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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2009800211 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1216111
審判番号 無効2009-800212  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-10-06 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 上記当事者間の特許第4121480号発明「真空処理方法及び真空処理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4121480号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成 9年 3月19日 原出願(特願平9-66097号)
平成13年12月18日 分割出願(特願2001-384743号)
平成16年 2月13日 分割出願(特願2004-36974号)
平成16年 5月24日 本件出願(特願2004-153482号)
(特許法第44条)
平成20年 5月 9日 設定登録(特許第4121480号)
平成21年10月 6日 無効審判請求
平成22年 1月25日 答弁書、訂正請求書
平成22年 3月 1日 請求人・口頭審理陳述要領書
平成22年 3月 8日 被請求人・口頭審理陳述要領書
訂正請求取下書
平成22年 3月15日 口頭審理

第2.本件発明
訂正請求が、取り下げられたことから、本件特許の請求項1ないし2に係る発明(以下「本件発明1ないし2」という。)は、以下のとおりである。
なお、請求項1のA、B、C等の分説は、被請求人の口頭審理陳述要領書によるものとした(口頭審理調書の「両当事者 1」)。

「【請求項1】
A.ウェハを真空処理する複数の真空処理室と、該各真空処理室にウェハを搬入出する真空搬送手段と、前記各真空処理室へウェハを搬入出するための大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能な室と、
B.ウェハを収納できる複数のカセットを載置し得るカセット載置手段と、該カセット載置手段上の任意のカセット内からウェハを抜き取れるように構成された搬送手段と、
C.前記任意のカセット内のウェハを前記搬送手段及び前記切り替え可能な室並びに前記真空搬送手段を介して並列運転される真空処理室に搬入し、前記各真空処理室で真空処理された処理済ウェハを搬出するための搬送制御を行う制御手段とで構成された真空処理装置において、
D.少なくとも2つのカセットを使用し、カセットに収納されたウェハを前記搬送手段及び前記切り替え可能な室並びに前記真空搬送手段を介してカセット毎に前記いずれかの真空処理室へ搬送し、搬送されたウェハに、前記並列運転される真空処理室毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理、
E.及び少なくとも2つのカセットを使用し、該カセットに収納されたウェハに、前記並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理の何れかを選択的に施すとともに
F.前記並列処理を施した後のウェハを前記切り替え可能な室を介してもとのカセットに戻し、
G.かつ、いずれかのカセット内の全てのウェハ処埋を終了し、カセット交換の間、他方のカセット内のウェハを搬出し前記処理を継続することを特徴とする真空処理装置。

【請求項2】
カセット載置手段に載置される任意のカセット内からウェハを抜き取り、大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能な室を経由して並列運転される真空処理室に搬送し、ウェハの真空処理を行う真空処理方法において、
少なくとも2つのカセットを使用し、カセットに収納されたウェハを抜き取れるように構成された搬送手段、前記切り替え可能な室並びに真空搬送手段を介して搬送し、搬送されたウェハに、前記並列運転される真空処理室毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理、及び少なくとも2つのカセットを使用し、該カセットに収納されたウェハに、前記並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理の何れかを選択的に施すとともに前記並列処理を施した後のウェハを前記切り替え可能な室を介してもとのカセットに戻し、かつ、いずれかのカセット内の全てのウェハ処埋を終了し、カセット交換の間、他方のカセット内のウェハを搬出し前記処理を継続して行うことを特徴とする真空処理方法。」

第3.請求人の主張
1.主張の要点
請求人は、以下の理由により、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とするとの審決を求めている。
本件発明1ないし2は、甲第1ないし3号証によって容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

2.証拠
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開平5-226453号公報
甲第2号証:特開平5-55148号公報
甲第3号証:特開平4-108531号公報

3.主張の概要
請求人の主張の概要は、以下のとおりである。
なお、原文の丸囲み数字は「丸1」のように置き換えた。行数は、空行を含まない。

ア.請求書第19ページ第10行?第21ページ第5行
「本件請求項1に係る特許発明の特徴部分E1(当審注、Dの後段とE)の、「搬送されたウェハに、前記並列運転される真空処理室毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理、及び少なくとも2つのカセットを使用し、該カセットに収納されたウェハに、前記並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理の何れかを選択的に施すとともに」という部分と、甲第1号証の[0010]の一部である、
「オペレータが真空処理室の処理順序とそれぞれの真空処理室のプロセス処理データとを設定することで、装置内での真空処理室の配置に関係なく自在に処理シーケンスを設定できる」
という部分とを対比して説明する。
まず、オペレータが、特徴部分E1中の「該カセットに収納されたウェハに、前記並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理」を行うように、真空処理室の処理順序とそれぞれの真空処理室のプロセス処理データとを設定することは、甲第1号証に基づけば、問題なく行える。
一方、オペレータが、特徴部分E1中の「搬送されたウェハに、前記並列運転される真空処理室毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理」を行うように、真空処理室の処理順序とそれぞれの真空処理室のプロセス処理データとを設定することも、甲第1号証の[0010]に記載されているように、
「オペレータが真空処理室の処理順序とそれぞれの真空処理室のプロセス処理データとを設定することで、装置内での真空処理室の配置に関係なく自在に処理シーケンスを設定できる」
ことに鑑みると、自在な処理シーケンスの設定の1つに過ぎないから、当業者であれば、甲第1号証に基づいて容易に想到することができる。
そして、上述の特徴部分E1中の「搬送されたウェハに、前記並列運転される真空処理室毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理」と、同じく特徴部分E1中の「該カセットに収納されたウェハに、前記並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理」のうち、何れかを選択的に施すことは、当業者であれば当たり前の事項に過ぎない。
さらに、甲第1号証の[0011]には、
「また、上記で述べた搬送処理順序情報を処理工程毎に作成し、かつ、2つ以上の処理工程分の情報を記憶できる構成とし、各処理工程の搬送処理順序情報に登録してあるウエハの搬送又は、プロセス処理条件が成立した方の処理を実行させることにより、複数の同じ又は、異なる処理工程を真空処理装置内で同時に実行させることができる。」
と記載されている。この記載中には、
「複数の同じ又は、異なる処理工程を真空処理装置内で同時に実行させることができる。」
とあり、この記載から〔i〕複数の同じ処理工程を真空処理装置内で同時に実行させることができる、というのと、〔ii〕複数の異なる処理を真空処理装置内で同時に実行させることができる、ということが記載されている。
このことからすると、オペレータが、特徴部分E1中の「該カセットに収納されたウェハに、前記並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理」を行うように、真空処理室の処理順序とそれぞれの真空処理室のプロセス処理データとを設定することは、上述の〔i〕から明らかである。
また、上述の〔ii〕の「複数の異なる処理を真空処理装置内で同時に実行させることができる」という記載中、「同時に実行させる」とあることから、異なる処理を施す並列処理を行うことは明らかである。そのため、上述の〔ii〕から、「異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理を行う」ことは明らかである。そして、ここまで明らかにされている事項に基づいて、当業者が、「真空処理室毎に異なるレシピを適用する」か、「全ての真空処理室に共通のレシピを適用する」か、または「ある一群の真空処理室には特定のレシピを適用し、その他の真空処理室には他のレシピを適用する」か否かを選択することは、容易に想到し得るものである。」

イ.請求書第21ページ第24行?第22ページ第19行
「甲第2号証の明細書の[0051]には、
「一方のカセット11aに収納されていた半導体ウエハW1を外部ロボット13により取出して」
とあり、その[0051]以下の記載と、図7等を見れば、甲第2号証は半導体ウエハW1を始めとする各半導体ウエハの搬送/処理について開示している。そして、明細書の[0058]には、
「処理済の半導体ウエハW1をカセットステーション10のカセット11a内に収納して、この半導体ウエハW1に対する処理を終了する。」
と記載されていることから、半導体ウエハW1は、カセット11aから取出され、さらに取出し時と同じカセット11aに収納される。
このことと、甲第2号証の明細書の[0051]から[0058]の記述に基づけば、半導体ウエハW2はカセット11bから取出され、さらに取出し時と同じカセット11bに収納され(明細書の[0052]の記載を参照)、半導体ウエハW3はカセット11aから取出され、さらに取出し時と同じカセット11aに収納されている(明細書の[0055]の記載を参照)。以下、半導体ウエハW4,W5・・・と順次処理される半導体ウエハにおいては、カセット11aとカセット11bから交互に取り出されて、それぞれ、取出し時と同じカセット11aまたは取出し時と同じカセット11bに収納されている。
なお、甲第2号証の明細書の[0051]から[0058]までの記載、および図7の開示からすると、処理チャンバ50aにおける処理と、処理チャンバ50bにおける処理とでは、同じ処理であると判断される。そのため、この部分には、特徴部分E1中の「該カセットに収納されたウェハに、前記並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理」が開示されている。」

ウ.請求書第24ページ第11?23行
「しかしながら本件請求項1に係る特許発明の構成要件G1(当審注、G)は、甲第3号証に開示されている。
甲第3号証では、「未処理ウェーハの処理が完了し、元の位置に再収納し終わるとカセット1aは回収可能となる」と、「別の未処理ウェーハを収納したカセットと交換される」が、「装置はその間カセット1b内の未処理ウェーハの処理を続けて」いる。すなわち「カセット1bの全てのウェーハの処理が完了する前に別の未処理ウェーハを収納したカセットが供給されれば」、「装置は常に連続的に稼働可能」となっている。したがって、請求項1に係る特許発明の構成要件G1のように、「いずれかのカセット内の全てのウェハ処埋を終了し、カセット交換の間、他方のカセット内のウェハを搬出し前記処理を継続する」ことが可能となる。
また甲3号証に記載された発明は、請求項1に係る特許発明、甲第1号証、および甲第2号証と同様に、真空処理装置に関する発明である。」

エ.口頭審理陳述要領書第3ページ第11行?第4ページ第1行
「無効2009-800129における平成21年12月16日起案(発送日:平成21年12月17日)の職権審理結果通知書の第16頁の上から第8行目?第15行目に示されているように、甲第2号証(特開平5-55148号公報)に記載の発明(甲2発明)においては、「カセット11aから取出した半導体ウェハのいずれをも、処理チャンバ50aに搬送し、ここ(処理チャンバ50a)で処理を施した処理済の半導体ウェハを再び(もとの)カセット11aに戻し、カセット11bから取出した半導体ウェハのいずれをも、処理チャンバ50bに搬送し、ここ(処理チャンバ50b)で処理を施した処理済の半導体ウェハを再び(もとの)カセット11bに戻すものであると解するのが最も自然である」、ということができる。
また、審判請求書の第16頁の上から第8行目?第25行目に記載したように、甲第2号証には、処理チャンバ毎に異なるレシピの処理が開示されている。
したがって、甲第2号証記載の発明から、2カセット2レシピにおいて、「2つのカセットを使用」し「もとの」カセットに戻すことは、容易に想到することができる。また甲第1号証(特開平5-226453号公報)記載の発明に、甲第2号証記載の発明のカセットと処理室の対応関係を適用すれば、容易に想到することができる。」

オ.調書における請求人の主張
「2 甲第3号証には、「構成G」が記載されている。
3 事前連絡メモ「相違点1」は、甲第1号証に甲第2号証を適用する場合、同一のカセット内のウェハ毎にレシピを異ならせるのは不自然である。
4 管理をカセット毎に行うことは、技術常識である。」

第4.被請求人の主張
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。
その主張の概要は、以下のとおりである。

ア.答弁書第8ページ下から1行?第9ページ第8行
「甲1発明は、上記ウ.iに記載したように、そもそもカセット数とレシピ数との関連については、何ら考慮されていないものである。
請求人は審判請求書第10頁12行目以降において、甲1発明は「大気カセットから大気搬送装置によって試料の取出及び収納が行われ、そのとき複数の同じ又は、異なる処理工程を真空処理室内で同時に実行する場合には、2つのカセットがあることになるから本件特許発明のD1に相当する構成が開示されている」と主張しているが、2レシピであるとしてもカセットが2つであるとは限らないのであるから、甲1発明が構成D1を有していると認定することはできない。つまり、甲1発明は構成要件Dを具備しない。」

イ.答弁書第10ページ第6?7行
「複数個のカセットを有している場合にも、もとのカセットに戻すことは必ずしも当然ではない。」

ウ.答弁書第10ページ第28?34行
「甲2発明は、上記ウiiに記載したように、いわば2カセット連続処理、あるいは2カセット1レシピ並列処理をするものであって、2カセット2レシピ並列処理をするものでないし、それを示唆する構成もない。たしかに、甲2発明では、複数のカセットを備えているが、2レシピ並列処理について何ら記載はないし、それを示唆する記載もないのであるから、2カセット2レシピ並列処理を有しているとすることはできない。しかも、いずれかの処理を選択的に施すことについても記載がない。」

エ.答弁書第12ページ下から6行?第13ページ第18行
「丸1 甲1発明は、ウエハとカセットの関係は特定されない搬送方式でウエハが順次搬送され、ウエハが搬送された3つ以上の処理室では同一または異なるレシピが適用される連続処理方式とされている。
甲2発明は、上述したように、二つのカセットから二つの処理室にそれぞれウエハを搬入出するというウエハの搬送方式を取り、また、二つの処理室には同一のレシピあるいは連続処理のレシピを適用する処理方式とされている。
このように、甲1発明と甲2発明とでは、ウエハの搬送方式に共通性がなく、搬送されたウエハに処理室で施す処理に一部共通性があるのみである。
したがって、このようにウエハの搬送方式に共通性がなく、搬送されたウエハに処理室で施す処理に一部共通性があるのみである甲1発明及び甲2発明の技術を組み合わせる動機付けに乏しく、しかも組み合わせたとしても、2つのカセットを使用し搬送したウエハに前記カセット毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理(2カセット2レシピ並列処理)、並びに前記並列処理および各カセットに収納されたウエハに共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理(2カセット1レシピ並列処理)の何れかを選択的に施すことが容易に推考することができるものでもない。
また、甲1発明および甲2発明における処理は、上述したように処理方式としても一致している訳ではない。このため、両者を、並列処理を行う点で共通するとして、組み合わせの動機付けをすることも困難である。例えば、甲1発明に用いるカセットとして2つを配置したとしても、1つのカセットを使用することも考えられ、2つのカセットを使用する必然性を甲1発明および甲2発明の組み合わせから導出することは困難であり、ましてや、「搬送したウエハにカセット毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理」の構成を導出することは困難である。」

オ.口頭審理陳述要領書第6ページ第3?9行
「これに対して、本件特許発明の場合は、2カセット1レシピあるいは2レシピ並列処理を施し、更に処理後のウエハを共通のアンロードロック室を介してもとのカセットに戻す処理を施すので、例えばカセットC1には処理経路Aで処理されたウエハのみが収納され、カセットC2には処理経路Bで処理されたウエハのみが収納されることになる。このため、前記プロセス処理装置の異常によりウエハの製造結果に異常が生じた場合における原因追跡あるいは異常ウエハの回収処理を容易に行うことができる。」

カ.調書における被請求人の主張
「2 甲第1号証に甲第2号証を適用する場合、同一のカセットに交互に異なるレシピのウェハを戻すこともありうる。
3 何れの証拠にも、カセット毎に共通のレシピを適用するという思想は無い。
4 甲第3号証には、「構成G」が記載されているが「構成G」は1レシピであっても同一のカセットに戻すものであり、事前連絡メモ「相違点1」との相乗効果がある。」

第5.当審の判断
1.本件発明
本件発明1ないし2は、上記第2.のとおりと認められる。

2.刊行物記載の発明
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下が記載されている。

ア.段落0008?0011
「【0008】1)真空処理装置内で同じ順次処理工程を行なう場合(処理室1と処理室4、及び処理室2と処理室3とが同じ処理の場合)、図7のものは、2枚目のウエハは、1枚目のウエハが処理室1で処理終了し、処理室2に搬入された後に、処理室1に搬入され処理されるに対し、図8のものは、2枚目のウエハは、1枚目のウエハが処理室1に搬入された後、処理室2に搬入され処理されるため、図8での処理は、図7での処理の約2倍の処理効率を持つ。
2)真空処理装置内で異なる順次処理工程を行なう場合(処理室1と処理室2と処理室3と処理室4とが異なる処理の場合)、図7のものは、真空処理装置に試料を1枚搬入して処理し、真空処理装置から搬出された後、他方の処理工程の試料を搬入して処理するか、又は、一方の処理工程を先に終了させ、そのあとで、他方の処理工程を行なうことしかできず、試料の処理効率は低い。図8のものは、異なる順次処理工程を同時に処理することができる。よって、試料の処理効率は高い。
3)1つ以上の処理室を異なる試料上で共用する処理の場合は、上記2)と同様である。
以上のように、上記従来技術は試料の種々の順次処理工程を効率良く処理することについて対応できていなかった。
【0009】本発明は、3つ以上の処理室を搬送室に接続した真空処理装置において、少なくとも2つ以上の処理室で順次処理する同じ又は、異なる処理工程を2工程以上同時に実行することで、工程間のウエハの移動時間を短縮し、試料の処理効率を向上することができる真空処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の種々の順次処理工程を同時に1台の真空処理装置で処理するために、真空処理室の排気,搬送,プロセス処理の制御を単独で実行しうる制御手段を真空処理室毎に持たせ、オペレータが真空処理室の処理順序とそれぞれの真空処理室のプロセス処理データとを設定することで装置内での真空処理室の配置に関係なく自在に処理シーケンスを設定できることとし、前記で設定した真空処理室の処理順序のデータを用いて、装置内で搬送処理実行可能な搬送処理順序情報として処理工程毎に作成し、2つ以上の処理工程を記憶できる構成とし、かつ、各真空処理室の状態を示す情報を作成し、これらの情報を用いて実行条件が成立する搬送処理、及びプロセス処理の処理状態を認識して、随時実行させてゆくようにしたものである。
【0011】
【作用】真空処理室の処理順序と、それぞれの真空処理室で行なうプロセスのプロセス処理データを設定できることで、装置内での真空処理室の配置や、装置内にある搬送ステーションといった試料搬送に必要なステーションの有無、位置をオペレータが知らなくても試料の処理内容に合わせて処理シーケンスを自在にオペレータが設定できる。また、上記で述べた処理順序とそれぞれの真空処理室で行なうプロセスのプロセス処理データを用いて、装置内で搬送処理実行可能な搬送処理順序情報を作成する。これは、或る真空処理室で処理終了した試料の次に搬送すべき真空処理室を関連付けたものである。これによりオペレータが設定した処理順序に応じて、その装置内で試料が搬送できる経路に分解でき、搬送の始点と終点に対応付けることができ、装置内で自在に搬送できる。また、上記で述べた搬送処理順序情報を処理工程毎に作成し、かつ、2つ以上の処理工程分の情報を記憶できる構成とし、各処理工程の搬送処理順序情報に登録してあるウエハの搬送又は、プロセス処理条件が成立した方の処理を実行させることにより、複数の同じ又は、異なる処理工程を真空処理装置内で同時に実行させることができる。・・・。」

イ.段落0013?0015
「【0013】図1で、1、2、3、4は真空処理室、5はロードロック室、6はアンロードロック室、10は搬送室である。ロードロック室5、6は試料を大気中から真空処理雰囲気にもってゆき、また、真空処理雰囲気から大気にもってゆくものであり、ウエハ(図示しない)を大気搬送装置(図示しない)と真空処理装置とで受渡しを行なうものである。ロードロック室5,6、真空処理室1,2,3,4及び搬送室10には、各々独立した排気装置11,16,12,13,14,15,17が設けられており、搬送室10と真空処理室1,2,3,4との間は、ゲートバルブ8で仕切られ、搬送装置9-1,9-2で試料が搬送される。また、ロードロック室5,6には、ゲートバルブ7が設けられ大気と連通することができ、(図示しない)大気カセット(図示しない)から大気搬送装置によって試料の取出及び収納が行なわれる。
【0014】・・・。真空処理室1内での処理としては、例えば試料台32に搬送装置9-1により試料が載せられると・・・エッチング処理される。真空処理室1で処理が終了した試料は、例えば真空処理室2に搬送され、真空処理室2で引続きエッチング処理される。尚、真空処理室2、3、4でのエッチング処理プロセスは、真空処理室1でのエッチング処理プロセスと同じであっても、異なっていても良い。又、搬送室10の排気制御、搬送装置9-1,9-2によるウエハの搬送制御を行なう搬送制御装置19及び、真空処理室へのウエハの搬入搬出、排気制御、プロセス制御を行なうプロセス制御装置20-1,20-2,20-3,20-4が、それぞれの真空処理室に対して設けられる。
【0015】処理順序の1例としては、下記の2つの順次処理工程を1つの真空処理装置内で同時に行なう。i)ロ-ドロック室5→真空処理室1→真空処理室2→アンロ-ドロック室6ii)ロ-ドロック室5→真空処理室4→真空処理室3→アンロ-ドロック室6図2は、図1に示した装置を制御するため制御ブロック図を示したものである。本実施例では、搬送順序とそれぞれの真空処理室で行なうプロセスのプロセス処理データを設定し、そのデータを用いて装置内で搬送処理実行可能な搬送処理順序情報を作成する入力制御部 300と、入力制御部 300で作成した搬送処理順序情報と真空処理室状態情報とを参照し、搬送処理あるいはプロセス処理を実行する搬送制御部 400と、真空処理室2,3及び4の排気,搬送,プロセス処理の制御を単独で実行しうる制御手段を有した処理室制御部 500で構成され、各制御部300,400,500は通信手段 308と405及び408と501を介して接続されている。」

ウ.段落0029?0030
「【0029】図3は、搬送制御部400で行う処理フロ-において、第1工程の処理フロ-(ロ-ドロック室5→真空処理室1→真空処理室2→アンロ-ドロック室6)を示す。第2工程の処理フロ-(ロ-ドロック室5→真空処理室4→真空処理室3→アンロ-ドロック室6)は第1工程の処理フロ-と同様であり、処理条件の先に成立した方の工程の処理フロ-が実行される。
【0030】搬送処理解析手段303は、処理デ-タ格納手段302にある処理デ-タ(表1)を読む込み(100)、装置内にある搬送ステ-ションの位置も考慮し、実際に搬送できる経路に展開した搬送処理順序情報を搬送処理順序情報格納手段304に格納する(110)。表1に示した搬送処理を基に作成した搬送処理順序情報の一例を表2,3に示す。搬送先に該当する処理室の欄が’1’で示されている。以下、搬送処理実行手段403が処理を実行する。・・・。」

ここで、上記イ.の段落0013には「大気カセット(図示しない)から大気搬送装置によって試料の取出及び収納が行なわれる」と記載されていることから、カセットを載置しうるカセット載置手段があることは、明らかである。

これら事項を、図面を参照し、技術常識を勘案しつつ、本件発明1に照らして整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「A.ウェハを真空処理する複数の真空処理室1?4と、該各真空処理室にウェハを搬入出する搬送装置9-1,9-2と、前記各真空処理室へウェハを搬入出するための大気中から真空処理にもってゆくロードロック室5、真空処理雰囲気から大気にもってゆくアンロードロック室6と、
B.ウェハを収納できるカセットを載置し得るカセット載置手段と、該カセット載置手段上のカセット内からウェハを抜き取れるように構成された搬送手段と、
C.前記カセット内のウェハを前記搬送手段及び前記ロードロック室5並びに前記搬送装置9-1,9-2を介して同時運転される真空処理室に搬入し、前記各真空処理室で真空処理された処理済ウェハを搬出するための搬送制御を行う搬送制御部400とで構成された真空処理装置において、
D.カセットに収納されたウェハを前記搬送手段及び前記ロードロック室5並びに前記搬送装置9-1,9-2を介して前記いずれかの真空処理室1?4へ搬送し、搬送されたウェハに、前記同時運転される真空処理室毎に異なる処理データを適用して異なる処理を施す同時処理、
E.及び、該カセットに収納されたウェハに、前記同時運転される真空処理室に同じ処理データを適用して同じ処理を施す同時処理の何れかを選択的に施すとともに
F.前記同時処理を施した後のウェハを前記アンロードロック室6を介してカセットに戻す、
真空処理装置。」

なお、甲1発明については、両当事者間で争いはない(口頭審理調書の「両当事者 2」)。

(2)甲第2号証
ア.段落0001
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば半導体装置を製造するための減圧エピタキシャル気相成長やエッチングのような大気と異なる圧力および/または雰囲気下で半導体ウェハ等の被処理材を処理する方法およびその装置に係り、特にその処理を枚葉で効果的に行うようにしたマルチチャンバ型枚葉処理方法およびその装置に関する。」

イ.段落0006
「【0006】また、マルチチャンバ型枚葉処理装置は、各処理チャンバで同一の処理を並行して行うものと、一連の製造プロセスに従った異なる処理を連続して行うものとがあるが、いずれもより的確な処理を能率的に行うようにしている点で共通している。」

ウ.段落0022
「【0022】前記カセットステーション10には、処理チャンバ50a,50bの数に対応した数、即ち図示では2個の内部に複数の半導体ウェハ(被処理材)Wを多段に収容するカセット11a,11bを移動不能に設置するカセット設置部が設けられているとともに、ウェハセンタリング機構を備えた回転位置合せ装置12が備えられている。・・・」

エ.段落0048?0051
「【0048】次に、上記枚葉処理装置による処理方法の一例を図7および図8を参照して説明する。ここに、図7は、カセットステーション10(なお、同図以下においてCSと略称す)上に設置されたカセット11aまたは11bから半導体ウェハWを取出して、回転位置合せ装置12(同じくOF)、出入口ポート20(同じくI/O)、プラットフォーム30(同じくPF)を順次通過させて一方の処理チャンバ50aまたは50b(同じく、R1またはR2)に搬送し、ここで処理を施した後、処理済の半導体ウェハWを再びカセット11aまたは11b内に戻すウェハ処理シーケンスを示す・・・。
【0049】・・・。
【0050】ここでは、1つの半導体ウェハW1 の処理を中心に、各半導体ウェハWに対する処理の手順を説明する。なお、この半導体ウェハW1 は、カセット11aから取出されて処理チャンバ50a(R1)で処置された後、再びカセット11aに収容されるものとする。
【0051】先ず、カセットステーション10(CS)に設置された一方のカセット11a内に収容されていた半導体ウェハW1 を外部ロボット13により取出して、・・・」

オ.段落0058
「・・・。処理済の半導体ウェハW1 をカセットステーション10のカセット11a内に収容して、この半導体ウェハW1に対する処理を終了する。」

これら事項を、図面を参照し、技術常識を勘案しつつ、整理すると、甲第2号証には、以下の事項(以下「甲2事項」という。)が記載されていると認める。
「カセットステーション10にカセット11a,11bを設置するカセット設置部が設けられ、カセット11aから取出した半導体ウェハのいずれをも、処理チャンバ50aに搬送し、処理チャンバ50aで処理を施した処理済の半導体ウェハをもとのカセット11aに戻し、カセット11bから取出した半導体ウェハのいずれをも、処理チャンバ50bに搬送し、処理チャンバ50bで処理を施した処理済の半導体ウェハをもとのカセット11bに戻すものであるマルチチャンバ型枚葉処理装置。」

(3)甲第3号証
ア.第3ページ左上欄第7行?右上欄第10行
「第1図は、本発明による真空処理装置の、半導体ウェーハに対するドライエッチング処理を行う装置への応用を示す図である。
装置は、未処理のウェーハを収納した状態で、装置に処理対象を供給し、かつ処理済みのウェーハを再度元の位置に収納して回収するための、複数(通常25枚)のウェーハを収納できる複数のカセット1a、1bおよび1c、該カセット1a、1b、1cを載置し、装置への導入/払出しの位置を決定するための、位置及び姿勢を変えることがなく、水平又は水平に近い平面の上に常に一定位置に固定されたカセット台2a、2b、2c、図示しない真空排気装置及びガス導入装置を装備し、ウェーハを真空雰囲気に導入するためのロードロック室5、同じくウェーハを大気中に取りだすためのアンロードロック室6、ウエーハにエッチング処理を施すためのエッチング11、それらをそれぞれ気密に分離可能な隔離弁12、及びロードロック室5/アンロードロック室6とカセットla、lb、lcとの間に配置され、X、Y、Z及びθ軸を有するロボットを備えた、ロードロック室5/アンロードロック室6とカセットla、1b、1cとの間でウェーハを授受するための搬送装置13から構成されている。」

イ.第4ページ左上欄第5行?左下欄第7行
「以上の動作を繰り返して、カセットlaに収納されていた未処理ウェーハの処理が完了し、元の位置に再収納し終わるとカセットlaは回収可能となり、別の未処理のウェーハを収納したカセットと交換されるが、装置はその間カセットlb内の未処理ウェーハの処理を続けており、カセット1bの全てのウェーハの処理が完了する前に別の未処理のウェーハを収納したカセットが供給されれば、装置は常に連続的に稼働可能である。この時カセット1a、カセットlbは水平な同一平面上にあるため、カセット1aの回収作業及び別の未処理のウェーハを収納したカセットの供給作業を、搬送装置13によるカセット1bへのアクセスに影響を与えることなく行うことができる。
エッチング室11は、処理を重ねるにつれて反応生成物が内壁面に付着、堆積してくるためにプラズマクリーニングによって付着物を除去し、元の状態に復旧してやる必要があるが、プラズマクリーニングの実施に当っては、カセット1cに収納されたダミーウェーハ30を搬送装置13によって抜取り、以降は前記被処理ウェーハ20の場合と全く同様にして処理を行った後、ダミーウェーハ30をカセットlc内の元の位置に戻すことができ、ダミーウェーハ30は常にカセットlc内にストックされていることになる。尚、カセット1cのダミーウェーハ30が全てプラズマクリーニングで使用された場合や、数回の使用により使用不良となった場合、ダミーウェーハ30はカセットlcごと全て交換される。
従って、プラズマクリーニングを特別な処理シーケンスとして扱う必要は無く、通常のエッチング処理の中に組み込んで一連の作業として行うことができ、クリーニングを実施する周期も任意に設定することが可能である。装置のハードウェア上からもプラズマクリーニングの為の専用の機構は必要が無く、複数のカセット台の一つ(本例の場合2c)にダミーウェーハ30を収納したカセット(本例の場合1c)を設置するだけで良く、プラズマクリーニングの必要が無い用途の場合には、ダミーウェーハ30を収納したカセットの代わりに、被処理ウェーハ20を収納したカセットを設置することにより、より効率良く生産を行うことができることは説明するまでもない。」

これら事項を、図面を参照し、技術常識を勘案しつつ、整理すると、甲第3号証には、以下の事項(以下「甲3事項」という。)が記載されていると認める。
「複数のカセット1a、1bに収納されたウェーハを取り出して処理を行う装置であって、カセット1a内のウェーハの処埋が完了し、元の位置に再収納し終わると、カセット1aの交換の間、他方のカセット1b内のウェーハを取り出して処理を継続することにより、連続稼働可能としたもの。」

3.本件発明1との対比
本件発明1と、甲1発明とを対比する。
甲1発明の「搬送装置9-1,9-2」は本件発明1の「真空搬送手段」に、同様に、「大気中から真空処理にもってゆくロードロック室5、真空処理雰囲気から大気にもってゆくアンロードロック室6」は「大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能な室」に、「同時運転」は「並列運転」に、「搬送制御部400」は「制御手段」に、「異なる処理データを適用して異なる処理を施す」は「異なるレシピを適用して異なる処理を施す」に、「同時処理」は「並列処理」に、「同じ処理データを適用して同じ処理を施す」は「共通のレシピを適用して共通の処理を施す」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「A.ウェハを真空処理する複数の真空処理室と、該各真空処理室にウェハを搬入出する真空搬送手段と、前記各真空処理室へウェハを搬入出するための大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能な室と、
B.ウェハを収納できるカセットを載置し得るカセット載置手段と、該カセット載置手段上のカセット内からウェハを抜き取れるように構成された搬送手段と、
C.前記カセット内のウェハを前記搬送手段及び前記切り替え可能な室並びに前記真空搬送手段を介して並列運転される真空処理室に搬入し、前記各真空処理室で真空処理された処理済ウェハを搬出するための搬送制御を行う制御手段とで構成された真空処理装置において、
D.カセットに収納されたウェハを前記搬送手段及び前記切り替え可能な室並びに前記真空搬送手段を介して前記いずれかの真空処理室へ搬送し、搬送されたウェハに、前記並列運転される真空処理室毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す並列処理、
E.及び、該カセットに収納されたウェハに、前記並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す並列処理の何れかを選択的に施すとともに
F.前記並列処理を施した後のウェハを前記切り替え可能な室を介してカセットに戻す、
真空処理装置。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明1は、カセット載置手段が「複数のカセット」を載置し得るものであり、搬送手段が「任意の」カセット内からウェハを抜き取れるように構成されており、「少なくとも2つのカセットを使用し」、「カセット毎に」、いずれかの真空処理室へ搬送し、処理後のウェハを「もとの」カセットに戻すものであるが、甲1発明は、カセットの数、処理との関係が不明である点。
相違点2:本件発明1は、「いずれかのカセット内の全てのウェハ処埋を終了し、カセット交換の間、他方のカセット内のウェハを搬出し前記処理を継続する」が、甲1発明は、明らかでない点。

4.本件発明1についての判断
相違点1について検討する。
甲1発明は、上記第2.のとおり、「並列運転される真空処理室毎に異なるレシピを適用して異なる処理を施す」いわば「2レシピ並列処理」と、「並列運転される真空処理室に共通のレシピを適用して共通の処理を施す」いわば「1レシピ並列処理」を選択的に施すものである。
甲1発明は、そのためのカセットの数、ウェハの処理経路については、明らかでないところ、甲1発明の実施に際しては、カセットの数、ウェハの処理経路について、具体化する必要がある。
甲1発明と同一技術分野のものである甲2事項は、上記2.(2)のとおり、「カセット設置部」に「カセット11a,11b」を設置するものであるから、カセットの数は「2つ」であり、それぞれのカセットから取り出したウェハを、処理後にもとのカセットに戻すものである。
ところで、上記具体化の際には、品質の担保の観点から、製品の履歴を保存しておく生産管理が広く行われているところ、生産管理においては、個々の製品を単位とするもの、生産ロット等複数の製品を単位とするもの、いずれも周知であり、適宜選択されている。
甲2事項における「処理後にもとのカセットに戻す」ことは、生産管理上、「カセット」という単位での管理を行い、管理上の利便性を維持するためのものであることは明らかである。
「カセット」という単位での管理を行い、管理上の利便性を維持するという思想を踏まえると、甲2事項を、甲1発明に適用するにあたり、「異なる処理を施す2レシピ並列処理」においては、同一カセット内に異なる処理がされたウェハが混在することは望ましくない。
甲2事項はカセット数が「2つ」であり、甲1発明はレシピが「2つ」であり、同数であるから、同一カセット内に異なる処理がされたウェハが混在することのないよう、カセットとレシピを対応づけることに、困難性は認められない。
すなわち、カセット載置手段を「複数のカセット」を載置し得るものとし、「任意の」カセット内からウェハを抜き取り、「カセット毎に」、いずれかの真空処理室へ搬送し、処理後のウェハを「もとの」カセットに戻すことで、同一カセット内のウェハは同じレシピで処理されたものとする相違点1に係るものとすることに、困難性は認められない。

被請求人は、「甲1発明に用いるカセットとして2つを配置したとしても、1つのカセットを使用することも考えられ、2つのカセットを使用する必然性を甲1発明および甲2発明の組み合わせから導出することは困難」(上記第4のエ)、「甲第1号証に甲第2号証を適用する場合、同一のカセットに交互に異なるレシピのウェハを戻すこともありうる」(上記第4のカ)などと主張する。
しかし、上記のとおり、複数の製品を単位として管理するという周知技術を踏まえると、同一カセット内に異なる処理がされたウェハが混在することは望ましくないことから、被請求人の主張は採用できない。

相違点2について検討する。
甲1発明と同一技術分野のものである甲3事項は、上記2.(3)のとおりであり、相違点2に係る事項に相当する。この点は、両当事者間に争いはない(口頭審理調書の「請求人 2」、「被請求人 4」)。
甲3事項により、装置としての生産性向上に寄与することは明らかであるから、甲1発明に適用することは、必要に応じてなしうる事項である。
被請求人は、「1レシピであっても同一のカセットに戻す」ことから、格別の効果がある旨主張する(上記第4のカ)が、相違点1における検討と同様、「カセット」という単位での管理を維持するという思想を踏まえると、この点は、格別なものではない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別な技術的意義が生じるとは認められない。

したがって、本件発明1は、甲第1ないし3号証に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件発明2についての判断
本件発明2は、本件発明1と、カテゴリーが異なるにすぎない。
よって、本件発明1と同様の理由により、甲第1ないし3号証に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、この点は、両当事者間に争いはない(口頭審理調書の「両当事者 4」)。

第6.むすび
以上、本件発明1ないし2は、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2010-03-25 
出願番号 特願2004-153482(P2004-153482)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大嶋 洋一柴沼 雅樹岡澤 洋田村 嘉章  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 菅澤 洋二
佐々木 一浩
登録日 2008-05-09 
登録番号 特許第4121480号(P4121480)
発明の名称 真空処理方法及び真空処理装置  
代理人 アイアット国際特許業務法人  
代理人 石塚 利博  
代理人 飯島 大輔  
代理人 石塚 利博  
代理人 佐藤 英二郎  
代理人 飯島 大輔  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
代理人 佐藤 英二郎  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  

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