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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  D06F
管理番号 1217208
審判番号 無効2009-800103  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-05-20 
確定日 2010-05-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第4012944号発明「ロールアイロナ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4012944号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
特許第4012944号に係る出願の経緯概要は、以下のとおりである。
平成 8年10月18日 特許出願(特願平8-275641号)。
平成19年 9月21日 特許設定登録(請求項の数:8)。
平成21年 5月20日 無効審判請求。
平成21年 8月11日 答弁書。
平成22年 2月 2日 第1回口頭審理。
口頭審理陳述要領書(請求人、被請求人)。
平成22年 2月16日 上申書(請求人)。
平成22年 3月 2日 上申書(被請求人)。

そして、その請求項1ないし5に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるものである(以下「本件発明1」?「本件発明5」という。)。
「【請求項1】 発熱体を収納した曲面を有する複数の加熱装置と、この加熱装置の曲面に被洗物を圧接しながら回転送りする回転ローラとを適宜間隔をあけて複数組設置し、これら加熱装置と回転ローラ間に被洗物を投入し圧接しながら回転送りすることにより該被洗物を乾燥、プレスするロールアイロナにおいて、各回転ローラからの被洗物受け渡し部の上部に設けられ、エアの吹き出しにより被洗物を前記回転ローラから剥がすエアノズルと、前記加熱装置間に設置され、エアの吸引力により前記回転ローラより被洗物を受け取り次の前記回転ローラに受け渡すサクションベルトを有する吸引ベルトユニットとを具備し、前記エアノズルは、前記回転ローラから前記吸引ベルトユニットへの被洗物乗り移り部において前記回転ローラのロール面に接する接線方向に向けてエアを吹き出すように配置されていることを特徴とするロールアイロナ。
【請求項2】 発熱体を収納した曲面を有する複数の加熱装置と、この加熱装置の曲面に被洗物を圧接しながら回転送りする回転ローラとを適宜間隔をあけて複数組設置し、これら加熱装置と回転ローラ間に被洗物を投入し圧接しながら回転送りすることにより該被洗物を乾燥、プレスするロールアイロナにおいて、各回転ローラからの被洗物受け渡し部の上部に設けられ、エアの吹き出しにより被洗物を前記回転ローラから剥がすエアノズルと、前記加熱装置間に設置され、エアの吸引力により前記回転ローラより被洗物を受け取り次の前記回転ローラに受け渡すサクションベルトを有する吸引ベルトユニットとを具備し、前記エアノズルは、前記回転ローラから前記吸引ベルトユニットへの被洗物乗り移り部において前記回転ローラのロール面に上方から下方に向けてエアを吹き出すように配置されていることを特徴とするロールアイロナ。
【請求項3】 請求項1又は2記載のロールアイロナにおいて、前記エアノズルから吹き出されるエアを前記回転ローラと当該回転ローラ上の被洗物との間へと導く導風板を有することを特徴とするロールアイロナ。
【請求項4】 請求項1又は2記載のロールアイロナにおいて、前記吸引ベルトユニットは、上面部に多数の小孔を形成したサクションボックス、同サクションボックス上面を前記回転ローラの周速と略同速度で走行する多孔サクションベルト、サクションボックス内の空気を排気する排気手段とを具備することを特徴とするロールアイロナ。
【請求項5】 請求項4記載のロールアイロナにおいて、更に、前記サクションベルト上の被洗物送り方向に斜めにエアを吹き出すエアノズルを具備することを特徴とするロールアイロナ。」

2.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、本件発明1?5は、甲第1?9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、無効である旨主張し、以下の証拠を提出している。
さらに、平成22年 2月16日付けの上申書において、以下の文献1?7、及び物件2を提示した。

[証拠方法]
甲第1号証:特開平8-107995号公報
甲第2号証:実願昭59-165868号(実開昭61-82598号)の マイクロフィルム。
甲第3号証:英国特許出願公開第805339号明細書。
甲第4号証:米国特許第2352220号明細書。
甲第5号証:特開昭52-20839号公報。
甲第6号証:英国特許出願公開2106147号明細書。
甲第7号証:米国特許第1968233号明細書。
甲第8号証:実願昭63-113377号(実開平2-37098号)のマ イクロフィルム。
甲第9号証:実公平3-33355号公報。

文献1:実開昭63-177499号公報
文献2:特開昭63-49200号公報
文献3:実開昭62-130600号公報
文献4:特開平7-328294号公報
文献5:特開平4-51998号公報
文献6:特開昭64-62199号公報
文献7:実開平2-55898号公報
物件2:(財)日本規格協会、「JIS工業用語大辞典【第4版】」、( 財)日本規格協会、1995年11月20日、1063頁,1 327頁。

(2)被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張は、理由がない旨の主張をし、また、文献1?7は、ロールアイロナに関するものではなく、エアの吸引を利用してロール間で被洗物を受け渡すことを開示するものではない旨主張するとともに、物件2の証拠提出は、不適切である旨の主張をしている。

3.甲各号証
甲第1?9号証には、以下の事項が記載されている。

a 甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「【産業上の利用分野】本発明は洗濯して脱水した被洗物をプレスしながら乾燥させるロールアイロナーに関するものである。」(段落【0001】)

イ「【発明が解決しようとする課題】前記従来のロールアイロナーでは、被洗物の通過路を規制するものとして、回転ローラの中間位置それぞれに周面部に小孔を多数形成した円筒状の回転体を配設しており、この回転体に吸引排気を行うブロワーを接続したものは、形状が複雑となるため機械の価格が高くなる欠点があった。また薄い被洗物を処理するとき、前記図7の場合は、ロール43とギャッププレート44の間の固定部と、回転部との隙間に起因するスジが入ることがあり、場合によっては発熱体とロール42の間に被洗物が挟まれる虞れがあり、被洗物の仕上がり品質の低下が問題となる場合があった。更に吸引部が多いためブロワーの容量が過大であり、また吸引が局部的になり被洗物に皺等の悪い影響を与える欠点があった。本発明は前記従来の欠点を解消しようとするもので、薄い被洗物であっても皺やスジが入ることはなく、製作コストも安く、かつ吸引ブロワーの容量負荷を節約できるロールアイロナーを提供しようとするものである。」(段落【0009】)

ウ「【実施例】以下本発明を図面の実施例について説明すると、図1?図4は本発明の実施例を示す。先ず図1について説明すると、回転ローラ11a?11bや加熱装置13などの主構成部は従来例の図5に示したものと同様であるので、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。ここで被洗物17が導入コンベア14から導出コンベア33まで送られる送行工程について説明すると、導入コンベア14によって送り込まれた被洗物17は、回転ローラ11aによって加熱装置16aの加熱面上を加圧されながら送られる。駆動モータ12はプーリーー27、Vベルト29a、プーリーー28aを介して回転ローラ11aを支える1対のアーム25aの軸26aを駆動回転する。ただし軸26aは回転ローラ11aの両側に同一軸線上に一対設けられ、外部の固定部材に回転自在に支えられているが、モータ12により駆動されるのは、どちらか片側だけでよい。また回転ローラ11aは軸26aを中心軸として上下に回動可能であり(2点鎖線で示した11a’のように)、回転ローラ11a自身の重量、或いは負荷用シリンダにより、走行中の被洗物17を加圧することができる。アーム25aは減速装置を内蔵し(減速装置を内蔵するのは片側のアーム25aのみでよい)、軸26aの回転を減速して回転ローラ11aに伝達し、回転ローラ11aに適当な周速度(被洗物17の送り速度)を与えるようにしてある。この回転ローラ11aの支え方、駆動方式は第2回転ローラ11bにおいても全く同様であり、各部品の付番のaの代わりにbを置き換えて、そのまま説明できる。 また回転ローラ11aと11bの間に吸引ベルトユニット51が設けられ(吸引ベルトユニット51の構造については後述する)ており、同吸引ベルトユニット51は被洗物17を回転ローラ11aより受け取り、次の回転ローラ11に受け渡す。また吸引ベルトユニット51の上面を走行する吸引ベルト59aは、・・・、回転ローラ11aの周速度と略同じ速度(厳密には、0.1?1%高速度)で回動走行する。」(段落【0012】?【0013】)

エ「53a,53bは、各吸引ベルト51,52からエアを排気する排気管であり、図示略の吸引用ブロワーにつながれている。」(段落【0014】)

オ「次に図2?図4により吸引ベルトユニット51,52の構成について説明すると、図2及び図4において、回転ローラ11aと回転ローラ11bの間に、上面部に多数のパンチング穴55aを有する曲面状のボックスを設置するが、本実施例では半円筒状のボックス55とする。更にその上面に通気性のある構造(例えば耐熱性、強靱性、防炎性のある芳香族ポリアミド繊維、ステンレス繊維等による編物又は織物組織)又は芳香族ポリアミド樹脂やステンレス製の帯状物で多数のパンチング穴159が明けてある吸引ベルト59a(図4にはパンチング穴が明けてある例を示している)を幅方向に亘って複数本走行させる。ボックス55の下部には多数の軸支え板55cが設けてあり、4本の細長軸58を支えている。軸支え板55cのガイド部55dが、各吸引ベルト59aの隙間から図2の如く発熱体16bと重なる様に突出していて、被洗物17の先端が回転ローラ11b側へ導入され易くなっている。また軸支え板55cの間に小ローラ57が細長軸58によって回転自在に支えられる。図2において説明したように、吸引ベルト59aは駆動プーリー63aによって駆動され、小ローラ57に導かれて半円形状のボックス55の上面を通り、ここで半円形状のボックス55から図示略の吸引ブロワーにより吸引した状態で、吸引ベルト59aを被洗物17の送り方向に回転させる。また第1回転ローラ11aの出口部と半円形状のボックス55は、各々を形成する円周がほぼ接するように位置している。図4に半円形状のボックス55の上面の半円筒部のパンチング穴55aの分布状態を示しており、回転ローラ11a側の区分Aで示した範囲はパンチング穴55aは密に分布し、区分Bで示した範囲は疎となっている。即ち、吸引ベルト59aが区分A上を通過する時は、吸引ベルト59aは被洗物17に対して強い吸引力を発揮して被洗物17を回転ローラ11aの周面より剥ぎ取り、区分Bにおいては、被洗物17を軽く保持する程度の吸引力を呈して、吸引ベルト59aと半円形状のボックス55との摺動摩擦抵抗を減らし、かつ被洗物17が回転ローラ11bへの受け渡しを容易にする。」(段落【0015】?【0016】)

カ「次に吸引ベルトユニット51,52の作用について説明する。第1回転ローラ11aにてアイロン掛けされた被洗物17は、ここから排出されるとき、半円形状のボックス55の上面の吸引ベルト59aの有するエアの吸引力により、第1回転ローラ11aから剥離され、ベルト59aによって第2回転ローラ11bへ送られる。」(段落【0017】)

キ「【発明の効果】以上詳細に説明した如く本発明では、被洗物であるリネンの受け渡し部に設置された吸引ベルトユニットの半円形状のボックスの吸引穴は、入口側で密に、出口側で疎に、即ち吸引ベルトが回転ローラに接する部分で強い吸引力を持つように分布されているので、被洗物は回転ローラ出口部全面から確実に剥離され、薄い被洗物においても皺やスジが入ることなく、高品質にアイロン仕上げされる。また加熱装置間(回転ローラ間)の受け渡し用吸引ベルトユニット形状は単純な形でよいため、機械コストも安価に製作できる。更に半円形状のボックスの吸引穴は、吸引力が必要な部分には密に、それ以外の部分は疎に分布してあるため、吸引ブロワーの容量負荷を節約できる。」(段落【0018】)

以上の記載及び図面から、甲第1号証には、次の発明が記載されている。「発熱体16a、16bを収納した曲面を有する複数の加熱装置13と、この加熱装置の曲面に被洗物17を圧接しながら回転送りする回転ローラ11a、11bとを適宜間隔をあけて複数組設置し、これら加熱装置と回転ローラ間に被洗物を投入し圧接しながら回転送りすることにより該被洗物を乾燥、プレスするロールアイロナーにおいて、
前記加熱装置13、13間に設置され、エアの吸引力により前記回転ローラ11aより被洗物を受け取り次の回転ローラ11bに受け渡す吸引ベルト59aを有する吸引ベルトユニットを具備するロールアイロナーであって、前記吸引ベルトユニット51は、上面部に多数のパンチング穴55aを有する半円筒状のボックス55、同ボックスの上面を前記回転ローラ11aの周速度と略同じ速度で回動走行する通気性のある吸引ベルト59a、エアを排気する排気管53aを具備するロールアイロナー。」(以下「甲1発明」という。)

b 甲第2号証
甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「複数の回転ローラを有し、洗濯後の被洗物の乾燥及びプレス処理を行なうロールアイロナーにおいて、上記回転ローラの被洗物導入位置に設けられ、被洗物を回転ローラに吸引させる空気吸込み手段と、上記回転ローラの被洗物導出位置に設けられ、被洗物を回転ローラから引き剥がす空気吹出し手段と、被洗物をその両面から加熱し乾燥させる乾燥装置とを具備したことを特徴とするロールアイロナー。」(実用新案登録請求の範囲)

イ「そして、この回転ローラ11a?11cの下部に、加熱装置13が設けられる。この加熱装置13は、上記回転ローラ11a?11cと一定の間隔を持つように回転ローラ11a?11cと一定の間隔を持つように回転ローラ11a?11cの形状に対応した曲面で構成されるもので、」(第2頁第12?17行)

ウ「テープを使用せずに被洗物の通過路を規制して被洗物が回転ローラに巻付くことを防止すると共に、被洗物をむらなく加熱し乾燥させることのできるロールアイロナーを提供することを目的とする。
[問題点を解決するための手段及び作用]
すなわちこの考案は、回転ローラの被洗物導入及び導出位置に空気の吸込み口及び吹出し口を設け、また被洗物をその両面から加熱するように加熱装置を形成することにより、テープを使用せずに被洗物の通過路を規制し、また被洗物の乾燥状態を一様なものとできるようにしたものである。
[考案の実施例]
以下図面を参照してこの考案の一実施例を説明する。第1図はこの考案のロールアイロナーの構成を示すもので、基本的な構成は第2図のものと同様であるので、同一部分は同一符号を付してその説明は省略する。」(第6頁2?20行)

エ「これら吸引装置32a?32cは各回転ローラ11a?11cの内部に固定して設置されるもので、吸引空気の力によって回転ローラ11a?11cの内部より周面外部にある被洗物17を吸引して被洗物17が回転ローラ11a?11cに巻付かせるようにするものである。これら吸引装置32a?32cに対応して、各回転ローラ11a?11cの被洗物導出部分に、空気の吹出し装置33a?33cを設ける。これら吹出し装置33a?33cもまた、各回転ローラ11a?11cの内部に固定して設置されるのもので、回転ローラ11a?11cの内部より周面外部に吹出す空気の力によって被洗物17を回転ローラ11a?11cから引き剥がし、被洗物17が回転ローラ11a?11cに巻付かないようにするものである。」(第7頁11行?第8頁6行)

オ「吹出し装置33aと吸引装置32b、吹出し装置33bと吸引装置32cはそれぞれ対向して配置されるようになるもので、これらによって被洗物17は回転ローラ11aから回転ローラ11bへ、また回転ローラ11bから回転ローラ11cへと速やかに移動するようになる。」(第8頁第7?12行)

カ「被洗物17が回転ローラ11aの被洗物導入部分に進むと、被洗物17は上記吸引装置32aの吸引力によって回転ローラ11aに吸引され、それから回転ローラ11aの回転に伴って発熱体16aに圧接されながら回転ローラ11aの被洗物導出部分に至る。回転ローラ11aの被洗物導出部分では吹出し装置32aによって空気が回転ローラ11aの内部から外部に向かって吹出されているので、被洗物17は回転ローラ11aから引き剥がされる。」(第8頁16行?第9頁6行)

キ「ここで被洗物17は、同時に吸引装置11bによって回転ローラ11bに吸引され、回転ローラ11b(「32b」の誤記と思われる。)に吸引され、回転ローラ11bの回転に伴って上記発熱体16aに圧接された面とは反対の面を発熱体16bに圧接されながら回転ローラ11bの被洗物導出部分に至る。」(第9頁第6?11行)

以上の記載及び図面から、甲第2号証には、
「発熱体16a?16cを収納した曲面を有する加熱装置13と、この加熱装置の曲面に被洗物17を圧接しながら回転送りする回転ローラ11aを適宜間隔をあけて複数設置し、加熱装置13と回転ローラ11a?c間に被洗物17を投入し圧接しながら回転送りすることにより該被洗物を乾燥、プレスするロールアイロナーにおいて、吸引空気により被洗物17を回転ローラ11aに巻き付かせた被洗物17を、回転ローラ11a、11bの導出部分において、空気の吹出し装置33a,33bからの吹き出し空気の力によって、被洗物17を回転ローラ11a,11bから引き剥がすとともに、吸引装置32b,32cにより、回転ローラ11a、11b間の被洗物の移動を速やかにすること。」(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。

c 甲第3号証
甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「The present invention concerns the ironing of washing in an ironing machine comprising a suction roller rotating in a trough.」(第1頁左欄第8?10行。本発明は、洗濯もののアイロン、溝状部材中で回転する吸引ローラーを含むアイロン器械に関するものである。訳は、当審による。以下同。)

イ「In order to attain a reliable feeding of the washing at the turning point 13a of the guide surface 13, compressed air is introduced in the direction of the arrow C, by means of a tube 23, 」(第2頁左欄第7?10行。ガイド面13の転換点13aにおいて、圧縮空気を矢印C方向に吹き出すことにより、洗濯ものの送り出しを確実なものとする。)

以上の記載及び図面によると、甲第3号証には、
「洗濯ものをアイロン掛けするロールアイロナーにおいて、洗濯ものの送り出しを確実とするために空気を吹き出すこと。」(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。

d 甲第4号証
甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「This invention relates to dehydrating machines and is directed more particularly to apparatus for removing dried sheets or films from that type of machine in which the material to be dried is spread in relatively thin film form on a heated rotating drum.」(第1頁左欄第1?6行。本発明は、乾燥器械、特に、乾燥されたシートを回転加熱ドラムから取り除く機構に関する。)

イ「Referring particularly to Figures 4 and 5, the cool air duct 49 of the doctor bar 48 is provided with a plurality of air outlet passage 61 which extend entirely across the bar for purposes to be described presently.・・・The passages 61 are positined in the doctor bar 48 at such an angle that the onrushing air from the channel 49 is directed downwardly against the leading face of the doctor blade 50 and toward the cutting edge thereof.」(第3頁左欄第26?37行。特に、図4、5についてみると、ドクターバー48の空冷ダクト49は、複数の空気排出流路を、該バー48の長さ方向に渡って具備するものである。・・・流路61は、ドクターバー48に、該ダクト49から吹き付ける空気が、ドクターブレード50先端面に向くように、下向きに配置されている。)

ウ「・・・further by the downward movement of the compressed air from beneath the tip portion 64 as indicated by the arrows in Figure 5.」(第4頁左欄第5?8行。・・・第5図に矢印で示すように、先端部64の下から、圧縮空気を下方に吹き付ける。)

エ「From the foregoing , it will also be seen that the film 63 is being effectively dried by the heat of the drum up to the time that it reaches the blade 50 and by the air discharged through passages 61 and simultaneously the surface of the film which lays adjacent the heated surface of the drum during the dehydrating operation is immediated cooled.」(第4頁左欄第18?26行。以上のことから、フィルム63は、ブレード50に接し、ブレード50と、流路61を通った空気により、その表面から取り除かれるまで、ドラムの熱により効果的に乾燥されていることも理解できる。)

以上の記載から、甲第4号証には、
「ドラムにより乾燥され、シート状となったものをドラムから取り除くに当たり、その離端部において、ブレード50により取り除く際に、ブレードの上部から空冷ダクト49、流路61を介して、圧縮空気を吹き付けること。」(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。

e 甲第5号証
甲第5号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「この発明は電子写真複写機におけるシート剥離装置に関する。」(第1頁右下欄第15?16行)

イ「電子写真複写機においては、転写像の形成された移動体(たとえばドラム状の感光体)に対して給送されたシートが、静電潜像による静電引力あるいは現像液による表面張力などによつて上記移動体の表面に吸着された状態でこの移動体とともに移動するため、シートを次段階の処理装置(たとえば定着装置)に導くためには、このシートを上記移動体より強制的に剥離する、いわゆるシート剥離装置が必要となる。」(第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第5行)

ウ「シート2の移動経路の転写コロトロン3の下流にはトナー像の転写されたシート2を次段階の処理装置に導くためのガイド板4がその端部を感光体周面に対向させて配設されている。」(第2頁右上欄第9?12行)

エ「第(原文略字)1室20A内の空気が、パイプ23を通して空気吐出ノズルの吐出口24aから吐出される。この吐出空気は、シート吸引部材5が第(原文略字)3図において鎖線IIの位置から鎖線IIIの位置まで移動することによつて感光体1から剥離されたシート2の先端部と感光体1との間に吹き込まれて、シート2の剥離を促がす(第4図参照)。」(第3頁右上欄第3?9行)

オ 第4図の記載からみて、吐出空気は、感光体1の胴面に接する接線方向に吹き込まれているものと理解できる。

以上の記載及び図面によると甲第5号証には、
「ドラム状の感光体1からシート2を剥離する装置において、空気吐出ノズル24から感光体1の円筒形の胴面に接する接線方向に、シート2の先端部と感光体1との間に空気を吐出し、シート2の剥離を促すこと。」(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。

f 甲第6号証
甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「From the mist generator 2 a supply conduit 6 leads to the pipe 7. The pipe 7 is formed as a distributor pipe and possesses corresponding openings 8 」(第2頁第92?95行。霧発生器2から供給管6を通り、パイプ7へ導く。パイプ7には、開口8が設けられ、上方から霧を散布する。)

イ「As may be seen from Figure 2, the pipe 7 is situated between two adjacent mangle cylinders 9, namely above the trough bridge 13. The opening 8 in the pipe 7 are here so arranged that they are directed on to the mangle cylinders 9 」(第2頁第109?113行。図2に示すように、管7は、隣接する2つのしわ伸ばしシリンダー9の間、つまり、架橋部13の上部に設けられる。管7の開口8は、しわ伸ばしシリンダーに向けて形成される。)

これらの記載及び図面から、甲第6号証には、
「2つのしわ伸ばしシリンダ9の間の、架橋部13上方に、パイプ7を設け、その開口8から霧状物質を散布すること。」(以下「甲6記載事項」という。)が記載されている。

g 甲第7号証
甲第7号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「My present invention relates to laundry machines, and more particularly to a flat work ironer 」(第1頁第1?3行。本発明は、洗濯機器。特に、フラットワークアイロンに関する。)

イ「Figure 1 is a fractional longitudinal section through a flat work ironer embodying my invention, said section being taken substantially along the plane of the line 1-1 of Fig.2 Fig.2 is a partial top plan of the device shown in Fig.1. Fig.3,4 and 5 are enlarged transverse sections of the air discharge means disposed at the rear of the rolls.」(第1頁第84?92行。図1は、本発明のフラットワークアイロンの部分縦断面図で、図2の1-1線に沿った断面を示すものである。図2は、図1に示すものの部分上面図。図3、4、5は、ローラー後部の空気放出手段の拡大横断面を示す。)

ウ「In the use of these flat work ironers, the article to be ironed, such as a sheet C, is fed in damp condition upon a feed apron D, which may be in the form of an endless belt traveling around a plurality of rolls d from which apron the article is carried onto the steam chest and under the first roll, and after passing thereunder it progressively pasees between the succeeding roll, and the steam chest, in the course of which movement it is dried and ironed.」(第2頁第3?12行。このフラットワークアイロンの使用により、シートCなどのアイロンがけをされるものは、湿った状態で、給装エプロンDに載せられ、複数のローラーdに架ける無端ベルトにより、スチーム容器に乗せられ、その上で、順次、各ローラーの間を搬送され、乾燥とアイロンがけがされる。)

エ「Preferably the air streams which are directed against the rear of the rolls are caused to impinge upon the rolls in a substantially tangential direction, ・・・The air streams impinging upon the rolls function to effect disengagement from the rolls of the articles being ironed thereby,」(第2頁第21?29行。好ましくは、ローラー後部に向けて流される空気流は、実質上、ローラーに、接線方向に当たるように出される。・・・ローラーに吹き当たる気流は、ローラーでアイロンがけされるものを、ローラーから離すように作用する。)

以上の記載及び図面から、甲第7号証には、
「フラットワークアイロンであって、湿った状態のシートCを、複数のローラーdとスチーム容器との間で、水平方向に、搬送し、乾燥とアイロンがけをするものにおいて、ローラーd後部であって、搬送されたシーツCとローラーdとの間である接線方向に、空気流を吹き出し、ローラーから離すようにすること。」(以下「甲7記載事項」という。)が記載されている。

h 甲第8号証
甲第8号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「本考案はランドリー機械のスプレッダー等に適用される布片の展開装置、タオル、ダイヤバー等の矩形布の折りたたみ用展開装置、矩形布を広げたまま洗浄処理する装置への展開装置等に利用できるフィーダに関するものである。」(第1頁第13?17行)

イ「扇状に広がるように配置されたベルトコンベア上を、シーツ又は矩形布等が搬送されるにつれ、このシーツ又は矩形布等の下面はベルトコンベアとの摩擦によって左右に張り広げられる。同時に上部からエア吹付ノズルによってエアを吹付けて、シーツの上面の折れやシワを除去する」(第9頁第14?20行)

ウ「52,53はベルトコンベア51上において、同ベルトコンベアの進行方向に対し長さ方向が延びるよう配設され、下面に多数の小孔を有する筒状のエア吹付ノズルで、圧縮空気を、ベルトコンベア51上を進行するシーツ33に対し、左右又は左前方、右前方に吹付けるものである。54はシーツのつやを出すロールアイロナーである。
次に作用を説明すると、・・・、これにより濡れているシーツ33は移動を停止し、・・・。
続いてベルトコンベア51上で、シーツ33は下面をベルトコンベアのベルトにより、上面はエア吹付ノズル53より吹付けられる圧縮エアによって左右に張り広げられる。その後シーツ33は、ベルトコンベア52を経てロールアイロナー54へ送り込まれる。」(第10頁第19行?第12頁第7行)

以上の記載及び図面から、甲第8号証には、
「ランドリー機械のスプレッダー等の布片の展開装置において、ベルトコンベア51上を搬送される濡れているシーツ33の上面を、ベルトコンベア51の進行方向に対して長さ方向に延びるように配設された、下面に多数の小孔を有する筒状のエア吹付ノズル53で、圧縮空気を左右又は左前方、右前方に吹付け、シーツ33を左右に張り広げること。」(以下「甲8記載事項」という。)が記載されている。

i 甲第9号証
甲第9号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「本考案は、業務用洗濯装置における洗濯、脱水処理後のシーツ、包布等の布製品(以下シーツと称する)をロール式アイロン仕上機に装入するため、シーツの上縁の両端を保持具で把持して張り拡げ、その張り拡げ完了後後方の送り込みコンベア上にシーツを乗せるようにしたシーツ拡げ機に関するものである。」(第1頁左欄第17?23行)

イ「また、2はエアーブラスト用のパイプで、シーツの上縁を張り拡げるべき線の僅か下方位置にシーツ拡げ幅とほぼ同じ長さで架装されており、前記の如くしてシーツを張り拡げると、・・・エアーパイプ2の後方にあけられた複数のエアー吹出し孔2aよりシーツ上縁部8に向つてエアーを吹き出し、これによりシーツを送りこみコンベア1上に乗せることができるように構成されている。
本考案においては、斜め上方にノズル孔9a,9a’をあけた短い一対のエアーパイプ9,9’を従来のエアーブラスト用のパイプ2の上部両端部に配設し、・・・従つて、エアーパイプ9,9’の斜め上方にあけられたエアー吹き出し孔9a,9a’よりシーツの上縁両端隅角部8aに向つてエアーが吹き出してシーツの上縁両端隅角部8aを後方へ吹き倒し、同時にエアーブラストパイプ2の後方にあけられたエアー吹き出し孔2aよりシーツ上縁部8に向つてエアーが吹き出し、そのエアー圧によりシーツ上縁部8およびシーツ上縁両端隅角部8aが吹き飛ばされて後方の送り込みコンベア1上に到達し、かくしてシーツは上縁の両端隅角部が折曲ることなく送り込みコンベア9上に乗せられてロール式アイロン機械に送給される。」(第2頁左欄第37行?同右欄第33行)

以上の記載及び図面から、甲第9号証には、
「コンベア1上にシーツを乗せるようにしたシーツ拡げ機において、エアーブラスト用のパイプ2をシーツの上縁の張り拡げる位置の下方に架装し、該パイプの後方にあけられた複数のエアー吹出し孔2aよりシーツ上縁部8に向かってエアーを吹き出すとともに、該パイプの上部両端部にエアーパイプ9,9’を配設し、該パイプの斜め上方にあけられたエアー吹き出し孔9a,9a’よりシーツの上縁両端隅角部8aに向かってエアーを吹き出し、シーツの上縁の両端隅角部を折曲ることなく送り込み、コンベア1上に乗せてロール式アイロン機械に送給すること。」(以下「甲9記載事項」という。)が記載されている。

4.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「吸引ベルト59a」は本件発明1の「サクションベルト」に相当し、同様に、「吸引ベルト」は「サクションベルト」に、「ロールアイロナー」は、「ロールアイロナ」に、それぞれ相当する。
そうすると、両者は、
「発熱体を収納した曲面を有する複数の加熱装置と、この加熱装置の曲面に被洗物を圧接しながら回転送りする回転ローラとを適宜間隔をあけて複数組設置し、これら加熱装置と回転ローラ間に被洗物を投入し圧接しながら回転送りすることにより該被洗物を乾燥、プレスするロールアイロナにおいて、 前記加熱装置間に設置され、エアの吸引力により前記回転ローラより被洗物を受け取り次の前記回転ローラに受け渡すサクションベルトを有する吸引ベルトユニットを具備するロールアイロナ。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点a]
本件発明1は、各回転ローラからの被洗物受け渡し部の上部に、エアの吹き出しにより被洗物を回転ローラから剥がすエアノズルを設け、該エアノズルは、前記回転ローラから吸引ベルトユニットへの被洗物乗り移り部において前記回転ローラのロール面に接する接線方向に向けてエアを吹き出すように配置しているのに対し、甲1発明は、当該構成を具備しない点。

そこで、前記相違点aについて検討する。
甲第1号証には、「・・・場合によっては発熱体とロール42の間に被洗物が挟まれる虞れがあり、被洗物の仕上がり品質の低下が問題となる場合があった。更に吸引部が多いためブロワーの容量が過大であり、また吸引が局部的になり被洗物に皺等の悪い影響を与える欠点があった。本発明は前記従来の欠点を解消しようとするもので、薄い被洗物であっても皺やスジが入ることはなく、製作コストも安く、かつ吸引ブロワーの容量負担を節約できるロールアイロナーを提供しようとするものである。」(前記摘記事項「3.aイ」参照。)とある。したがって、甲1発明は、薄い被洗物を仕上げるに際し、吸引等に起因して、被洗物に皺やスジが入ることがないように仕上げることを課題とするものであるといえる。

そして、ロールアイロナーにおいて、空気を吹き出すことにより、回転ローラに被洗物が巻きつかないように該ローラから被洗物を引き剥がしたり、洗濯ものの送り出しを確実にしたりすることは、従来、良く知られた技術である(「甲2記載事項」においては、吸引のみならず、空気の吹き出しを行うことが示され、「甲3記載事項」においては、回転ローラ外部のノズルによる吹き出しを行うことが示されている。)。

また、シート状のものを回転体から剥離するように空気を吹き付ける際、回転体のロール面に接する接線方向に向けて空気を吹き出すことは、従来、一般に良く知られた技術事項である(例えば、甲5記載事項、甲4記載事項、甲7記載事項参照。)。

そうすると、甲1発明における課題を、より良く解決するため、ローラから吸引力により受け渡しをする際、被洗物に皺やスジが入ることがないよう、本件発明1のように、各回転ローラからの被洗物受け渡し部の上部に、エアの吹き出しにより被洗物を前記回転ローラから剥がすエアノズルを設け、前記エアノズルは、前記回転ローラから吸引ベルトユニットへの被洗物乗り移り部において前記回転ローラのロール面に接する接線方向に向けてエアを吹き出すように配置した点は、甲2?5記載事項のような周知の技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

この点について、被請求人は、1)甲第2号証は、本件特許発明の動機付けについて明確な根拠が示されていない。甲第2号証の吹き出し装置33a?cは、被洗物を「浮き上がらせる」ものであり、本件発明の「引き剥がし」とは異なる(答弁書第2頁第27行?第3頁第4行、第8頁第8?27行)。吹き出し装置の配置が異なる(第1回口頭審理陳述要領書、以下「被請求人陳述要領書」という。第3頁第25?30行)、2)甲第3号証は、本件発明の動機付けについて明確な根拠がない、被洗物の行き先が、本件発明1とは逆であり異なる(答弁書第3頁第5?14行、第8頁第28行?第9頁第8行、被請求人陳述要領書第3頁第31行?第4頁第5行)、3)甲第4号証は、動機付けについて、明確な記載はなく、エアノズルは記載されていないし、剥離するものではない(答弁書第3頁第15?24行、第4頁第9?27行。被請求人陳述要領書第4頁第6?9行)、4)甲第5号証は、技術分野が異なり、動機付けがない(答弁書第3頁第25行?第6頁第29行、被請求人陳述要領書第2頁第2?9行)旨の主張をしている。

そこで、これらの点について検討する。
1)甲2号証記載のものは、回転ローラに被洗物が巻付くことを防止することを目的とするものでもある(前記「3.bイ」参照。)。回転ローラに被洗物が巻付けば、皺、スジ等の原因ともなるのであるから、甲2記載のものに、動機付けがないとはいえない。
また、吹き出し装置の配置が本件発明1と異なるものではあるが、回転ローラから被洗物を離すように作用する点で、共通するものであり、「引き剥がす」ことと「浮き上がらせる」ことと、格別の差違があるとは認められない。
2)甲第3号証記載のものは、洗濯ものの送り出しを確実なものとするものである(前記「3.cイ」参照。)。そして、空気を洗濯ものに吹きかければ、当然に皺等の発生が抑制されるものと考えられるから、動機付けがないとはいえない。また、洗濯もの、すなわち被洗物をベルト上に乗せて、回転ローラへと搬送する前段階で空気を吹き付け、確実な送り出しを行うものではある点では、共通するものである。
3)甲第4号証記載のものは、確かに、ブレード50によりシート状のものを取り除くものであり、シート状のものを剥離するという動機が、明らかではないが、空気ダクト49、空気流路61を通過した圧縮空気が、冷却を行う他、剥離動作に寄与することも否定できない。
4)甲第5号証記載のものは、確かに、被洗物に関するものではないが、シート状のものをドラム状の回転体から引き剥がす必要のあるもの(前記「3.eイ」参照。)という点では、共通するものである。
そして、上記したように、甲1発明は、受け渡しを良くしようとするものであるから、より良くしようとして、一般的な技術として、甲第5号証記載のものを引用することができないとはいえない。
したがって、被請求人の主張は、いずれも理由がないので、採用できない。

そして、このような構成を採用したことによる効果についてみても、甲1発明、甲2?5記載事項のような周知の技術から、当業者が予測し得たことである、

以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲2?5記載事項のような周知の技術から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「吸引ベルト59a」は本件発明2の「サクションベルト」に相当し、同様に、「吸引ベルト」は「サクションベルト」に、「ロールアイロナー」は、「ロールアイロナ」に、それぞれ相当する。
そうすると、両者は、
「発熱体を収納した曲面を有する複数の加熱装置と、この加熱装置の曲面に被洗物を圧接しながら回転送りする回転ローラとを適宜間隔をあけて複数組設置し、これら加熱装置と回転ローラ間に被洗物を投入し圧接しながら回転送りすることにより該被洗物を乾燥、プレスするロールアイロナにおいて、 前記加熱装置間に設置され、エアの吸引力により前記回転ローラより被洗物を受け取り次の前記回転ローラに受け渡すサクションベルトを有する吸引ユニットを具備するロールアイロナ。」の点で一致し、次の点で相違する。
[相違点b]
本件発明2は、各回転ローラからの被洗物受け渡し部の上部に、エアの吹き出しにより被洗物を前記回転ローラから剥がすエアノズルを設け、前記エアノズルは、前記回転ローラから吸引ベルトユニットへの被洗物乗り移り部において前記回転ローラのロール面に上方から下方に向けてエアを吹き出すように配置しているのに対し、甲1発明は、当該構成を具備しない点。

そこで、前記相違点bについて検討する。
甲第1号証には、「・・・場合によっては発熱体とロール42の間に被洗物が挟まれる虞れがあり、被洗物の仕上がり品質の低下が問題となる場合があった。更に吸引部が多いためブロワーの容量が過大であり、また吸引が局部的になり被洗物に皺等の悪い影響を与える欠点があった。本発明は前記従来の欠点を解消しようとするもので、薄い被洗物であっても皺やスジが入ることはなく、製作コストも安く、かつ吸引ブロワーの容量負担を節約できるロールアイロナーを提供しようとするものである。」(前記摘記事項「3.aイ」参照。)とあるように、薄い被洗物を仕上げるに際し、吸引等に起因して、被洗物に皺やスジが入ることがないように仕上げることを課題とするものである。
してみると、甲1発明は、当然に前記課題を具備するものといえる。

そして、ロールアイロナーにおいて、空気を吹き出すことにより、回転ローラに被洗物が巻きつかないように該ローラから被洗物を引き剥がしたり、洗濯ものの送り出しを確実にしたりすることは、従来、良く知られた技術である(「甲2記載事項」においては、吸引のみならず、空気の吹き出しを行うことが示され、「甲3記載事項」においては、回転ローラ外部のノズルによる吹き出しを行うことが示されている。)。

また、シート状のものを回転体から剥がすに際し、回転体とシート状のものとを剥がしたい部位に向けて空気を吹き出すことも、従来、良く知られた技術である(例えば、甲5記載事項、甲4記載事項、甲7記載事項参照。)。

そして、甲1発明において、回転ローラより被洗物を受け取り次の回転ローラに受け渡すに際し、回転ローラと吸引ベルトユニットとの隣接部に空気を吹き出すようにすること、すなわち、回転ローラと吸引ベルトユニットの上方から吹き出すことが、被洗物を剥がすのに有効な部位であることは、当業者には明らかなことである。

そうすると、甲1発明において、被洗物に皺やスジが入ることがないように、本件発明2のように、各回転ローラからの被洗物受け渡し部の上部に、エアの吹き出しにより被洗物を回転ローラから剥がすエアノズルを設け、該エアノズルは、回転ローラから吸引ベルトユニットへの被洗物乗り移り部において前記回転ローラのロール面に上方から下方に向けてエアを吹き出すように配置することは、甲2?5記載事項のように周知の技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

この点について、被請求人は、1)甲第2号証は、甲第2号証の吹き出し装置33a?cは、被洗物を「浮き上がらせる」ものであり、本件発明の「引き剥がし」とは異なる(答弁書第12頁第14行?第13頁第3行)。吹き出し装置の配置が異なる(被請求人陳述要領書第3頁第25?30行)、2)甲第3号証は、被洗物の行き先が、本件発明2とは逆であり異なる(答弁書第13頁第4?14行、被請求人陳述要領書第3頁第31行?第4頁第5行)、3)甲第4号証では、エアは、冷却するものであるから、被洗物に向けてエアを吹き出すエアノズルは記載されていないし、剥離対象が異なる(答弁書第13頁第15行?第14頁第2行。被請求人陳述要領書第4頁第6?9行)、4)甲第5号証は、技術分野が異なり、動機付けがないし、作用において異なる(答弁書第3頁第25行?第6頁第29行、被請求人陳述要領書第2頁第24?30行)旨の主張をしている。

そこで、これらの点について検討する。
1)甲第2号証記載のものにおいて、吹き出し装置の配置が本件発明2と異なるものではあるが、回転ローラから被洗物を離すように作用する点で、共通するものであり、「引き剥がす」ことと「浮き上がらせる」ことと、格別の差違があるとは認められない。
2)甲第3号証記載のものにおいても、洗濯もの、すなわち被洗物をベルト上に乗せて、回転ローラへと搬送する前段階で空気を吹き付け、確実な送り出しを行うものではある点では、共通するものである。
3)甲第4号証記載のものにおいて、空気ダクト49、空気流路61を通過した圧縮空気が、冷却を行う他、剥離動作に寄与することは、否定できない。
4)甲第5号証記載のものは、被洗物に関するものではないが、シート状のものであって、ドラム状の回転体から引き剥がす必要のあるもの(前記「3.eイ」参照。)という点では、共通するものである。そして、上記したように、甲1発明は、受け渡しを良くしようとするものであるから、より良くしようとして、一般的な技術として、甲第5号証記載のものを引用することができないとはいえない。
したがって、被請求人の主張は、いずれも理由がないので、採用できない。

そして、このような構成を採用したことによる効果についてみても、甲1発明、甲2?5記載事項のような周知の技術から、当業者が予測し得たことである。

以上のとおりであるから、本件発明2は、甲1発明、甲2?5記載事項のような周知の技術から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2に、「エアノズルから吹き出されるエアを前記回転ローラと当該回転ローラ上の被洗物との間へと導く導風板を有する」との限定を付加したものである。

そこで、本件発明3と甲1発明とを対比すると、「(1)本件発明1について」で検討した相違点a加えて、甲1発明が、「エアノズルから吹き出されるエアを前記回転ローラと当該回転ローラ上の被洗物との間へと導く導風板を有する」との構成を具備しない点(以下「相違点c」という。)で、両者は、相違している。

そこで、前記相違点cについて検討する。
風を目的とする部位に吹き付けるために、板状部材を利用して、風に方向性を持たせることは、従来、一般的に行われていることである(例えば、請求人が審判請求書において示した特開平6-98988号公報、特開平7-221477号公報参照。)。

そうすると、甲1発明に、甲2?5記載事項のような周知の技術を適用してエアノズルからエアを吹き出すようにするに際し、エアノズルから吹き出されるエアを回転ローラと当該回転ローラ上の被洗物との間へと導く導風板を有するものとする程度のことは、当業者であれば、必要に応じて、容易に想到できたことである。
そして、相違点aについては、「(1)本件発明1について」における検討と同様である。

さらに、本件発明3の奏する効果を全体としてみても、甲1発明及び周知の技術から当業者が予測できる程度のものである。

したがって、本件発明3は、「(1)本件発明1について」において検討したのと同様、甲1発明及び周知の技術に基づいて当業者が、容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1又は本件発明2に、「前記吸引ベルトユニットは、上面部に多数の小孔を形成したサクションボックス、同サクションボックス上面を前記回転ローラの周速と略同速度で走行する多孔サクションベルト、サクションボックス内の空気を排気する排気手段とを具備する」との限定を付加したものである。

そこで、本件発明4と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「吸引ベルト59a」は本件発明1の「サクションベルト」に相当し、同様に、「吸引ベルトユニット」は「サクションベルトユニット」に、「ロールアイロナー」は、「ロールアイロナ」に、「パンチング穴55a」は「小孔」に、「ボックス55」は「サクションボックス」に、「略同じ速度で回動走行する通気性のある吸引ベルト」は「略同速度で走行する多孔サクションベルト」に、「エアを排気する排気管53a」は「サクションボックス内の空気を排気する排気手段」に、それぞれ相当する。

そうすると、両者は、
「発熱体を収納した曲面を有する複数の加熱装置と、この加熱装置の曲面に被洗物を圧接しながら回転送りする回転ローラとを適宜間隔をあけて複数組設置し、これら加熱装置と回転ローラ間に被洗物を投入し圧接しながら回転送りすることにより該被洗物を乾燥、プレスするロールアイロナにおいて、前記加熱装置間に設置され、エアの吸引力により前記回転ローラより被洗物を受け取り次ぎの回転ローラに受け渡すサクションベルトユニットを具備するロールアイロナであって、前記吸引ベルトユニットは、上面部に多数の小孔を形成したサクションボックス、同サクションボックス上面を前記回転ローラの周速と略同速度で走行する多孔サクションベルト、サクションボックス内の空気を排気する排気手段とを具備するロールアイロナ。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点d]
本件発明4は、各回転ローラからの被洗物受け渡し部の上部に、エアの吹き出しにより被洗物を回転ローラから剥がすエアノズルを設け、該エアノズルは、回転ローラから吸引ベルトユニットへの被洗物乗り移り部において回転ローラのロール面に接する接線方向に向けてエアを吹き出すように配置しているのに対し、甲1発明は、当該構成を具備しない点。

前記相違点dは、本件発明1と甲1発明との相違点aと同じである。
前記相違点aについては、「(1)本件発明1について」において検討したとおり、甲2?5記載事項のような周知の技術から、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、相違点dについて検討しても、相違点aについて検討したのと同様、甲2?5記載事項のような周知の技術から、当業者が容易に想到することができたものである。

してみると、本件発明4は、本件発明1と同様、甲1発明、甲2?5記載事項のような周知の技術から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明4に、「更に、サクションベルト上の被洗物送り方向に斜めにエアを吹き出すエアノズルを具備する」との限定を付加したものである。

したがって、本件発明5と甲1発明とを対比すると、前記相違点dに加えて、次の相違点を有するものである。

[相違点e]
本件発明5は、「サクションベルト上の被洗物送り方向に斜めにエアを吹き出すエアノズルを具備する」のに対し、甲1発明は、当該構成を具備しない点。

そこで、上記相違点eについて検討する。
本件発明5と甲8記載事項とを対比する。
甲8記載事項の「濡れているシーツ」は本件発明5の「被洗物」に相当し、以下同様に、「エア吹付ノズル」は「エアノズル」に、「左前方、右前方」は「被洗物送り方向斜め」に、それぞれ、相当する。

そうすると、甲8記載事項は、
「ランドリー機械のスプレッダー等の布片の展開装置において、ベルトコンベア51上を搬送される被洗物の上面を、ベルトコンベア51の進行方向に対して長さ方向に延びるように配設された、下面に多数の小孔を有する筒状のエアノズルで、圧縮空気を被洗物送り方向斜めに吹付け、被洗物を左右に張り拡げること。」と言い換えることができる。

前記のとおり、甲1号証記載のものは、被洗物の皺やスジが入ることがないようにすることも課題とするものであり、甲1発明は、当然、当該課題の解決を目的とするものである。

そうすると、甲1発明におけるサクションベルトに、甲8記載事項の技術を適用し、被洗物送り方向に斜めにエアを吹き出すエアノズルを具備するものとすることは、当業者であれば、容易に想到することができたものである。

この点につき、被請求人は、甲8号証に、根拠が示されていないし、技術分野が相違する(答弁書第7頁第14?24行、第17頁第7?13行)、エアの吹き出し方向は搬送方向とは直角方向であるので、皺を取り除けない(被請求人陳述容量書第第4頁第19行?第5頁第1行)旨の主張をしている。

そこで、この点について検討すると、前記のとおり、甲第8号証には、「圧縮空気を・・・左前方、右前方に吹付け」との明記があり、このことは、「搬送送り方向斜めにエアを吹き出す」ことと同義であることは明らかである。

また、甲第8号証記載のものは、ロールアイロナーへと搬送される被洗物を対象とするものであるから、技術分野は、同じであることも明らかである。

してみると、被請求人の前記主張は、採用できない。

そして、相違点dについては、「(4)本件発明4について」で示したと同様、甲2?5記載事項のような周知の技術から、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本件発明5の奏する効果を全体としてみても、甲1発明、甲2?5記載事項などの周知技術、甲8記載事項から、当業者が予測できるものである。

したがって、本件発明5は、甲1発明、甲2?5記載事項などの周知技術、及び甲8記載事項から、当業者が、容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件発明1?本件発明5は、甲1発明、甲2?5記載事項、甲8記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである

したがって、本件発明1?5の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-03-24 
結審通知日 2010-03-26 
審決日 2010-04-06 
出願番号 特願平8-275641
審決分類 P 1 123・ 121- Z (D06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 由希子金丸 治之  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 豊島 唯
長崎 洋一
登録日 2007-09-21 
登録番号 特許第4012944号(P4012944)
発明の名称 ロールアイロナ  
代理人 松元 洋  
代理人 特許業務法人プロテック  
代理人 光石 俊郎  
代理人 光石 忠敬  
代理人 田中 康幸  
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