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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M |
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管理番号 | 1216088 |
審判番号 | 不服2007-27652 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-09 |
確定日 | 2010-05-06 |
事件の表示 | 特願2001-388816「リチウム二次電池用の負極及びリチウム二次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成15年7月11日出願公開、特開2003-197182〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判に係る出願は、平成13年12月21日に出願され、平成17年9月7日付け及び平成19年1月15日付けでその願書に添付した明細書について補正する手続補正書が提出されたものの、平成19年7月4日付けで拒絶査定されたものである。 そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として平成19年10月9日に請求されたものであって、同年11月6日付けで上記明細書についての手続補正書が提出されたものの、平成21年7月30日付けでこの手続補正についての補正の却下の決定がされ、同日付け拒絶理由通知書が発送され、同年11月4日付けで上記明細書についての手続補正書が提出されたものである。 2.拒絶理由の内容 平成21年7月30日付け拒絶理由通知書で示された拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、以下の拒絶理由A及びBを有するものである。 拒絶理由A;「この出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」 拒絶理由B;「この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」 そして、上記当審拒絶理由において、拒絶理由Aにつき、発明の詳細な説明が、当業者が請求項1?7に係る発明を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されているということはできないと指摘し、また、拒絶理由Bにつき、特許請求の範囲の「I(110)/I(002)(%)」という記載は意味不明であるから、請求項1?7に記載された発明は明確でないと指摘している。 3.当審の判断 当審拒絶理由の妥当性について、以下に検討する。 3-1.拒絶理由Bについて 平成21年11月4日付け手続補正により、発明の詳細な説明の【0022】が補正され、『I(110)/I(002)(%)」は、I(110)の値をI(002)の100倍の値で除したものである。』との記載が追加されたので、これによって不明確であった「I(110)/I(002)(%)」の意味は明確となり、拒絶理由Bは解消した。 3-2.拒絶理由Aについて 1)当審拒絶理由で指摘した拒絶理由Aの具体的理由は、以下のa?cの3点である。 a;実施例に記載されたものの如く「粉末の状態でI(110)/I(002)(%)が3.0」という、入手可能であるものより大きな数値を示す鱗片状の天然黒鉛は、どうすれば得られるのかが発明の詳細な説明の記載では全く不明であるから、本願請求項1?7に係る発明は、発明の実施例を再現することすらできないものであり、発明の詳細な説明が、当業者が請求項1?7に係る発明を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されているということはできない。 b;実施例に記載されているように、「粉末の状態でI(110)/I(002)(%)が3.0」という鱗片状の天然黒鉛を用いれば、I(110)/I(002)(%)が5.7の負極が得られるとしても、「粉末の状態でI(110)/I(002)(%)が1.0以上」で、3.0未満の鱗片状の天然黒鉛を用いた場合に、どうすればI(110)/I(002)(%)が5.7もの負極が得られるのかが、発明の詳細な説明の記載では不明であり、発明の詳細な説明が、当業者が請求項1?7に係る発明を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されているということはできない。 c;発明の詳細な説明には、「I(110)/I(002)(%)」という記載が存在するが、この記載について、発明の詳細な説明にはその定義も記載されていなければその説明もないから、前記記載は意味が不明であり、発明の詳細な説明が、当業者が請求項1?7に係る発明を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されているということはできない。 2)そして、先に「3-1」で述べたように、補正によって「I(110)/I(002)(%)」の意味が明確になったから、上記拒絶理由Aのcの点は解消した。 3)そこで、拒絶理由Aのaの点が解消したか、につき以下に検討する。 入手可能な鱗片状の天然黒鉛粒子のX線回折強度比I(110)/I(002)は、0.0015?0.0018程度かその前後であることが知られている(要すれば、特開2000-226206号公報の【0020】、特開平11-263612号公報の【0018】、特開平11-283622号公報の【0032】、【0033】参照)ところ、本件審判に係る出願の明細書の発明の詳細な説明には、「【0042】【実施例】・・・負極活物質として天然黒鉛を用意した。この天然黒鉛は、粉末の状態でI(110)/I(002)(%)が3.0を示すものである。」と記載されている。そして、この実施例に記載されたものは「粉末の状態でI(110)/I(002)(%)が3.0」であるから、X線回折強度比I(110)/I(002)で表すと、「粉末の状態でX線回折強度比I(110)/I(002)が300」であるといえ、入手可能であるX線回折強度比I(110)/I(002)が「0.0015?0.0018程度かその前後」のものよりはるかに大きな数値を示す鱗片状の天然黒鉛であるといえる。 また、仮に、『I(110)/I(002)(%)」は、I(110)の値をI(002)の100倍の値で除したものである。』との【0022】の記載が『I(110)/I(002)(%)は、I(110)の値をI(002)の値で除し、100倍したものである。』の誤りであったとしても、その場合は「粉末の状態でX線回折強度比I(110)/I(002)が0.03」であり、入手可能であるX線回折強度比I(110)/I(002)が「0.0015?0.0018程度かその前後」のものより1桁大きな数値を示す鱗片状の天然黒鉛であるといえる。 そして、このように入手可能であるものより大きな「I(110)/I(002)(%)」値を示す鱗片状の天然黒鉛はどうすれば得られるのかが発明の詳細な説明の記載では全く不明であるから、本願請求項1?3に係る発明は、発明の実施例を再現することすらできないものである。 よって、発明の詳細な説明が、当業者が請求項1?3に係る発明を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されているということは依然としてできない。 4)以上のとおり、上記拒絶理由Aのbの点について検討するまでもなく、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、拒絶理由Aは妥当である。 これに対し、請求人は、意見書において、「本願発明の請求項1のX線回折強度は、活物質ではなく極板を製造した後の黒鉛のX線回折強度であって、磁場を印加して極板を製造したものであるため、極板のI(110)/I(002)(%)が3.0であることにご留意を御願いいたします。・・・特開2000-226206号のX線回折強度は、製造された負極活物質のX線回折強度を測定したものであって、この負極活物質で極板を製造した後のX線回折強度ではないため、X線回折強度の測定対象が相異しています。」と述べている。しかしながら、拒絶理由Aのaの点は、請求項1のX線回折強度が3.0であると指摘するものでなく、「発明の詳細な説明には、『【0042】【実施例】・・・負極活物質として天然黒鉛を用意した。この天然黒鉛は、粉末の状態でI(110)/I(002)(%)が3.0を示すものである。』と記載されている。」と、発明の詳細な説明に記載された「『粉末』の状態でI(110)/I(002)(%)が3.0」であると指摘し、この「『粉末』の状態でI(110)/I(002)(%)が3.0」である鱗片状の天然黒鉛はどうすれば得られるのか不明であるというものであるから、請求人の意見書における主張は、この拒絶理由Aのaの点に対する釈明になっていないことが明らかで、採用することができないものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、当審拒絶理由は妥当である。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-27 |
結審通知日 | 2009-12-01 |
審決日 | 2009-12-14 |
出願番号 | 特願2001-388816(P2001-388816) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(H01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齋藤 恭一、天野 斉、木村 孔一 |
特許庁審判長 |
山田 靖 |
特許庁審判官 |
青木 千歌子 大橋 賢一 |
発明の名称 | リチウム二次電池用の負極及びリチウム二次電池 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 志賀 正武 |