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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1217381
審判番号 不服2009-5305  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-11 
確定日 2010-05-28 
事件の表示 特願2002-340559「フィルム用芯管」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-175467〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成14年11月25日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年9月26日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「硬質ポリ塩化ビニル、硬質ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンから選ばれる硬質素材からなる内管と、軟質ポリエチレン、ゴム、軟質エラストマーから選ばれる軟質素材からなる外管を共押出成形して得られた複合管からなり、前記軟質素材製の外管の内面から前記硬質素材製の内管の内側に向けて突条筋が設けられ、前記内管と前記外管とが側面視において凹凸嵌合してなることを特徴とするフィルム用芯管。」

2.引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2001-80828号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)「【発明の属する技術分野】本発明は、農業用フィルム等のような長尺合成樹脂フィルムを巻き取るためのフィルム用巻芯、及び該巻芯を用いた合成樹脂フィルムの製造方法に関する発明であって、特に、リサイクル可能であり、かつ、巻芯にフィルムを巻回した後にフィルム耳部の切断工程が可能なフィルム用巻芯とそれを用いた合成樹脂フィルムの製造方法に関する発明である。」(段落【0001】参照)

(2)「【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。図2、図3、図4、及び図5はいずれも本願発明の巻芯の一例を示す各実施態様を示す図である。即ち、合成樹脂フィルムを巻取るための円筒状フィルム用巻芯であって、その巻芯の、少なくともフィルム切断用カッターが当接する部位の表面が、JIS K7215規格におけるタイプDデュロメータ硬さが60未満の合成樹脂にて形成されてなることを特徴とする、フィルム用巻芯を示す図である。」(段落【0007】参照)

(3)「【0010】・・・図5は、芯材と全長被覆材とから構成された巻芯を示しており、円筒状の芯材(5)の全外周に、被覆材(6)が被覆されてなる。」(段落【0010】参照)及び図5

(4)「【0011】本願発明における芯材(5)とは、巻芯(1)の主要部分を構成するものであって、フィルム巻回時及び運搬時における剛性及びリサイクル時における耐久性を有する公知の合成樹脂製の材質のものから、任意に選択して使用しうる。使用できる材質としては、例えば水道管用に用いられる硬質塩化ビニル、硬質ポリエチレン(高密度ポリエチレン)などの硬質樹脂、鉄、アルミなどの金属、また、前記樹脂を、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維にて補強した繊維強化樹脂製のものが挙げられる。・・・
【0012】一方、本願発明の端部被覆材又は全被覆材として用いられる材質は、JISK7215規格におけるタイプDデュロメータ硬さ(HDD)が60未満、好ましくは55以下30以上、更に好ましくは50以下35以上の樹脂組成物から任意に選択して使用しうる。かかる被覆材として使用できる材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、これらの共重合体などのオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーから選ばれる比較的軟質の合成樹脂の1種以上又は2種以上の組成物から任意に上記硬度を有するものを選択し使用しうる。・・・。」(段落【0011】-【0012】参照)

以上の記載によると、引用例には、
「合成樹脂フィルムを巻取るための円筒状フィルム用巻芯であって、
上記巻芯は、芯材と被覆材とから構成され、円筒状の芯材の全外周に被覆材が被覆されてなり、
上記芯材は、水道管用に用いられる硬質塩化ビニル、硬質ポリエチレン(高密度ポリエチレン)などの硬質樹脂であり、
上記被覆材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、これらの共重合体などのオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーから選ばれる比較的軟質の合成樹脂の1種以上又は2種以上の組成物である円筒状フィルム用巻芯。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「芯材」、「被覆材」及び「円筒状フィルム用巻芯」は、それぞれ本願発明の「内管」、「外管」及び「フィルム用芯管」に相当し、
また、引用発明の「芯材」及び「被覆材」は、本願発明の「複合芯」を構成していることから、
両者は
「硬質ポリ塩化ビニル、硬質ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンから選ばれる硬質素材からなる内管と、軟質ポリエチレン、ゴム、軟質エラストマーから選ばれる軟質素材からなる外管との複合芯からなフィルム用芯管。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;本願発明では、複合芯が、共押出成形して得られたものであるのに対し、引用発明では、そのようにして得られたものではない点。

相違点2;本願発明では、軟質素材製の外管の内面から硬質素材製の内管の内側に向けて突条筋が設けられ、前記内管と前記外管とが側面視において凹凸嵌合してなるのに対し、引用発明では、そのように凹凸嵌合していない点。

4.判断
そこで、上記各相違点について検討すると、
・相違点1について
複合部材を共押出成形により得ることは、本願出願前周知の技術(例えば、特開2000-120941号公報(段落【0032】参照)及び特開平6-281056号公報(段落【0012】参照))であるので、
引用発明の「芯材」及び「被覆材」を共押出成形により得ることは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
内側及び外側回転部材相互の回り止めを凹凸嵌合により行うことは、本願出願前周知の技術(例えば、特開平5-278953号公報参照)であり、
また、凹凸嵌合における凸部を内側回転部材と外側回転部材とのどちらに設けるかは、当業者が設計上適宜に選択し得る事項と認められること、
そして、引用発明の円筒状フィルム用巻芯も、フィルムの巻回工程及び切断工程において「芯材」と「被覆材」との空回りを防ぐ必要があることは、当業者が容易に想到し得る事項であるので、
引用発明において、「芯材」と「被覆材」との回り止めをより確実に行うために、両者を凹凸嵌合させ、また、その凸部を「被覆材」側に設けることにより、上記相違点2の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は、審判請求の理由において
「しかしながら、上記した通り、内管と外管の間に突条筋を設ける理由は、外菅が内管から剥離して、外菅が空回りしたり、外れたりするのを防ぐためです。
ところで、この効果だけを追求するのであれば、本願発明とは逆に、『硬質素材製の内管の外側から軟質素材製の外菅の外側に向けて』突条筋を設けたほうが有利であることは当業者に自明であります。即ち、フィルム用芯管に長尺フィルムを巻く際、又はロール状物の両端の耳部を切断する際には内管と外菅の間には剪断力が生じますが、この剪断力に対抗するためには突条筋を強度の大きい硬質素材製とするほうが好ましく、そうすると必然的に本願発明とは逆に『硬質素材製の内管の外側から軟質素材製の外菅の内側に向けて』突条筋を設けることになります。
・・・
本願発明は、かかる当業者の常識を打ち破り、「軟質素材製の外管の内面から硬質素材製の内管の内側に向けて突条筋を設ける」ことにより、即ち敢えて強度の大きい「硬質素材製の突条筋」ではなく、強度の小さい「軟質素材製の突条筋」を採用することにより、カッター刃の刃こぼれという課題を解決したものであります。」との主張をしているが、
内側及び外側回転部材の嵌合構造において、空回り等を防ぐための凸部を軟質素材製側に設けることは、例えば、実願昭60-97208号(実開昭62-6559号)のマイクロフィルム(「凸部2a」参照)及び実願平1-24667号(実開平2-116034号)のマイクロフィルム(「突条部7」参照)に記載されており、請求人の主張するように、突条筋を強度の大きい硬質素材製側に設けたほうが有利であることが、当業者に自明であるとしても、該突条筋を軟質素材製側に設けることも、当業者が設計上必要に応じてなし得ることと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-15 
結審通知日 2010-03-23 
審決日 2010-04-07 
出願番号 特願2002-340559(P2002-340559)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永石 哲也吉澤 秀明  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 谷治 和文
熊倉 強
発明の名称 フィルム用芯管  
代理人 伊丹 健次  

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