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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B64C 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B64C |
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管理番号 | 1215823 |
審判番号 | 不服2008-12566 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-05-16 |
確定日 | 2010-04-26 |
事件の表示 | 特願2005-156343号「垂直離着陸自在機「ウィン・ロータ」(WingRotary)」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月24日出願公開、特開2006-315642号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」という。)は、平成17年 4月26日の出願であって、平成20年 4月 9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年 5月16日に本件審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正(前置補正)がなされ、当審合議体による平成21年 3月10日付けの拒絶理由通知に応答して、平成21年 5月12日付けで手続補正がなされ、平成21年 8月 7日付けで意見書が提出されたものである。 なお、平成21年 5月12日付け提出の意見書は、平成21年 8月28日付けで却下された。 2 当審の判断 2.1 特許法等の規定 特許法第36条は次のように規定している。 「特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。 一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所 二 発明者の氏名及び住所又は居所 2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。 3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。 一 発明の名称 二 図面の簡単な説明 三 発明の詳細な説明 4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。 一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。 (第二号省略) 5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。 (第6項?第7項省略)」 なお、上記特許法第36条第4項1号でいう「経済産業省令で定めるところ」とは、「特許法第三十6条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」(特許法施行規則24条の2)のことである。 2.2 本願発明、本願の明細書の詳細な説明、及び図面の記載 本願は、平成21年 5月12日付けで「特許請求の範囲」、「明細書」及び「図面」について手続補正がなされた。当該補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 (1)本願発明 本願の請求項1?8に係る発明は、平成21年 5月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。 「【請求項1】 飛行物体の左右両側(又は中央)に多数の平行回転翼を収容する軌道を設け、回転翼両端の(又は中央)前部でチェーン等の駆動部に一定間隔で固定連結し、これを主軸として主軸用軌道内を回転させる。 飛行物体の全体を覆う形で回転翼面を平行回転させ、該回転翼の後部を支持するベアリング、タイヤ等の副軸又は中央軸等の通る軌道から構成される。 揚力発生機構の上部軌道壁を飛行本体と分離する事により、軌道壁の後半の回転翼上昇部及び前半の下降部に於いても回転翼後部副軸等は前後翼同士を連結していないので、副軸軌道の任意な位置設定によって揚力発生が出来る装置及びチェーン等の駆動装置を有し、それを駆動できる装置を別途適当な位置に設置した垂直離着陸自在機である。」 (以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) (2)本願の明細書の発明の詳細な説明の記載 平成21年 5月12日付け手続補正書により補正された本願の明細書のうち、「発明の詳細な説明」に関する記載は、本願の明細書の「発明の名称」及び「図面の簡単な説明」を記載した段落を除く、次のとおりである。 「 【技術分野】 【0001】 本発明は滑走路を必要としない垂直離着陸機に関し、特に、軌道壁を飛行本体と上下に分離した軌道において、多数の平行回転する翼の回転動作により発生する風力の作用によって揚力を得る垂直離着陸自在機に関するものである。 【背景技術】 【0002】 現在利用されている飛行機は長い滑走路を有する飛行場でないと利用できない為、飛行場は広大な面積を必要としている。又ジェットエンジン等の騒音問題も生じている。一方、垂直離着陸できる乗物としてはヘリコプターがあるが、大きなプロペラ回転翼を必要とするために、エンジンの騒音、翼端の超音速振動や砂塵巻き上げ問題が生じている。 【0003】 ヘリコプターの円回転翼では軸の中心付近では低速の為揚力は発生せず、末端付近では超音速スピードになり、揚力は回転翼半径の約1/3でしか発生していない。そのうえ、前傾姿勢で前進している時は円運動の半分の後退翼は前進、揚力発生を妨害している。本発明は平行移動回転翼のため、ヘリの翼半径の約1/3付近の面風速以下の回転で、有効揚力発生面積は数倍も大きいので最大の揚力を発生させる事が可能です。 【0004】 仏国特許第867442号明細書には、多数の翼を組み合わせ、翼を平行回転する航空機に関する発明が開示されている。(特許文献1)同様な方法は国際特許公開WO79/00945号公報にも示されている。(特許文献2) しかしながら、ここで開示されている方法は軌道や個々の軸を固定し一定角度により揚力を発生する方法で、且つ戦車のキャタピラーの固定した構造に類似している。 各々の回転翼が自由な角度に設定できて最適な揚力を発生させる本発明とは違う方法である。公開特許は多数の翼から構成された物を飛行機主翼の上部一部や機体側面に設置したりするタイプのもので、回転時に得られる揚力の大きさに限度があり、本発明の回転翼は飛行物体の全体を覆い、最大の面積で揚力を発揮するこの形式とは全く異なる。 【特許文献1】FR第867442号公報 【特許文献2】WO79/00945号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 長い滑走路を必要とせず、しかも大きな騒音の発生しない垂直離着陸自在な航空機を提供し、尚、本体構造が単純で、躯体製作費用も安価で、大きな格納庫も必要としない垂直離着陸可能な航空機を提供することを課題とする。 地上、水上(雪上、砂漠)空中等を活躍の場所に出来る為、滑走路建設の困難な離島間交通や近距離自家用機としての利用。山林消火、農薬散布等には後退翼軌道外側水密部のその下にタンクを設置すれば風波が立っていても水面を滑走の必要が無く、安全に作業が出来る。又、雪山遭難時には転落した人の横斜面に軟着陸して機内に側近から収容出来き、人命救助が迅速に解決出来る。 【課題を解決するための手段】 【0006】 翼の前部に主軸を取り付け、両サイド(又は中央)に設けたチェーン等の駆動装置に固定し、回転翼とする。このような回転翼をお互いが重なり合うことがない距離間隔で多数設置し、該駆動装置を駆動可能な状態で支え、且つ回転翼の後部部分にて翼を支えるベアリング、タイヤ等の副軸又は中央軸等を通過させる軌道壁を飛行物体の両側(又は中央)に取り付ける。 最大の揚力を確保する為に上部軌道壁を飛行本体と上下に分離し、且つ回転翼は飛行物体の全体を覆い、最大の面積で揚力を発揮するようにした。 チェーン等を駆動できる装置を別途適当な位置に設置し、チェーンを駆動した場合に、それぞれの回転翼が回転をすることによって、風力による揚力を発生する。この事により機体加重より大きな揚力に達した時に浮上し、機体加重と揚力がバランスした場合には空中に停止し、機体加重が揚力より大きい場合は下降するという原理に基づいて、ほぼ垂直に離着陸可能な航空機を提供できる事を見い出した。 【発明の効果】 【0007】 本体構造が大変単純で、躯体制作費も大幅に削減可能で、且つ小馬力の動力で飛行することができ、離着陸に大きな場所を必要とすることもないので、近距離用及び自家用航空機として利用できる。 【産業上の利用可能性】 【0008】 広大な滑走路を伴う飛行場を必要とせず、ジェットの様な騒音が無く、ヘリコプターの様な複雑な機構が無く、庭先から離陸しても砂塵を巻き上げないので、平面交通の為事故が多発している自動車に代わって、次世代自家用機として最適である。 本機はヘリコプターの様に地面(水面)に風圧を吹き掛けないし、飛行艇の様に離着陸に水面を滑走する必要がない。よって、駆動装置、下方の回転翼等は機体内にあり、機体下部(後退翼軌道外側)全体をボートの様に防水水密にする事により、空中飛行は勿論、滑走路不要の為に自宅庭先、水草の繁った湖、雪上斜面、砂漠等あらゆる場所から垂直離着陸が自由自在に行う事が出来る、三位一体型の新規航空機である。 水密にする事により、その下にタンクを設置し、山林消火農薬散布等に利用でき、垂直離着陸のメリットで風波の荒天でも飛行艇より迅速に対応出来る。 連結機は大量に貨物が輸送できるので、工場から他の工場へ直接部品の搬送が短時間で出来る。他のメリットとして、連結機体間の固定翼は上昇、下降時に揚力を調整補助したり、前後の重量バランスをスライドさせて調整等を行うことが出来る。 旋回時の安定、又は左右バランスの為に左、右機体の回転翼の回転数を可変調整出来る。又、この連結機の場合、操縦室を独立別区画にする事が出来る。」 (3)本願の図面の記載 平成21年 5月12日付け手続補正書により補正された本願の図面には、【図1】?【図18】が記載されており、本願の明細書の【0009】段落には、【図面の簡単な説明】として、以下のように記載されている。 「 【図面の簡単な説明】 【0009】 【図1】単機の右上前から見た全体図 【図2】二台連結機から回転翼を省略して、左上後から見た全体図 【図3】翼断面の4図。主軸、副軸、中央軸等の色々な取付位置、方法を示す。 【図4】副軸の直線自在溝と曲線自在溝を示す。 【図5】主軸、副軸式の回転翼平面(S=3/10)、及び断面図見本です。 【図6】中央凹面回転翼の平面、正面、側断面図見本です。 【図7】上図は回転翼の方向転換を行わない場合の回転軌道図です。(左前方、右後方) 下図は回転翼の下方後退時(左側)と上方前進に切り替わる時点(右側)で方向転換を行う場合の回転軌道図です。 【図8】スイング用副軸軌道図。 【図9】前進通過畤の上下に分かれた主軸、副軸分離軌道図。 【図10】上図は回転翼の前進下降時の第2副軌道図です。前進下降用副軸軌道を前方に移し、揚力の方向が前方、前進に向く様にしたもの。下図は二連結機間の中間固定翼を示す断面図。揚力補助、離着陸調整及び前後のバランス調整翼。 【図11】「左」は回転翼約半分の平面図です。「中」は上仕切隔壁板で、「右」は下仕切隔壁板で、上下翼表面の空気速度を均一にしてバイパス部に開放する。 【図12】単機の回転翼を左後方から見た姿図です。 【図13】中央軌道式壁(図上それぞれの中央軌道式回転翼を連結してセットする)の後ろから見た図 【図14】上図はバイパス部内の固定翼を除いた圧縮空気噴出口図です。下図は固定翼の付いたバイパス部です。 【図15】上図は圧縮空気噴出状態の圧縮空気噴出口図です(上部流入口筒の一部カット)。下図は閉鎖し内部接触面が膨張した水密状態。 【図16】単機の軌道壁を除いて出入口ドアをオープンし、ステップが手前に引き出された状態。又外側水密区画部と内側居住区画部を分離した図。(軌道壁、回転翼除く) 【図17】単機の少人数用に内側居住区画部を縮小した図。(軌道壁、回転翼除く) 【図18】右旋回時にサイド前翼と上方軌道壁下部の固定翼を対地平行に保った状態。(回転翼除く)」 2.3 発明の詳細な説明の記載についての検討 上記2.1で述べたとおり、特許法36条第4項では、発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならない旨規定しており、以下、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載が、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かについて検討する。 本願発明は、上記2.1の(1)での認定及び上記2.1の(2)で摘記した【0001】段落より明らかなとおり、「垂直離着陸自在機」に関するものである。 本願発明が「垂直離着陸自在機」に関するもの、すなわち、物の発明である以上、「本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載」するとは、当該「垂直離着陸自在機」を製造することができる程度に記載するということであり、製造することができるためには、どのように作るかについての具体的な記載を行うかまたは、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき製造できることを要するものである。一方で、当業者が、技術常識を考慮してもどのように作るか理解できない場合、例えば、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるときは、「本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載」したものとはいえないことは明らかである。 そして、上記2.1の(2)で摘記した本願の明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、【0001】段落は技術分野、【0002】段落?【0004】段落は背景技術、【0005】段落は発明が解決しようとする課題、【0007】段落は発明の効果及び【0008】段落は産業状の利用可能性について、それぞれ記載したものであり、本願発明に係る当該「垂直離着陸自在機」の構成について説明を行っている記載は、【0006】段落のみであることが明らかである。 (1)垂直離着を行うことができるものとしての実施可能要件について 本願発明に係る垂直離着陸自在機は、垂直離陸を行うことができる垂直離着陸自在機であるものと認められる。しかしながら、【0006】段落の記載及び図面では、本願発明に係る垂直離着陸自在機は当業者といえども、垂直離陸を行うことができるものとしては到底実施することはできない。すなわち、【0006】段落の記載からは「それぞれの回転翼が回転をすることによって、風力による揚力を発生する」ことまでは把握をすることができるが、機体荷重(機体加重)より大きな揚力を得ることができるのかまたは、いかにして得るのかについては不明であり、また、機体には機体荷重(機体加重)のほかに、着陸状態から浮上する際に発生する機体の空気抵抗が存することが明らかであるが、当該空気抵抗について考慮を行っていない。また、【図1】?【図18】の記載からは、本願発明に係る垂直離着陸自在機の形状的な特徴について一応は把握することができるものの、機体荷重(機体加重)より大きな揚力を得ることができるのかまたは、いかにして得るのかについては不明である。 したがって、本願発明に係る垂直離陸を行うことができる垂直離着陸自在機は、当業者といえども、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき製造できるものではないことは明らかである。 さらに、前記「機体荷重(機体加重)より大きな揚力を得ることができるのかまたは、いかにして得るのか」という点に関連し、本願発明の発明特定事項である「飛行物体」、「平行回転翼」、「軌道」及び「駆動できる装置」をいかに構築し、どの程度の重量となるのか、及び、平行回転翼の大きさ及び回転速度等をいかに規定し、どの程度の揚力となるのかについて不明であり、垂直離陸を行うことができる垂直離着陸自在機をどのように作るかについての具体的な記載が行われているものではなく、かつ、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき製造できるものでもない。 よって、本願の明細書の詳細な説明は、本願発明に係る垂直離陸を行うことができる垂直離着陸自在機について当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載しているとは認められない。 (2)回転翼上昇部及び下降部の、副軸軌道の任意な位置設定による揚力発生についての実施可能要件について 本願発明に係る垂直離着陸自在機は、回転翼上昇部及び下降部の、副軸軌道の任意な位置設定による揚力発生がなされる垂直離着陸自在機であるものと認められる。しかしながら、【0006】段落の記載のみでは、本願発明に係る垂直離着陸自在機は当業者といえども、回転翼上昇部及び下降部にて副軸軌道の任意な位置設定によって揚力発生するものとしては到底実施することはできない。すなわち、【0006】段落の記載でからは、回転翼上昇部及び下降部において回転翼の傾斜角度をどの程度とするのか、及び副軸軌道をいかに構成するのかについて不明である。また、【図1】?【図18】の記載からは、本願発明に係る垂直離着陸自在機の形状的な特徴について一応は把握することができるものの、回転翼上昇部及び下降部において回転翼の傾斜角度をどの程度とするのかについては不明である。 したがって、本願発明に係る、回転翼上昇部及び下降部の、副軸軌道の任意な位置設定による揚力発生がなされる垂直離着陸自在機は、当業者といえども、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき製造できるものではないことは明らかである。 (3)審判請求人の主張について 当審合議体による平成21年 3月10日付けの、本願明細書の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないことを拒絶の理由として通知した拒絶理由通知に応答して、審判請求人は、平成21年 8月 7日付けで意見書を提出した。 当該平成21年 8月 7日付け意見書の内容は、平成21年 3月10日付け拒絶理由通知の内容に直接的には対応していない。しかしながら、平成21年 3月10日付け拒絶理由通知にて指摘した特許法第36条第4項に規定する要件に関連する主張として、以下のような主張を行っている。 「{理由A}に付いての意見 1.手続補正書【技術分野】0001?0004の説明の様に、回転翼後部の副軸又は中央軸等の軌道上の回転方法、揚力発生仕組みは、 各全体図(以後図1?3の様に参照の事)に表示している様に露出軌道を下部本体(後退揚力減衰軌道)と上下に分離し、副軸等は露出軌道で(図8,11,21)最適な揚力が発生する位置に設置し、且つ副軸等には(図22?24)タイヤ等を付けて前後の回転翼同士を連結せず、場所によっては主軸とは別の軌道を走行させる事により(図26?28)後方上昇軌道では上方やや後方へ、上方前進軌道では一般航空機同様に上方へ、前方下降軌道では上方やや前方へ揚力は発生し、上昇等が可能に為る。 又、左右両側に軌道壁を構成した形態(図22?24)ではチェーン等で牽引する主軸は外側に、フリーの副軸等は内側を走行する循環軌道に設定し、チェーン等に副軸等が交差しない様にする。上部露出軌道に於いて(図22?24)主軸はチェーン等で連結、動力を別途位置に設置して牽引し、回転翼を等速循環させる。 よって、最大の揚力が発生して垂直離着陸をはじめ飛行が可能になる。」 当該主張を参酌しても、機体荷重(機体加重)より大きな揚力を得ることができるのかまたは、いかにして得るのかについては不明であり、また、回転翼上昇部及び下降部において回転翼の傾斜角度をどの程度とするのかについては不明である。 したがって、本願発明に係る垂直離着陸自在機は、当業者といえども、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき製造できるものではないことは明らかである。 なお、審判請求人は平成19年7月22日付け手続補正書にて、揚力計算式を示し揚力の発生についての説明を行っているが(該手続補正書【0003】段落。なお、当該記載を明細書に加筆する補正は、拒絶査定時にも指摘したとおり、認めることはできない。)、当該揚力計算式を参酌したとしても、揚力を得ることができるところまでは把握することができるが、垂直離陸を行うことができるものとして十分に説明できているとは認められない。すなわち、本願発明の発明特定事項である「飛行物体」、「平行回転翼」、「軌道」及び「駆動できる装置」をいかに構築し、どの程度の重量となるのかについて不明であるとともに、揚力の程度については一応の計算式が示されているものの、当該計算式中には不明りょうな部分が存在する(計算式中には少なくとも以下の3点について不明りょうな点が存在する。 1.翼の速度Km/hをm/sに換算する部分において誤計算が存在する。すなわち、時速40Km/h=123.44(m/s)となっているが、正しくは11.11(m/s)であるものと認められる。 2.C_(L)(揚力係数)の値をいかに算出したのか不明である。 3.揚力は、1/2・ρ[Kg/m^(3)]・V[m/s]^(2)・S[m^(2)]・C_(L)[無次元]=L[Kg・m/s^(2)]で求められるものと認められるが、計算式中ではLを[Kg]で表しており、重力加速度について考慮がなされていないものである。)ものであり、実際にどの程度の揚力を想定すべきであるのかについて明確に把握することができない。したがって、当該説明を参酌しても、機体荷重(機体加重)より大きな揚力を得ることができるのかまたは、いかにして得るのかについては不明であり、本願発明に係る垂直離着陸自在機は、当業者といえども、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき製造できるものではないことは明らかである。 3 むすび 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明(請求項1に係る発明)を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-13 |
結審通知日 | 2010-02-02 |
審決日 | 2010-02-16 |
出願番号 | 特願2005-156343(P2005-156343) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
WZ
(B64C)
P 1 8・ 536- WZ (B64C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉山 悟史 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
金丸 治之 高木 彰 |
発明の名称 | 垂直離着陸自在機「ウィン・ロータ」(WingRotary) |