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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1216075 |
審判番号 | 不服2007-16661 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-06-14 |
確定日 | 2010-05-06 |
事件の表示 | 特願2002-506433「大容量ストレージ装置に集積された不揮発性キャッシュ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月 3日国際公開、WO02/01364、平成16年 1月22日国内公表、特表2004-502237〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2001年6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2000年6月23日,米国)を国際出願日とする出願であって、 平成14年12月20日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面、国際出願日における明細書、請求の範囲、図面、及び要約の翻訳文が提出され、 平成14年12月25日付けで手続補正書が提出され、 平成16年1月5日付けで審査請求がなされ、 平成18年12月1日付けで拒絶理由通知(平成18年12月5日発送)がなされ、 平成19年3月5日付けで意見書が提出されると共に、 同日付けで手続補正書が提出され、 同年3月14日付けで拒絶査定(平成19年3月16日発送)がなされ、 同年6月14日付けで審判請求がされると共に、 同年7月13日付けで手続補正書が提出されたものである。 なお、平成19年8月2日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成21年5月11日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(平成21年5月18日発送)がなされ、これに対して同年10月19日付けで回答書が提出されている。 第2.平成19年7月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年7月13日付けの明細書についての手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 平成19年7月13日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記の補正前の特許請求の範囲から、下記補正後の特許請求の範囲に補正しようとするものである。 <補正前の特許請求の範囲> 「 【請求項1】 ディスク・ドライブのためのデータをキャッシュする強誘電性ランダム・アクセス・メモリから構成されるディスク・キャッシュであって、前記ディスク・キャッシュは、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジックをさらに含むことを特徴とするディスク・キャッシュ。 【請求項2】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、ブロック・オリエンテッドであることを特徴とする請求項1記載のディスク・キャッシュ。 【請求項3】 前記ディスク・キャッシュは、大容量ストレージ装置に要求されたデータが前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上に格納されているかどうかを決定し、もしそうであれば、大容量ストレージ装置の代わりに前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを提供するための命令を含むことを特徴とする請求項1記載のディスク・キャッシュ。 【請求項4】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからの読み取りは、破壊的な読み取りであることを特徴とする請求項1記載のディスク・キャッシュ。 【請求項5】 大容量ストレージ装置コントローラにおいて、 主不揮発性大容量ストレージ媒体と、 前記主不揮発性大容量ストレージ媒体のためのデータをキャッシュする強誘電性ランダム・アクセス・メモリと、から構成され、前記大容量ストレージ装置コントローラは、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジックを含むことを特徴とする大容量ストレージ装置。 【請求項6】 前記主不揮発性大容量ストレージ媒体および前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、大容量ストレージ装置内に集積されることを特徴とする請求項5記載の大容量ストレージ装置。 【請求項7】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、ブロック・オリエンテッドであることを特徴とする請求項5記載の大容量ストレージ装置。 【請求項8】 前記大容量ストレージ装置は、大容量ストレージ装置コントローラからさらに構成されることを特徴とする請求項7記載の大容量ストレージ装置。 【請求項9】 前記大容量ストレージ装置コントローラは、前記大容量ストレージ装置に要求されたデータが前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上に格納されているかどうかを決定し、もしそうであれば、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを提供するロジックをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の大容量ストレージ装置。 【請求項10】 大容量ストレージ装置は、主不揮発性大容量ストレージ媒体および前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリをコントロールするためのロジックをさらに含むことを特徴とする請求項5記載の大容量ストレージ装置。 【請求項11】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからの読み取りは、破壊的な読み取りであることを特徴とする請求項10記載の大容量ストレージ装置。 【請求項12】 プロセッサと他のシステム・コンポーネントとの間の命令を管理するためのチップセットと、 前記チップセットに結合されたディスク・ドライブと、 前記チップセットに結合された不揮発性ディスク・キャッシュであって、前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記ディスク・ドライブのためのデータをキャッシュする強誘電性ランダム・アクセス・メモリを含む不揮発性ディスク・キャッシュと、から構成され、前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記不揮発性ディスク・キャッシュに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記不揮発性ディスク・キャッシュからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジックを含むことを特徴とするシステム。 【請求項13】 前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記ディスク・ドライブに集積的に結合されることを特徴とする請求項12記載のシステム。 【請求項14】 前記不揮発性ディスク・キャッシュは、ブロック・オリエンテッドであることを特徴とする請求項13記載のシステム。 【請求項15】 前記ディスク・ドライブは、ディスク・ドライブおよび前記不揮発性ディスク・キャッシュをコントロールするためのディスク・ドライブ・コントローラを含むことを特徴とする請求項12記載のシステム。 【請求項16】 前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記ディスク・ドライブに要求されたデータが前記不揮発性ディスク・キャッシュ上に格納されているかどうかを決定し、もしそうであれば、前記ディスク・ドライブの代わりに前記不揮発性ディスク・キャッシュからデータを提供するロジックをさらに含むことを特徴とする請求項15記載のシステム。 【請求項17】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからの読み取りは、破壊的読み取りであることを特徴とする請求項16記載のシステム。 【請求項18】 ディスク・メモリに関連するデータのブロックを読み取る方法であって、その方法は、 ディスク・メモリからデータのブロックを読み取るための要求を受け取る段階と、 前記要求されたデータのブロックが、強誘電性ランダム・アクセス・メモリ内にキャッシュされているかどうかを決定する段階と、 前記データが強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上にキャッシュされた場合に、前記ディスク・メモリの代わりに前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリから前記要求されたデータのブロックを読み取る段階と、から構成され、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリを含む前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記不揮発性ディスク・キャッシュに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記不揮発性ディスク・キャッシュからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジックを含むことを特徴とする方法。 【請求項19】 前記決定は、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上に格納されたキャッシュ・ディレクトリ・テーブルをチェックする段階を含むことを特徴とする請求項18記載の方法。 【請求項20】 前記データのブロックが前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上にキャッシュされない場合に、前記ディスク・メモリから前記要求されたデータのブロックを読み取る段階をさらに含むことを特徴とする請求項18記載の方法。 【請求項21】 前記ディスク・メモリから前記データを読み取る段階は、前記データを前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリへ格納する段階をさらに含むことを特徴とする請求項20記載の方法。 【請求項22】 前記方法は、前記データを前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリへ格納する段階をさらに含むことを特徴とする請求項21記載の方法。 【請求項23】 前記ディスク・メモリから前記データを読み取る段階は、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上のキャッシュ・ディレクトリ・テーブルを更新する段階をさらに含むことを特徴とする請求項22記載の方法。」 <補正後の特許請求の範囲> 「 【請求項1】 ディスク・ドライブのためのデータをキャッシュする強誘電性ランダム・アクセス・メモリから構成されるディスク・キャッシュであって、前記ディスク・キャッシュは、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジックをさらに含み、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトであることを特徴とするディスク・キャッシュ。 【請求項2】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、ブロック・オリエンテッドであることを特徴とする請求項1記載のディスク・キャッシュ。 【請求項3】 前記ディスク・キャッシュは、大容量ストレージ装置に要求されたデータが前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上に格納されているかどうかを決定し、もしそうであれば、大容量ストレージ装置の代わりに前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを提供するための命令を含むことを特徴とする請求項1記載のディスク・キャッシュ。 【請求項4】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからの読み取りは、破壊的な読み取りであることを特徴とする請求項1記載のディスク・キャッシュ。 【請求項5】 大容量ストレージ装置において、 主不揮発性大容量ストレージ媒体と、 前記主不揮発性大容量ストレージ媒体のためのデータをキャッシュする強誘電性ランダム・アクセス・メモリと、から構成され、大容量ストレージ装置コントローラは、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジックを含み、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトであることを特徴とする大容量ストレージ装置。 【請求項6】 前記主不揮発性大容量ストレージ媒体および前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、大容量ストレージ装置内に集積されることを特徴とする請求項5記載の大容量ストレージ装置。 【請求項7】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、ブロック・オリエンテッドであることを特徴とする請求項5記載の大容量ストレージ装置。 【請求項8】 前記大容量ストレージ装置は、大容量ストレージ装置コントローラからさらに構成されることを特徴とする請求項7記載の大容量ストレージ装置。 【請求項9】 前記大容量ストレージ装置コントローラは、前記大容量ストレージ装置に要求されたデータが前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上に格納されているかどうかを決定し、もしそうであれば、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを提供するロジックをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の大容量ストレージ装置。 【請求項10】 大容量ストレージ装置は、主不揮発性大容量ストレージ媒体および前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリをコントロールするためのロジックをさらに含むことを特徴とする請求項5記載の大容量ストレージ装置。 【請求項11】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからの読み取りは、破壊的な読み取りであることを特徴とする請求項10記載の大容量ストレージ装置。 【請求項12】 プロセッサと他のシステム・コンポーネントとの間の命令を管理するためのチップセットと、 前記チップセットに結合されたディスク・ドライブと、 前記チップセットに結合された不揮発性ディスク・キャッシュであって、前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記ディスク・ドライブのためのデータをキャッシュする強誘電性ランダム・アクセス・メモリを含む不揮発性ディスク・キャッシュと、から構成され、前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記不揮発性ディスク・キャッシュに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記不揮発性ディスク・キャッシュからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジックを含み、前記不揮発性ディスク・キャッシュは、少なくとも0.5ギガバイトであることを特徴とするシステム。 【請求項13】 前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記ディスク・ドライブに集積的に結合されることを特徴とする請求項12記載のシステム。 【請求項14】 前記不揮発性ディスク・キャッシュは、ブロック・オリエンテッドであることを特徴とする請求項13記載のシステム。 【請求項15】 前記ディスク・ドライブは、ディスク・ドライブおよび前記不揮発性ディスク・キャッシュをコントロールするためのディスク・ドライブ・コントローラを含むことを特徴とする請求項12記載のシステム。 【請求項16】 前記不揮発性ディスク・キャッシュは、前記ディスク・ドライブに要求されたデータが前記不揮発性ディスク・キャッシュ上に格納されているかどうかを決定し、もしそうであれば、前記ディスク・ドライブの代わりに前記不揮発性ディスク・キャッシュからデータを提供するロジックをさらに含むことを特徴とする請求項15記載のシステム。 【請求項17】 前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからの読み取りは、破壊的読み取りであることを特徴とする請求項16記載のシステム。 【請求項18】 ディスク・メモリに関連するデータのブロックを読み取る方法であって、その方法は、 ディスク・メモリからデータのブロックを読み取るための要求を受け取る段階と、 前記要求されたデータのブロックが、強誘電性ランダム・アクセス・メモリ内にキャッシュされているかどうかを決定する段階と、 前記データが強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上にキャッシュされた場合に、前記ディスク・メモリの代わりに前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリから前記要求されたデータのブロックを読み取る段階と、から構成され、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリを含む不揮発性ディスク・キャッシュは、前記不揮発性ディスク・キャッシュに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記不揮発性ディスク・キャッシュからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジックを含み、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトであることを特徴とする方法。 【請求項19】 前記決定は、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上に格納されたキャッシュ・ディレクトリ・テーブルをチェックする段階を含むことを特徴とする請求項18記載の方法。 【請求項20】 前記データのブロックが前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上にキャッシュされない場合に、前記ディスク・メモリから前記要求されたデータのブロックを読み取る段階をさらに含むことを特徴とする請求項18記載の方法。 【請求項21】 前記ディスク・メモリから前記データを読み取る段階は、前記データを前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリへ格納する段階をさらに含むことを特徴とする請求項20記載の方法。 【請求項22】 前記方法は、前記データを前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリへ格納する段階をさらに含むことを特徴とする請求項21記載の方法。 【請求項23】 前記ディスク・メモリから前記データを読み取る段階は、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリ上のキャッシュ・ディレクトリ・テーブルを更新する段階をさらに含むことを特徴とする請求項22記載の方法。」 すなわち、本件補正は、請求項1、請求項5、請求項12、請求項18に「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトである」との事項を追加しようとする補正である。 2.本件補正が新規事項の追加であるか否かについての検討 本件補正について検討するに、補正後の請求項1、請求項5、請求項12、請求項18記載の「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトである」という技術的事項は、特許法第184条の6第3項の規定により願書に添付して提出した明細書、同明細書に記載した特許請求の範囲、同図面と見なされる、上記平成14年12月20日付けの国際出願日における明細書、請求の範囲、図面の翻訳文(以下「当初明細書等」と記す。)には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。 なお、請求人は審判請求書において 「1.特許請求の範囲を補正について 審判請求人は、手続補正書において、特許請求の範囲を補正し、強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトであると限定しました。この点は、本願明細書段落0024,0027,0030の記載に基づきます。」と釈明し、 さらに、上記平成21年10月19日付け回答書において、 「本願出願当初の明細書段落[0027]に、例として2,000,000個のキャッシュ・エントリ205が示され、また明細書段落[0030]にキャッシュ・エントリのデータ・フィールド228のサイズの例として512バイトが示されており、これらの記載からディスク・キャッシュの容量は、2,000,000(個)×512(バイト)=1,024,000,000(バイト)=1,024M(バイト)=1.024G(バイト)と計算されます。 上記計算から、ディスク・キャッシュの容量が少なくとも0.5Gバイト有することは当業者であれば明らかです。 」と釈明している。 しかしながら、当初明細書等に、1.024Gバイトの容量の強誘電性ランダム・アクセス・メモリが記載されているからといって、これから、強誘電性ランダム・アクセス・メモリを、少なくとも0.5ギガバイトとする技術思想を導き出すことができるものではない。 また、当初明細書等の他の箇所を参酌しても、強誘電性ランダム・アクセス・メモリを、少なくとも0.5ギガバイトとすることを示唆する記載は見あたらない。 すなわち、当初明細書等のすべての記載を総合しても、上記の技術的事項を導き出し得るものではなく、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてするものではない。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本件補正の目的、及び、独立特許要件について 本件補正後の請求項1、5、12、18は、本件補正前の請求項1、5、12、18に記載の発明を特定するための事項(以下「発明特定事項」と略記する。)に、本件補正前にはいずれの請求項にも記載されていなかった「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトである」との発明特定事項を追加したものであるから、請求項の削除にも、誤記の訂正にも、明りょうでない記載の釈明にも該当しない。 本件補正は、本件補正前の請求項1、5、12、18の発明特定事項の1つである「強誘電性ランダム・アクセス・メモリ」に「少なくとも0.5ギガバイト」との限定を付すものであるから、本件補正前の請求項1、5、12、18の発明特定事項を限定するものである。 また、当該限定によって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野が変更されるものでも無く、また、当該限定によって、解決しようとする課題が追加されたり、変更される訳でもない。 従って、この補正は特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものと認められる。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 (1)進歩性(特許法第29条第2項)について ア.本件補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1.において、補正後の特許請求の範囲の【請求項1】として記載した通りのものである。 イ.引用文献の記載内容 原審の拒絶の査定の理由である上記平成18年12月1日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。 <引用文献1> 特開平10-124397号公報(平成10年5月15日出願公開) <引用文献記載事項1-1> 「【請求項20】 RAMと、データを変更可能に記憶することができる少なくとも1つの局所不揮発性の局所大容量記憶装置とを備えるコンピュータ・システムと共に実現される多層キャッシング・システムにおいて、 前記局所大容量記憶装置よりも低速のアクセス時間を有し、キャッシングのために設計され、且つ、第3層データの記憶のために設けられた低速大容量記憶装置と、 前記局所大容量記憶装置の一部分に確立され、前記第3層データのサブセットである第2層データの不揮発性ブロックを記憶するよう設けられ、全記憶容量が前記低速大容量記憶装置よりも小さい不揮発性キャッシュと、 前記RAMの一部分に確立され、前記第2層データのサブセットである第1層データのRAMブロックを記憶するために設けられ、全記憶容量が前記不揮発性キャッシュよりも小さいRAMキャッシュと、を備える多層キャッシング・システム。」 <引用文献記載事項1-2> 「【請求項23】 前記低速大容量記憶装置が前記コンピュータ・システムによって制御されるCD-ROMドライブである、請求項20記載の多層キャッシング・システム。 【請求項24】 前記低速大容量記憶装置が、ネットワーク・データ・リンクを介して前記コンピュータ・システムが結合されるサーバー・データ処理システムによって制御されるCD-ROMドライブである、請求項20記載の多層キャッシング・システム。 【請求項25】 前記低速大容量記憶装置が、ネットワーク・データ・リンクを介して前記コンピュータ・システムが結合されるサーバー・データ処理システムによって制御されるハードディスク・ドライブである、請求項20記載の多層キャッシング・システム。」 <引用文献記載事項1-3> 「【0026】マイクロソフト・ウィンドウズ3.xオペレーティング・システム及びウィンドウズ95オペレーティング・システムの性能を強化するために、この発明の実施の形態は、局所CD-ROMドライブ及び非局所ネットワーク資源(これは、局所及び遠方のサーバー・システム・ディスク・ドライブ等を含む)に記憶された情報の多層キャッシングを提供する。小型の上層(upper-tier)キャッシュはLRU(リースト・リーセントリー・ユーズド)法で管理される高速ランダム・アクセス・メモリ(RAM)において初期設定される。この高速RAMはスタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)チップ、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)チップ、強誘電性DRAMメモリ・チップ、又はその他の種々の形式の高速RAMから組み立てられる。RAMにおける小型のキャッシュは、局所ハードディスク・ドライブにおけるずっと大型の不揮発性の下層(lower-tier)キャッシュによってバックアップされる。多層キャッシュ・システムの使用はいくつかの理由から有利である。ディスク・ドライブに常駐するキャッシュは、非局所ネットワーク・ドライブから、又は、局所又は非局所CD-ROMドライブから検索されたデータの不揮発性記憶装置を提供する。つまり、多層キャッシュ・システムが動作するデータ処理システムの電源が切られるとき、ハードディスク・ドライブ上のキャッシュされたデータは失われない。高速RAMキャッシュはハードディスク・ドライブよりもずっと迅速なデータ・アクセスを提供し、RAMキャッシュに記憶されたデータがシステムの電源断によって失われたとしても、該RAMキャッシュは、システムのブートアップ(boot-up)後にRAMキャッシュが再初期設定されると、不揮発性のオンディスク・キャッシュから部分的に又は完全に再ロードされる。この発明は多層キャッシュ・システム装置ばかりでなく、こうした多層キャッシュ・システム装置を実現する方法をも含む。」 <引用文献記載事項1-4> 「【0030】かくて、この発明の多層キャッシュ・システムは、3つのレベルのデータに対して階層記憶を提供する。下層である第3層は、データ・リンクを介して局所ノードと接続されるためにアクセス速度が低下したネットワーク大容量記憶装置や局所CD-ROMドライブのような低速の大容量記憶装置上のデータによって表される。第2層はハードディスク・ドライブのような不揮発性メモリ内のキャッシュされるデータによって表される。第1層はシステムRAM内のキャッシュされるデータによって表される。」 <引用文献2> 特開平9-128164号公報(平成9年5月16日出願公開) <引用文献記載事項2-1> 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 着脱可能な円板状の媒体に記憶された情報を読み出して再生する装置において、前記媒体から読み出されたデータを格納するキャッシュメモリと、立上げ時に前記媒体から読み出された先頭プログラムのデータを格納する書込み及び消去が可能な不揮発性記憶手段と、前記媒体の再生を最初に行う際にオン状態にされて前記媒体から読み出された先頭プログラムのデータを前記記憶手段へ送る開閉スイッチと、前記記憶手段と前記キャッシュメモリとを切り替えて装置本体のCPUに接続可能であって一旦電源がオフされた後に同一の前記媒体が保持されたまま再び電源がオンされた時もしくはリセットされた時にのみ前記記憶手段を前記CPUに接続して同記憶手段の保持データを読み出して前記CPUに送る切替スイッチとを備えたことを特徴とする記憶情報の再生装置。 【請求項2】 着脱可能な円板状の媒体に記憶された情報を読み出して再生する装置において、前記媒体から読み出されたデータを格納するキャッシュメモリと、該キャッシュメモリ内に設けられ、立上げ時に前記媒体から読み出された先頭プログラムのデータを格納する書込み及び消去が可能な不揮発性記憶手段と、前記媒体の再生を最初に行う際に前記記憶手段のアドレスを指定して該記憶手段に前記媒体から読み出された前記先頭プログラムのデータを格納するとともに、一旦電源がオフされた後に同一の前記媒体が保持されたまま再び電源がオンされた時もしくはリセットされた時にのみ前記記憶手段のアドレスを指定して該記憶手段の保持データを読み出して装置本体のCPUに送る制御部とを備えたことを特徴とする記憶情報の再生装置。」 <引用文献記載事項2-2> 「【請求項7】 前記記憶手段は、一括消去型電気的消去及び書込み可能な読出し専用メモリ、電気的消去及び書込み可能な読出し専用メモリ、不揮発性強誘電体メモリ、または電池によりバックアップされた揮発性半導体メモリであることを特徴とする請求項1または2記載の記憶情報の再生装置。 【請求項8】 前記記憶手段は、装置本体に接続された磁気ディスク装置であることを特徴とする請求項1記載の記憶情報の再生装置。」 <引用文献3> 特開平10-187536号公報(平成10年7月21日出願公開) <引用文献記載事項3-1> 「【0056】以上の実施例では、内部DRAMメモリDRAM1はコンデンサ(静電容量)によって情報を記憶するダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)のメモリセルによってメモリが構成されているが、強誘電体膜の分極特性によって情報を記憶する強誘電体メモリ(FRAM)のメモリセルや、フローティングゲート中に蓄えられた電荷によって情報を記憶するフラッシュメモリのメモリセルで構成してもよい。また、SRAMメモリセルを使ったB場合でもセル面積が小さくなる高抵抗負荷型SRAMメモリセル等で構成してもよい。要は面積あたりの容量が大きくなるようなものであれば特に限定しない。」 ウ.引用発明の認定 (ア)引用文献1記載のものは、上記引用文献記載事項1-1記載の如く「第3層データの記憶のために設けられた低速大容量記憶装置」と「前記第3層データのサブセットである第2層データの不揮発性ブロックを記憶するよう設けられ、全記憶容量が前記低速大容量記憶装置よりも小さい不揮発性キャッシュ」を備えている。すなわち、引用文献1には「低速大容量記憶装置」が記憶する「第3層データのサブセットである第2層データの不揮発性ブロックを記憶するよう設けられ、全記憶容量が前記低速大容量記憶装置よりも小さい不揮発性キャッシュ」が記載されていると言える。 (イ)また、上記引用文献記載事項1-2の通り、該「低速大容量記憶装置」は「CD-ROMドライブ」または「ハードディスク・ドライブ」である。 従って、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。 <引用発明> 「CD-ROMドライブまたはハードディスク・ドライブが記憶するデータのサブセットであるデータの不揮発性ブロックを記憶するよう設けられ、全記憶容量が前記低速大容量記憶装置よりも小さい不揮発性キャッシュ」 エ.対比 以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。 (ア)引用発明の「不揮発性キャッシュ」は「CD-ROMドライブまたはハードディスク・ドライブが記憶するデータのサブセットであるデータの不揮発性ブロックを記憶するよう設けられ」たものであるから、本件補正発明と同様に「ディスク・ドライブのためのデータをキャッシュする」「ディスク・キャッシュ」とも言えるものである。 (イ)また、引用発明が「不揮発性キャッシュ」であるところ、本件補正発明における「強誘電性ランダム・アクセス・メモリ」も不揮発性の記憶手段に他ならないので、引用発明と本件補正発明とは「不揮発性の」キャッシュである点でも一致する。 よって、本件補正発明は下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。 <一致点> 「ディスク・ドライブのためのデータをキャッシュする」不揮発性の「ディスク・キャッシュ」 <相違点1> 本件補正発明においてはディスク・キャッシュを「強誘電性ランダム・アクセス・メモリから構成される」ものとしている点。 (これに対し、引用文献1においては「不揮発性キャッシュ」としては「ハードディスク・ドライブ」が例示されているのみであり(上記引用文献記載事項1-4参照)、また、「高速RAM」の一例として「強誘電性DRAMメモリ・チップ」が例示されてはいる(上記引用文献記載事項1-3参照)ものの、これを「不揮発性キャッシュ」として用いる旨の記載はない。) <相違点2> 本件補正発明は「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジック」をさらに含んでいる点。 (これに対し、引用文献1においては「エラー修正」に関する記載はない。) <相違点3> 本件補正発明においては、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリが、「少なくとも0.5ギガバイト」である点。 (これに対し、引用文献1においては、不揮発性キャッシュの容量の具体的数値の記載はない。) オ.判断 以下、上記相違点について検討する。 <相違点1について> 不揮発性の記憶手段として、強誘電性ランダム・アクセス・メモリは周知慣用のものであり(必要があれば上記引用文献2(上記引用文献記載事項2-1、2-2等)、または、特開平6-204404号公報(特に【請求項11】?【請求項14】)、特開平5-283612号公報(特に【請求項11】?【請求項23】)、特開平4-314361号公報、特開平4-90189号公報(特に請求項41?49)等参照)、また、強誘電性ランダム・アクセス・メモリをキャッシュメモリとして用いることも適宜なされていたことである(必要があれば、引用文献1の上記引用文献記載事項1-3や引用文献3の上記引用文献記載事項3-1等参照)から、引用発明の「不揮発性キャッシュ」として、かかる強誘電性ランダム・アクセス・メモリの採用を試みることは、当業者の通常の創作力の発揮に他ならず、その採用に際して格別な阻害要因も認められない。 従って、上記相違点1のディスク・キャッシュを「強誘電性ランダム・アクセス・メモリから構成される」ものとすることは、当業者であれば容易に想到し得た構成である。 <相違点2について> 情報の記録に際し、エラー訂正コードの付加をし、再生に際し該エラー訂正コードを用いてエラー訂正を行うことは、古くから当業者が必要に応じて適宜採用している周知慣用技術に過ぎないものである(必要があれば、原審の拒絶査定の備考において提示された特開平5-250274号公報(特に段落【0013】、図2)、特開平2-73439号公報、特開昭63-62056号公報等参照)。 従って、上記相違点2における「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリに格納されたデータに関連するエラー修正コードをチェックし、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリからデータを読み取るときに生じるエラーを修正するためのロジック」を含むものとすることは、当業者が必要に応じて適宜に採用し得た設計的事項に過ぎないものである。 <相違点3について> ディスクキャッシュの容量は、ディスクの用途や容量等に応じて適宜に最適化し得る設計的事項に他ならないものであり、「少なくとも0.5ギガバイト」なる数値も格別特異な数値ではなく(必要があれば特開平11-338641号公報(特に段落【0036】)、特開平10-232838号公報(特に段落【0002】)等参照)、また、当該数値の範囲内で奏される効果が、当該数値の範囲外で奏される効果に比し、異質または際だって優れたものであるとも認められない。 従って、上記相違点3における、前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリを「少なくとも0.5ギガバイト」とする点も、当業者が必要に応じて適宜に採用し得た設計的事項に過ぎないものである。 してみると、本件補正発明の構成は引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。 よって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (2)記載要件(特許法第36条)について 上記2.で述べた通り、「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトである」という技術的事項は当初明細書等のすべての記載を総合しても、導き出し得るものではない。 そして、平成14年12月25日付け手続補正書、平成19年3月5日付けの手続補正書、平成19年7月13日付けの手続補正書において、「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトである」ことを、発明の詳細な説明に記載する補正はなされていない。 また、発明の詳細な説明には1.024Gバイトの容量の強誘電性ランダム・アクセス・メモリが例示されているものの、該一例のみの開示をもって「少なくとも0.5ギガバイト」の数値範囲全体にわたる十分な数の具体例が示されていると認めることはできず、また、発明の詳細な説明の他所の記載をみても、出願時の技術常識に照らしても、当該「1.024Gバイト」の具体例から「少なくとも0.5ギガバイト」の数値範囲全体にまで拡張ないし一般化できるものではない。 従って「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトである」ことは本願発明の詳細な説明には記載されるものではない。 また、当該「少なくとも0.5ギガバイト」の数値範囲の内と外とでどの程度の効果が相違するのかといった、技術上の意義を理解するために必要な事項の記載も、本願発明の詳細な説明には見あたらない。 してみると、本件補正後の請求項1?23に係る発明は、本件補正後の発明の詳細な説明に記載されていないものであり、また、本件補正後の発明の詳細な説明は、本件補正後の請求項1?23に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。 従って、本件補正後の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項及び第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件補正後の請求項1?23に係る発明は、この理由によっても特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)小結 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 4.むすび 以上述べたように、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、しかも、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものでもある。 よって、上記補正却下の決定の結論の通り決定する。 第3.本件審判請求の成否について 1.手続きの経緯・本願発明の認定 本願の手続きの経緯の概略は上記第1.記載の通りのものであり、さらに、平成19年7月13日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。 従って、本願の特許請求の範囲は、平成19年3月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の通りのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と言う。)は、上記第2.1.に補正前の特許請求の範囲の【請求項1】として記載した通りのものである。 2.引用文献の記載内容・引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1、2には、それぞれ上記第2.3.(1)イ.記載の引用文献記載事項が記載されており、上記引用文献1には上記第2.3.(1)ウ.で認定した通りの引用発明が記載されていると認められる。 3.対比・判断 本願発明は、上記第2.3.(1)で検討した本件補正発明から、「前記強誘電性ランダム・アクセス・メモリは、少なくとも0.5ギガバイトである」という限定事項を省いたものである。 してみると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2.(1)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-25 |
結審通知日 | 2009-11-30 |
審決日 | 2009-12-14 |
出願番号 | 特願2002-506433(P2002-506433) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F) P 1 8・ 575- Z (G06F) P 1 8・ 561- Z (G06F) P 1 8・ 536- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清木 泰 |
特許庁審判長 |
山崎 達也 |
特許庁審判官 |
石井 茂和 宮司 卓佳 |
発明の名称 | 大容量ストレージ装置に集積された不揮発性キャッシュ |
代理人 | 本城 雅則 |
代理人 | 本城 吉子 |