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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1216818
審判番号 不服2008-2543  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-06 
確定日 2010-05-10 
事件の表示 特願2004-569834「固定子内に組み込まれた回転子支承部を備えた電気機械」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月 7日国際公開、WO2004/086591、平成18年 2月23日国内公表、特表2006-506939〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2003年10月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年3月21日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成19年11月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、特許請求の範囲についての補正がなされたものである。

2.平成20年2月6日付の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ケーシングカバーによって閉鎖されたケーシング内に受容されている固定子(1)と、転がり軸受(4)内で回転可能に受容された軸(5)を有する回転子(7)とを備えた電気機械であって、転がり軸受(4)が軸受リング(2)によって受容されており、該軸受リング(2)が電気機械の固定子(1)内に支承されている形式のものにおいて、
固定子(1)が、該固定子(1)の両端面側で固定子外径に、端面側の凹部(28,29)を有していて、これらの凹部(28,29)内に軸受リング(2)が嵌め込まれており、前記固定子(1)が薄板積層鉄心として構成されていることを特徴とする、固定子内に組み込まれた回転子支承部を備えた電気機械。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「固定子」について「固定子(1)が薄板積層鉄心として構成されている」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第2462204号明細書(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(翻訳は当審による。)
・「本発明では、軸が電気機械の両端に設けられた軸受ブラケット11により中心に保持された構成を有する。前記ブラケット11は好ましくは従来周知の、全体が容器に収納された封入型のものであって、孔がない、すなわち、冷却用の開口を有していないものからなる。また、前記ブラケット11は、前記電気機械の端部において、固定子空洞部材4と固定子巻線端5との間で、前記固定子空洞部材4の端部により半径方向に位置決めする位置決め部13と、固定子コア部材3の端部により軸方向に位置決めする位置決め部14とを有し内側が半径方向にふくらんだ構造部材12を有する。前記ブラケット11の前記位置決め部13は、空隙部分を形成する前記固定子空洞部材4に隣接する部分で、前記ブラケット11が前記電気機械の前記空隙部分や回転子部材6を固定子コア部材3の端部で封入するように頑丈に密閉し、固定子巻線は封入しない構成とすることが好ましい。前記ブラケット11は、軸を保持する軸受15を中心に位置決めできるように保持する。」(明細書第3欄5?27行)
・「好ましくは各フードの下半部にのみ冷却用の開口21を有するフードあるいはフードのような保護部材19を有する。各フードは、枠部材17の端部に強固に固着された円筒状に伸びる部分22を有する。」(明細書第3欄65?72行)
・また、上記記載及び図1,2によれば、固定子空洞部材4が固定子コア部材3の一部であり、該固定子空洞部材4が薄板積層鉄心といえるもので構成されていること、軸受15は転がり軸受から成ること、及び部分22によって閉鎖されたフード19内に固定子空洞部材4と軸受15内で回転可能に支持された軸9を有する回転子部材6を有すること、及びブラケット11が電気機械の固定子空洞部材4を有する固定子コア部材3内に支承されていることが示されているといえる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「部分22によって閉鎖されたフード19内に受容されている固定子空洞部材4と、軸受15内で回転可能に支持された軸9を有する回転子部材6とを備えた電気機械であって、軸受15がブラケット11によって受容されており、該ブラケット11が電気機械の前記固定子空洞部材4を有する固定子コア部材3内に支承されている形式のものにおいて、
前記ブラケット11は、前記電気機械の端部において、固定子空洞部材4の端部により半径方向に位置決めする位置決め部13と、固定子コア部材3の端部により軸方向に位置決めする位置決め部14とを有していて、前記ブラケット11の前記半径方向に位置決めする位置決め部13は、空隙部分を形成する前記固定子空洞部材4に隣接する部分で、前記ブラケット11が前記電気機械の前記空隙部分や回転子部材6を固定子コア部材3の端部で封入するように頑丈に密閉されており、前記固定子空洞部材4が薄板積層鉄心として構成されている、軸受けブラケット11が固定子コア部材3に支承された電気機械。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「部分22」はその機能・作用からみて、前者の「ケーシングカバー」に相当し、以下同様に「フード19」は「ケーシング」に、「固定子空洞部材4」及び「固定子コア部材3」は「固定子」に、「軸受15」は「転がり軸受」に、「回転可能に支持された軸9」は「回転可能に受容された軸」に、「回転子部材6」は「回転子」に、「ブラケット11」は「軸受リング」に、それぞれ相当する。
また、後者の「ブラケット11は、前記電気機械の端部において、固定子空洞部材4の端部により半径方向に位置決めする位置決め部13と、固定子コア部材3の端部により軸方向に位置決めする位置決め部14とを有していて、前記ブラケット11の前記半径方向に位置決めする位置決め部13は、空隙部分を形成する前記固定子空洞部材4に隣接する部分で、前記ブラケット11が前記電気機械の前記空隙部分や回転子部材6を固定子コア部材3の端部で封入するように頑丈に密閉されて」いる態様と前者の「固定子が、該固定子の両端面側で固定子外径に、端面側の凹部を有していて、これらの凹部内に軸受リングが嵌め込まれて」いる態様とは、「軸受リングが固定子の両端で固定子に位置決め支持されて」いるとの概念で共通している。
さらに後者において、「軸受けブラケット11が固定子コア部材3に支承された」態様は、前者の「固定子内に組み込まれた回転子支承部を備えた」態様に相当する。

したがって両者は、
「ケーシングカバーによって閉鎖されたケーシング内に受容されている固定子と、転がり軸受内で回転可能に受容された軸を有する回転子とを備えた電気機械であって、転がり軸受が軸受リングによって受容されており、該軸受リングが電気機械の固定子内に支承されている形式のものにおいて、
軸受リングが固定子の両端で固定子に位置決め支持されており、前記固定子が薄板積層鉄心として構成されている、固定子内に組み込まれた回転子支承部を備えた電気機械。」である点で一致し、

「軸受リングが固定子の両端で固定子に位置決め支持されて」いる態様に関して、本件補正発明では、「固定子が、該固定子の両端面側で固定子外径に、端面側の凹部を有していて、これらの凹部内に軸受リングが嵌め込まれて」いるものであるのに対して、引用発明では、「ブラケットは、電気機械の端部において、固定子空洞部材の端部により半径方向に位置決めする位置決め部と、固定子コア部材の端部により軸方向に位置決めする位置決め部とを有していて、前記ブラケットの前記半径方向に位置決めする位置決め部は、空隙部分を形成する前記固定子空洞部材に隣接する部分で、前記ブラケットが前記電気機械の前記空隙部分や回転子部材を固定子コア部材の端部で封入するように頑丈に密閉されて」いるものである点で相違している。

(4)相違点に対する判断
本願明細書の「【0011】……固定子1は、その両端面側において固定子孔でそれぞれ端面側の凹部20を有しているか、又は固定子外径で端面側の凹部28,29を有しており、これらの凹部28,29は、例えば周方向に延在する環状溝19として構成されている。円筒形に構成されたケーシング10によって包囲された固定子1の両端面側における凹部20内にそれぞれ1つの軸受リング2が嵌め込まれている。軸受リング2は軸受座部21を有していて、この軸受座部21内に転がり軸受け4が受容されている。」、「【0014】図1において縦断面図で示された本発明による支承部は、固定子1の端面側で、軸受リング2をそれぞれ受容する凹部20若しくは28,29によって形成されている。……凹部20,28,29が固定子1の端面側において形成される公差、並びに電気機械の固定子1の両端面側における、軸5のための転がり軸受けを受容する軸受リング2の寸法安定性だけを有している。」、「【0024】……これらの凹部20,28,29は、図1に示した実施例と同様に固定子1の内周面側にも、また固定子1の外周面に形成されていてよい。」等の記載によれば、軸受リングを位置決め保持する位置は固定子端部の内周であっても外周であっても任意であると認められる。そして、その効果が相違するものとは明細書に何ら記載されていないので、効果が同じである外側で保持する構成と内側で保持する構成の中からどれを選ぶかは任意であるというべきである。また、固定子外周に保持された蓋で軸受けを保持することが周知の構成(原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-299959号公報の図1、特開2000-156952号公報の図8、特開2002-354746号公報の図1(イ)等参照)であるから、この点の相違は必要に応じて適宜設計し得る事項と認めざるを得ない。
また、凹部を固定子端部に設ける点についても、位置決めのためには、嵌合面のどちらに凹部を設けるかは相対的なものにすぎず、かつ、位置決め用の凹部を固定子に設けることも原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5068556号公報(Fig1,Fig3のノッチ16,Fig4,Fig6のノッチ26参照)などに記載されているように周知技術であるから引用発明において、軸方向位置決め及び半径方向位置決めのための凹部を固定子側に設けることも任意になし得ることというべきである。
したがって、引用発明において位置決め固定のための凹部を固定子端部外側に設けることで本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。

また、本件補正発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、上記周知の構成及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件補正発明は、引用発明、上記周知の構成及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年9月27日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ケーシングカバーによって閉鎖されたケーシング内に受容されている固定子(1)と、転がり軸受(4)内で回転可能に受容された軸(5)を有する回転子(7)とを備えた電気機械であって、転がり軸受(4)が軸受リング(2)によって受容されており、該軸受リング(2)が電気機械の固定子(1)内に支承されている形式のものにおいて、
固定子(1)が、該固定子(1)の両端面側で固定子外径に、端面側の凹部(28,29)を有していて、これらの凹部(28,29)内に軸受リング(2)が嵌め込まれていることを特徴とする、固定子内に組み込まれた回転子支承部を備えた電気機械。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記「2.」で検討した本件補正発明から「固定子(1)が薄板積層鉄心として構成されている」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明、上記周知の構成及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、上記周知の構成及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知の構成及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-07 
結審通知日 2009-12-11 
審決日 2009-12-22 
出願番号 特願2004-569834(P2004-569834)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 槙原 進
仁木 浩
発明の名称 固定子内に組み込まれた回転子支承部を備えた電気機械  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 杉本 博司  
代理人 二宮 浩康  

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