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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60P |
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管理番号 | 1215826 |
審判番号 | 不服2009-7832 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-10 |
確定日 | 2010-04-26 |
事件の表示 | 平成10年特許願第372415号「定温・遮光輸送用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月11日出願公開、特開2000-190773〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年12月28日の出願であって、その各請求項に係る発明は、平成20年7月22日付けの手続補正に係る明細書の特許請求の範囲の請求項1から4に記載された事項によって特定されるものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりである。 「【請求項1】ほぼ中央部に位置する基布(3)と、その上下に位置する第1・第2ポリウレタン樹脂層(1)(5)と、前記基布と前記ポリウレタン樹脂層の間に位置する第1・第2接着剤層(2)(4)の、少なくとも5層からなり、 前記第2接着剤層(4)が透明ポリウレタン接着剤である ことを特徴とする定温・遮光輸送用シート。」 (以下、「本願発明」という) 2.引用例の記載事項 (1)原査定の拒絶理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表平8-511743号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。 a:「【特許請求の範囲】 1.以下の構成要素を含んで成る多層製品: (i)第1及び第2面を有する織物 (ii)前記織物の第1面上に配置された第1シート及び前記織物の第2面上に配置された第2シート、前記第1シートはポリマー層A及びBとを含んで成り、前記第2シートはポリマー層A’及びB’を含んで成る、但し: ポリマー層A及びA’の各々は85未満のショアーA硬度を有する非塩素化コポリマーを含み; ポリマー層B及びB’の各々は85を超えるショアーA硬度を有する非塩素化ポリマーを含み;並びに ポリマー層A及びA’は前記織物と前記層B及びB’との間にそれぞれ配置されている。」(特許請求の範囲 請求項1、図1?5) b:「【発明の詳細な説明】 高強度の非塩素化多層ポリマー製品 発明の分野 本発明は可撓性非塩素化ポリマー製品及びこのような多層製品を使用した巻取り式看板及びトラックカバーに関する。 発明の背景 織物の各々の面に固定された可塑化ポリ塩化ビニル(可塑化PVC)層を有する織物を含んで成る可撓性製品は公知である。これらの製品は比較的優れた耐屈曲亀裂性(周囲温度、特に低い周囲温度での繰返屈曲に対して耐えうる製品の性能に関する特性)を示す。また、可撓性PVC含有製品は優れた耐候性を示し、ポリマーを通じて容易に着色される性能及びその外面上にインクで書き込まれうる性能を有する。これらの特性はPVCの価格が比較的低いことと相伴って、可撓性PVC含有製品の広範囲での使用を促進してきた。可撓性PVC含有製品の多くの有用性のうちの幾つかには、トラック又はトラックトレーラー、屋外旗、天幕、詰物及び再帰反射性巻取り式看板に使用するために必要な寸法に調整された装着カバーがある。可撓性PVC含有製品は非常に広範囲で使用されてきたが、環境的観点からこれらの製品はあまり望ましくない。 埋立地が少なくなるに従い、PVCを含有する製品を焼却によって処分する傾向が増大してきた。PVCの焼却により塩酸が生じる。塩酸が大気中に入り、酸性雨が発生することが恐れられている。PVCが地方自治体の焼却炉で焼却された場合に、ダイオキシン及びフランが遊離することも恐れられている。環境に対して潜在的に有害であることにより、PVCを禁止するための討論が多くの国で進行中である。」(5ページ1?23行) c:「本発明の多層製品は優れた耐屈曲亀裂性を示し、汚れの付着も非常に少なく、塩素含有ポリマーを使用していないことによりPVC含有製品に取って代わる環境に優しい製品を提供する。」(7ページ17?19行) d:「図1は、本発明の多層製品10の例を表す。多層製品10は、織物12の第1及び2面上に配置された第1及び第2ポリマーシート14及び16を有する織物12を含んでなる。シート14及び16は、ポリマー層A及びA’並びにポリマー層B及びB’を含む。ポリマー層B及びB’は、織物12と接する側とは反対側でポリマー層はポリマー層A及びA’にそれぞれ固定されている。」(8ページ15?19行) e:「織物12は、製品10の内部(第2及び3寸法)の全体にわたって広がっていることが好ましい。織物12は織布又は不織布構造のいずれでもよく、多孔質構造を有することが好ましい。「多孔質」なる用語は、織物に向かい合って位置するポリマー層を互いに結合させるのを可能にするのに十分な大きさの細孔又は開放構造を有する織物を意味する。好ましくは、織物の少なくとも20%は多孔質であり、より好ましくは織物の50?80%が多孔質である。該織物は、好ましくは十分な番手及び打込数を有することによって、好ましい値の引張強さ及び引裂強さを多層製品10に与える。織物12を、織物分野で公知の材料から製造することができる。このような材料には、ポリエステル、ナイロン、テレフタレート(PET)、及びポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンがある。」(9ページ2?12行) f:「ポリマー層A及びA’は同一又は異なっていることが可能であり、各々は第1コモノマーとしてエチレン単位を含む非塩素化コポリマーを含む。非塩素化コポリマーは、好ましくは非酸性であり、典型的には40?85重量%のエチレン単位を含み、好ましくは50?75重量%のエチレン単位を含み、及び少なくとも1種の第2コモノマーを含む。エチレンコポリマーに使用することができる第2コモノマーの例には、酢酸ビニルのようなエチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートのようなアクリレート、及びブテン、ヘキセン及びオクテン等の高級αオレフィン、並びにこれらの組み合わせ以外に、非酸性非塩素化エチレン系不飽和単官能性モノマーがある。」(9ページ21行?10ページ2行) g:「ポリマー層B及びB’は同一又は異なっていることが可能であり、各々は、85を超えるショアーA硬度、より好ましくは90を超えるショアーA硬度を有する非塩素化ポリマーを含む。ポリマー層B及びB’は、同時押出法、積層法(即ち、熱及び圧力下で層を互いに接着させる方法)、押出被覆法(即ち、一方の層を他方の層上に押出す方法)及び溶剤塗布法のような方法を用いることによりポリマー層B及びB’を層A及びA’に固定されることによりシート14及び16をそれぞれ形成する。積層法若しくは押出被覆法又はこれらに優れた結合を与えることが可能ないかなる他の方法を用いてシート14及び16を織物12に固定することができる。 ポリマー層B及びB’には、ポリ(エチレンーコーアクリル酸)(EAA)のような酸官能性ポリマー及びコポリマー、例えば、ミシガン州ミッドランド所在のDow Chemical Co.から入手可能なPRIMACOR(商標)3440、ポリ(エチレン-コ-メタクリル酸)(EMAA)、例えば、デラウェア州ウィルミントン所在のE.I.Dupont de Nemours社から入手可能なNUCREL(商標)035及びE.I.Dupont de Nemours社から入手可能なSURLYN(商標)1706のようなEMMAのイオン架橋型、マサチューセッツ州ウィルミントン所在のICI Americas社から入手可能なNEOCRYL(商標)のようなアクリルポリマー又はコポリマー;ICI Americas社から入手可能なNEOREZ(商標)のようなポリウレタン;低密度ポリウレタン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)及びE.I.Dupont de Nemours社から入手可能なエチレン単位を90重量%を超える量含有するELVAX(商標)750ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)コポリマーのようにエチレン単位を高い重量%(>85重量%)で含む非酸性ポリエチレンコポリマー;ポリプロピレン;並びにアルキド樹脂がある。好ましいポリマーには、酸官能性ポリマー及びコポリマー及びこれらのイオン架橋型並びにポリウレタンがある。前記ポリマーの組み合わせを使用してもよい。」(11ページ3?27行) h:「低い硬度を有する粘着性のポリマーから成る傾向を有するポリマー層A及びA’に対して、ポリマー層B及びB’は高い硬度の非粘着性表面を有する。」(11ページ28行?12ページ1行) 記載事項d及び図1によれば、織物は多層製品のほぼ中央部に位置し、その織物の上下にポリマー層B及びB’が位置している。 また、記載事項gによれば、ポリマー層B及びB’の材料として、ポリウレタンを用いることが記載されており、また、記載事項hによれば、ポリマー層A及びA’は粘着性のポリマーから成る傾向を有するものであるし、さらに、記載事項bによれば、ポリマー層B及びB’は、織物12と接する側とは反対側でポリマー層はポリマー層A及びA’にそれぞれ固定されているのであるから、ポリマー層A及びA’は接着の機能を有しているものと認められる。 そして、引用例に記載されている多層製品は、記載事項b及び図5によればトラックカバーとして用いられるものである。 これらの事項を考慮すると、引用例には以下の発明が記載されている。 「ほぼ中央部に位置する織物と、その上下に位置するポリウレタン樹脂層B及びB’と、前記織物と前記ポリウレタン樹脂層B及びB’の間に位置する粘着性のポリマーからなるポリマー層A及びA’の少なくとも5層からなるトラックカバー用シート。」(以下「引用発明」という。) 3.対比・判断 (1)引用発明と本願発明とを対比すると、引用発明の「織物」は、本願発明の「基布」に対応し、同じく「ポリウレタン樹脂層B及びB’」は「第1・第2ポリウレタン樹脂層」に、「粘着性のポリマーからなるポリマー層A及びA’」は、「第1・第2接着剤層」に、「トラックカバー用シート」は、「輸送用シート」にそれぞれ対応する。 (2)上記の対比関係からみて、本願発明と引用発明との間の一致点及び相違点は次のとおりであると認められる。 一致点:ほぼ中央部に位置する基布と、その上下に位置する第1・第2ポリウレタン樹脂層と、前記基布と前記ポリウレタン樹脂層の間に位置する第1・第2接着剤層の、少なくとも5層からなる輸送用シート。 相違点1:本願発明では、第2接着剤層が透明ポリウレタン接着剤であるのに対して、引用発明では、どのような接着剤層であるのか記載がない点。 相違点2:本願発明では、定温・遮光輸送用シートであるのに対して、引用 発明では、輸送用シートであるがその性質については、特に限定されていない点。 (3)上記の各相違点について検討する。 [相違点1について] 本願発明では、第2接着剤層が透明ポリウレタン接着剤であるが、接着剤として透明ポリウレタン接着剤は周知のものであり(例えば、拒絶査定において周知文献として示した特開平10-130946号公報、特開平1-272880号公報参照)、ポリウレタン樹脂層をポリウレタン接着剤で接着することも通常行われている事項である。 よって、引用発明において、基布とポリウレタン樹脂層とを接着する第2接着剤層の材料として透明ポリウレタン接着剤を用いることに何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることにすぎない。 [相違点2について] 引用発明では、輸送用シートが定温・遮光という機能を有するか否かについては文言上特に記載されていないが、引用例のトラックカバー用シート(輸送用シート)はトラックに積載した貨物を保護するためのシートであるから、温度を一定に保ったり、光を遮ったりするような機能を有していることは明らかであり、相違点2に係るような構成とすることは当業者が容易になし得るものである。 そして、本願発明が奏するという作用効果についても、格別のものとは認められない。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載されている事項及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-03 |
結審通知日 | 2010-03-04 |
審決日 | 2010-03-16 |
出願番号 | 特願平10-372415 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60P)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 沼田 規好 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
横溝 顕範 小関 峰夫 |
発明の名称 | 定温・遮光輸送用シート |
代理人 | 岡本 昭二 |
代理人 | 岡本 昭二 |
代理人 | 岡本 昭二 |
代理人 | 岡本 昭二 |