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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20056282 審決 特許
不服200627219 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1217609
審判番号 不服2004-9407  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-06 
確定日 2010-06-02 
事件の表示 特願2000-537427号「上気道状態を治療するためのキシリトール調合物」拒絶査定に対する審判事件〔平成11年 9月30日国際公開、WO99/48361、平成14年 3月12日国内公表、特表2002-507548〕、請求項の数(8))についてされた平成20年3月4日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10261号、平成21年3月25日判決言渡し)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年3月24日(パリ条約による優先権主張 1998年3月24日(US)アメリカ合衆国 1998年12月23日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成19年12月28日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものである。

「鼻の鬱血、再発性副鼻洞感染、又はバクテリアに伴う鼻の感染又は炎症を治療又は防止するために、それを必要としている人に対して鼻内へ投与するための鼻洗浄調合物であって、
キシリトールを水溶液の状態で含有しており、キシリトールが水溶液100cc当たり1から20グラムの割合で含有されている調合物。」(以下、「本願発明1」という。)

2.引用例
これに対して、当審における、平成21年6月17日付けで通知した拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布されたことが明らかな以下の文献(引用例1及び引用例2)には、それぞれ以下の事項が記載されている。
なお、引用例1,2は、英語の文献であるので、翻訳文を示す。
引用例1:国際公開第98/3165号
引用例2:Kontiokari, T.,"Effect of xylitol on growth of
nasopharyngeal bacteria in vitro" Antimicrobial Agents
and Chemotherapy (1995),Vol.39, No.8, pp.1820-1823

(1)引用例1の記載事項
(A)「我々は以前、キシリトールがインビトロで肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)及びS.mutansの成長をそれらの対数増殖期に阻害することを見出した。この効果は用量依存的である。我々は同様にベータ溶血連鎖球菌でポスト指数関数期の成長のわずかな抑制を観察したが、Haemophilus influenzaeや、Moraxella catarrhalis(10)では観察しなかった。文献10の開示をここで参照文献として含める。」(2頁11?18行)

(B)「肺炎連鎖球菌は、細菌性の肺炎、敗血症および髄膜炎の重要な病原因子である(11)。それは、中耳からのバクテリア培養による評価によると、すべての急性中耳炎(AOM)症状発現のうちの約30%における主な原因となっている(12-13)。この数字は、より感度の高いバクテリア検出方法を適用した場合、この数字はもっと高くなるであろう(14)。3歳の健康な子供の20?40%が鼻咽頭に肺炎連鎖球菌を保有している。この保菌は、急性感染症中に増加する(15)。肺炎連鎖球菌の鼻咽頭保菌は、デイケア施設における子供のAOMの誘発因子とみられてきた(15)。」(2頁24?29行)

(C)「この発明によれば、キシリトールの有効量をほ乳類に経口投与することからなる、少なくとも一つの呼吸器感染あるいはその合併症を処置する方法が提供される。
ここで使用した呼吸器感染症という用語は、急性中耳炎(AOM)、上気道感染症、急性気管支炎、副鼻腔炎及び結膜炎を含む。」(4頁2?8行)

(D)「実験1

キシリトールチューインガムの効果

キシリトールの肺炎連鎖球菌に対する成長抑制効果が、肺炎球菌保菌率を低下させて、また、AOMの発生を減少させることもできるという我々の仮説は、キシリトールを子供に送達する媒体としてチューインガムを使用する二重盲検無作為抽出試験で評価された。……研究の材料はLeaf-Huhtamaki(Leaf-Huhtamaki社、トゥルク、フィンランド)により寄贈され、乱数表を使って作られたランダム・シーケンスによりそれぞれキシリトールかスクロースのどちらかで甘くされた10片のチューインガムを含む60個の番号付の箱を含み、数のコード化されたカートリッジにパッケージされて、私たちに送られた。……子供達は研究に入った順番に番号を付けられ、それぞれの子供はその子の番号によりカートリッジを1つ受け取り、1日あたりの総投与量8.4gのキシリトールとなるようにして、食事の後に1日に5回(1箱)の2つの断片をかむように指示された。……

結果

合計336名の子供が1995年3月に臨床試験に登録された。30名が離脱し、306名の子供が残り、スクロース群における149名、キシリトール群における157名が解析に適していた。得られた結果は表1に要約される。

表1 治療を行う医師により記録された呼吸器感染
診断 スクロース(n=149) キシリトール(n=157) P-値

……
急性中耳炎 43 22 0.033
上気道感染 14 11 0.33
……

異なる41人の医師を訪れることになった上気道感染……の数は、スクロース群よりもキシリトール群の方が幾分少なかった。AOM発病の合計人数は、スクロース群の子供では43/149であるのに対し、キシリトールを受け取った子供では22/157であった。」(5頁2行?6頁11行)

(E)「実施例1

キシリトールを含む溶液製剤

a)増粘物質を添加しないキシリトール含有混合物(混合物1ミリリットルあたりの組成)

キシリトール 400.00mg
1mlとするための純水
……」(9頁20行?10頁8行)

(2)引用例2の記載事項
(F)「われわれは、培地にキシリトールを添加することによりin vitroでこれを調査し、1%および5%のキシリトールが肺炎連鎖球菌を含むアルファ溶血性連鎖球菌の成長を著しく低減することを観察した。・・・この糖アルコールは広く使用されている甘味料であり、われわれの実験において使用された濃度は口腔内において容易に実現できる。もしキシリトールが肺炎連鎖球菌の鼻咽頭における成長を低減するならば、それは、この細菌の保菌率も低減でき、したがって肺炎球菌疾病の予防における臨床的有意性を持ち得るであろう。」(1820頁、3?11行)

(G)「1個のチューインガムは約0.5グラムのキシリトールを含み、また、口内の一時の唾液の量は10ミリリットル以下であるから、この研究で使用した1%および5%のキシリトール濃度は、唾液中および粘膜上で少なくとも一時的に容易に実現できる。」(1822頁右欄、10?15行)

(H)「肺炎連鎖球菌は、中耳感染症または副鼻腔炎を引き起こす最も一般的な細菌であり、この細菌の鼻咽頭保菌が誘発因子であることが示されている(4)。肺炎球菌感染症はペニシリンで容易に治療されてきたが、特にデイケア・センターにおける子供により保菌され、まん延される多剤耐性肺炎連鎖球菌属株の出現により(5)、この状況が変わってきた。もしキシリトールが肺炎連鎖球菌の鼻咽頭における成長を低減するならば、それは、この細菌の保菌率も低減でき、したがって肺炎球菌疾病の予防における臨床的有意性を持ち得るであろう。」(1822頁右欄、22?31行)

3.当審の判断
(1)引用発明
引用例1には、水溶液1mlあたり400mgのキシリトールを含有する溶液製剤が記載されている(摘記事項(E))。そして、キシリトールは肺炎連鎖球菌の成長を阻害することが見出されており(摘記事項(A))、引用例1にはキシリトールの経口投与により上気道感染を処置する方法が記載されており(摘記事項(C))、その方法により実際に上気道感染が予防できることが記載されている(摘記事項(D))。
そうすると、引用例1には「水溶液1mlあたり400mgのキシリトールを含有する、肺炎連鎖球菌による上気道感染を治療するための経口投与用溶液製剤」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(2)対比
そこで、本願発明1と引用発明を比較する。
上気道とは鼻及び副鼻洞を含む器官であるから、引用発明の上気道感染は、本願発明の再発性副鼻洞感染の点で重複し、特に、引用発明の肺炎連鎖球菌による上気道感染は、本願発明のバクテリアに伴う鼻の感染の点で重複する。
そうすると、本願発明と引用発明は、「再発性副鼻洞感染、又はバクテリアに伴う鼻の感染を治療又は防止するために、それを必要としている人に対して投与するためのキシリトールを水溶液の状態で含有している調合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明1が、鼻内へ投与するための鼻洗浄調合物であるのに対し、引用発明は、経口投与用溶液製剤である点。
<相違点2>
本願発明1が、キシリトールが水溶液100cc当たり1から20グラムの割合で含有されているのに対し、引用発明は、水溶液1mlあたり400mgのキシリトールを含有する点。

(3)相違点の判断
ア 相違点1について
(i) 引用例1には、発明の背景として、3歳の健康な子供の20?40%が鼻咽頭に肺炎連鎖球菌を保有しており、この保菌が、デイケア施設における子供のAOMの誘発因子とみられてきたことが記載されており(摘記事項(B))、また、キシリトールの肺炎連鎖球菌に対する成長抑制効果が、肺炎連鎖球菌保菌率を低下させて、また、AOMの発生を減少させることを評価するための実験が行われ、その結果、キシリトールの摂取によりAOMの発生が減少したことが記載されている(摘記事項(D))。
また、引用例2は、引用例1の発明者らの論文であり、引用例1において参照文献10として引用されている論文であるので、引用例1の前提技術が示されているものと認められるが、引用例2には、「もしキシリトールが肺炎連鎖球菌の鼻咽頭における成長を低減するならば、それは、この細菌の保菌率も低減でき、したがって肺炎球菌疾病の予防における臨床的有意性を持ち得るであろう。」(摘記事項(F)(H))と記載され、肺炎球菌疾病の予防においては、鼻咽頭における肺炎連鎖球菌の成長を抑制することが特に意義があるものとして記載されている。

(ii) また、キシリトールがインビトロにおいて肺炎連鎖球菌の成長を抑制すること、すなわち、キシリトールが肺炎連鎖球菌への直接作用を有することも、引用例1,2に記載されている。

(iii) 一方、医薬の分野において、局所投与が、全身投与に比べて非常に低用量で、作用部位に治療有効濃度の薬物を効率的に供給でき、また、全身性の副作用がないというメリットを有することは、技術常識である(例えば、特表平6-507404号公報(4頁左下欄下から2行?右下欄5行)、国際公開98/16209号(特表2001-524937号公報(60頁))、国際公開98/16227号(特表2001-503395号公報(48頁))、国際公開97/41840号(特表2000-511513号公報(5頁))、国際公開97/21445号(特表2000-501729号公報(18?19頁))、国際公開97/16170号(特表2002-515857号公報(18頁))、国際公開96/029079号(11頁)参照)。
しかも、鼻は外部に開口しているので、皮膚や口や目と同様、所定濃度の薬剤を目的箇所にそのまま送達することが容易にできることから、局所投与を採用しやすい器官であるということができる。

(iv) また、鼻への局所投与の形態として、点鼻薬は周知である(特開昭63-190826号公報、特開平3-56419号公報、特開平1-294620号公報、特表昭63-503068号公報(拒絶理由通知における引用文献3?6)参照。)。(なお、本願発明1では、「鼻洗浄調合物」と記載されているが、本願明細書の【0011】?【0014】の記載によれば、推奨される液滴による投与法は、それぞれの鼻孔に1回あたり2滴滴下するものであり、別の形態の投与法は、綿棒を用いる方法であることから、点鼻薬と実質的に同一のものと認められる。)

そうすると、医薬分野においては、治療又は予防の効果をより高いものとすることは自明の課題であるので、引用発明においても、肺炎連鎖球菌に基づく疾病、特に、AOMの予防効果をより高めようとすることは自明の課題として存在するものと認められるが、引用発明において、AOMの予防効果をより高めるために、鼻咽頭における肺炎連鎖球菌の成長抑制効果を高めることに着目することは、引用例2の記載から当業者が容易に想到し得るものと認められ(上記(i)参照)、また、上記(ii)で述べたとおり、キシリトールが肺炎連鎖球菌への直接作用を有することが知られており、上記(iii)で述べたとおり、局所投与が、全身投与に比べて非常に低用量で、作用部位に治療有効濃度の薬物を効率的に供給できる投与方法であることは、医薬分野における技術常識であったことから、キシリトールによる鼻咽頭における肺炎連鎖球菌の成長抑制効果を高めるための手段として、鼻への局所投与を採用することは、当業者にとって自然な発想であるということができる。さらに、上記(iv)で述べたとおり、鼻への局所投与の形態として、点鼻薬は周知であるから、鼻への局所投与の形態として、鼻洗浄調合物とした点にも困難性は見出せない。
したがって、引用発明の、経口投与用溶液製剤に代えて、鼻内へ投与するための鼻洗浄調合物とすることは、当業者が容易になし得たものである。

この点に関し、請求人は意見書において、キシリトールが経口投与を経て直接気道に作用したのか、或いは気道以外の部位が作用部位であって、当該他の部位においてキシリトールが作用した結果、気道において免疫システムの活性化などの二次的な治療効果が得られたのかは、引用例1の記載のみからでは判断することができないから、キシリトールの経口投与によって結果的に気道において治療効果が得られたからといって、引用例1ではその直接的な作用部位が明らかでない以上、キシリトールを効果の得られる部位の中でも重要と考えられる鼻に直接投与しようとすることは、当業者にとって自然な発想であるとは考えられない、と主張する。
しかし、引用例1の記載からは作用部位が明らかでないとしても、上記(ii)のとおり、引用例2には、キシリトールが肺炎球菌に直接作用することが記載されているのであるから、引用例1及び2の記載に基づけば、鼻に直接投与することは当業者が容易に想到し得るものである。

また、請求人は、「局所投与が全身投与に比べて低用量で作用部に供給でき、全身性の副作用が無いこと」及び「鼻への局所投与の形態として点鼻薬が周知」であることは、当業者である引用例1の発明者らも当然に知っていたであろうと解されるにも拘らず、引用例1において全身投与しか行っていないのは、全身投与と局所投与とを必ずしも同様に考えるべきではないと認識していたからと推考され、これは、局所投与は全身投与のような全身性の副作用がないとしても、局所投与ならではの副作用が生じることがあるからである、とも主張する。
しかし、局所投与における副作用を考慮したとしても、キシリトールは周知の甘味料であり、また、引用例2において、インビトロで肺炎連鎖球菌の成長抑制活性が確認された濃度は、チューインガムを噛むことで口腔内で十分達成できる濃度であることから、キシリトールを鼻内に直接投与しても、鼻粘膜に対して重篤な副作用を及ぼすとは考えられず、副作用の点が、キシリトールを局所投与することの妨げとなったとは認められない。

なお、請求人は意見書において、(a)引用例2によればキシリトールが肺炎連鎖球菌の対数増殖を抑制することが確認できるのみであり、対数増殖が困難な環境(鼻咽頭内はバクテリア等が対数増殖できるほど良好な環境ではない)においても肺炎連鎖球菌の成長を有効に阻害できるかまでは確認されていないこと、及び、(b)キシリトールによってバクテリア等の増殖を直接阻害しようとするならば、バクテリア等が鼻咽頭に付着した直後にキシリトールを作用させる必要があるが、人(患者)が自身の鼻咽頭にバクテリアや菌が付着したことを知検することは不可能であり、バクテリア等が付着した直後にタイミング良くキシリトールを作用させることは現実的に不可能であり、また、ある程度増殖した後では、キシリトールの治療効果は得られないことを指摘する。
しかし、請求人のいずれの指摘も、技術を正確に理解しないものであり、誤りである。すなわち、(a)の点については、引用例2の記載から理解できることは、キシリトールの作用は、肺炎連鎖球菌そのものを殺すのではなく、菌が増殖する段階を抑制することであって、増殖が急激であるか緩慢であるかとは無関係である。また、(b)の点については、引用例2には、「肺炎球菌疾病の予防における臨床的有意性を持ち得る」と記載されており、「予防」は、菌が付着したことを知検して行う必要はないのであるから、引用例2に開示された成長抑制作用は、十分臨床的有意性を有するものである。

イ 相違点2について
鼻洗浄調合物の形態とした場合に、キシリトールの含有割合をどの程度のものとするかは、当業者が適宜決定し得るものと認められる。そして、引用例2には、口中においてではあるが、粘膜上で達成すべきキシリトール濃度に関する記載があり(「1切れのチューインガムは、約0.5gのキシリトールを含み、口中には高々10mlの唾液が存在するから、この実験で用いられた1%及び5%のキシリトールの濃度は、唾液中及び粘膜上において容易に達成できる」(1822頁右欄10?15行))、この濃度は、本願発明1で規定するキシリトールの含有割合と重複するものであることを勘案すれば、キシリトールの含有割合を決定する際に、本願発明1で規定する含有割合とすることについても格別の困難性は認められない。

なお、この点に関し、請求人は意見書において、引用例2に記載の条件(口内環境)は、一般的な口内環境から大きく外れた想像上の考察にすぎず、本願発明1で規定するキシリトールの含有割合と直接対比できるものではないと主張する。
しかし、ガムを咀嚼している間の状態を考えると、咀嚼によって、唾液は徐々に分泌され、ガム中のキシリトールは、徐々に口中に溶出するが、嚥下によって、唾液もキシリトールも徐々に口中からなくなっていくものであるから、口中におけるキシリトール濃度を考えるときに、ガム中のキシリトールの合計量と、ある一時期において口中に存在する唾液量を比べることは意味がないことは明らかであるから、引用例2の「口中には高々10mlの唾液が存在する」との記載は、ガムを咀嚼している間に分泌される合計の唾液量を意味するものと認められる。そうすると、請求人が意見書で、10分間のガムテストにおける唾液量の正常値は15?20ml程度であると述べているが、引用例2の「口中には高々10mlの唾液が存在する」という記載は、5分間程度の咀嚼に対応するものであり、一般的な条件であるといえる。そして、その5分間に、ガムから徐々にキシリトールが溶出すれば、平均0.5g/10mlのキシリトールが口中に存在することになるから、引用例2に記載された事項は、一般的な口中環境から大きく外れているとの指摘は妥当ではない。

そして、本願発明1の効果についても、格別顕著な効果を奏したものとは認められない。
なお、請求人は、キシリトールの投与量が、一般的な経口投与の場合よりもほぼ3オーダー少ない量で済むことを効果として主張するが、上記(iii)で述べたとおり、局所投与が、全身投与に比べて非常に低用量で、作用部位に治療有効濃度の薬物を効率的に供給できることが技術常識であることから、格別顕著な効果とは認められない。

したがって、本願発明1は、引用例1,2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

(4)むすび
本願発明1は、引用例1?2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-25 
結審通知日 2008-02-19 
審決日 2008-03-04 
出願番号 特願2000-537427(P2000-537427)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 明子守安 智加藤 浩田名部 拓也安藤 倫世  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 星野 紹英
伊藤 幸司
発明の名称 上気道状態を治療するためのキシリトール調合物  
代理人 石岡 隆  
代理人 岡田 英彦  
代理人 福田 鉄男  
代理人 犬飼 達彦  

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