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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1217877
審判番号 不服2007-5536  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-22 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2006-193472「携帯機器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月12日出願公開、特開2006-280011〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯(手続・本願発明・査定)

[1]手続の概要
本願は、平成16年6月8日に出願した特願2006-519195号の一部を平成18年7月14日に新たな特許出願としたものであり、手続きの概要は以下の通りである。

拒絶理由通知 :平成18年 9月19日(起案日)
意見書 :平成18年11月22日
手続補正(明細書の補正):平成18年11月22日
拒絶査定 :平成19年 1月19日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成19年 2月22日
当審拒絶理由通知 :平成21年11月13日(起案日)
意見書 :平成22年 1月14日
手続補正(明細書の補正):平成22年 1月14日

[2]査定

原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

〈査定の理由〉
本願の各請求項に係る発明は、下記刊行物(引用例)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用例1:特開2003-084341号公報
引用例2:特開2004-007479号公報
引用例3:特開2003-333382号公報
引用例4:特開2003-333420号公報

【第2】本願発明

本願の請求項1から請求項4までに係る発明は、本願明細書および図面(平成18年11月22日付け、平成22年1月14日付けの各手続補正書により補正された明細書および図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項4までに記載したとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(本願発明ともいう)は、下記のとおりである。

記(本願発明(請求項1))
操作部と通話に使用するマイクを有する操作側筐体の一端と主表示部と通話相手の音声を出力するレシーバを有する表示側筐体の一端とを開閉可能に連結するヒンジと、
上記表示側筐体の主表示部が設けられた面以外の筐体表面に形成された表示窓に配置され、外部に向けて投光する複数の発光ダイオード(LED)を平面上にマトリクス配列したLED表示パネルと、
入力した表示データに基づいて上記LED表示パネルの発光ダイオードを表示制御する表示制御装置と、
上記LED表示パネルに表示させる表示パターンの上記表示データを上記表示制御装置に出力する主制御装置と、
被写体を撮像するカメラと、
上記カメラを撮像操作するカメラ操作部とを備え、
上記LED表示パネルは、上記カメラの操作時に該カメラが向けられる方向に上記発光ダイオードが投光するように配置されており、
上記表示制御装置は、上記カメラの撮影操作に連動して上記発光ダイオードを点灯制御することを特徴とする携帯機器。

【第3】当審の拒絶の理由の通知

当審が平成21年11月13日付けで通知した拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。
なお、平成22年1月14日付け手続補正により、補正前の請求項1が削除され、同補正前の請求項2?5は、それぞれ、同補正後の請求項1?4となったので、同補正後の請求項番号を〔〕内に示した。

〈当審が通知した拒絶の理由〉

本件出願の請求項1?5〔それぞれ、平成22年1月14日付け手続補正後の請求項1?4に対応する。〕に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公告(特許掲載公報の発行)又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。


請求項1〔削除〕について、出願1?出願3
請求項2〔請求項1〕について、出願1,出願2
請求項3〔請求項2〕について、出願1?出願3
請求項4〔請求項3〕について、出願3
請求項5〔請求項4〕について、出願2、出願3

〈引用する出願一覧〉
出願1:特願2004-90267号(特開2005-275151号公報)
出願2:特願2002-354044号(特開2004-187154号公報)
出願3:特願2003-6669号(特開2004-219687号公報)


【第4】当審の判断

[1]本願発明(請求項1)の分説
以下の検討のため、本願発明(請求項1)を下記のように、構成要件A?Iに分説しておく。構成要件Bは、さらに、構成要件B1とB2に分説しておく。

記(本願発明の分説)
A:操作部と通話に使用するマイクを有する操作側筐体の一端と主表示部と通話相手の音声を出力するレシーバを有する表示側筐体の一端とを開閉可能に連結するヒンジと、
B:上記表示側筐体の主表示部が設けられた面以外の筐体表面に形成された表示窓に配置され、外部に向けて投光する複数の発光ダイオード(LED)を平面上にマトリクス配列したLED表示パネルと、
(B1:上記表示側筐体の主表示部が設けられた面以外の筐体表面に形成された表示窓に配置され、
B2:外部に向けて投光する複数の発光ダイオード(LED)を平面上にマトリクス配列したLED表示パネルと、)
C:入力した表示データに基づいて上記LED表示パネルの発光ダイオードを表示制御する表示制御装置と、
D:上記LED表示パネルに表示させる表示パターンの上記表示データを上記表示制御装置に出力する主制御装置と、
E:被写体を撮像するカメラと、
F:上記カメラを撮像操作するカメラ操作部とを備え、
G:上記LED表示パネルは、上記カメラの操作時に該カメラが向けられる方向に上記発光ダイオードが投光するように配置されており、
H:上記表示制御装置は、上記カメラの撮影操作に連動して上記発光ダイオードを点灯制御すること
I:を特徴とする携帯機器。

[2]先願明細書の記載

当審が通知した拒絶の理由に引用した上記出願1(特願2004-90267号、以下、「先願」ともいう。)は、平成16年3月25日に出願され、平成17年10月6日に公開されたものであり、
その願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書」ともいう、特開2005-275151号公報参照)には、以下の記載がある。

〈特許請求の範囲〉
(K1)「【請求項1】
半導体発光素子と、該半導体発光素子を発光させる発光手段とを備えるフラッシュ装置において、
前記発光手段は、
発光量を増加させながら前記半導体発光素子を複数回発光させる複数回発光手段と、
該複数回発光手段による前記半導体発光素子の発光量より大きい発光量で前記半導体発光素子を発光させる手段と
を有することを特徴とするフラッシュ装置。
【請求項2】?【請求項3】略
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のフラッシュ装置と、
前記複数回発光手段による発光の回数を受け付ける回数受付手段と
を備え、
前記複数回発光手段は、
前記半導体発光素子を前記回数受付手段が受け付けた回数発光させるべくなしてあることを特徴とする撮像装置。」

〈技術分野、背景技術〉
(K2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、被照明体に向けて閃光を発するフラッシュ装置、特に半導体発光素子、例えば発光ダイオードを備えるフラッシュ装置、及び該フラッシュ装置を備えるビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、銀塩カメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフラッシュ装置は、キセノンガスを封入した放電管、及び放電に必要な電荷を蓄えるコンデンサを備えており、コンデンサに蓄えられた電荷が、キセノンガス中を放電し、キセノンガスが閃光を発するように構成されている(特許文献1)。また、被照明者の眩目及び赤目現象を防止するために、放電管が複数回小発光し、小発光の後、強い発光量で発光するように構成されている。一方、高輝度発光ダイオード、特に白色発光ダイオードを備えたフラッシュ装置がある。また、フラッシュ装置として発光ダイオードを用いた撮像装置、例えばカメラ付き携帯電話が実用化されている。光源として、発光ダイオードを備えるフラッシュ装置は、撮像時に最大の発光量で1度発光するように構成されている。」

〈発明が解決しようとする課題〉
(K3)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のフラッシュ装置においては、撮像の際、半導体発光素子が最大発光量で1度のみ発光するため、暗闇中の被照明者を照明する場合、被照明者が半導体発光素子の突然の発光により眩目し、不自然な表情で撮像されるという問題があった。一方、放電管を備えるフラッシュ装置においては、放電管が一定の小さい発光量で複数回小発光するが、暗闇の中の被照明者を照明する場合、発光量が小さい場合であっても、被照明者は光に慣れておらず、眩目する恐れがあるという問題があった。また、十分に発光量を小さくした場合、複数回の小発光によって眩目する恐れは無くなるが、小発光後の強い発光によって、被照明者が眩目する恐れがあり、連続して被照明者を撮像する場合、眩目した不自然な表情で被照明者が撮像されるという問題があった。
【0004】
また、撮像装置を用いた撮像の際、被撮像者は撮像を意識するため、不自然な表情で撮像されるという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、撮像前に発光量を増加させながら半導体発光素子を複数回発光させることにより、複数回の小発光、及び小発光後の強い発光を受けた被照明者が眩目することを防ぎ、自然な表情をした被照明者を撮像することができるフラッシュ装置を提供することを目的とする。」

〈課題を解決するための手段〉
(K4)「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフラッシュ装置は、半導体発光素子と、該半導体発光素子を発光させる発光手段とを備えるフラッシュ装置において、前記発光手段は、発光量を増加させながら前記半導体発光素子を複数回発光させる複数回発光手段と、該複数回発光手段による前記半導体発光素子の発光量より大きい発光量で前記半導体発光素子を発光させる手段とを有することを特徴とする。
【0010】?【0013】略
【0014】
本発明にあっては、複数の半導体発光素子の1又は複数を発光させることにより、フラッシュ装置が発する全発光量を調節することができる。発光している半導体発光素子と消光している半導体発光素子とが一定の発光パターンを形成している場合、被照明体は、発光パターンを認識することにより、フラッシュ装置からの情報を認知することができる。例えば、発光パターンが顔文字である場合、被照明体は顔文字の発光パターンを認識し、緊張をほぐすことができる。」
【0015】
本発明に係る撮像装置は、前記フラッシュ装置と、前記複数回発光手段による発光の回数を受け付ける回数受付手段とを備え、前記複数回発光手段は、前記半導体発光素子を前記回数受付手段が受け付けた回数発光させるべくなしてあることを特徴とする。」

〈発明を実施するための最良の形態〉
《フラッシュ装置1》
(K5)「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係るフラッシュ装置1及び撮像装置2を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係るフラッシュ装置1を備える撮像装置2を示すブロック図である。図1中、10は複数の半導体発光素子Lαβを備える発光部であり、半導体発光素子Lαβに電流を供給し、半導体発光素子Lαβを発光させる発光部ドライバ11に接続している。
【0022】
図2は、発光部10及び発光部ドライバ11を模式的に示す図である。複数の半導体発光素子Lαβは、格子状に縦及び横、n個ずつ、計n^(2) 個配列している。説明の便宜上、図2中、左上に配置されている半導体発光素子の符号をL11とし、半導体発光素子L11から下側にj番目、右側にk番目に配置されている半導体発光素子の符号をLjkとする。発光部ドライバ11は、半導体発光素子Lαβの発光、消光、及び発光量調節を行う第1発光部ドライバ11a及び第2発光部ドライバ11bから構成されており、夫々電圧源(不図示)に接続している。第1発光部ドライバ11aからは、n本の走査線Xa(a=1?n)が左右方向に配線されており、夫々の走査線Xaは、左右方向に配列している半導体発光素子Laβ(α=a)のカソード端子に接続している。例えば、走査線X1には、図2において左右方向に配列しているn個の半導体発光素子L11乃至L1nがカソード端子側で接続している。第2発光部ドライバ11bからは、n本の信号線Yb(b=1?n)が上下方向に配線されており、夫々の信号線Ybは、上下方向に配列している半導体発光素子Lαb(β=b)のアノード端子に接続している。例えば、信号線Y1には、図2において上下方向に配列しているn個の半導体発光素子L11乃至Ln1がカソード端子側で接続している。なお、図2においては、半導体発光素子Lαβの一部を省略して描いている。
【0023】
第1発光部ドライバ11a及び第2発光部ドライバ11bは、夫々の電流供給を制御する制御部12に接続しており、制御部12の制御により第1発光部ドライバ11aは走査信号を走査線Xaに発し、第2発光部ドライバ11bは発光及び消光に係るデータ信号を信号線Ybに発する。つまり、第1発光部ドライバ11aは、発光させる半導体発光素子Lαβが接続している1本の走査線Xaの電位を0Vとし、他の走査線Xaには電圧を印加する。第2発光部ドライバ11bは、前記走査線Xaに接続している半導体発光素子Lαβの内、発光させるべき半導体発光素子Lαβが接続している信号線Ybに電圧を印加し、発光させない半導体発光素子Lαβが接続している信号線Ybには電圧を印加しないように、データ信号を発する。例えば、走査線X1に接続し、左右方向に配列しているn個の半導体発光素子L1βを発光させる場合、第1発光部ドライバ11aは、走査線X1の電位を0Vとし、他の走査線Xaには電圧を印加する。そして、走査線X1に接続している半導体発光素子L1βの内、発光させるべき半導体発光素子L1βが接続している信号線Ybに電圧を印加し、所望の半導体発光素子L1βを発光させる。一方、半導体発光素子Lαβの発光量の調節は、半導体発光素子Lαβに流れる電流値を調節することにより行う。半導体発光素子Lαβに流れる電流値の調節は、例えば、複数回の走査によって半導体発光素子Lαβに電圧を印加する回数を調節すれば良い。電圧を印加する回数を増減することにより半導体発光素子Lαβに流れる電流の実効値を調節することができ、半導体発光素子Lαβの発光量を調節することができる。」

《撮像装置2》
(K6)「【0025】
撮像装置2について説明する。撮像装置2は、被照明体からの光を集光するレンズ、及びレンズによって結像する像を電気信号に変換する撮像素子、例えばCCDを有している撮像部20を備えている。撮像部20は、撮像部20による撮像によって得られた撮像信号を処理する撮像信号処理部21に接続している。撮像信号処理部21は、撮像部20からの撮像信号をデジタルデータである撮像データに変換するA/D変換回路、撮像データを所定の圧縮方式、例えばMPEGフォーマットによって圧縮する圧縮回路等を備えている。撮像信号処理部21は、撮像信号処理部21が処理した撮像データを記録媒体3に記録する記録部22に接続している。記録媒体3は、ランダムアクセス可能な半導体メモリ又はハードディスク等であり、記録部22は、記録媒体3にデータを記録する回路又は磁気ヘッド等で構成されている。撮像部20、撮像信号処理部21、及び記録部22夫々は、制御部12に接続しており、撮像部20による撮像、撮像信号処理部21による画像処理、記録部22による撮像データの記録夫々の制御を制御部12が行っている。また、撮像部20による撮像開始の操作を受け付ける操作ボタン、又はタッチパネル等の操作受付部23が、制御部12に接続しており、制御部12は、操作受付部23を介して撮像装置2の使用者による指示を認識する。また、制御部12は、操作受付部23を介して半導体発光素子Lαβを使用するか否かの設定、及び半導体発光素子Lαβの発光回数の設定の操作を受け付ける。撮像装置2の制御に必要なプログラムは、記憶部14が記憶している。」

《フラッシュ装置1及び撮像装置2の処理手順》
(K7)「【0026】
図3は、本発明に係るフラッシュ装置1及び撮像装置2の処理手順を示したフローチャートである。本発明により被照明体を照明し、撮像するにあたって、まず、使用者によるフラッシュ装置1及び撮像装置2の操作を、操作受付部23を介して制御部12が受け付ける(ステップS1)。具体的には、ステップS1において、フラッシュ発光を使用するか否かの設定、及び半導体発光素子Lαβの発光回数の設定の操作、並びに撮像開始の操作を受け付ける。そして、撮像開始の指示を受け付けたか否かを、制御部12が判定する(ステップS2)。撮像開始の指示を受け付けていない場合(ステップS2:NO)、処理をステップS1に戻し、操作の受け付けを引き続き行う。
【0027】
撮像開始の指示を受け付けた場合(ステップS2:YES)、フラッシュ装置1から被照明体までの距離Dを測定する(ステップS3)。距離Dの測定は、距離測定部13の信号値に基づき制御部12が行う。
【0028】
距離Dの測定を終えた後、制御部12は、フラッシュ発光を要するか否かを判定する(ステップS4)。・・・(中略)・・・ステップS1においてフラッシュ発光を利用するとする設定を受け付けている場合、フラッシュ発光を必要と判定する(ステップS4:YES)。・・・(中略)・・・フラッシュ発光を必要と制御部12が判定した場合(ステップS4:YES)、フラッシュ発光に係る処理を行う(ステップS5)。
【0029】
図4は、フラッシュ発光の処理手順を示したフローチャートである。フラッシュ発光を要すると、制御部12が判定した場合(ステップS4:YES)、被照明体までの距離Dに応じた半導体発光素子Lαβの発光量R(D)を決定する(ステップS50)。・・・(以下略)
【0030】
次に、記憶部14が記憶している図形パターン1を被照明者が認識するように、半導体発光素子Lαβの発光を制御部12が発光部ドライバ11を介して制御する(ステップS51)。図5は、記憶部14が記憶している図形パターンを模式的に示す図である。図5(a)は、ステップS51において表示する顔文字の図形パターン1を模式的に示している。つまり、所定の半導体発光素子Lαβ、例えば顔文字の輪郭部分、及び目の部分に位置する半導体発光素子Lαβを発光させ、その他の半導体発光素子Lαβを消光させることにより、被照明者が顔文字を認識するように発光させる。また、ステップS51においては、半導体発光素子Lαβを発光量R1で発光させる。発光量R1は、発光量R(D)より小さい発光量、例えば、発光量R(D)の略8分の1の発光量である。
【0031】
1回目の発光の後、記憶部14が記憶している図形パターン2を被照明者が認識するように半導体発光素子Lαβの発光を制御部12が制御する(ステップS52)。図形パターン2は、図5(b)に示した顔文字の図形である。ステップS52においては、半導体発光素子Lαβを発光量R2で発光させる。発光量R2は、発光量R1より大きく、発光量R(D)より小さい発光量、例えば発光量R1の略2倍の発光量である。
【0032】
2回目の発光の後、記憶部14が記憶している図形パターン3を被照明者が認識するように半導体発光素子Lαβの発光を制御部12が制御する(ステップS53)。図形パターン3は、図5(c)に示した顔文字の図形である。ステップS53においては、半導体発光素子Lαβを発光量R3で発光させる。発光量R3は、発光量R2より大きく、発光量R(D)より小さい発光量、例えば発光量R2の略2倍の発光量である。
【0033】
3回の発光を終えた場合、全ての半導体発光素子Lαβが発光量R(D)で発光するように、半導体発光素子Lαβの発光を制御部12が制御し(ステップS54)、フラッシュ発光の処理を終える。
【0034】
フラッシュ発光の処理を終えた場合、制御部12は、撮像部20による撮像制御を行う(ステップS6)。撮像部20は、被写体の撮像を行い撮像信号を得る。撮像信号処理部21は、撮像信号をデジタル信号である撮像データにA/D変換し、MPEGフォーマットの圧縮方式によって圧縮する。圧縮された画像データは、記録部22によって記録媒体3に記録される。撮像を終えた場合、制御部12は撮像に係る処理を終了する。
【0035】
以上のように、本発明に係るフラッシュ装置1にあっては、発光量をR1、R2、R3と増加させながら半導体発光素子Lαβを3回発光させることにより、被照明者は、半導体発光素子Lαβからの光に徐々に目を慣らすことができ、被照明者の眩目を効果的に防止することができる。一方で、被照明者の赤目現象を防ぐことができる。」

(K8)「【0040】
更に、実施の形態にあっては、図形として顔文字を使用しているが、これに限るものではなく、メッセージを表す平仮名、アルファベット、数字等の文字、又はその他の図形であっても良い。この場合、被照明者に情報を伝達することが可能となる。」

[3]対比・判断

[3.1]先願明細書に記載された発明(先願発明)

ア 概要
先願明細書には、前掲(K3)を目的とする撮像装置であって、
その概要を、
請求項4(K1)記載の撮像装置、すなわち、
「撮像前に発光量を増加させながら半導体発光素子を複数回発光させることにより、複数回の小発光、及び小発光後の強い発光を受けた被照明者が眩目することを防ぎ、自然な表情をした被照明者を撮像することができるフラッシュ装置を提供すること」を目的とし(段落【0005】)、
「半導体発光素子と、該半導体発光素子を発光させる発光手段とを備えるフラッシュ装置において、
前記発光手段は、
発光量を増加させながら前記半導体発光素子を複数回発光させる複数回発光手段と、
該複数回発光手段による前記半導体発光素子の発光量より大きい発光量で前記半導体発光素子を発光させる手段とを有する」「フラッシュ装置と、
前記複数回発光手段による発光の回数を受け付ける回数受付手段と
を備え、
前記複数回発光手段は、
前記半導体発光素子を前記回数受付手段が受け付けた回数発光させるべくなしてあることを特徴とする撮像装置」(請求項1,4)
として、
前掲(K4)「発光している半導体発光素子と消光している半導体発光素子とが一定の発光パターンを形成している場合、被照明体は、発光パターンを認識することにより、フラッシュ装置からの情報を認知することができる。例えば、発光パターンが顔文字である場合、被照明体は顔文字の発光パターンを認識し、緊張をほぐすことができる。」(段落【0014】)ようになし、

その詳細を、
【発明を実施するための最良の形態】の欄の前掲(K5)?(K8)及び図1?5に記載された「フラッシュ装置1を備える撮像装置2」(以下、「実施形態の撮像装置2」ともいう。)、
が記載されている。

イ 実施形態の撮像装置2
「実施形態の撮像装置2」の、「フラッシュ装置1」、「撮像装置2」、「フラッシュ装置1及び撮像装置2の処理手順」は、次の様である。

(1)フラッシュ装置1(前掲(K2)(K5)、図1,図2)
(a)複数の発光ダイオードLαβ
フラッシュ装置1は、「格子状に縦及び横、n個ずつ、計n^(2)個配列」された「複数の半導体発光素子Lαβ」(図2)を備える「発光部10」を備え、その複数の半導体発光素子Lαβは、複数の発光ダイオードLαβである。{段落【0021】、【0022】、【0001】、【0002】、
「半導体発光素子Lαβ」が「発光ダイオードLαβ」であることは、段落【0001】「半導体発光素子、例えば発光ダイオードを備えるフラッシュ装置、及び該フラッシュ装置を備えるビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、銀塩カメラ等の撮像装置に関する。」、および、図2の「半導体発光素子L11乃至L1n」を示す記号等により明らかである。}

(b)発光部ドライバ11
フラッシュ装置1は、「発光部10」に接続され、「半導体発光素子Lαβに電流を供給し、半導体発光素子Lαβを発光させる発光部ドライバ11」であって、「半導体発光素子Lαβの発光、消光、及び発光量調節を行う第1発光部ドライバ11a及び第2発光部ドライバ11bから構成され」る「発光部ドライバ11」を備えている。(段落【0022】【0023】)

(c)制御部12-発光部ドライバ11
図1によれば、制御部12はCPUとされている。
「第1発光部ドライバ11a及び第2発光部ドライバ11bは、夫々の電流供給を制御する制御部12に接続しており、制御部12の制御により第1発光部ドライバ11aは走査信号を走査線Xaに発し、第2発光部ドライバ11bは発光及び消光に係るデータ信号を信号線Ybに発する」ようにされており、
「つまり、第1発光部ドライバ11aは、発光させる半導体発光素子Lαβが接続している1本の走査線Xaの電位を0Vとし、他の走査線Xaには電圧を印加する。第2発光部ドライバ11bは、前記走査線Xaに接続している半導体発光素子Lαβの内、発光させるべき半導体発光素子Lαβが接続している信号線Ybに電圧を印加し、発光させない半導体発光素子Lαβが接続している信号線Ybには電圧を印加しないように、データ信号を発する。例えば、走査線X1に接続し、左右方向に配列しているn個の半導体発光素子L1βを発光させる場合、第1発光部ドライバ11aは、走査線X1の電位を0Vとし、他の走査線Xaには電圧を印加する。そして、走査線X1に接続している半導体発光素子L1βの内、発光させるべき半導体発光素子L1βが接続している信号線Ybに電圧を印加し、所望の半導体発光素子L1βを発光させる。」(段落【0023】)
これを、走査線X1からXnまで繰り返す(走査する)ことで「ステップS51において表示する顔文字の図形パターン1」の表示がなされる{前掲(K7)段落【0030】}ことは明らかであり、
「所定の半導体発光素子Lαβ、例えば顔文字の輪郭部分、及び目の部分に位置する半導体発光素子Lαβを発光させ、その他の半導体発光素子Lαβを消光させることにより、被照明者が顔文字を認識するように」(段落【0030】)、すなわち、「顔文字の発光パターンを認識」(段落【0014】)するようにされている。

(2)撮像装置2(前掲(K6)、図1,図2)
撮像装置2は、
(d)「撮像部20」、
(e)「制御部12に接続し」た「撮像部20による撮像開始の操作を受け付ける操作ボタン、又はタッチパネル等の操作受付部23」
を備え、
(f)「制御部12」は、
・「撮像部20による撮像、撮像信号処理部21による画像処理、記録部22による撮像データの記録夫々の制御」を行い、
・「操作受付部23を介して撮像装置2の使用者による指示を認識」する。
(3)フラッシュ装置1及び撮像装置2の処理手順
(g)ステップS1?S4、ステップS50
{前掲(K7)(K8)、図3?図5、段落【0026】?【0029】}
制御部12は、
・「ステップS1において、フラッシュ発光を使用するか否かの設定、及び半導体発光素子Lαβの発光回数の設定の操作、並びに撮像開始の操作を受け付け」、
・「撮像開始の指示を受け付けた場合(ステップS2:YES)、
「フラッシュ装置1から被照明体までの距離Dを測定」し、
「距離Dの測定を終えた後」、
「フラッシュ発光を要すると、制御部12が判定した場合(ステップS4:YES)」、「被照明体までの距離Dに応じた半導体発光素子Lαβの発光量R(D)を決定する(ステップS50)。」
(h)ステップS51?54(段落【0035】、【0030】?【0033】)
〈ステップS51?S53〉
「次に、記憶部14が記憶している図形パターン」「を被照明者が認識するように、半導体発光素子Lαβの発光を制御部12が発光部ドライバ11を介して制御」して、「発光量をR1、R2、R3と増加させながら半導体発光素子Lαβを3回発光」させ、
-ステップS51(1回目の発光)
顔文字の図形パターン1(図5(a))を表示する。
つまり、所定の半導体発光素子Lαβ、例えば顔文字の輪郭部分、及び目の部分に位置する半導体発光素子Lαβを発光させ、その他の半導体発光素子Lαβを消光させることにより、被照明者が顔文字(の発光パターン)を認識するように発光させる。発光量R1は、発光量R(D)の略8分の1で発光させる。
-ステップS52(2回目の発光)
図形パターン2(図5(b))、
発光量R2は発光量R1の略2倍で発光させる。
-ステップS53(3回目の発光)
図形パターン3(図5(c))、
発光量R3は発光量R2の略2倍で発光させる。
ようにされており、
〈ステップS54〉
「3回の発光を終えた場合、全ての半導体発光素子Lαβが発光量R(D)で発光するように、半導体発光素子Lαβの発光を制御部12が制御しフラッシュ発光の処理を終える。」
(i)ステップS6(段落【0034】)
フラッシュ発光の処理を終えた場合、制御部12は、「撮像部20は、被写体の撮像を行い撮像信号を得」、撮像信号はA/D変換後圧縮されて記録媒体3に記録される。

ウ フラッシュ装置として発光ダイオードを用いたカメラ付き携帯電話への適用
先願明細書には、「【0001】
本発明は、被照明体に向けて閃光を発するフラッシュ装置、特に半導体発光素子、例えば発光ダイオードを備えるフラッシュ装置、及び該フラッシュ装置を備えるビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、銀塩カメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフラッシュ装置は、・・・構成されている。一方、高輝度発光ダイオード、特に白色発光ダイオードを備えたフラッシュ装置がある。また、フラッシュ装置として発光ダイオードを用いた撮像装置、例えばカメラ付き携帯電話が実用化されている。」{前掲(K2)}とあり、
先願出願当時における「フラッシュ装置として発光ダイオードを用いた撮像装置であるカメラ付き携帯電話」を、
その適用対象として想定し、念頭において、請求項4記載の発明、および、その実施例の形態である上記「実施形態の撮像装置2」を発明したものと理解される。
したがって、先願明細書には、「フラッシュ装置として発光ダイオードを用いた撮像装置であるカメラ付き携帯電話」に、上記「実施形態の撮像装置2」を適用した発明(以下、「先願明細書記載の発明」または「先願発明」ともいう。)が記載されていると認めることができる。

エ 先願明細書記載の発明(先願発明)
以上によれば、先願明細書に記載された発明(以下、「先願発明」ともいう。)として、下記の発明を認めることができる。

記(先願発明)
フラッシュ装置として発光ダイオードを用いた撮像装置であるカメラ付き携帯電話であって、
フラッシュ装置1を備える撮像装置2を備え、

フラッシュ装置1は、
(a)格子状に縦及び横、n個ずつ、計n^(2)個配列された複数の発光ダイオードLαβ(図2)を備える発光部10、
(b) 発光部10に接続され、発光ダイオードLαβに電流を供給し、発光ダイオードLαβを発光させる発光部ドライバ11であって、発光ダイオードLαβの発光、消光、及び発光量調節を行う第1発光部ドライバ11a及び第2発光部ドライバ11bから構成される発光部ドライバ11
を備え、
(c)第1発光部ドライバ11a及び第2発光部ドライバ11bは、夫々の電流供給を制御する制御部12(CPU)に接続しており、制御部12の制御により第1発光部ドライバ11aは走査信号を走査線Xaに発し、第2発光部ドライバ11bは発光及び消光に係るデータ信号を信号線Ybに発する、
つまり、第1発光部ドライバ11aは、発光させる発光ダイオードLαβが接続している1本の走査線Xaの電位を0Vとし、他の走査線Xaには電圧を印加する。第2発光部ドライバ11bは、前記走査線Xaに接続している発光ダイオードLαβの内、発光させるべき発光ダイオードLαβが接続している信号線Ybに電圧を印加し、発光させない発光ダイオードLαβが接続している信号線Ybには電圧を印加しないように、データ信号を発する、
ようにされていて、
走査線X1に接続し、左右方向に配列しているn個の発光ダイオードL1βを発光させる場合、第1発光部ドライバ11aは、走査線X1の電位を0Vとし、他の走査線Xaには電圧を印加する。そして、走査線X1に接続している発光ダイオードL1βの内、発光させるべき発光ダイオードL1βが接続している信号線Ybに電圧を印加し、所望の発光ダイオードL1βを発光させ、
これを、走査線X1からXnまで繰り返す(走査する)ことでステップS51において表示する顔文字の図形パターン1の表示がなされる
ようにされており、

撮像装置2は、
(d)撮像部20、
(e)制御部12に接続した撮像部20による撮像開始の操作を受け付ける操作ボタン、又はタッチパネル等の操作受付部23、
を備え、
(f)制御部12(CPU)は、
・撮像部20による撮像、撮像信号処理部21による画像処理、記録部22による撮像データの記録夫々の制御を行い、
・操作受付部23を介して撮像装置2の使用者による指示を認識するものであり、

フラッシュ装置1及び撮像装置2の処理は、以下の(g)?(i)のようにされている装置。

(g)ステップS1?S4、ステップS50
制御部12は、
・ステップS1において、フラッシュ発光を使用するか否かの設定、及び発光ダイオードLαβの発光回数の設定の操作、並びに撮像開始の操作を受け付け、
・撮像開始の指示を受け付けた場合(ステップS2:YES)、
フラッシュ装置1から被照明体までの距離Dを測定し、
距離Dの測定を終えた後、
フラッシュ発光を要すると、制御部12が判定した場合(ステップS4:YES)、被照明体までの距離Dに応じた発光ダイオードLαβの発光量R(D)を決定する(ステップS50)。
(h)ステップS51?54
〈ステップS51?S53〉
次に、記憶部14が記憶している図形パターンを被照明者が認識するように、発光ダイオードLαβの発光を制御部12が発光部ドライバ11を介して制御」して、「発光量をR1、R2、R3と増加させながら発光ダイオードLαβを3回発光させ、
-ステップS51(1回目の発光)
顔文字の図形パターン1(図5(a))を表示する。
つまり、所定の発光ダイオードLαβ、例えば顔文字の輪郭部分、及び目の部分に位置する発光ダイオードLαβを発光させ、その他の発光ダイオードLαβを消光させることにより、被照明者が顔文字(の発光パターン)を認識するように発光させる。発光量R1は、発光量R(D)の略8分の1。
-ステップS52(2回目の発光)
図形パターン2(図5(b))、
発光量R2は発光量R1の略2倍で発光させる。
-ステップS53(3回目の発光)
図形パターン3(図5(c))、
発光量R3は発光量R2の略2倍で発光させる。
ようにされており、
〈ステップS54〉
3回の発光を終えた場合、全ての発光ダイオードLαβが発光量R(D)で発光するように、発光ダイオードLαβの発光を制御部12が制御しフラッシュ発光の処理を終える。
(i)ステップS6
フラッシュ発光の処理を終えた場合、制御部12は、撮像部20は、被写体の撮像を行い撮像信号を得、撮像信号はA/D変換後圧縮されて記録媒体3に記録される。

[3.2]同一判断(本願発明と先願発明の同一性)

本願発明と先願発明とを、本願発明の構成要件ごとに対比する。

ア 全体、構成要件E,Iについて
E:「被写体を撮像するカメラと、」
I:「を特徴とする携帯機器。」

先願発明は、「撮像装置であるカメラ付き携帯電話」であるから、「被写体を撮像するカメラ」を備える「携帯機器」といえ、構成要件E及び構成要件Iを備えるとする点で、本願発明と一致する。

イ 構成要件B2について
B2:「外部に向けて投光する複数の発光ダイオード(LED)
を平面上にマトリクス配列したLED表示パネルと、」

先願発明の、フラッシュ装置1が備える「発光部10」は、
「格子状に縦及び横、n個ずつ、計n^(2)個配列された複数の発光ダイオードLαβ(図2)を備え」ていて、複数の発光ダイオードLαβが図2のように格子状に縦及び横、n個ずつ、計n^(2)個配列されている{先願発明の(a)}のであるから、
「複数の発光ダイオードLαβ」(LED)が図2のように、「平面上にマトリクス配列」されているものであること、
同「発光部10」は、フラッシュ装置として用いられ、また、「図形パターンを被照明者が認識するように、発光ダイオードLαβの発光を」制御し、顔文字の図形パターン(図5)を表示する{先願発明の(h)}のであるから、
「外部に向けて投光するように」かつ図形パターンを「表示する」ようにされているものであること、
以上は明らかである。

すなわち、「発光部10」は、
・「複数の発光ダイオードLαβ」(LED)が図2のように、「平面上にマトリクス配列」されているものであって、
・「外部に向けて投光するように」かつ図形パターンを「表示する」ようにされているものである。
以上のことから、「パネル」とすることを除く構成要件B2、すなわち、
「外部に向けて投光する複数の発光ダイオード(LED)を平面上にマトリクス配列した」もので「LED表示」するもの、とする点において本願発明と一致する。

〈(LED表示)「パネル」とする点について〉
一般に、先願発明の「発光部10」のような、発光ダイオードを平面上にマトリクス配列して図形パターン等を表示できるようにしたものといえば、
先願出願前より周知であり慣用されている「パネル」形態のもの、つまり「LED表示パネル」が普通に想定される。
{例えば、
・映像情報メディア学会編、「電子情報ディスプレイハンドブック」、2001年7月10日(初版)、「10.3.3 LED 方式」、(株)倍風館発行、P492-P493、
・内村、内池監修、「フラットパネルディスプレイ大事典」、2001年12月25日(初版第1刷)、(株)工業調査会発行、p889,p928-942(特に、p930)
・特開昭62-279685号公報
・特開平1-164995号公報
・特開2001-251041号公報
・特開2003-248435号公報
等参照。}

したがって、先願明細書には、「発光部10」が「パネル」とは明記されていないものの、これが「パネル」形態である「LED表示パネル」であるものを認め得るというべきである。
構成要件B2「外部に向けて投光する複数の発光ダイオード(LED)を平面上にマトリクス配列したLED表示パネルと、」を備えるとする点において、本願発明と先願発明が相違するとはいえない。

ウ 構成要件C、Dについて
C:「入力した表示データに基づいて上記LED表示パネルの
発光ダイオードを表示制御する表示制御装置と、」
D:「上記LED表示パネルに表示させる表示パターンの
上記表示データを上記表示制御装置に出力する主制御装置と、」

(ア)構成要件Cのうちの「上記LED表示パネルの発光ダイオードを表示制御する表示制御装置」について
構成要件Cの「発光ダイオードを表示制御する」とは、『発光ダイオードの発光(・消光)を制御する』ことを意味するものと理解されるところ、
「LED表示パネルの発光ダイオードを表示制御する表示制御装置」に対応するものと認め得る先願発明の「発光ドライバ11」は、
発光部10(これが「LED表示パネル」と認識し得ることは前記のとおりである。)の発光ダイオードLαβの発光、消光、及び発光量調節を行うものである{先願発明の(b)}から、
『発光ダイオード(Lαβ)の発光(・消光)を制御』して発光部10の表示を制御する装置と言うことができる。
したがって、「発光ドライバ11」は、「上記LED表示パネルの発光ダイオードを表示制御する表示制御装置」(構成要件Cの一部)と言い得るものである。

(イ)「上記LED表示パネルに表示・・・主制御装置」(構成要件D)
、構成要件Cの「入力した表示データに基づいて」とする点について
(イ1)先願発明の「制御部12(CPU)」が「主制御装置」と言い得ることは明らかである。

(イ2)「上記LED表示パネルに表示させる表示パターン」
先願発明の(h)によれば、
制御部12は、記憶部14が記憶している図形パターン1?3(図5)を被照明者が認識するように、発光部ドライバ11を介して発光ダイオードLαβの発光を制御し、その後全ての発光ダイオードLαβが発光するように発光を制御するところ、
発光部10の発光するダイオードLαβによりその図形パターンが表示されることになるのであるから、
その「図形パターン」は、「発光部10」のn×nの発光ダイオードのうちの発光する発光ダイオードにより表示されるパターンをいうものと言え、
したがって、本願発明でいう「上記LED表示パネルに表示させる表示パターン」に相当するものと言うことができる。

(イ3)「表示パターンの上記表示データを上記表示制御装置に出力する
」、構成要件Cの「入力した表示データに基づいて」
また、上記のように、先願発明の「制御部12(CPU)」は、「発光部ドライバ11」を介して「発光部10」の発光ダイオードLαβの発光を制御するものであり、その制御により、発光部10における発光するダイオードLαβによりそ上記「図形パターン」が表示されることになるところ、
「発光部ドライバ11」(表示制御装置)は、
「図形パターンのデータ」を得ずして、「図形パターン」を表示させるべく発光するダイオードLαβを制御することはできないから、
データの具体的形態はともかく、「制御部12」から「図形パターンのデータ」を入手し、入手したデータに基づいて発光部10の発光ダイオードLαβを表示制御していること、
また、「制御部12」は、「図形パターンのデータ」を「発光部ドライバ11」に与えていること、
以上は明らかである。
そして、その「図形パターンのデータ」は、「表示パターンの表示データ」と言え、データの具体的形態を特定せずに言う構成要件Dの「表示パターンの表示データ」と相違しない。
そうすると、先願発明の
「制御部12」(主制御装置)は、図形パターン(上記LED表示パネルに表示させる表示パターン)のデータ(表示データ)を、「発光部ドライバ11」(上記表示制御装置)に出力していると言え、
「発光部ドライバ11」(上記表示制御装置)は、入力した図形パターンのデータ(入力した表示データ)に基づいて発光部10(上記LED表示パネル)の発光ダイオードを表示制御しているということができる。

(ウ)まとめ
以上によれば、「発光部ドライバ11」、「制御部12(CPU)」は、
それぞれ、「入力した表示データに基づいて上記LED表示パネルの発光ダイオードを表示制御する表示制御装置」、「上記LED表示パネルに表示させる表示パターンの上記表示データを上記表示制御装置に出力する主制御装置」と言うことができ、
「発光部ドライバ11」、「制御部12(CPU)」を備える先願発明は、 構成要件C及び構成要件Dを備えるとする点において、本願発明と相違しない。

なお、念の為、「発光部ドライバ11」が「制御部12」から「表示パターンの表示データ」を「入力」していると言える点について、以下にみておく。
先願発明の(c)によれば、発光ダイオードLαβの発光、消光は、
「発光ドライバ11」が、
・走査信号を走査線Xaに印加し、
-詳しくは、発光させる発光ダイオードLαβが接続している1本の走査線Xaの電位を0Vとし、他の走査線Xaには電圧を印加し、
・発光及び消光に係るデータ信号を信号線Ybに印加する、
-詳しくは、前記走査線Xaに接続している半導体発光素子Lαβの内、発光させるべき発光ダイオードLαβが接続している信号線Ybに電圧を印加し、発光させない発光ダイオードLαβが接続している信号線Ybには電圧を印加しない、
ことでなされる。
上記「発光及び消光に係るデータ信号」は、発光すべき及び発光すべきでない発光ダイオード(のY位置)を1行分(電位0となるXa)毎に示すものであり、「表示パターン」の「表示データ」(1行分)といえ、
n行分の走査で、発光すべき及び発光すべきでない発光ダイオード(の位置)の全てが特定されるものであるから、n行分の「発光及び消光に係るデータ信号」は「表示パターン」の「表示データ」(全部)といえる。
すなわち、1行分またはn行分の上記「発光及び消光に係るデータ信号」は、「表示パターン」の「表示データ」と言うことができる。
このように、「発光ドライバ11」は、「表示パターン」の「表示データ」を「発光部10に」出力している。
そして、そのデータの入手先は、「制御部12」以外にはないのであるから、「発光部ドライバ11」は、「制御部12」から「表示パターンの表示データ」を入手、すなわち「入力」していることは明らかである。

エ 構成要件F、G、Hについて
F:「上記カメラを撮像操作するカメラ操作部とを備え、」
G:「上記LED表示パネルは、上記カメラの操作時に該カメラが
向けられる方向に上記発光ダイオードが投光するように
配置されており、」
H:「上記表示制御装置は、上記カメラの撮影操作に連動して
上記発光ダイオードを点灯制御すること」

(ア)構成要件Fについて
先願発明の(e)の「制御部12に接続した撮像部20による撮像開始の操作を受け付ける操作ボタン」は、「上記カメラを撮像操作するカメラ操作部」と言え、構成要件Fとする点において、本願発明と先願発明は一致する。

(イ)構成要件G,Hについて
先願発明は、フラッシュ装置として発光ダイオードを用いた撮像装置であり、
上記(g)によれば、先願発明は、撮像開始の指示を受け付けた場合に、フラッシュ装置1は、図形パターン1,2,3が表示されるように、「発光部10」の「発光ダイオードLαβ」を発光させ、その後、フラッシュ発光、すなわち、全ての発光ダイオードLαβを発光量R(D)で発光させる。
したがって、フラッシュ発光(全ての発光ダイオードLαβの発光量R(D)での発光)が、撮像開始の指示を契機としてこれに連動して(すなわち、「カメラの撮影操作に連動して」)なされることは明らかであり、
また、その発光が、「表示制御装置」と言い得る「発光部ドライバ11」により発光制御(すなわち「点灯制御」)されてなされることも、前記の通りであるから、
先願発明の「発光部ドライバ11」(本願発明でいう「表示制御装置」)は、「上記カメラの撮影操作に連動して上記発光ダイオードを点灯制御する」と言うことができる。
以上から、構成要件H「上記表示制御装置は、上記カメラの撮影操作に連動して上記発光ダイオードを点灯制御すること」において、先願発明と本願発明とは相違しない。

また、先願発明の「発光部10」(LED表示パネル)は、カメラのフラッシュ装置として使用するものであることから、
当然に、その「発光ダイオードLαβ」は、カメラの操作時に該カメラが向けられる方向に発光ダイオードLαβが投光するように配置されている、と言うことができる
すなわち、「発光部10」(LED表示パネル)は、
フラッシュ発光として、撮影時においてカメラが向けられる被写体を照明するために用いるものであり、
また、フラッシュ発光前の図形パターン表示としても、被写体に認識させるために用いるものである以上、
撮像開始の指示を受け付けたとき(すなわち、「カメラの操作時」に)、「該カメラが向けられる方向に上記発光ダイオードが投光するように配置されて」いることは、明らかである。
したがって、構成要件Gとする点においても、先願発明と本願発明は一致する。

以上によれば、構成要件F、G、Hにおいて、先願発明は本願発明と相違しない。

オ 構成要件A,B1について
A:「操作部と通話に使用するマイクを有する操作側筐体の一端と
主表示部と通話相手の音声を出力するレシーバを有する表示側筐体
の一端とを開閉可能に連結するヒンジと、」
B1:「上記表示側筐体の主表示部が設けられた面以外の筐体表面に
形成された表示窓に配置され、」
(B2:「外部に向けて投光する複数の発光ダイオード(LED)
を平面上にマトリクス配列したLED表示パネルと、」)

(ア)先願発明として想定されるカメラ付き携帯電話
先願発明は、「フラッシュ装置として発光ダイオードを用いた撮像装置であるカメラ付き携帯電話であって、フラッシュ装置1を備える撮像装置2を備え」るものであるところ、
先願出願時、「フラッシュ装置として発光ダイオードを用いた撮像装置であるカメラ付き携帯電話」といえば、その当時の典型的かつ周知のものとして、
〈想定されるカメラ付き携帯電話〉
『「操作部と通話に使用するマイクを有する操作側筐体の一端と主表示部」と、「通話相手の音声を出力するレシーバを有する表示側筐体」とが、「ヒンジ」により「開閉可能に連結」された2つ折りのものであって、
その「フラッシュ装置」としての「発光ダイオード」が、「上記表示側筐体の主表示部が設けられた面以外の筐体表面」側から「外部に向けて投光する」ように「配置された」
カメラ付き携帯電話』(以下、『想定されるカメラ付き携帯電話』と略す。)
が普通に想定される(これには、例えば、下記の周知例1?10等を参照することができる。)。
したがって、先願明細書記載の発明(先願発明)として、上記のように『想定されるカメラ付き携帯電話』のフラッシュ装置として、前記認定の先願発明のように特定される「フラッシュ装置1」を用いたものを認めることができる、
すなわち、先願発明として、
上記構成要件Aを備え、
「LED表示パネル」と認め得る「発光部10」
-「複数の発光ダイオード(LED)を平面上にマトリクス配列した」
「発光部10」-
が、「上記表示側筐体の主表示部が設けられた面以外の筐体表面」側から「外部に向けて投光する」ように「配置された」携帯電話
を認めることができる。

〈本願発明との対比〉
そして、ここまでの検討によれば、このものは、構成要件Aを備えること、及び、「LED表示パネル」が「筐体表面に形成された表示窓に配置され」とする点を除く構成要件B1(構成要件B)と一致する。

記(周知例1?10)
1:特開2003-101836号公報
{例えば、図1?2、段落【0006】?【0013】等}
2:特開2003-274266号公報
{例えば、図6とその説明、特に段落【0019】?【0021】等}
3:特開2003-287783号公報
{例えば、図1?6とその説明、{段落【0009】?【0020】等}
4:特開2003-309765号公報
{例えば、図1,2とその説明、特に段落【0007】,【0008】
,【0045】?【0052】等}
5:特開2003-333420号公報
{例えば、図1とその説明}
6:特開2003-338973号公報
{例えば、図4とその説明、特に段落【0023】?【0027】等}
7:特開2004-23357号公報
{例えば、図1とその説明、特に段落【0041】等}
8:特開2004-48469号公報
{例えば、図1?3、図6?7、図11とその説明
、段落【0017】?【0029】等}
9:特開2004-64556号公報
{例えば、図2?4とその説明、特に段落【0031】?【0047】等}
10:特開2004-88262号公報
{例えば、図1?8とその説明、段落【0003】?【0017】等}
{なお、
・(i)マイクが操作側筐体に設けられていることこと、
・(ii)通話相手の音声を出力するレシーバが表示側筐体に設けられていること
については、周知例4?6及び周知例8,9には明記されているものの、
周知例1?3,7,10には明記はされていない。
しかし、この種の2つ折り携帯電話においては、上記(i)(ii)であることはごく普通であり、携帯電話に必須の「マイク」「レシーバ」について特に明記がないことから、これらについて記載のある他の周知例4?6や周知例8,9と同様、上記(i)(ii)であるもの認められる。}

(イ)構成要件B1の「筐体表面に形成された表示窓に配置され、」について
本願発明でいう「表示窓」について検討するに、
・「表示窓」についての直接的な特定は、「筐体表面に形成された」とすることのみであること、
・間接的には、「表示窓」は、「外部に向けて」の「投光」が可能であることを特定していること、
・「窓」という用語を用いていること、
からすれば、
本願発明でいう「表示窓」とは、『筺体表面に形成した、開口等の光を通す部分』を指していうものと解せられる。
一方、先願発明として上記の『想定されるカメラ付き携帯電話』は、
その「LED表示パネル」(発光部10)が、「上記表示側筐体の主表示部が設けられた面以外の筐体表面」側に該筺体表面から「外部に向けて投光する」ように「配置され」ているものであるところ、
一般に、LEDやLCD表示パネルのような「外部に向けて投光する」部品を、携帯電話の「筐体表面」側に該筺体表面から「外部に向けて投光する」ように「配置」するのに、
開口等の光を通す部分(窓)を筺体表面の形成して同部分(窓)に配置することは、周知かつ当業者の常套する設計事項にすぎない。
以上のことからすれば、前記(イ)のとおり、先願発明として、
「LED表示パネル」と認め得る「発光部10」が、「上記表示側筐体の主表示部が設けられた面以外の筐体表面」側から「外部に向けて投光する」ように「配置された」発明が認められるところ、
「発光部10」を当該「筐体表面」側から「外部に向けて投光する」ように」配置するのに、
開口等の光を通す部分(窓)を当該筺体表面の形成して同部分(窓)に配置すること、
すなわち、当該「筐体表面に形成された表示窓に配置され」とすることも普通に想定される事項というべきであり、
したがって、当該「筐体表面に形成された表示窓に配置され」とすることが先願明細書に記載がないからといって、
先願発明と本願発明が技術思想たる発明として相違するもの、とすることはできない。

(ウ)オのまとめ
以上によれば、構成要件Aを備えること、構成要件B1とすることにおいて、先願発明と本願発明に発明として相違があるとはいえない。

カ 結論([3.2]同一性判断)
以上によれば、本願発明の上記構成要件A?Iのいずれにおいても、先願発明と相違する、とはいえない。
また、本願発明を構成要件A?Iのすべてを総合した発明としてみても、先願発明と相違する発明とはいえず、本願発明と先願発明は実質的に同一である。

[4]まとめ(当審の判断)
以上、本願発明と先願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明(先願発明)は実質的に同一である。
そして、上記出願1(先願)が本願出願日(とみなされた日)前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされたものであること、先願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明をした者が本願発明の発明者と同一の者ではないこと、本願出願時にその出願人と上記出願1の出願人とが同一の者ではないこと、以上は明らかである。

【第5】むすび
以上、本願の請求項1に係る発明は、上記出願1(先願)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2?請求項4までに係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-09 
結審通知日 2010-04-13 
審決日 2010-04-27 
出願番号 特願2006-193472(P2006-193472)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 潤冨田 高史  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 奥村 元宏
佐藤 直樹
発明の名称 携帯機器  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  

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