配管の分岐部と前記過冷却熱交換器との間に過冷却用の感温筒式膨張弁を設けた冷凍装置。」 3.対比 本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、 引用文献記載の発明における「四路切換弁」は本願発明における「四方弁」に相当し、同様に「室外熱交換器」は「空気熱交換器」に、「主膨張弁」は「膨張装置」に、「室内熱交換器」は「利用側熱交換器」に、「冷媒回路」は「冷凍サイクル」に、「過冷却熱交換器」は「補助熱交換器」に、「過冷却回路の配管」は「分岐配管」に、「過冷却用の感温筒式膨張弁」は「補助熱交換器用膨張装置」に、それぞれ相当する。 そして、引用文献記載の発明における「冷房動作及び暖房動作を行う」と本願発明における「冷温水をつくる」とは、共に「冷却及び加熱を行う」点で一致している。 よって両発明は 「圧縮機、四方弁、空気熱交換器、膨張装置及び利用側熱交換器を冷媒配管で接続して冷凍サイクルを形成し、冷却及び加熱を行う冷凍装置において、 前記冷凍サイクルを流れる冷媒はR407Cであり、 前記空気熱交換器と前記膨張装置とを接続する前記冷媒配管途中に補助熱交換器を配置し、該補助熱交換器の出口側であって、かつ前記補助熱交換器と前記膨張装置とを接続する前記冷媒配管途中から分岐して前記補助熱交換器を通り、前記四方弁と前記圧縮機の吸入側を接続する前記冷媒配管の途中に接続される分岐配管を設け、該分岐配管の分岐部と前記補助熱交換器との間に補助熱交換器用膨張装置を設けた冷凍装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本願発明が、冷温水をつくる冷凍装置であるのに対し、 引用文献記載の発明が、冷房動作及び暖房動作を行う冷凍装置である点。 相違点2 利用側熱交換器が、 本願発明においては、プレート式熱交換器であるのに対し、 引用文献記載の発明においては、どのような熱交換器であるのか不明な点。 4.判断 相違点1について 本願の出願前、冷却及び加熱を行う冷凍サイクルを、冷房動作及び暖房動作を行う冷凍装置に用いることも、冷温水をつくる冷凍装置に用いることも例をあげるまでもなく周知であるから、引用文献記載の発明の、冷房動作及び暖房動作を行うための利用側熱交換器に換えて、冷温水をつくるための利用側熱交換器を用いた点は、当業者が容易になし得たことである。 相違点2について 本願の出願前、冷凍装置の分野において、プレート式熱交換器を用いて、冷媒と水との間の熱交換を行うことは、例をあげるまでもなく周知であるから、引用文献記載の発明の冷媒回路を、冷温水をつくるために用いる場合に、利用側熱交換器としてプレート式熱交換器を採用した点は、当業者が容易になし得たことである。 しかも、本願発明は、引用文献記載の発明、及び、周知の技術事項から当業者が予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-02-24 |
結審通知日 | 2010-03-02 |
審決日 | 2010-03-18 |
出願番号 | 特願2004-216697(P2004-216697) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田々井 正吾、川上 佳、マキロイ 寛済 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
清水 富夫 佐野 遵 |
発明の名称 | 冷凍装置 |
代理人 | 井上 学 |