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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60L
管理番号 1215944
審判番号 不服2008-25900  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-09 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 特願2000-115367「車両用制御装置、制御方法および車両」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月26日出願公開、特開2001-298806〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年4月17日の出願であって、平成20年9月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月10日に明細書についての補正がなされたものである。

2.平成20年11月10日付の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「車両の駆動軸に動力を出力可能な電動機を備えた車両用制御装置であって、
前記電動機を運転する電力を蓄積する二次電池と、
前記二次電池の充電状態を管理する充電状態管理手段と、
該二次電池とは別に設けられ、前記電動機に電力を供給可能な燃料電池と、
前記車両の走行に関し、車両の負荷の増加または減少を結果する車両運転者の操作を検出する操作検出手段と、
該検出された車両運転者の前記負荷の増加または減少を結果する操作に基づいて、前記車両の負荷が変更されたと判断したとき、該変更に対応して、前記二次電池の充電状態の管理目標を切り換える管理切換手段と
を備え、
前記操作検出手段は、前記車両の負荷となる補機の動作の変更を結果する操作を検出する車両用制御装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「操作検出手段」について「操作検出手段は、車両の負荷となる補機の動作の変更を結果する操作を検出する」との限定を付加するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-150701号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0005】本発明の動力出力装置は、駆動軸から回生される電気エネルギのより多くを蓄電すると共に駆動軸の駆動に必要な十分な電力を供給する電池などの蓄電手段の小型化を図ることを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置は、蓄電手段を充放電効率のより高い状態で用いることにより装置全体のエネルギ効率をより高くすることを目的の一つとする。」

・「【0007】本発明の第1の動力出力装置は、車両に搭載され、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、原動機と、該原動機から出力される動力の少なくとも一部を電気エネルギに変換可能な発電機と、該発電機により変換された電気エネルギの充電と、前記電動機の駆動に必要な電気エネルギの供給とが可能な蓄電手段と、該蓄電手段の状態を検出する状態検出手段と、前記車両の走行条件を予測する走行条件予測手段と、該予測された走行条件に基づいて前記蓄電手段の目標状態を設定する目標状態設定手段と、前記状態検出手段により検出された前記蓄電手段の状態が前記目標状態設定手段により設定された目標状態となるよう前記原動機と前記発電機とを制御する充放電制御手段とを備えることを要旨とする」

・「【0009】こうした本発明の第1の動力出力装置によれば、予測された走行条件に基づいて蓄電手段の目標状態を設定し、蓄電手段の状態がこの目標状態となるよう制御することができる。この結果、電動機によって回生される電気エネルギが大きい走行条件を予測したときには、十分な充電が可能となるよう蓄電手段の目標状態を低い値に設定して制御し、電動機によって消費される電力が大きい走行条件を予測したときには、十分な電力の放電が可能となるよう蓄電手段の目標状態を高い値に制御することにより、蓄電手段の状態を所定値近傍になるよう制御する装置に比して蓄電手段の小型化を図ることができ、装置全体としてのエネルギ効率を向上させることができる。また、電動機によって回生される電気エネルギが小さい走行条件を予測したときや電動機によって消費される電力が小さい走行条件を予測したときには、蓄電手段の目標状態を充放電効率が高い状態に設定することにより、装置全体のエネルギ効率をより高くすることができる。」

・「【0029】モータ駆動回路52も、6個のトランジスタと6個の帰還ダイオードとによりトランジスタインバータとして構成されており、モータ駆動回路52の各トランジスタをスイッチング制御することにより、バッテリ60から電力の供給を受けて駆動軸70に動力を出力したり、逆にモータ50を発電機として動作させて駆動輪74,76から駆動軸70に入力される動力を電気エネルギに変換してバッテリ60を充電したりする。
【0030】バッテリ60は、鉛蓄電池として構成されており、バッテリ60の残容量を検出する残容量検出器62が設けられている。なお、残容量検出器62としては、バッテリ60の電解液の比重またはバッテリ60の全体の重量を測定して残容量を検出するものや、充電・放電の電流値と時間を演算して残容量を検出するもの、あるいはバッテリの端子間を瞬間的にショートさせて電流を流し内部抵抗を測ることにより残容量を検出するものなどが知られている。」

・「【0041】以上説明した実施例の動力出力装置10によれば、車両の走行条件や予測される走行条件に応じてバッテリ60の状態SOCを制御することができる。すなわち、車両がバッテリ60からの充放電量が比較的小さい走行条件にあるときやその条件が予測されるときには、バッテリ60を充放電の効率が高い状態SOCとなるよう制御し、車両がバッテリ60からの充放電量が大きな走行条件(車両が大きな動力を必要とする走行条件)にあるときやその条件が予測されるときには、バッテリ60を充放電の効率に拘わらず、バッテリ60から十分な電力の供給ができるよう状態SOCが大きな値となるよう制御することができる。この結果、装置全体としてのエネルギ効率を向上させることができると共に車両の走行特性を向上させることができる。しかも、移動平均変化量△Vaと移動平均車速Vaとを用いて車両の現在の走行条件や予測される走行条件を現わし、これらを用いて目標状態SOC*を求めたので、簡易な構成によりバッテリ60の状態SOCをより的確に制御することができる。」

・「【0044】実施例の動力出力装置10では、移動平均車速Vaと移動平均変化量△Vaとによってバッテリ60の充放電量に関する車両の走行条件および予測される走行条件を現わし、これらを用いて目標状態SOC*を求めたが、バッテリ60の充放電量に関する車両の走行条件をアクセルペダル63の踏込量の変化によって現わし、これを用いて目標状態SOC*を設定するものとしてもよい。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「車両の駆動軸に動力を出力可能な電動機を備えた動力出力装置であって、
前記電動機を駆動する電気エネルギを充電・供給可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段の状態を検出する状態検出手段と、
前記蓄電手段に電気エネルギを充電可能な発電機と、
アクセルペダル踏込量を検出するアクセルペダルポジションセンサと、
アクセルペダル踏込量の変化によって現される車両の走行条件を用いて蓄電手段の蓄電量の目標状態を設定する手段と、
を備え、
前記アクセルペダルポジションセンサは、前記アクセルペダルの踏込量を検出する動力出力装置。」

(2-2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-240212号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0002】
【従来の技術】近年、地球環境保護の観点から、有害ガスの発生源となるガソリンエンジン等を駆動源とせず、クリーンな電力によって車両を駆動させる電気自動車が注目されている。ところで、電気自動車に使用される二次電池は、出力容量は大きいが、エネルギ容量が比較的小さい。そのため、二次電池を電源とする電気自動車では、一回の充電によって走行可能な距離が100Km前後であり、ガソリンエンジンで走行する現行のガソリン車の一回の満タン後の走行距離が400?500Kmであるのと比較すると、かなりの差がある。そこで、電気自動車の走行可能距離を延ばすために、出力容量は小さいがエネルギ容量が大きい燃料電池と、二次電池とを組み合わせたハイブリッド電源装置が開発されている。このようなハイブリッド電源装置は、試験的に例えば、バスやゴルフカートに使用されている。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「動力出力装置」はその機能・作用からみて、前者の「車両用制御装置」に相当し、以下同様に「電動機を駆動する電気エネルギを充電・供給可能な蓄電手段」は「電動機を運転する電力を蓄積する二次電池」に、「蓄電手段の状態を検出する状態検出手段」は「二次電池の充電状態を管理する充電状態管理手段」に、それぞれ相当する。
また、後者において「発電機」は、電気エネルギを、電動機に電気エネルギを供給する蓄電手段に充電するものであるから、後者の「蓄電手段に電気エネルギを充電可能な発電機」と前者の「二次電池とは別に設けられ、電動機に電力を供給可能な燃料電池」とは、「二次電池とは別に設けられ、電動機に電力を供給可能な手段」との概念で共通するものといえる。
そして、後者の「アクセルペダル踏込量を検出するアクセルペダルポジションセンサ」は前者の「車両の走行に関し、車両の負荷の増加または減少を結果する車両運転者の操作を検出する操作検出手段」に相当し、後者の「アクセルペダル踏込量の変化によって現される車両の走行条件を用いて蓄電手段の蓄電量の目標状態を設定する手段」は「検出された車両運転者の前記負荷の増加または減少を結果する操作に基づいて、前記車両の負荷が変更されたと判断したとき、該変更に対応して、前記二次電池の充電状態の管理目標を切り換える管理切換手段」に相当している。
さらに、後者の「アクセルペダルの踏込量を検出する」と前者の「車両の負荷となる補機の動作の変更を結果する操作を検出する」とは「車両の所定の負荷の変更を結果する操作を検出する」との概念で共通している。

したがって両者は、
[一致点]
「車両の駆動軸に動力を出力可能な電動機を備えた車両用制御装置であって、
前記電動機を運転する電力を蓄積する二次電池と、
前記二次電池の充電状態を管理する充電状態管理手段と、
該二次電池とは別に設けられ、前記電動機に電力を供給可能な手段と、
前記車両の走行に関し、車両の負荷の増加または減少を結果する車両運転者の操作を検出する操作検出手段と、
該検出された車両運転者の前記負荷の増加または減少を結果する操作に基づいて、前記車両の負荷が変更されたと判断したとき、該変更に対応して、前記二次電池の充電状態の管理目標を切り換える管理切換手段と
を備え、
前記操作検出手段は、車両の所定の負荷の変更を結果する操作を検出する車両用制御装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「二次電池とは別に設けられ、電動機に電力を供給可能な手段」に関して、本件補正発明では、「燃料電池」であるのに対して、引用発明では、「発電機」である点。
[相違点2]
「操作検出手段」が検出する「車両の所定の負荷の変更を結果する操作」が、本件補正発明では、「車両の負荷となる補機の動作の変更を結果する操作」であるのに対し、引用発明では、「アクセルペダルの踏込量」である点。

(4)相違点に対する判断
相違点1について
例えば引用文献2に記載されているように、電気自動車において、環境保護のためにクリーンなエネルギーで車両を駆動させるために二次電池に燃料電池を組みあわせることは周知技術である。
環境保護は一般的課題といえるので、電気自動車の技術分野に属する引用発明においても、一般的課題である環境保護のために、発電機に替えて燃料電池を組みあわせることで相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。

相違点2について
電気自動車において、二次電池の主要な負荷としては車両駆動用電動機と空調機等の補機が存在することは技術常識である。
そして、引用発明において「アクセルペダル踏込量の変化によって現される車両の走行条件を用いて蓄電手段の蓄電量の目標状態を設定する」ことの技術的意義は、【0005】に記載されているように「蓄電手段を充放電効率のより高い状態で用いることにより装置全体のエネルギ効率をより高くする」ことであり、そのために【0009】に記載されているように「消費される電力が大きい走行条件を予測したときには、十分な電力の放電が可能となるよう蓄電手段の目標状態を高い値に制御する」ものである。
そうすると、引用発明において、係る目的の範囲内で、上記技術常識を踏まえて、消費される電力が大きい負荷である空調機等の「補機の動作の変更を結果する操作」を、蓄電手段の蓄電量の目標状態を設定する、すなわち、「二次電池の充電状態の管理目標を切り換える」ために「操作検出手段」が検出する「車両の所定の負荷の変更を結果する操作」として用いることで相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。

また、本件補正発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記技術常識から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成20年5月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「車両の駆動軸に動力を出力可能な電動機を備えた車両用制御装置であって、
前記電動機を運転する電力を蓄積する二次電池と、
前記二次電池の充電状態を管理する充電状態管理手段と、
該二次電池とは別に設けられ、前記電動機に電力を供給可能な燃料電池と、
前記車両の走行に関し、車両の負荷の増加または減少を結果する車両運転者の操作を検出する操作検出手段と、
該検出された車両運転者の前記負荷の増加または減少を結果する操作に基づいて、前記車両の負荷が変更されたと判断したとき、該変更に対応して、前記二次電池の充電状態の管理目標を切り換える管理切換手段と
を備えた車両用制御装置。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記「2.」で検討した本件補正発明から「操作検出手段は、車両の負荷となる補機の動作の変更を結果する操作を検出する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は、前記「2.(3)」で挙げた相違点のうち、[相違点1]のみとなる。
したがって、前記「2.(4)」での検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-04 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-23 
出願番号 特願2000-115367(P2000-115367)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60L)
P 1 8・ 575- Z (B60L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之山村 和人  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 大河原 裕
小川 恭司
発明の名称 車両用制御装置、制御方法および車両  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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