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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04H
管理番号 1217891
審判番号 不服2007-19136  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-09 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2006- 34228「送受信装置および送受信方法、並びに受信装置および受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日出願公開、特開2006-211692〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成8年11月28日に出願した特願平8-317310号の一部を平成18年2月10日に新たな特許出願としたものであって、平成19年6月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月8日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成19年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年8月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。なお、下線部は補正された箇所を示す。

〈補正前〉
「【請求項1】
放送局から放送に利用される伝送路を介して送信される番組のデータである番組データを受信する受信装置であって、
前記放送局から送信される前記番組データを受信する番組データ受信手段と、
前記番組データ受信手段により受信された前記番組データを出力する出力手段と、
前記番組で用いられた映像や曲としてのビデオデータまたはオーディオデータである関連データを要求するときに操作される操作手段と、
前記操作手段に対する操作に応じて、前記操作手段が操作されたときの操作時刻を、前記関連データを識別するための識別情報として送信装置に無線通信により送信する識別情報送信手段と、
前記識別情報送信手段により送信された前記識別情報に応じて前記送信装置から送信されてくる、その識別情報に対応する前記関連データを受信する関連データ受信手段と、
前記関連データ受信手段により受信された前記関連データを記録する記録手段と
を備える受信装置。」

〈補正後〉
「【請求項1】
放送局から放送に利用される伝送路を介して送信される番組のデータである番組データを受信する受信装置であって、
前記放送局から送信される前記番組データを受信する番組データ受信手段と、
前記番組データ受信手段により受信された前記番組データを出力する出力手段と、
前記番組で用いられた曲としてのディジタルオーディオデータである関連データを要求するときに操作される操作手段と、
前記操作手段に対する操作に応じて、前記操作手段が操作されたときの操作時刻を、前記関連データを識別するための識別情報として、前記受信装置本体が移動中においても広帯域ネットワークと通信接続可能な無線通信を介して送信装置に送信する識別情報送信手段と、
前記識別情報送信手段により送信された前記識別情報に応じて前記送信装置から送信されてくる、その識別情報に対応する前記関連データを受信する関連データ受信手段と、
前記関連データ受信手段により受信された前記関連データを記録する記録手段と
を備える受信装置。」

上記補正は、
補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「映像や曲としてのビデオデータまたはオーディオデータである関連データ」について、「曲としてのディジタルオーディオデータである関連データ」と限定するものであり、
補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「無線通信により送信する識別情報送信手段」について、「前記受信装置本体が移動中においても広帯域ネットワークと通信接続可能な無線通信を介して」「送信する識別情報送信手段」と限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。)

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特表平7-500715号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

A.「(A)ラジオの聴取者がある曲に関心を持ちそれを買おうと思っても、曲名や演奏者がわからないことがある。ラジオ局のアナウンサーが曲名や演奏者など歌に関するさまざまな情報をアナウンスしないこともあるし、それらの情報がアナウンスされたとしても曲の前になされてしまうこともある。したがって、聴取者は次にその曲が放送されるまで待たねばならず、さらには題名や演奏者のアナウンスが曲の終了後になされるのを願わなければならない。また、曲に関する情報がアナウンスされたとしても、そのような情報を書き留めておくことか難しいような状況(聴取者が自動車を運転していたり、あるいは単に書き留めるものが手元にないなどの状況)もあろう。」(第4頁左上欄9行?17行)

B.「ユニット100は、従来のマイクロホンインタフェース205を介してCPU201に制御されるマイクロホンを備える。CPU201は、回路208を介して電話や音響結合器208をも制御し、DTMF回路209を介してDTMF生成/復号回路をも制御する。回路208を直接電話ジャック103に接続することも可能であり、ユニット100の裏面に位置する音響結合器に接続することもできる。これらの装置は遠隔番組情報検索システム(PIRS)に接続したり、PIRSから放送番組に関する補助情報を引き出すために用いられる。回路208と209に関しては、現在入手可能な設計のいずれでも良い。なお、図2にはこれらの装置をすべて図示しているが、すべてを必要とするわけではない。」(第5頁左下欄25行?右下欄5行)

C.「ユーザはユニット100を1つの局に合わせて、ヘッドホンを用いて放送を聞くことができる。局からの番組(音楽、実況、コマーシャルなど)がユーザにとって関心を引くものである場合には、「放送情報」キー112を押す。すると、ステップ411が実行され、CPU201は局の識別情報を「放送情報」キー112が押された時刻とともにRAM203の不揮発性の部位に記憶する。」(第6頁右上欄11行?15行)

D.「RAM203に保持された識別情報に基づいて、ユーザは識別された番組の補助情報を取り出すことができる。これは、モジュラーコネクターあるいは音響結合器を用いてユニット100を電話につなげることで実行される。ユニット100の電話への接続がなされたあと、ユーザは「レビュー」キー113を押すことができる。」(第6頁右上欄19行?23行)

E.「以前に指定した番組が表示されたら、ユーザはカーソルキー90を用いて補助情報を取り出したい番組あるいは局を選択する。番組あるいは局を選択すると、「ダイアル」キー114を押すことで、対応する電話番号が検索され(ステップ416)ダイアルされる(ステップ417)。電話が接続されると、CPU201はRAM203から局識別情報を取り出し、DTMF生成/復号回路209を起動する。DTMFトーンが生成されると、番組識別情報が局あるいは中央センターのPIRSに送信される(ステップ418)。番組識別情報を送信すると、CPU201はPIRSから情報が送られてくるまで待機する(ステップ419)。」(第6頁左下欄4行?12行)

F.「図5は、検索要求を受信したときのPIRSでの処理の流れを示すフローチャートである。
検索要求を受信すると(ステップ501)、番組識別情報中の局識別番号を用いて当該局に対するデータ位置を求める(ステップ503)。(PIRSが自局で閉じたシステムであればステップ503は必要ない)。
ステップ504では、番組識別情報中の時刻が復号され識別番組が検索される。識別番組が特定されると、PIRSにより補助情報が取り出される(ステップ505)。」(第6頁左下欄18行?25行)

G.「PIRSは補助情報をユーザに送信する前に、まずDTMFトーンをユニット100に送信する(ステップ507)。このDTMFトーンはユニット100のDTMF生成部/復号回路209において受信され、CPU201に割り込みがかけられる。回路209から割り込みがかけられると、CPU201は回路210に制御されてテープレコーダーを起動させる。テープレコーダーが起動すると、信号がPIRSに送られ補助情報の伝送が開始される(ステップ508)。PIRSから受信した補助情報は、ユニット100のテープレコーダーに記録される。
なお、補助情報が音楽選曲に関するものである場合には、アルバム、演奏者、曲名とともに、ユーザが曲名とメロディーとを対応づけることができるように短い(10秒程度)メロディーも補助情報に含まれることになろう。このようなコンセプトは私のUSP5119507に記されている。一方、補助情報が広告に関するものである場合には、製品やサービスを補助情報と結び付けるために補助情報とともに広告の一部も含まれることになろう。」(第6頁左下欄29行?右下欄13行)

以上のことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

「ユーザが1つの局に合わせて、ヘッドホンを用いて放送を聞くことができるユニット100であって、局からの番組(音楽、実況、コマーシャルなど)がユーザにとって関心を引くものである場合には、「放送情報」キー112が押され、局の識別情報を「放送情報」キー112が押された時刻とともにRAM203に記憶し、RAM203に保持された識別情報に基づいて、ユーザは識別された番組の補助情報を取り出すことができ、「レビュー」キー113を押して以前に指定した番組が表示されたら、カーソルキー90を用いて補助情報を取り出したい番組あるいは局を選択し、「ダイアル」キー114を押すことで、番組識別情報が局あるいは中央センターのPIRSに電話回線を介して送信され、PIRSでは番組識別情報中の時刻が復号され識別番組が検索され、その補助情報が取り出されユーザに送信され、ユニット100のテープレコーダーに記録され、補助情報が音楽選曲に関するものである場合には、アルバム、演奏者、曲名とともに、ユーザが曲名とメロディーとを対応づけることができるように短い(10秒程度)メロディーも補助情報に含まれる。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-236099号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

A.「【0032】まず、選択決定入力手段110から付帯情報の再生表示要求があると(ステップ601)、システム制御部103は、付帯情報の再生表示要求と受信中のテレビジョン放送番組のチャンネル名、現在の年月日・時刻を認識する。この現在の年月日・時刻は時計装置104からの時間情報によって認識することができる。そして、再生表示要求と受信中のテレビジョン放送番組のチャンネル名、現在の年月日・時刻を制御指令として光ディスク装置105の制御部108に転送する(ステップ602)。
【0033】そこで、この制御部108は、転送されてきた再生表示要求と受信中のテレビジョン放送番組のチャンネル名や現在の年月日・時刻を認識し(ステップ603)、これらテレビジョン放送番組のチャンネル名と現在の年月日・時刻を検索情報として、放送情報データベースPROGRAM.DB(図5(b))の放送日、放送時間、放送チャンネル名フィールドを参照し、受信中のテレビジョン放送番組に該当するレコード(例えば、図5(b)のレコード0)を検索する(ステップ604)。そして、検索したこのレコードの付帯情報フィールド(図5(b))を参照して、付帯情報データベースAPPEND.DBのレコードナンバ(例えば、図5(b)のレコードナンバ200)を取得し(ステップ605)、この取得した付帯情報データベースAPPEND.DBのレコードナンバに該当する付帯情報レコード(例えば、図5(c)のレコード200)を付帯情報データベースAPPEND.DB(図5(c))から取得する(ステップ606)。
【0034】この取得した付帯情報レコード(図5(c)のレコード200)の関連映像ファイル名フィールドを参照して、関連映像ファイル名(例えば、VD100)を取得する。これによって、受信中のテレビジョン放送番組の付帯情報として、チームや選手などのプロフィール301や、俳優や女優、監督のプロフィールなどが実際に動画や静止画などの画像データ、音声データ、テキストデータなどの形態で記録されているファイル名を知ることができる(ステップ607)。
【0035】〈VIDEO〉ディレクトリから取得した関連映像ファイル名(例えば、VD100)に該当する関連映像ファイルを読み出して、光ディスク/テレビジョンインタフェース手段109を介してテレビジョン受信・表示部102に供給し、再生表示させる。これにより、受信中のテレビジョン放送番組に連動して、これに関連する付帯情報、即ち、チームや選手などのプロフィール301や、俳優や女優、監督のプロフィールなどをユーザに提供することができる(ステップ608)。」

3.対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

引用例1発明の「局」は、本願補正発明の「放送局」に相当する。引用例1発明の「局からの番組」は、本願補正発明の「放送に利用される伝送路を介して送信される番組」に相当し、引用例1発明において、ユーザは「ユニット100」を用いて局からの番組である放送を聞くことができるので、引用例1発明の「ユニット100」は、「放送局から放送に利用される伝送路を介して送信される番組のデータである番組データを受信する受信装置」であるといえ、「ユニット100」は、「前記放送局から送信される前記番組データを受信する番組データ受信手段」を備えていることは明らかである。

引用例1発明において、ユーザは「ヘッドホン」を用いて放送を聞くことができるので、引用例1発明の「ヘッドホン」は、本願補正発明の「番組データ受信手段により受信された前記番組データを出力する出力手段」に相当する。

引用例1発明において、「補助情報」は、短い(10秒程度)メロディーを含み、引用例1の摘記事項Aの記載を考慮すると、このメロディーの曲は放送された番組で用いられたものであることは明らかであるので、引用例1発明の「補助情報」と、本願補正発明の「番組で用いられた曲としてのディジタルオーディオデータである関連データ」とは、番組で用いられた曲としてのオーディオデータである関連データである点で共通する。さらに、引用例1発明の「「ダイヤル」キー114」は、番組の補助情報を取り出したい場合に押されるので、本願補正発明の「番組で用いられた曲としてのディジタルオーディオデータである関連データを要求するときに操作される操作手段」と、番組で用いられた曲としてのオーディオデータである関連データを要求するときに操作される操作手段である点で共通する。

そして、引用例1発明では、ユーザが取り出したい補助情報に対応した番組を検索するためにPIRSに送信される番組識別情報に、「「放送情報」キー112」が押されたときの時刻の情報が含まれるので、引用例1発明の「「ダイアル」キー114を押すことで、番組識別情報が局あるいは中央センターのPIRSに送信され」ることと、本願補正発明の「操作手段に対する操作に応じて、前記操作手段が操作されたときの操作時刻を、前記関連データを識別するための識別情報として、送信装置に送信する」こととは、操作手段に対する操作に応じて、関連データを識別する時刻を、前記関連データを識別するための識別情報として、送信装置に送信する点で共通する。そして、引用例1発明の「ユニット100」は、そのような識別情報を送信する識別情報送信手段を有しているといえる。

引用例1発明において、PIRSで番組識別情報中の時刻が復号され識別番組が検索され、その補助情報が取り出されてユーザに送信されるので、引用例1発明の「ユニット100」は、識別情報送信手段により送信された前記識別情報に応じて前記送信装置から送信されてくる、その識別情報に対応する前記関連データを受信する関連データ受信手段を有していることは明らかである。

引用例1発明の「PIRS」、「テープレコーダー」は、本願補正発明の「送信装置」、「記憶手段」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「放送局から放送に利用される伝送路を介して送信される番組のデータである番組データを受信する受信装置であって、
前記放送局から送信される前記番組データを受信する番組データ受信手段と、
前記番組データ受信手段により受信された前記番組データを出力する出力手段と、
前記番組で用いられた曲としてのオーディオデータである関連データを要求するときに操作される操作手段と、
前記操作手段に対する操作に応じて、関連データを識別する時刻を、前記関連データを識別するための識別情報として、送信装置に送信する識別情報送信手段と、
前記識別情報送信手段により送信された前記識別情報に応じて前記送信装置から送信されてくる、その識別情報に対応する前記関連データを受信する関連データ受信手段と、
前記関連データ受信手段により受信された前記関連データを記録する記録手段と
を備える受信装置。」
で、一致するものであり、次の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、関連データはディジタルオーディオデータであるのに対し、引用例1発明の補助情報である短いメロディーはデジタルオーディオデータかどうか明らかではない点。

[相違点2]
本願補正発明では、関連データを識別するための識別情報として送信装置に送信する時刻は、関連データを要求するときに操作される操作手段が操作されたときの操作時刻であるのに対し、引用例1発明では、補助情報に対応する番組を検索するのに使用され、PIRSに送信される番組識別情報中の時刻は、「「ダイヤル」キー114」が操作されたときの時刻ではなく、「「放送情報」キー112」が押されたときのRAM203に記憶された時刻である点。

[相違点3]
本願補正発明では、操作時刻を受信装置本体が移動中においても広帯域ネットワークと通信接続可能な無線通信を介して送信装置に送信するのに対し、引用例1発明では、時刻を含む番組識別情報は電話回線を介して送信している点。

4.判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]
通信の技術分野において、要求したデジタルオーディオデータを通信回線を介して受信することは、周知技術(例えば、野上タカヒロ著、「インターネット遊民になる5 気軽にInternet上の音を楽しむ」、INTERNET Surfer、第1巻、第6号、エーアイ出版株式会社、1996年11月1日発行、108?109頁の特に第109頁第1欄第14行?第2欄第2行、岩崎信爾著、「インターネットの現状と接続の実際 Part3 インターネットの最新サービスを使いこなす」、DOS/V POWER REPORT 第5巻 第5号、株式会社インプレス、1995年10月1日発行、40?49頁の特に第41頁第1欄第8行?第18行、参照)であり、引用例1発明において、補助情報として要求して受信するメロディをデジタルオーディオデータとすることは当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]
引用例2には、選択決定入力手段110(本願補正発明の「操作手段」に相当)からテレビジョン放送番組の付帯情報(本願の「関連データ」に相当)の再生表示要求があると、受信中のテレビジョン放送番組のチャネル名と現在の年月日・時刻を光ディスク装置(本願補正発明の「送信装置」に相当)に転送し、光ディスク装置から付帯情報を取得すること、すなわち、受信中の放送番組に関連する情報の要求を、受信中に操作手段を操作した時刻を識別情報として送信することによって行うことが記載されている。引用例1発明と引用例2とは、放送という同一の技術分野に属し、放送番組に関連する情報を要求して、受信する点で共通しており、引用例1発明に引用例2に記載された放送番組の受信中に情報を要求する前記技術を適用して、引用例1発明において、番組受信中に補助情報を要求するための操作手段(例えば、「ダイヤル-」キー114の操作)の操作に応じて、操作された操作時刻を番組識別情報としてRIPSに送信して、補助情報を受信するように構成することは当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3]
通信の技術分野において、移動中においても広帯域ネットワークと通信接続可能な無線通信を介して、データを送受信することは周知技術(例えば、特開平8-274758号公報の0064段落、0065段落参照、特開平7-38944号公報の0004段落、0008段落、参照)であり、引用例1発明に前記周知技術を適用して、時刻を含む番組識別情報をユニット100が移動中においても広帯域ネットワークと通信接続可能な無線通信を介してPIRSに送信するように構成することは当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1発明及び引用例2、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は引用例1発明及び引用例2、周知技術に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について

1.本願発明
平成19年8月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明という。」)は、平成19年5月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
放送局から放送に利用される伝送路を介して送信される番組のデータである番組データを受信する受信装置であって、
前記放送局から送信される前記番組データを受信する番組データ受信手段と、
前記番組データ受信手段により受信された前記番組データを出力する出力手段と、
前記番組で用いられた映像や曲としてのビデオデータまたはオーディオデータである関連データを要求するときに操作される操作手段と、
前記操作手段に対する操作に応じて、前記操作手段が操作されたときの操作時刻を、前記関連データを識別するための識別情報として送信装置に無線通信により送信する識別情報送信手段と、
前記識別情報送信手段により送信された前記識別情報に応じて前記送信装置から送信されてくる、その識別情報に対応する前記関連データを受信する関連データ受信手段と、
前記関連データ受信手段により受信された前記関連データを記録する記録手段と
を備える受信装置。」

2.引用例
引用例1、引用例2の記載事項は、前記「II.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「II」で検討した本願補正発明から「オーディオデータ」の限定事項である「ディジタル」との限定を省き、本願補正発明から「関連データ」の限定事項である「曲としてのディジタルオーディオデータである」について、「曲としてのディジタルオーディオデータである」ことを含む「映像や曲としてのビデオデータまたはオーディオデータである関連データ」とするものであり、「無線通信」の限定事項である「前記受信装置本体が移動中においても広帯域ネットワークと通信接続可能な」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.4に記載したとおり、引用例1発明及び引用例2、周知技術に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、上記引用例1発明及び引用例2、周知技術に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び引用例2、周知技術に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-05 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-22 
出願番号 特願2006-34228(P2006-34228)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04H)
P 1 8・ 121- Z (H04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 貴裕  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 青木 健
清水 稔
発明の名称 送受信装置および送受信方法、並びに受信装置および受信方法  
代理人 稲本 義雄  

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