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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1216024
審判番号 不服2005-20523  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-24 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 特願2002-549184「ヘテロポリマーと固形物質を含有する化粧品用組成物及びその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月20日国際公開、WO02/47608、平成16年 5月27日国内公表、特表2004-515510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成13年12月12日(パリ条約による優先権主張2000年12月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年7月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年10月24日に拒絶査定に対する審判請求及び手続補正がなされ、さらに、同年11月24日付けで再度手続補正がなされたものである。

2.平成17年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
上記補正は、補正前の特許請求の範囲に記載の請求項数が、平成17年10月24日付けの手続補正により適法に補正された結果、1となったものを45に増加する補正であるが、当該請求項の増加は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に規定する補正の目的のいずれにも該当しない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年11月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年10月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「(i)少なくとも1つのヘテロ原子を有する少なくとも1つの炭化水素ベースの繰り返し単位を含むポリマー骨格を有する少なくとも1つの構造化ポリマー;及び
(ii)約45℃又はそれ以上の融点を有する少なくとも1つの固形物質、
を含む少なくとも1つの液状脂肪相を含有し、
前記少なくとも1つの固形物質がステアラルコニウムヘクトライト、シリカ、タルク又はパラフィンロウではない組成物。」

(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布されたことが明らかな特表平9-503785号公報(以下、引用例Aという。)には、以下の事項が記載されている。
A-1.「1.(a)ワックス5?90%;
(b)脂肪、油、脂肪アルコール、脂肪酸エーテル、脂肪酸エステル及びそれらの混合物からなる群より選択される皮膚軟化成分1?90%;及び
(c)口紅発汗を避ける上で十分な量のゲル化剤
を含んでなり、1.5?3.0g力の降伏値と0.06?0.25g力/secの傾きm値で規定されるレオロジーを有している口紅組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
A-2.「本発明は、良好な油保留性を示す、ワックス、皮膚軟化剤及びゲル化剤を含んだ口紅組成物に関する。上記口紅は唇に良好な潤いを与える。」(公報5頁4?5行)
A-3.「ゲル化剤を口紅処方に加えると皮膚軟化油をゲル化させ、高い温度及び相対湿度でかなりの期間にわたり上記口紅を耐発汗性又は非発汗性にすることが発見された。」(公報5頁下から5行?同頁下から3行)
A-4.「必須成分
A.ワックス
ワックスは口紅で凝固剤として作用する。それは口紅の固体構造の形成を補助する。ワックスは高分子量物質の有機化合物又は混合物から構成され、環境温度/室温で固体である。ワックスは炭化水素であるか、あるいは脂肪酸及び脂肪アルコールのエステルである。ワックスは熱可塑性である。天然、鉱物及び合成ワックスが本発明で使用できる。本明細書で用いられる“ワックス”とは単一タイプのワックスだけではなく、混合物にも関する。
天然ワックスには動物源、例えば蜜ロウ、鯨ロウ、ラノリン、セラックワックス、又は植物源、例えばカルナウバ、カンデリラ、ベイベリー、サトウキビワックス、あるいは鉱物源、例えばオゾケライト、セレシン、モンタン、パラフィン、微結晶ワックス、石油及びワセリンワックスがある。合成ワックスにはポリオールエーテル‐エステル、例えばカルボワックス及び炭化水素タイプワックス、シリコーンワックスとポリエチレンワックスがある。通常、本発明で有用なワックスは約55?約110℃の融点を有し、C_(8)‐C_(50)炭化水素ワックスから選択される。
・・・
用いられるワックスの量は口紅組成物の約5?約90%、好ましくは約10?約30%、最も好ましくは約10?約20%である。」(公報7頁下から7行?8頁下から4行)
A-5.「B.皮膚軟化剤成分
本発明の皮膚軟化剤成分は塗布及び付着を助け、光沢を出し、最も重要なことには吸蔵的な潤いを出す。本明細書で用いられる“皮膚軟化剤”とは、C.T.F.A.Cosmetic Ingredient Handbook,page 572,1992で開示されたような、皮膚をコンディショニングする皮膚軟化剤、保湿剤、吸蔵剤及び他の様々な成分を含めたスキンコンディショニング剤を意味する。上記皮膚軟化剤は脂肪、油、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エーテル、脂肪酸エステル及びそれらの混合物からなる群より選択される。上記皮膚軟化剤成分は、典型的には約5?約90%、好ましくは約25?約90%、最も好ましくは約70?約90%の油を含む。
油とは、環境温度で液体の有機物質である物質をいう。それらはエステル、トリグリセリド、炭化水素及びシリコーンである。これらは単一物質でも、あるいは1種以上の物質の混合物であってもよい。油は皮膚軟化剤として作用し、口紅に望ましい皮膚感特徴及び粘度を付与する。適切な油にはカプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、イソステアリン酸トリグリセリド、アジピン酸トリグリセリド、プロピレングリコールミリスチルアセテート、ラノリン、ラノリン油、ポリブテン、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、酢酸トコフェリル、リノール酸トコフェリル、ステアリン酸ヘキサデシル、乳酸エチル、オレイン酸セチル、リシノール酸セチル、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヒドロキシステアリン酸オクチル、オクチルドデカノール、小麦麦芽油、水素付加植物油、ワセリン、改質ラノリン、分岐鎖炭化水素、アルコール及びエステル、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム核油、菜種油、サフラワー油、ハホバ油、イブニングプリムローズ油、アボカド油、鉱油、シアバター、パルミチン酸オクチル、マレイン酸処理大豆油、トリオクタン酸グリセロール、ジイソプロピルダイメレート、フェニルトリメチコンを含めた揮発性及び不揮発性シリコーン油とそれらの混合物がある。」(公報8頁下から3行?9頁下から5行)
A-6.「C.ゲル化剤
本発明では、ゲル化剤は本発明の口紅マトリックスにおいて油の保留に関与している網状組織をスティックマトリックスで作るために用いられる。使用上適したゲル化剤は疎水性シリカ、有効量の活性剤を含有した疎水性土、プロピレンカーボネート、エチルセルロース、N‐アシルアミノ酸アミド、N‐アシルアミノ酸エステル及びそれらの混合物からなる群より選択される。使用上好ましいゲル化剤は疎水性シリカ、有効量の活性剤を含有した疎水性土及びそれらの混合物である。ゲル化剤は口紅マトリックスで油を留めるために十分だが、口紅の望ましいレオロジーを変化させて、それにより唇に適用されたときの望ましい塗布性及び唇感に否定的影響を与えるほどには多くない量で用いられる。
・・・
本発明において、用いられるゲル化剤の十分なレベルは、典型的には口紅組成物の約0.1?約20%、好ましくは約1.0?約10%、最も好ましくは約2.0?約8%である。」(公報11頁下から3行?12頁下から5行)

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布されたことが明らかな国際公開第98/17705号パンフレット(以下、「引用例B」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、この文献に対応する日本語文献として特表2001-502742号公報を翻訳文とした。)
B-1.「1.以下の式(1)のエステル末端ポリアミドを含む樹脂組成物:
(式(1)略)
ここで、
nは、エステル基がエステルおよびアミド基の総数の10%?50%を構成するような、繰り返し単位の数を示し;
各場所のR_(1)は独立して、少なくとも4個の炭素原子を含有するアルキル基またはアルケニル基から選択され;
各場所のR_(2)は独立してC_(4?42)の炭化水素基から選択されるが、ただし、少なくとも50%のR_(2)基が30?42個の炭素原子を有し;
各場所のR_(3)は独立して、水素原子に加えて少なくとも2個の炭素原子を含み、
そして必要に応じて1つ以上の酸素原子および窒素原子を含有する有機基から選択され;そして
各場所のR^(3a)は独立して、水素、C_(1?10)アルキル、ならびにR_(3)およびR^(3a)がともに結合されるN原子がR^(3a)-N-R_(3)によって一部定義されるヘテロ環式構造の部分であるようなR_(3)または別のR^(3a)への直接結合から選択され、少なくとも50%のR^(3a)基が水素である。」(上記パンフレット41頁、請求項1)
B-2.「発明の分野
本発明はゲル化剤、および詳細には炭化水素のような低極性液体のゲル化剤に関する。
発明の背景
一般に、個人用手入れ用品は、キャリア処方物中に1種以上の活性成分を含有する。活性成分(単数または複数)が製品の最終的な性能を決定する一方、キャリア処方物も製品の商業的成功に対して同じく重要である。キャリア(「基材」とも呼ばれる)のレオロジーは、製品の流動性を大きく左右し、そして流動性が、消費者が製品を利用または使用する様式を大きく左右する。
例えば、アルミニウムクロロハイドレートおよびアルミニウム-ジルコニウム-テトラクロロハイドレックス-Glyは、防臭剤および制汗剤製品の活性成分として一般に使用されるような金属塩である。消費者は防臭剤をスティック形態から付与することを好むことを示している。従って、スティック形態防臭剤中のキャリアは比較的固い物質でなければならず、そしてステアリルアルコールのようなワックス状脂肪酸アルコールがそれらの製品中のキャリアとして使用されてきた。
別の例として、リップスティック中の活性成分は着色料である。リップスティックはスティック状防臭剤ほど固い必要はないが、しかし、もちろん室温で未使用時にその形を維持しなければならない。ワックスおよび油のブレンドは、リップスティックのキャリアとしてよく適したコンシステンシーを提供することが知られている。
・・・
上記の実施例から、個人用手入れ用品の処方物は、首尾良く個人用手入れ用品を処方するために、種々のレオロジー特性を有する材料の入手のしやすさに依存することがわかる。ゲル様特性を有する材料は、それらが未使用時にはその形を維持するが擦り付けられる際に流れるという特性において、しばしば個人用手入れ用品に対して望ましい。
透明(すなわち透明な)キャリアは、着色料が活性成分である個人用手入れ用品を開発する処方者によって必要とされる。なぜなら、透明キャリアは、もしあったとしても、(不透過なキャリアとは反対に)着色料の発色を最小限にしか阻害しないからである。しかしながら、近年、消費者の透明個人用手入れ用品(防臭剤およびシャンプーなど)に対する好みが増加していることが示されている。従って、種々の個人用手入れ用品に必要なレオロジー特性を提供し得、そして特に処方物にゲル様特性を与え得る透明材料の需要が増加している。
重合化脂肪酸とジアミンとから調製されたポリアミド樹脂は、個人用手入れ用品のために開発された処方物においてゲル化剤として機能することが報告されている。例えば、米国特許第3,148,125号は、ポリアミド樹脂化合物と低級脂肪族アルコールおよびいわゆる「ポリアミド溶媒」とから形成された透明なリップスティック組成物に関する。同様に、米国特許第5,500,209号は、ゲルまたはスティック状防臭剤の形成に関するものであり、ここで組成物はポリアミドゲル化剤および1価または多価アルコールを含む溶媒系を含有する。従って、先行技術は特定のポリアミドをアルコールと調合し、それによりゲルを形成することを認識していた。」(上記パンフレット1頁5行?2頁18行;対応日本公報6頁4行?7頁19行)
B-3.「 本発明の商業的に望ましい局面は、ゲルが(必ずしも必要ではないが)本質的に透明であり得ることである。従って、ゲルは望ましくは、着色料ならびに他の成分と合わせられてリップスティックおよび他の化粧用品を形成する。透明なゲルの、これらの用途における利点は、ゲルがリップスティックまたは化粧品に望ましくない色を、もしあるとしてもほとんど与えないことである。ゲルは、アルミニウムジルコニウム塩ならびに他の成分と合わせられて無色の腋下防臭剤/制汗剤を形成し得る(これは近年非常に馴染み深いものである)。本発明のゲルはまた、他の個人用手入れ用品、例えば化粧品(目のメーキャップ、リップスティック、ファンデーションメーキャップ、コスチュームメーキャップ)、ならびにベビーオイル、化粧落とし、入浴油、皮膚保湿剤、日焼け手入れ用品、リップクリーム、無水ハンドクリーナー、治療用軟膏、エスニック頭髪手入れ用品、香水、コロン、および座薬において有用である。」(上記パンフレット21頁19行?29行;対応日本公報27頁5行?16行)
B-4.「本発明のETPA樹脂(審決注:エステル末端ポリアミド樹脂のこと)は、ETPA樹脂を上記に列挙されているような市販品の他の成分と調合することにより、市販品中に組み込まれ得る。典型的に、ETPA樹脂は組成物の総重量を基準にして、組成物の約1%?約50%の濃度で存在し得る。組成物中に存在しているETPA樹脂の量を最適化することは日常的な事であり、そして実際その量は、実際の製品および製品の所望のコンシステンシーに依存して変化する。一般に、処方物中により多くのETPA樹脂が使用されるほど、製品はより明白なゲル特性を表現する。
従って、本発明の別の局面は、上記で記載されるエステル末端ポリアミドを含む成分と非水性液体、好ましくは低極性液体との間に形成されるゲルである。」(上記パンフレット22頁17行?27行;対応日本公報28頁7行?15行)
B-5.「適切な低極性液体の別のクラスは、エステル、特に脂肪酸のエステルである。そのようなエステルは単官能性エステル(すなわち単一のエステル部分を有する)であり得るか、または多官能性エステル(すなわち1つ以上のエステル基を有する)であり得る。適切なエステルは、C_(1?24)のモノアルコールのC_(1?22)のモノカルボン酸との反応生成物(ここで、炭素原子は直線状、分枝鎖状、および/または環式状で配置され、そして不飽和結合が必要に応じて炭素原子間に存在し得る)を含むが、これらに限定されない。好ましくは、エステルは少なくとも約18個の炭素原子を有する。例として以下を含むが、これらに限定されない:イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸n-プロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸n-プロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサコサニル、パルミチン酸オクタコサニル、パルミチン酸トリアコンタニル、パルミチン酸ジトリアコンタニル(dotriacontanyl)、パルミチン酸テトラトリアコンタニル、ステアリン酸ヘキサコサニル、ステアリン酸オクタコサニル、ステアリン酸トリアコンタニル、ステアリン酸ジトリアコンタニル(dotriacontanyl)、およびステアリン酸テトラトリアコンタニルの様な脂肪酸のエステル;サリチル酸エステル、例えばサリチル酸オクチルのようなC_(1?10)サリチル酸エステル、ならびに安息香酸C_(12?15)アルキル、安息香酸イソステアリル、および安息香酸ベンジルを含む安息香酸エステル。
適切なエステルは、リップスティックおよびメーキャップの処方物の化粧品産業において通常用いられているもの、例えば上記の脂肪酸エステルであり、そしてしばしば「化粧用エステル」として記載される。他の化粧用エステルは、脂肪酸のグリセロールエステルおびプロピレングリコールエステル(いわゆるポリグリセロール脂肪酸エステルおよびトリグリセリドを含む)を含む。化粧用エステルの例として、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコール(400)モノラウレート、ヒマシ油、トリグリセリルジイソステアレートおよびラウリルラクテートを含むが、これらに限定されない。従って、液体は、1つより多いエステル、ヒドロキシルおよびエーテル官能部分を有し得る。例えば、C_(10?15)アルキルラクテートが、本発明のゲルにおいて使用され得る。さらに、エステル化ポリオール(C_(1?22)モノカルボン酸と反応したエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドのポリマーおよび/またはコポリマーなど)が有用である。C_(1?22)モノカルボン酸の炭素原子は、直線状、分枝鎖状、および/または環式状で配置され得、そして不飽和結合が炭素原子間に存在してもよい。好適なエステルはアルコールと脂肪酸との反応生成物であり、ここでアルコールは、C_(1?10)一価アルコール、C_(2?10)二価アルコール、およびにC_(3?10)三価アルコールから選択され、そして脂肪酸はC_(8?24)脂肪酸から選択される。」(上記パンフレット23頁28行?29頁27行;対応日本公報29頁17行?30頁下から5行)
B-6.「本発明のゲルは、好ましくは離漿(syneresis)を示さない。McGraw-Hill科学および技術用語辞典(第3版)において定義されるように、離漿は、液体のゲルからの自発的な分離、またはゲルの縮小によるコロイド状懸濁液である。典型的には、離漿は液体のゲルからの分離として観測され(そして時として「ブリーディング」として示され)、その場合、離漿を示しているゲルの表面に沿って湿気が見られる。商業的な観点から、離漿は典型的な望ましくない性質であり、本発明のゲルは望ましいことにそして驚くべき事に離漿を示さない。」(上記パンフレット25頁19行?同頁26行;対応日本公報31頁18行?同頁24行)
B-7.「本発明のゲルは、当該分野で周知の技術により個人用手入れ用品中に処方され得る。ゲルは、個人用手入れ用品(少数の例を挙げれば、キレート剤、着色料、乳化剤、増量剤、硬化促進剤、香料、強化剤、水およびワックスなど)中に簡便に組み込まれる成分と合わせられ得る。そのような添加物はまた、例えば以下の文書中に記載されており、これらは全て本明細書中でその全体において参考として援用される;Bartonの米国特許第3,255,082号、Elsnauの同第4,049,792号、Rubinoらの同第4,137,306号、およびHooperらの同第4,279,658号。」(上記パンフレット26頁9行?同頁15行;対応日本公報32頁8行?同頁14行)
B-8.表2として、種々のサイズおよび濃度のアルコールから作製されたETPAの物性およびゲル特性が示され、その中で、実施例番号5及び8で得られたものの軟化点(℃)がそれぞれ93.2℃、90.4℃であることが記載されている。(上記パンフレット34頁の表2;対応日本公報39頁下から2行?末行及び40頁の表)
B-9.「 実施例14
KLEAROL炭化水素を用いるETPAゲル
この実施例は、実施例3におけるように調製されるETPAが低粘度の白色鉱油をゲル化するためにどのように使用され得るかを示す。使用された鉱油は、40℃でコスチュームメーキャップ、リップスティック、および頭髪手入れ用品のような個人的手入れ用品に使用される。20%の固体でETPAでにゲル化した場合、ゲルは透明でそして硬かった。」(上記パンフレット36頁23行?37頁2行;対応日本公報42頁3行?同頁11行)

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布されたことが明らかな国際公開第00/40216号パンフレット(以下、「引用例C」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、この文献に対応する日本語文献として特表2002-534535号公報を翻訳文とした。)
C-1.「【請求項1】 式(1):
(式(1)略)
の三級アミド終結ポリアミド樹脂であって、
ここで、
nは、末端アミド基が、全アミド基の10%?50%を構成するような、反復単位の数を表し;
それぞれの場合においてR_(1)は、C_(1?22)の炭化水素基から独立に選択され;
それぞれの場合においてR_(2)は、C_(2?42)の炭化水素基から独立に選択され;
それぞれの場合においてR_(3)は、水素原子に加えて少なくとも2つの炭素原子を含み、そして必要に応じて1つ以上の酸素原子および窒素原子を含む有機基から独立に選択され;そして
それぞれの場合においてR^(3a)は、R_(3)およびR^(3a)の両方が結合するN原子が、R^(3a)-N-R_(3)により部分的に規定される複素環式構造の部分であるように、水素、C_(1?10)アルキルおよびR_(3)またはもう1つのR^(3a)への直接の結合から独立に選択される、
三級アミド終結ポリアミド樹脂。」(上記パンフレット21頁請求項1;対応日本公報2頁、請求項1)
C-2.「【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、概して有機樹脂に関し、さらに詳細には、三級アミド末端を有するポリアミド樹脂、ならびにゲル化剤として、そして特に炭化水素のような低極性液体のためのゲル化剤としてのこれらの樹脂の用途に関する。
【0002】
(発明の背景)
多くの商業的に重要な組成物においては、製品の粘稠度が、その商業的成功に重要である。1つの例は、パーソナルケア製品であり、これは、キャリア組成物中に通常1つ以上の活性成分を含む。この活性成分が、この製品の根本的な性能特性を決定するが、キャリア組成物はまた、それが製品の粘稠度を決定するという点において、製品の商業的成功に等しく重要である。キャリア(「基剤」ともいう)の流動学は、製品の流動特性を全般的に決定し、そしてその流動特性が、消費者がその製品を利用するかまたは使用する様式を全般的に決定する。
【0003】
例えば、アルミニウムクロロハイドレート(chlorohydrate)、アルミニウム-ジルコニウムテトラクロロハイドレート、グリシンと錯化したアルミニウム-ジルコニウムポリクロロハイドレート、ならびにトリクロロハイドレート、オクタクロロハイドレート、およびセスキクロロハイドレートのいずれかと錯化したアルミニウム-ジルコニウムは、脱臭剤製品および発汗抑制製品中の活性成分として一般に使用される金属塩である。消費者は、スティック形態の脱臭剤の使用に対する好みを示してきた。従って、スティック形態脱臭剤中のキャリアは、比較的堅固な物質でなければならず、そしてステアリルアルコールのような柔軟な脂肪アルコールは、しばしばこれらの製品中のキャリアとして使用されてきた。別の例として、口紅中の活性成分は、着色剤である。口紅は、スティック脱臭剤ほど固くはないが、室温において動かさない場合には、当然その形状を維持しなければならない。ロウおよび油の混合は、口紅のためのキャリアとして適切な粘稠性を提供することが公知である。・・・。
【0004】
上記の例より、パーソナルケア製品の調合者は、首尾良いパーソナルケア製品を調合するために、種々の流動学的特性を有する材料の入手の可能性に依存することが分かる。ゲル様特性を有する材料(動かされない場合にはそれらの形状を維持するが、摩擦された場合には流動する)は、しばしばパーソナルケア製品に所望される。
【0005】
透明な(すなわち、透き通った)キャリアが、着色剤が活性成分であるパーソナルケア製品を開発する調合者により、所望される。なぜならば、透明なキャリアは(不透明なキャリアとは対照的に)、着色剤の外観に、(干渉したとしても)最小限に干渉するからである。近年、消費者は、透明かつ無色のパーソナルケア製品(例えば、脱臭剤およびシャンプー)を選択することが増えてきているということが示されている。従って、種々のパーソナルケア製品に必要な流動学的特性を与え得る透明な材料、および特にゲル様特性を組成物に与え得る透明な材料の需要が増大している。
【0006】
重合脂肪酸およびジアミンから調製されるポリアミド樹脂は、パーソナルケア製品のために開発された組成物中のゲル化剤として機能することが、報告されている。例えば、米国特許第3,148,125号は、低級脂肪族アルコールおよびいわゆる「ポリアミド溶媒」を用いて合成されるポリアミド樹脂から形成される透き通った口紅のキャリア組成物に関する。同様に、米国特許第5,500,209号は、ゲルまたはスティックの脱臭剤の形成に関し、ここでその組成物は、ポリアミドゲル化剤、および一価アルコールまたは多価アルコールを含む溶媒系を含む。従って、先行技術は、特定のポリアミドを、アルコールと混合し、それによりゲルを形成するということを認識する。」(上記パンフレット21頁請求項1;対応日本公報6頁1行?7頁下から2行)
C-3.「【0041】
本発明のATPA樹脂は、溶媒(ここで、用語「溶媒」は溶媒の混合物を含む)を増粘および/またはゲル化するために用いられ得る。本明細書中で使用される場合、用語、溶媒は、10?60℃の間の温度で液体であり、そしてATPA樹脂と合わされる際にゲルを形成する、任意の物質を含む。本明細書中で使用される場合、用語、溶媒は、ATPAによってゲル化され得る油および他の液体を含むように使用され、そしてそれ以外では制限されない。」(上記パンフレット12頁8行?同頁13行;対応日本公報段落番号【0041】)
C-4.「【0046】
適切な溶媒の別の部類は、エステルである。エステルは、構造式-C(=O)-O-を含み、そして好ましくは構造式-C(=O)-O-R^(5)(ここで、R^(5)はC_(1)?C_(22)のヒドロカルビル基から選択される)を含む。本明細書中で使用される場合、ヒドロカルビル基は、排他的に炭素および水素から形成される。このようなエステルは、一官能性エステル(すなわち、1つのエステル部分を有する)であり得るか、または多官能性(すなわち、1つより多いエステル基を有する)であり得る。適切なエステルとしては、C_(1?24)モノアルコールとC_(1?22)モノカルボン酸との反応生成物(ここで、炭素原子は、直鎖状、分枝状、および/または環状に配置され得、そして不飽和が炭素原子の間に必要に応じて存在し得る)が挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、エステルは少なくとも約18の炭素原子を有する。例としては、イソプロピルイソステアレート、n-プロピルミリステート、イソプロピルミリステート、n-プロピルパルミテート、イソプロピルパルミテート、ヘキサコサニルパルミテート、オクタコサニルパルミテート、トリアコンタニルパルミテート、ドトリアコンタニルパルミテート、テトラトリアコンタニルパルミテート、ヘキサコサニルステアレート、オクタコサニルステアレートおよびトリアコンタニルステアレートのような脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なエステルとしては、脂肪酸のグリセリンエステルおよびプロピレングリコールエステル(いわゆるポリグリセリン脂肪酸エステルおよびトリグリセリドを含む)が挙げられる。
【0047】
好ましくは、溶媒は上記のような低極性液体であり、そしてより好ましくは、溶媒は液体炭化水素である。液体は、1より多い成分(例えば、炭化水素ならびにエステル含有物質)を含み得る。混合物において、ゲル化剤(gellant)(ATPA)は、代表的にゲル化剤および溶媒の総重量の10?95%寄与し、そして溶媒は、代表的にゲル化剤および溶媒の総重量の5?90%寄与する。好ましくは、ゲル化剤は、ゲル化剤および溶媒の混合物におけるゲル化剤の重量パーセントが約5?50%である(そして好ましくは、約10?45%である)ように溶媒と組み合わされる。このようなゲルは、ゲル化剤および溶媒の厳密な個性、ならびに混合物中のゲル化剤の濃度に依存して、透明、半透明、または不透明であり得る。」(上記パンフレット13頁18行?14頁12行;対応日本公報段落番号【0046】?【0047】)
C-5.「【0056】
本発明のATPAゲルは、(必要ではないが)本質的に透明であり得る。透明である場合、ゲルは着色剤(ならびに他の原料)と組み合わされ得、ゲルが着色剤の見た目を妨害するか、または汚すことなく、口紅または他の化粧品を形成する。ATPAゲルは、アルミニウムジルコニウム塩ならびに他の原料と組み合わされ得、現在のところ大変流行している無色の腋の下のデオドラント/発汗抑制剤を形成する。本発明のゲルはまた、他のパーソナルケア製品(例えば、アイメイク、口紅、ファンデーションメイク、コスチュームメイク、ならびにベビーオイル、メイク落とし、バスオイル、肌の保湿剤、サンケア製品、リップバーム、水分のないハンドクリーナー、薬用軟膏、エスニックヘアケア製品、香水、オーデコロン、および挫剤において有用である。」(上記パンフレット16頁25行?17頁5行;対応日本公報段落番号【0056】)
C-6.「 【0059】
このような材料を調製するための調合は、当該分野において周知である。例えば、米国特許第3,615,289号および同第3,645,705号はろうそくの調合を記載する。米国特許第3,148,125号および同第5,538,718号は、口紅および他の化粧用スティックの調合を記載する。米国特許第4,275,054号、同第4,937,069号、同第5,069,897号、同第5,102,656号および5,500,209号は、デオドラントおよび/または発汗抑制剤の調合を各々記載する。」(上記パンフレット17頁17行?同頁21行;対応日本公報段落番号【0059】)

(2)対比・判断
引用例AのA-1.の記載からみて、引用例Aには、
「(a)ワックス5?90%;
(b)脂肪、油、脂肪アルコール、脂肪酸エーテル、脂肪酸エステル及びそれらの混合物からなる群より選択される皮膚軟化成分1?90%;及び
(c)口紅発汗を避ける上で十分な量のゲル化剤
を含んでなり、1.5?3.0g力の降伏値と0.06?0.25g力/secの傾きm値で規定されるレオロジーを有している口紅組成物。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
本願発明の組成物と引用発明の組成物とを対比すると、以下に述べる理由により、前者における「(i)少なくとも1つのヘテロ原子を有する少なくとも1つの炭化水素ベースの繰り返し単位を含むポリマー骨格を有する少なくとも1つの構造化ポリマー」(以下、「成分(i)」ともいう。)、「(ii)約45℃又はそれ以上の融点を有する少なくとも1つの固形物質」(以下、「成分(ii)ともいう。)、成分(i)及び成分(ii)を含む「少なくとも1つの液状脂肪相」(以下、「油成分(iii)」ともいう。)は、それぞれ、後者における(c)口紅発汗を避ける上で十分な量のゲル化剤」(以下、「成分(c)」ともいう。」、「(a)ワックス」(以下、成分(a)ともいう。」、「(b)脂肪、油、脂肪アルコール、脂肪酸エーテル、脂肪酸エステル及びそれらの混合物からなる群より選択される皮膚軟化成分」(以下、「成分(b)」ともいう。」に対応する。
すなわち、前者における成分(i)は、特定の繰り返し単位を含むポリマー骨格を有する少なくとも1つの構造化ポリマーであるが、ここでいう「構造化」とは本願明細書の発明の詳細な説明において、「ゲル化及び/又は堅牢化」を意味することが記載(本願明細書の段落番号[0002])されているから、「構造化ポリマー」とはゲル化する能力を有するポリマー、すなわちゲル化剤の一種であり、構造化される対象物は「液状脂肪相」である(本願明細書の段落番号[0002])が、後者における成分(c)も、「ゲル化剤」であり、ゲル化される対象は皮膚軟化油(上記A-3.)であり、この皮膚軟化油は脂肪、油、脂肪アルコール、脂肪酸エーテル、脂肪酸エステル及びそれらの混合物からなる群より選択されるもの、すなわち(b)成分のことであるから、前者における「液状脂肪相」に相当するものであり、したがって、前者における成分(i)は、後者における成分(c)に対応する。
つぎに、前者における成分(iii)は、前述したように構造化ポリマーにより構造化すなわちゲル化される液状脂肪相であるが、後者における成分(b)も前述したようにゲル化剤によりゲル化される脂肪などの皮膚軟化油であるから、前者における成分(iii)は、後者における成分(b)に対応する。
さらに、前者における「成分(ii)」は、その具体例にミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等天然由来のロウを包含する(本願明細書の段落番号[0043])が、これらは後者における成分(a)、すなわちワックスの具体例に相当する(上記A-4.)ので、前者における成分(ii)は、後者における成分(a)に対応する。
そうすると、両者は、「(i)ゲル化剤及び(ii)固形物質を含む少なくとも1つの液状脂肪相を含有する組成物」である点で一致し、一方、前者においては(i)ゲル化剤が特定の繰り返し単位を含むポリマー骨格を有する少なくとも1つの構造化ポリマーであるのに対して、後者においては、口紅発汗を避ける上で十分な量のゲル化剤と記載するのみである点(相違点1)、(ii)固形物質が前者においては「約45℃又はそれ以上の融点を有するものであるのに対して、後者においてはワックスと記載するのみである点(相違点2)、(ii)固形物質について前者においてはステアラルコニウムヘクトライト、シリカ、タルク又はパラフィンロウは除かれているのに対して、後者においてはそのような記載のない点(相違点3)、及び後者においては降伏値と傾きm値で規定されるレオロジーが特定の範囲であるのに対して、前者においてはそのような規定のない点(相違点4)で相違する。

そこで、これらの相違点について、以下に検討する。
(相違点1について)
本願発明は用途限定のない組成物に係るものであるが、その具体的用途としては、3つの実施例のうち2つの実施例がリップスティック、すなわち口紅、についてのものであるところからみても、その主要な用途の一つとしてリップスティックを包含するものである。
引用例Aにおけるゲル化剤は、口紅処方に加えることによって皮膚軟化油をゲル化させる(上記A-3.)機能を有するものであり、その具体例としては、疎水性シリカなどの無機物質、エチルセルロースなどのポリマー、N-アシルアミノ酸アミドなどの有機物質が記載(上記A-6.)されている。
ところで、引用例B及びCは、ポリアミド系のゲル化剤を開示するものであり、その構造は本願発明における成分(i)のポリアミドに包含されるものであり、そのゲル化される対象としては、広範なものがあげられているが、引用例Bにおいては個人用手入れ商品の処方物、中でもリップスティックについて、個別に言及(上記B-2.及びB-3.)され、そのレオロジー特性に着目すべきことも記載(上記B-2.)され、さらに実施例14において、リップスティックのような個人的手入れ用品に使用した場合、透明で硬いゲルが得られたことが記載されている。
また、引用例Cにおいても、そのゲル化剤によりゲル化される対象のひとつとして、パーソナルケア製品が記載され、その具体例として、口紅が記載(上記C-2.段落番号[0003])され、従来例としてポリアミド樹脂から形成される透き通った口紅のキャリア組成物が挙げられ(上記C-2.段落番号[0006])、口紅に適用することについてさらに繰り返し言及(上記C-5.およびC-6.)されている。
さらに、引用例B及びCにおいては、ゲル化される対象についてもリップスティックおよびメーキャップの処方物の化粧品産業において通常用いられているイソステアリン酸イソプロピルなどの化粧用エステルが記載(上記B-5.およびC-4.)され、さらにワックスおよび油のブレンドがリップスティックのキャリアとしてよく適したコンシステンシーを提供することが知られていることも記載(上記B-2.)されている。
しかも、引用例Bには、そこに記載されたゲル化剤を用いると、口紅などにおいて重要な問題であるシネレシスが解消されることが記載(上記B-6.)されている。
さらに配合量についても、前者においてはとくに限定していないのであるから、その主要な用途のひとつである口紅の場合について、「口紅発汗を避ける上で十分な量」も包含するものであり、具体的にみても、前者においては5重量%?25重量%を例示(本願明細書の段落番号[0036])し、後者においては口紅組成物の約0.1?約20%と記載(上記A-6.)されており、大部分で重複している。
そうすると、引用例Aに記載の口紅組成物におけるゲル化剤として、口紅に使用できることを繰り返し強調している引用例Bおよび引用例Cに記載のゲル化剤を使用してみることには格別の困難性は認められない。

(相違点2について)
前者において、約45℃又はそれ以上の融点を有する固形物質とは、「室温(25℃)で固体状で、約45℃、例えば約47℃又はそれ以上、及び大気圧(760mmHg、すなわち101KPa)で可逆的な固/液状態変化を受ける化合物」のこと(本願明細書の段落番号[0042])であり、「このような化合物は、レオロジー剤、例えば非ティント性のレオロジー剤である」(同所)と記載され、具体的に挙げられているのは、各種のロウであり、天然由来のロウとしてミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、サトウキビワックス、オゾケライト等が挙げられているがこれらはいずれも後者で例示されているものである(上記A-3.)うえ、後者においては有用なワックスは約55?約110℃の融点を有するものであることも記載されている(上記A-3.)のであるから、固形物質としてのワックスとして、約45℃又はそれ以上の融点を有するものを選択することは当業者が適宜なし得る程度のことであり、そこに格別の困難性は認められない。

(相違点3について)
前者で固形物質から除外されているもののうち、後者においてワックスとして例示されているもののなかで該当するものはパラフィンロウであるが、上記したとおり、前者においても好適なものは約55?約110℃の融点を有するものであるのであるから、実質的な相違点ではない。

(相違点4について)
前者においては、レオロジーについての限定はないから、当然後者のようなレオロジー特性を有する組成物を包含するものであって、この点も実質的な相違点ではない。

そして、その奏する効果についても、引用例Bには、そこに開示されたゲル化剤(本願発明でいう構造化ポリマー)を配合した組成物が、安定性と関わりのあるシネレシスを示さないことが記載されているのである(上記B-6.)から、予想を超えて顕著なものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用例A乃至Cに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例A乃至Cに記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-09 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-11-24 
出願番号 特願2002-549184(P2002-549184)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 玲英子内田 淳子福井 悟  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 伊藤 幸司
弘實 謙二
発明の名称 ヘテロポリマーと固形物質を含有する化粧品用組成物及びその使用方法  
代理人 小林 義教  
代理人 園田 吉隆  

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