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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01C
管理番号 1217888
審判番号 不服2007-17870  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-27 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2006-266170「可変抵抗器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月31日出願公開、特開2007-134682〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成18年9月29日(優先日:平成17年10月14日,出願番号:特願2005-300827号)の出願であって,平成19年5月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月27日に審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,その後,当審において平成21年12月21日付けで審尋がなされ,平成22年2月15日に回答書が提出されたものである。

第2 平成19年6月27日付けの手続補正についての却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年6月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成19年6月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,補正前の請求項1は,補正後の請求項1として,
「ともに樹脂成型品からなる回転軸部と軸受け部とを有する可変抵抗器において,
前記回転軸部及び前記軸受け部の少なくともいずれか一方が,CaSO_(4)及びポリテトラフルオロエチレンを含有し,かつ,ガラス繊維を含まない液晶ポリマーにて成型されていること、
を特徴とする可変抵抗器。」と補正された。
上記補正は,補正前の請求項1の「前記回転軸部及び前記軸受け部の少なくともいずれか一方が,ポリテトラフルオロエチレンを含有し」を補正後の請求項1の「前記回転軸部及び前記軸受け部の少なくともいずれか一方が,CaSO_(4)及びポリテトラフルオロエチレンを含有し」と限定するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(ア)刊行物1:実願昭62-130620号(実開昭64-35710号)のマイクロフィルム
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物1には,「可変抵抗器」(考案の名称)に関して,第1図とともに以下の事項が記載されている。(なお,下線は,引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下同様。)
「材質がプラスチック材料の外装ケースと同じく回転子を有する可変抵抗器において,前記外装ケース或いは回転子のどちらか一方のプラスチック材料にテフロン粒子を混入したことを特徴とする可変抵抗器。」(実用新案登録請求の範囲)
「以下、本考案の実施例を第1図を参照して説明する。第1図は本考案の一実施例である可変抵抗器の断面図である。図中符号1はPPS樹脂材料の外装ケースである。図中符号2はテフロン粒子を混入させたPPS材料の回転子である。
回転子2は外装ケース1に対し一部密着して回転摺動し,その密着部に摩擦を生じるが,材料中のテフロン粒子により摩擦力が低減するため摩耗及び削れて粉が発生することがない。」(3頁9?19行)
さらに,前記記載も考慮すると,第1図には,プラスチックからなる外装ケース1と金属からなる金属缶ケース6に,プラスチックからなる回転子2が摺動する可変抵抗器が記載されている。
以上から,刊行物1には「プラスチックからなる外装ケース1と金属からなる金属缶ケース6に,プラスチックからなる回転子2を摺動する可変抵抗器において,外装ケース1或いは回転子2のどちらか一方のプラスチック材料にテフロン粒子を混入したことを特徴とする可変抵抗器。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)刊行物2:特開2002-299108号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物2には,「可変抵抗器」(発明の名称)に関して,図1及び図4とともに以下の事項が記載されている。
「【0016】ケース1は,はんだ付けの熱に耐え,高温雰囲気で安定動作を可能にするため,例えば46ナイロン等の耐熱性の高いポリアミド系やポリフェニレンサルファイド,ポリブチレンテレフタレート,液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂,あるいはエポキシ,ジアリルフタレート,不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂にて製作される。ケース1は上下両方向に開口する筒形に形成され,上部には円形の上部開口部2が,下部には角形の下部開口部3がそれぞれ形成されている。ケース1の内面で,かつ上下方向の中間部には,ロータ40と抵抗基板10との間にパッキング20を配置するための一定の隙間を確保する環状のスペーサ部4が突設されている。また,ケース1の対向する2つの外側面にはガイド溝5が形成されている。」
「【0020】ロータ40は,例えばポリフェニレンサルファイド,液晶ポリマー等の耐熱性樹脂によって略円柱形状に形成されており,ケース1の上部開口部3に回転可能に嵌合される。ロータ40の上面中央部には円柱形のボス部41が突設され,このボス部41上面にドライバなどの工具が係合する十字状の工具係合溝42が形成されている。ボス部41の外周には環状溝43が形成され,環状溝43の所定位置にストッパ44が形成されている。ロータ40の下面中央部には位置決め用突起45が突設され,下面の偏心位置には回り止め用突起46(図6参照)が突設されている。さらに,ロータ40の下面には,上記突起45,46を取り囲むように環状壁部47が突設されている。この環状壁部47は抵抗基板10上に形成されたパッキング20に接触し,ロータ40と抵抗基板10との間に密閉空間21(図3,図4参照)を形成する役割を有する。特に,ロータ40をケース1の上部開口部3に嵌合させたとき,ロータ40の下面がケース1のスペーサ部4の上面に当接することで,ロータ40と抵抗基板10との間隔が一定になり,後述する摺動子50およびパッキング20の圧縮代が一定になる。」

(ウ)刊行物3:特開平5-320676号公報
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物3には,「プラスチック用摺動樹脂組成物」(発明の名称)に関して,以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,優れた摺動性を有する摺動用樹脂組成物に関するものである。特に高温雰囲気下の過酷な条件において,相手材がフィルムその他の成形品からなるプラスチック部材等である場合に用いられる摺動用樹脂組成物に関する。」
「【0019】本発明に用いられる無機粉粒体としては,鉱物等の硬さ試験に用いられるモース硬度が2?4の範囲のものであることが必要である。モース硬度2?4の無機物として具体的には,亜鉛,金,銀,アルミニウム,銅,黄銅,アンチモン,リン青銅等の金属,カオリナイト,岩塩,シルビン,雲母(シロ雲母,キン雲母),シンシャ,パイロルーサイト,ポリバサイト,ブルーサイト,ホウ砂,カーナライト,氷晶石,コハク,方鉛鉱,シャコツ鉱,ベニアエン鉱,方解石,大理石,コウ石膏,セレスタイト,ハリニッケル鉱,オウドウ鉱,セン亜鉛鉱,クジャク石,ドロマイト,キフッ石,リョウクド石,ホタル石,ジリュウテッ鉱,ジャモン岩等の天然物,クレー,セリサイト,水酸化アルミニウム,二硫化モリブデン,酸化亜鉛,硫酸カルシウム,炭酸カルシウム,チタン酸カリウム等が挙げられる。これらのなかで硫酸カルシウム,炭酸カルシウムが好ましく用いられる。 モース硬度2?4の範囲に入らないものを用いたとき,例えばモース硬度1のタルクを用いた場合には,たとえ相手材に軟質なものを選んでも樹脂組成物が摩耗する。 また逆にモース硬度4.5のウォラストナイト(メタケイ酸カルシウム)を用いた場合には,相手材であるプラスチックを摩耗させるなどの問題がある。」

(2)本願補正発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「プラスチック」,「回転子」,「テフロン粒子」,「混入」は,それぞれ,本願補正発明の「樹脂成型品」,[回転軸部」,「ポリテトラフルオロエチレン」,「含有」に相当する。
(b)刊行物1の第1図を見れば明らかなように,引用発明の「プラスチックからなる外装ケース1と金属からなる金属缶ケース6」は,回転子と摺動する部分であるから,本願補正発明の「軸受け部」に相当する。

よって,両者は、
「回転軸部と軸受け部とを有する可変抵抗器において,
前記回転軸部及び前記軸受け部の少なくともいずれか一方が,ポリテトラフルオロエチレンを含有していること,
を特徴とする可変抵抗器。」である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]本願補正発明は,回転軸部と軸受け部が「ともに樹脂成型品からなる」ようにしているのに対し,引用発明ではそのような構成を備えていない点。
[相違点2]本願補正発明は,「CaSO_(4)」を「含有し」ているのに対し,引用発明ではそのような構成を備えていない点。
[相違点3]本願補正発明は,「ガラス繊維を含まない液晶ポリマーにて成型されている」のに対し,引用発明ではそのような構成を備えていない点。

そこで,上記相違点について検討する。
[相違点1について]
回転軸部と軸受け部がともに樹脂成型品からなるようにすることは,以下の周知例1?3にも示されるように周知技術である。
したがって,引用発明において,本願補正発明のごとく,回転軸部と軸受け部がともに樹脂成形品からなるようにすることは,当業者が適宜なし得たことである。

周知例1:特開2003-124008号公報(「【0012】この可変抵抗器は,樹脂成形品からなる基板10と,樹脂成形品からなるカバー20と,摺動子35を備えた樹脂成形品からなる回転軸30とで構成されている。基板10は裏面側に円環状の突部11が突設されて中心孔11aが形成され,かつ,端子12,13が埋設されている。端子12はその端部12aが基板10の側面から突出し,中央部が円環状の集電体12bとして基板10の表面に露出している。端子13はその端部13aが基板10の側面から突出し,他端部13bが基板10の表面に露出している。」)

周知例2:特開2002-367815号公報(「【0006】ところで,樹脂製のロータリ型の可変抵抗器やエンコーダ等の接点摺動操作型電子部品の一般的な構造は,例えば図4に示されるロータリ型可変抵抗器10のように,外部接続端子8が配設された基板1(エポキシ樹脂等)と,該基板1上に環状に設けられた面状の抵抗体3(抵抗材料として炭素粉末,膠着剤として油状フェノール樹脂及び溶剤を混合した抵抗液を塗布印刷して所定の形状に形成したもの等。)もしくは導体5(銀ペイント等を印刷したもの。)と,前記基板1に摺接する摺接部位である円環状の凸部9を有するガラス繊維含有の耐熱性樹脂材からなる操作側部材2と,前記操作側部材2の底面側に配設されて前記基板面上の抵抗体3もしくは導体5と接しつつその接点位置が操作側部材2の回転操作で変化可能な金属薄板を所定形状に打ち抜き成形した摺動導体7(可変抵抗器では摺動子と称される。)と,ガラス繊維含有の耐熱性樹脂材からなり基板1に取り付けられて前記操作側部材2を軸支している筺体6と,を備えている。」)

周知例3:特開2000-138109号公報(「【0010】次に,本発明の回転型可変抵抗器の構成を図1?図4に基づいて説明すると,合成樹脂の成型品からなる基板1は,中央部に設けられた孔1aと,外表面に設けられた凸部1bとを有している。また,複数個の端子2,3は金属材からなり,この端子2,3は基板1に埋設されて取り付けられ,一端部は,基板1の側面部から外方に突出して端子部2a,3aが形成され,また,他端部は,基板1の表面から露出して露出部2b,3bが形成されている。」,「【0012】また,絶縁材からなる軸部7は,筒状をなし,その中央には孔7aが設けられると共に,軸部7には,金属板からなり,接片8a,8bを有する摺動子8が固着されている。そして,軸部7は,基板1の孔1aに嵌入して回転可能に取り付けられ,摺動子8の一方の接片8aは集電体4に,また,他方の接片8bは抵抗体5に摺動するようになっている。そして,接片8aは,露出部2bを除く集電体4上,即ち,摺動軌跡S1の範囲で摺動し,また,接片8bは,抵抗体5上を摺動軌跡S2の範囲で摺動するようになっている。【0013】また,合成樹脂の成型品からなるカバー9は,コップ状をなし,摺動子8,抵抗体5,及び集電体4を覆うように,基板1にスナップ止め等の適宜手段により取り付けられている。そして,このような構成を有する回転型可変抵抗器は,プリント基板(図示せず)上に,基板1の凸部1b,及び第1,第2の端子2,3の端子部2a,3aを載置して,プリント基板に面実装されて取り付けられるものである。」)

[相違点2について]
耐摩耗性を考慮して液晶ポリマーに硫酸カルシウム(CaSO_(4))を含有させることは,刊行物3に記載されるように公知であるから,引用発明において,本願補正発明のごとく,CaSO_(4)を含有させることは当業者が適宜なし得たことである。
なお,出願当初の明細書等には,CaSO_(4)が液晶ポリマーに含有されることによる効果は記載されていない。

[相違点3について]
可変抵抗器の樹脂の材質として,液晶ポリマーを用いることは,刊行物2に記載されている。そこには,その際ガラス繊維を含ませるという記載はない。かえって,以下の周知例4には,摘示したように,ポリマーにガラス繊維を含ませると,「ポリマーの異方性の改善効果が乏しい上に,加工機械や金型との接触面を摩耗させたり,成形品表面にガラス繊維の浮出し模様が現れる等、液晶ポリマーの特徴である表面平滑性を損い外観を悪くさせるという重大な欠点を生ずる。」との記載がある。また,以下の周知例5には,摘示したように「ガラス繊維,炭素繊維,各種ウィスカー等の繊維状物を添加することも提案されているが,これらは硬度が大きくかつ形状によっては摺動時に相手材を傷つけ易いため,相手材を摩耗させると同時にそれ自体も摩耗し易くなるという問題点がある。」との記載がある。
したがって,刊行物2の記載及び周知技術に照らし,引用発明において,本願補正発明のごとく,ガラス繊維を含まない液晶ポリマーにて成型させることは,当業者が適宜なし得たことである。

周知例4:特開平2-14246号公報(「そこで,近年,上記ポリマーに炭酸カルシウム,マイカ,ガラスビーズ等の粉末状もしくは薄片状の充填剤を配合して該ポリマーの異方性を改善する試み,並びに該ポリマーにガラス繊維等の繊維状強化剤を配合して該ポリマーの耐熱性,強度及び剛性を改善する試みがなされている。しかるに,前者の試みでは,該ポリマーの耐衝撃性が大幅に低下して該ポリマーが非常に脆くなるという致命的な欠点が生ずるし,また後者の試みでは,該ポリマーの異方性の改善効果が乏しい上に、加工機械や金型との接触面を摩耗させたり,成形品表面にガラス繊維の浮出し模様が現れる等,液晶ポリマーの特徴である表面平滑性を損い外観を悪くさせるという重大な欠点を生ずる。」(2頁左上欄12行?右上欄7行))

周知例5:特開平5-320676号公報(刊行物3)(「【0003】このため耐摩耗性,耐熱性を向上させる目的で,ガラス繊維,炭素繊維,各種ウィスカー等の繊維状物を添加することも提案されているが,これらは硬度が大きくかつ形状によっては摺動時に相手材を傷つけ易いため,相手材を摩耗させると同時にそれ自体も摩耗し易くなるという問題点がある。特に最近では、摺動部材の相手材としても耐熱性・強度・寸法安定性の優れたいわゆるスーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)と呼ばれるプラスチック部材が金属部材の替わりに用いられている。これらはセラミックス,金属等の従来の摺動部材と比べて比較的軟質であり,このようなスーパーエンプラからなるプラスチックフィルムをはじめとする各種プラスチック成形品の場合には,上記の傾向が強く現れる。」)

よって,本願補正発明は,刊行物1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおり,請求項1についての補正を含む本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成19年6月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「ともに樹脂成型品からなる回転軸部と軸受け部とを有する可変抵抗器において,
前記回転軸部及び前記軸受け部の少なくともいずれか一方が,ポリテトラフルオロエチレンを含有し,かつ,ガラス繊維を含まない液晶ポリマーにて成型されていること,
を特徴とする可変抵抗器。」

第4 刊行物に記載された発明
刊行物1及び2の記載事項及び刊行物1に記載された発明は,上記「第2 2(1)」に記載したとおりである。

第5 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「プラスチック」,「回転子」,「テフロン粒子」,「混入」は、それぞれ,本願発明の「樹脂成型品」,[回転軸部」,「ポリテトラフルオロエチレン」,「含有」に相当する。
(b)刊行物1の第1図を見れば明らかなように,引用発明の「プラスチックからなる外装ケース1と金属からなる金属缶ケース6」は,回転子と摺動する部分であるから,本願発明の「軸受け部」に相当する。

よって,両者は,
「回転軸部と軸受け部とを有する可変抵抗器において,
前記回転軸部及び前記軸受け部の少なくともいずれか一方が,ポリテトラフルオロエチレンを含有していること,
を特徴とする可変抵抗器。」である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]本願発明は,回転軸部と軸受け部が「ともに樹脂成型品からなる」ようにしているのに対し,引用発明ではそのような構成を備えていない点。
[相違点2]本願発明は,「ガラス繊維を含まない液晶ポリマーにて成型されている」のに対し,引用発明ではそのような構成を備えていない点。

そこで,上記相違点について検討する。
[相違点1について]
回転軸部と軸受け部がともに樹脂成型品からなるようにすることは,上記の周知例1?3にも示されるように周知技術である。
したがって,引用発明において,本願発明のごとく,回転軸部と軸受け部がともに樹脂成形品からなるようにすることは,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点2について]
可変抵抗器の樹脂の材質として,液晶ポリマーを用いることは,刊行物2に記載されている。そこには,その際ガラス繊維を含ませるという記載はない。かえって,上記の周知例4には,摘示したように,ポリマーにガラス繊維を含ませると,「ポリマーの異方性の改善効果が乏しい上に,加工機械や金型との接触面を摩耗させたり,成形品表面にガラス繊維の浮出し模様が現れる等、液晶ポリマーの特徴である表面平滑性を損い外観を悪くさせるという重大な欠点を生ずる。」との記載がある。また,上記の周知例5には,摘示したように「ガラス繊維,炭素繊維,各種ウィスカー等の繊維状物を添加することも提案されているが,これらは硬度が大きくかつ形状によっては摺動時に相手材を傷つけ易いため,相手材を摩耗させると同時にそれ自体も摩耗し易くなるという問題点がある。」との記載がある。
したがって,刊行物2の記載及び周知技術に照らし,引用発明において,本願発明のごとく,ガラス繊維を含まない液晶ポリマーにて成型させることは,当業者が適宜なし得たことである。

よって,本願発明は,刊行物1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-06 
結審通知日 2010-04-13 
審決日 2010-04-26 
出願番号 特願2006-266170(P2006-266170)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 晃洋  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 橋本 武
大澤 孝次
発明の名称 可変抵抗器  
代理人 森下 武一  

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