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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47K
管理番号 1217305
審判番号 不服2008-14836  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-12 
確定日 2010-05-27 
事件の表示 特願2002- 69706「トイレ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月24日出願公開、特開2003-265360〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年3月14日の出願であって、平成20年5月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月12日に拒絶査定に対する審判の請求がなされたものである。
当審において、平成21年12月28日付けで、拒絶理由通知がなされたところ、平成22年2月22日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、上記平成22年2月22日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたものであり、そのうち請求項1、2に係る発明は、明細書および図面の記載からみて次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 便器上に設けて使用し、トイレ機能部を内装した本体と、前記本体に軸支部で支持し、上下方向へ回動自在に設けた便座および前記本体より幅の広い便蓋とを備え、前記本体の左右両端部の外側面は、後側を前記本体の最も幅の広い部分を形成する後外側面とし、前側を前記後外側面より内方へ入り込ませた前外側面とし、前記便蓋の軸支部である回転軸を前記後外側面に設け、前記便座の軸支部である回転軸を前記前外側面に設け、前記便蓋の軸支部である軸支外側面は他の外側面より肉厚を厚く形成し、前記便蓋を閉じた状態において、前記本体の前記後外側面と前記便蓋の軸支外側面で形成する間隙より、前記便座の側面と前記便蓋の他の前記外側面で形成する間隙の方が大きいことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】 前記便蓋は閉成時に前記便座の軸支部を覆うように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。」
(なお、特許請求の範囲の請求項1には、「便座の軸支部である回転軸を前記前側面に設け」と記載されているが、明細書の記載からみて「前側面」は、「前外側面」の誤記と認められることから、上記のとおり認定した。)

3.刊行物の記載事項
(1)当審における拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実公昭59-27833号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1a)「内部に局部洗浄又は消臭等のための機能部を内蔵するとともに外面に該機能部を操作するための操作部を設けたケーシングと、該ケーシングの前面に設けられた便座と、同ケーシンクの側面に基部を回転自在に取付け、閉蓋時には便座とケーシングを覆うことができるとともに開蓋時には便座とケーシングを露出することができる便蓋とからなる腰掛式便器用機能便座。」(実用新案登録請求の範囲)、
(1b)「第一実施例
第1図及び第2図は便座、便蓋及び機能部をそれぞれ別体に構成した本考案の第一実施例を示すものである。即ち、図において、aは局部洗浄装置又は消臭装置等の機能部1が組み込まれたケーシングであり、このケーシングaは取付金具等によって腰掛式便器本体の後部上面に取付可能な構成となしている。なお、機能部1としては前述の局部洗浄装置、消臭装置の他、便座加温装置、温風乾燥装置等が考えられる。また便座2及び便蓋3は前記ケーシングaの左右両側面においてそれぞれ開閉自在に枢着されるが、特に便蓋3はその閉蓋時に機能部1が組み込まれたケーシングaを略覆って外部からは見えなくなるようにケーシングaの後方端寄りの位置に枢着されるとともに、少なくとも同ケーシングaの相対する便蓋3の裏面にはケーシングaの突出部を収容可能な中空部bが設けられる。」(1頁2欄35行?2頁3欄15行)、
(1c)「第二実施例
第3図及び第4図は便蓋3によって機能部1を内蔵するケーシングa全体を覆うことにしたことを特徴とする本考案の第2実施例を示すものである。即ち、本実施例では便座2及び便蓋3は共にケーシングaを介して腰掛式便器本体の後方上面にそれぞれ開閉自在に枢着される点は従来と同様であるが、本実施例における便蓋3はその後部にケーシングaの上面及び側面を覆う中空部が一体に形成され、同ケーシングa内裏面側に機能部1が組み込まれる。」(2頁3欄27?37行)。
(1d)第1図及び第2図は、次のとおりであり、便蓋はケーシングaより幅が広く、便蓋を枢着する軸支部はケーシングaの側面の後方端寄りに設けられ、便座を枢着する軸支部は、便蓋を枢着する軸支部の前方かつ下方に位置することが記載され、第1図には、さらに、便蓋を閉じた状態において、便座の側面と便蓋の外側面は上下に重なる位置であることが記載されている。

(1e)第3図及び第4図は、次のとおりであり、便蓋はケーシングaより幅が広く、便蓋を枢着する軸支部はケーシングaの側面の後方端寄りの下方に設けられ、ケーシングaの前面中央部は前方に突出し、その左右に便座の後部を配置することが記載され、第3図には、さらに、便蓋を閉じた状態において、便座の側面と便蓋の軸支部周囲を除く外側面は上下に重なる位置であることが記載されている。

上記第二実施例では、便座の軸支部の位置は明確でないが、便蓋の軸支部より前側であることは明らかであるから、第一実施例、第二実施例とも便座の軸支部である回転軸の位置はケーシングaの前側といえる。
したがって、上記記載事項及び技術常識によれば、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「便器上に設けて使用し、機能部を内装したケーシングaと、前記ケーシングaに枢着された便座および前記ケーシングaより幅が広い便蓋とを備え、前記便蓋の軸支部である回転軸をケーシングaの左右側面の後方端寄りに設け、前記便座の軸支部である回転軸をケーシングaの前側に設け、前記便蓋を閉じた状態において、便座の側面と便蓋の外側面は、上下に重なる位置である、機能便座。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(2)同じく、実願昭58-55527号(実開昭59-162099号)のマイクロフイルムには、次の事項が記載されている。
(2a)「便器本体と便座本体と蓋とからなる便器において、前記蓋を第1の支軸により回動自在に前記便器本体側に軸支し、一方、一端が前記第1の支軸に回動自在に軸支される回動具を設け、この回動具の前記第1の支軸から所定距離を隔てた位置に前記便座本体を回動自在に第2の支軸で軸支したことを特徴とする便座。」(実用新案登録請求の範囲)、
(2b)「第3図はこの考案の一実施例を示す側面図、第4図は第3図のX?X線による拡大断面図である。これらの図において、・・・21は前記蓋5の軸受、22は前記軸受21を回動自在に軸支する第1の支軸で、温風装置7に固定されている。・・・23は前記便座本体3の軸受、24は前記軸受23を回動自在に軸支する第2の支軸、25は回動具で、その一端は前記第lの支軸22に対して回動自在に軸支され、他端は第1の支軸22から所定の距離を隔てた位置に第2の支軸24が固定されている。
使用に際しては、水平位置にある便座本体3と蓋5とを第1、第2の支軸22,24を中心にして実線で示す位置から第3図の矢印C,D方向に回動して貯水タンク13に当接させて二点鎖線で示す位置に立て掛ける。・・・」(明細書4頁1?19行)
(2c)第3図には、蓋5は閉成時に、蓋5の外側面が前記便座の軸支する第2の軸支部24の外側面を覆うことが記載されている。
上記記載事項によれば、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「便器上に設けて使用し、トイレ機能部を内装した温風装置7と、
上下方向へ回動自在に設けた便座本体3および前記温風装置7より幅の広い蓋5とを備え、
前記蓋5の回転軸である第1の支軸22は前記温風装置7の左右の外側面に設けられ、
前記便座本体3の回転軸である第2の支軸24を第1の支軸22の前方に支持し、
前記蓋5は閉成時に、蓋5の外側面が前記便座を軸支する第2の軸支部24の外側面を覆うように構成した便座。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

3.対比
請求項1に係る発明を引用する本願の請求項2に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明の「ケーシングa」、「機能便座」は、請求項2に係る発明の「本体」、「トイレ装置」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「ケーシングaの左右側面の後方端寄り」は、請求項2に係る発明の「本体の後外側面」に相当し、刊行物1記載の発明の「ケーシングaの前側」と、請求項2に係る発明の「本体の前外側面」とは、「本体の前側」である点で共通する。
したがって、両者は、
「便器上に設けて使用し、トイレ機能部を内装した本体と、前記本体に軸支部で支持し、上下方向へ回動自在に設けた便座および前記本体より幅の広い便蓋とを備え、
前記便蓋の軸支部である回転軸を前記本体の後外側面に設け、前記便座の軸支部である回転軸を前記本体の前側に設けたトイレ装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:請求項2に係る発明は、本体の左右両端部の外側面が「後側を本体の最も幅の広い部分を形成する後外側面とし、前側を前記後外側面より内方へ入り込ませた前外側面とし」たものであり、便座の軸支部である回転軸を前記前外側面に設けたものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、本体の左右両端部の外側面には内方へ入り込ませた前外側面が形成されておらず、便座の軸支部である回転軸の位置がこのような位置ではない点。
相違点2:便蓋の軸支部である軸支外側面が、請求項2に係る発明では、他の外側面より肉厚を厚く形成されているのに対し、刊行物1記載の発明では、このようなものか否か不明な点。
相違点3:便蓋を閉じた状態において、請求項2に係る発明では、本体の後外側面と便蓋の軸支外側面で形成する間隙より、便座の側面と便蓋の他の外側面で形成する間隙の方が大きく、便蓋は閉成時に便座の軸支部を覆うように構成されているのに対し、刊行物1記載の発明は、便座と便蓋が重なるものであって、このような構成を備えていない点。

4.判断
相違点1について検討すると、本体の左右両端部の外側面は、後側を前記本体の最も幅の広い部分を形成する後外側面とし、前側を後外側面より内方へ入り込ませた前外側面とし、便座の軸支部を前記前外側面に設けることは、本願出願前周知の技術である(原査定の拒絶の理由で引用した、実願平4-22808号(実開平5-82396号)のCD-ROM、特開平5-192268号公報参照)。
そして、刊行物1には、図1、図3に示すように、異なる形状の本体が記載されており(記載事項(1d)(1e)参照)、刊行物1記載の発明において本体の形状は限定されていないから、本体の左右両端部の外側面の形状を、上記周知の前側を後外側面より内方へ入り込ませたものとし、この前外側面に便座の軸支部を設けることは当業者が適宜なしうることである。
相違点2について検討すると、回動や捩れによる負荷のかかる軸支部を肉厚とすることは周知の技術であり(例えば、当審における拒絶理由で引用した特開平2-84916号公報の第3図参照)、便蓋の軸支外側面を他の外側面より肉厚を厚く形成することは当業者が適宜設計しうることである。
相違点3について検討すると、刊行物2記載の発明には、便座の軸支部(刊行物2における「第2の支軸24」)を便蓋(同「蓋5」)の軸支部(同「第1の支軸22」)よりも前方に支持し、便蓋の閉成時に、便蓋の外側面が便座の軸支部を覆うように構成されたトイレ装置が示されており、刊行物1記載の発明において、便蓋の外側面の形状を閉成時に便座の軸支部を覆うように構成することは適宜なしうることである。
そして、このようなものにおいて、便蓋の外側面が便座の側面に干渉しないように、便座の側面と便蓋の軸支部を除く他の外側面との間に十分な間隔を設けるように設計することは当然のことであり、一方、本体の後外側面と便蓋の軸支外側面で形成する間隙は、回動がスムーズに行える範囲でなるべく狭くしてガタツキをなくすようにすることも当然のことであり、便蓋の外側面の形状を閉成時に便座の軸支部を覆うようにしたものにおいて、本体の後外側面と便蓋の軸支外側面で形成する間隙より、便座の側面と便蓋の他の外側面で形成する間隙の方を大きくすることは、当業者が容易になしうることである。
また、請求項2に係る発明の効果は、全体として刊行物1及び2記載の発明及び周知技術から予測できる程度であって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、請求項2に係る発明は、刊行物1及び2記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、刊行物1及び2記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-29 
結審通知日 2010-03-30 
審決日 2010-04-12 
出願番号 特願2002-69706(P2002-69706)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦七字 ひろみ  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 関根 裕
伊波 猛
発明の名称 トイレ装置  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 藤井 兼太郎  

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