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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1216819 |
審判番号 | 不服2008-7172 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-24 |
確定日 | 2010-05-10 |
事件の表示 | 平成10年特許願第279172号「磁気共鳴イメージング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月18日出願公開,特開2000-107151〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成10年9月30日の特許出願であって,平成20年2月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年3月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年4月23日付で手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の目的について 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおり補正された。下線は,補正部分を示す。 「【請求項1】 静磁場中に配置した被検体の対象部位に受信コイルを装着し,被検体に高周波磁場,傾斜磁場を印加し,被検体から発生する磁気共鳴信号を受信コイルで受信して被検体の画像を得る磁気共鳴イメージング装置において, 前記静磁場中に配置した前記被検体を水平面内の水平方向及び水平面に垂直な上下方向に移動可能な寝台と, 前記被検体の対象部位を含むマルチスライス画像を得る取得手段と, 前記被検体のマルチスライス画像から得られた前記対象部位の位置情報に基づき当該位置情報と前記静磁場及び傾斜磁場の中心の位置情報との距離を算出し,当該算出された距離に従って前記対象部位を前記静磁場及び傾斜磁場の中心に一致させるように前記寝台を移動させる寝台制御手段と,を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。」 上記補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「対象部位を前記静磁場及び傾斜磁場の中心に一致させる」「寝台制御手段」について,「当該位置情報と前記静磁場及び傾斜磁場の中心の位置情報との距離を算出し,当該算出された距離に従って」との限定を付加するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.独立特許要件について 本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用刊行物およびその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された文献であって,本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-109046号公報(以下,「引用刊行物1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 (1-ア) 「2,特許請求の範囲 1,中央部に被検体を挿入する開口部を有し静磁場及び傾斜磁場を発生させるガントリと,被検体を寝載して上記ガントリの開口部内へ出入する水平方向の天板とを備えて成る磁気共鳴診断装置において,上記天板は,ガントリの開口部へ向つて前記後退すると共にこの前進後退方向に対して直交方向へ横移動し且つ上下方向に昇降する三次元移動支持機構で支持したことを特徴とする磁気共鳴診断装置。」(1頁左欄4行?13行) (1-イ) 「〔産業上の利用分野〕 本発明は,NMR(核磁気共鳴)現象を利用して被検体の診断部位について映像を得る磁気共鳴診断装置に関し,特に被検体を寝載する天板をガントリの開口部内で三次元方向に移動できる磁気共鳴診断装置に関する。」(1頁左欄15行?20行) (1-ウ) 「〔発明が解決しようとする課題〕 しかし,このような従来の磁気共鳴診断装置においては,・・・このとき,上記開口部内の略中心には磁場強度の略均一な計測領域が形成されるが,被検体及び受信コイルは上記計測領域の中心に合わせる必要がある。」(1頁右欄9行?17行) (1-エ) 「〔作用〕 このように構成された磁気共鳴診断装置は,三次元移動支持機構で支持された天板が,ガントリの開口部へ向って前進後退すると共に,この前進後退方向に対して直交方向へ横移動し,且つ上下方向に昇降することとなる。これにより,上記天板に寝載された被検体を,ガントリの開口部内に形成される磁場強度の略均一な計測領域の中心に合わせることができる。」(2頁右上欄8行?16行) (1-オ) 「第1図は本発明による磁気共鳴診断装置の実施例を示す側面図であり,第2図は第1図のII-II線断面図である。図において,ガントリ1は,被検体2を挿入してその診断部位について映像を得るもので,第2図に示すように,全体形状は例えば矩形の箱状に形成され,その中央部に被検体2を挿入する例えば横長矩形状の開口部3を有し,この開口部3の周囲には,静磁場発生用の主磁石と,X,Y,Z方向の傾斜磁場を形成するための三対の傾斜磁場コイルと,高周波パルスの照射を行う照射コイルとが内蔵されている。そして,上記主磁石により,第2図に示すように,開口部3の空間内に磁場強度の略均一な計測領域4が形成されるようになっている。」(2頁右上欄20行?左下欄13行) (1-カ) 「また,符号17は被検体2から放出されるNMR信号を計測するための受信コイルを示しており,被検体2の所望の部位にセットできるようになっている。」(3頁左上欄9行?12行) (1-キ) 「従って,本発明の磁気共鳴診断装置を使用して被検体2の診断部位について検査する際には,第1図に示す三次元移動支持機構6により,被検体2の寝載された天板5を矢印A方向に前進させてガントリ1の開口部3内へ挿入し,さらに上記天板5を矢印C,D方向へ横移動したり,矢印E,F方向へ昇降させることにより,第2図に示すように,開口部3内に形成された計測領域4の中心18に被検体2の関心領域19が合致するように位置決めすることができる。 この場合,より細かな位置決めをするには,例えば第3図に示すように,被検体2について直交二方向から位置決め用の画像を計測して装置のデイスプレイに表示し,位置合わせをすればよい。」(3頁右上欄7行?20行) (1-ク) 「なお,三次元移動支持機構6による天板5の三次元方向の移動は,手動操作または動力駆動による操作のいずれ方法で行ってもよい。また,特別に位置決め用の設定制御機構を設け,第3図に示す各距離L1,L2,L3を求めることにより,自動的に天板5を所要量だけ三次元方向に移動して,被検体2を計測領域4の中心18に位置決めをするようにしてもよい。」(3頁右下欄1行?8行) そして,第3図には,天板に寝載された被検体のより細かな位置決めをするための位置決め用の画像の説明図として,「計測領域の中心18」と,「被検体の関心領域19」との各距離L1,L2,L3が,記載されている。 そうすると,これら(1-ア)?(1-ク)の記載と第1?3図とを総合すると,引用刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。 「磁気共鳴診断装置において,三次元移動支持機構で支持された天板と,直交二方向から位置決め用の画像を計測し,位置決め用の設定制御機構を設け,計測領域の中心18と被検体の関心領域19との各距離L1,L2,L3を求めることにより,自動的に天板5を所要量だけ三次元方向に移動して,被検体2を計測領域4の中心18に位置決めをする,磁気共鳴診断装置。」(以下,「引用発明」という。) (2)対比・判断 引用発明の「磁気共鳴診断装置」及び「三次元移動支持機構で支持された天板」は,それぞれ補正発明の「磁気共鳴イメージング装置」及び「水平面内の水平方向及び水平面に垂直な上下方向に移動可能な寝台」に相当するのは明らかである。 そして,引用発明の「磁気共鳴診断装置」は,(1-オ)の記載から,「被検体」に,「静磁場」「高周波磁場」及び「傾斜磁場」を印可する構成を備えるものであり,さらに(1-カ)の記載から,「受信コイル」を備える構成であることから,「静磁場中に配置した被検体の対象部位に受信コイルを装着し,被検体に高周波磁場,傾斜磁場を印加し,被検体から発生する磁気共鳴信号を受信コイルで受信して被検体の画像を得る磁気共鳴診断装置」であるといえる。 さらに,引用発明の「直交二方向から位置決め用の画像を計測」する構成と,補正発明の「検体の対象部位を含むマルチスライス画像を得る取得手段」とは,「位置決め用の画像を得る取得手段」である点で共通する。 また,引用発明の「位置決め用の設定制御機構」,「計測領域の中心」,「被検体の関心領域19」,「各距離L1,L2,L3を求める」,「自動的に天板5を所要量だけ三次元方向に移動して,被検体2を計測領域4の中心18に位置決めをする」は,それぞれ補正発明の,「寝台を移動させる寝台制御手段」,「前記静磁場及び傾斜磁場の中心」,「対象部位」,「当該位置情報と前記静磁場及び傾斜磁場の中心の位置情報との距離を算出」,「算出された距離に従って前記対象部位を前記静磁場及び傾斜磁場の中心に一致させるように前記寝台を移動させる」に相当するといえる。 そうすると,両者は, 「静磁場中に配置した被検体の対象部位に受信コイルを装着し,被検体に高周波磁場,傾斜磁場を印加し,被検体から発生する磁気共鳴信号を受信コイルで受信して被検体の画像を得る磁気共鳴イメージング装置において, 前記静磁場中に配置した前記被検体を水平面内の水平方向及び水平面に垂直な上下方向に移動可能な寝台と, 位置決め用の画像を得る取得手段と, 前記対象部位の位置情報に基づき当該位置情報と前記静磁場及び傾斜磁場の中心の位置情報との距離を算出し,当該算出された距離に従って前記対象部位を前記静磁場及び傾斜磁場の中心に一致させるように前記寝台を移動させる寝台制御手段,を備えた磁気共鳴イメージング装置。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 (相違点) 「位置決め用の画像」について,補正発明は「被検体の対象部位を含むマルチスライス画像」であるのに対し,引用発明は「直交二方向から」取得された「位置決め用の画像」である点。 上記相違点について検討する。 磁気共鳴イメージング装置において,「被検体の対象部位を含むマルチスライス画像」を用いて位置決めを行うことは,当該技術分野において本願出願日前に周知であったといえる。 例えば,原査定の理由でも引用された,本願出願日前に頒布された刊行物である特開平6-189935号公報には,以下の事項が記載されている。 「【0002】 【従来の技術】従来,MRIにおける位置決めスキャンには,投光器を用いる方法や,位置決め用の基準画像を用いる方法が知られている。この内,基準画像を用いる方法には,1枚の基準画像を使って位置決めする1枚位置決めや,2枚の基準画像を使って位置決めする2位置決めがある。・・・ 【0004】また,2枚位置決めスキャンでは,図19に示すように,第1,第2の2枚の並行な断層像(例えばアキシャル像)を基準画像とし,第1画像,第2画像の各々に線状のROI:Rb,Rcにより直線位置を指定することで,撮影時のスライス面は2つのROI:Rb,Rcを結んだ断面となる。つまり,2枚の並行な第1,第2画像からあらゆる方向にスライスできる位置決めである。」及び, 「【0026】まず,患者さんのセットアップや登録が終了し,システムが起動すると,図2に示した処理が演算装置12で開始される。 【0027】図2のステップ20では,最初に,例えばマルチスライス撮影の指令が制御装置7に送られ,この制御装置7から指令されるパルスシーケンスによって,患部の異なる複数の位置を連続的にスライスした断層像IM1 …IMn が図3の如く得られる。つまり,位置決めのための,患部の3次元画像データが得られる。」 そうすると,引用発明の「位置決め用の画像」に上記周知の事項を適用して,本願発明のような構成とすることは,当業者にとって容易に想到しうるものである。 そして,本願明細書に記載された効果も,引用発明および上記周知の事項から,当業者が予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものといえない。 したがって,補正発明は,引用刊行物1に記載された発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (3)むすび 以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1ないし7に係る発明は,平成19年9月4日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたとおりのものと認められ,その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「【請求項1】 静磁場中に配置した被検体の対象部位に受信コイルを装着し,被検体に高周波磁場,傾斜磁場を印加し,被検体から発生する磁気共鳴信号を受信コイルで受信して被検体の画像を得る磁気共鳴イメージング装置において, 前記静磁場中に配置した前記被検体を水平面内の水平方向及び水平面に垂直な上下方向に移動可能な寝台と, 前記被検体の対象部位を含むマルチスライス画像を得る取得手段と, 前記被検体のマルチスライス画像から得られた前記対象部位の位置情報に基づき,前記対象部位を前記静磁場及び傾斜磁場の中心に一致させるように前記寝台を移動させる寝台制御手段と,を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。」(以下,「本願発明」という。) 2.引用刊行物およびその記載事項 原査定の理由に引用した刊行物およびその記載事項は,前記「第2 2.(1)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は,前記「第2 2.」において検討した補正発明から,「対象部位を前記静磁場及び傾斜磁場の中心に一致させる」「寝台制御手段」について,「当該位置情報と前記静磁場及び傾斜磁場の中心の位置情報との距離を算出し,当該算出された距離に従って」との限定を省くものである。 そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が,前記「第2 2.(2)」に記載したとおり,引用刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-22 |
結審通知日 | 2010-01-26 |
審決日 | 2010-03-24 |
出願番号 | 特願平10-279172 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 幸仙、島田 保 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
竹中 靖典 郡山 順 |
発明の名称 | 磁気共鳴イメージング装置 |
代理人 | 堀口 浩 |