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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D |
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管理番号 | 1217956 |
審判番号 | 不服2008-22823 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-04 |
確定日 | 2010-06-10 |
事件の表示 | 特願2004- 59904「冷蔵庫用脱臭フィルタ及びこれを用いた冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月15日出願公開、特開2005-249281〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成16年3月3日の出願であって、平成20年 7月29日に拒絶査定がなされ(平成20年8月5日発送)、平成20年9月4日に拒絶査定不服審判の請求があったものである。 そして、その請求項1に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるものである(以下「本願発明」という。)。 「冷蔵庫に収納された食品からの臭いを脱臭するための冷蔵庫用脱臭フィルタにおいて、 通気性部材に物理吸着剤を配さずに常温触媒物質を担持させたことを特徴とする冷蔵庫用脱臭フィルタ。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-287353号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア「【発明の属する技術分野】本発明は光触媒フィルタを備えた冷蔵庫に関するものであり、さらに詳しくは脱臭性や殺菌性に優れ、かつ消費電力を低減した光触媒フィルタを備えた冷蔵庫に関するものである。」(段落【0001】) イ「本発明においては必要に応じて吸着剤を用いることができる。本発明において用いる吸着剤は、細菌、臭い分子、有害物質などを吸着するものであり、例えば活性炭、アパタイト、セピオライト、ゼオライトなどの無機物あるいは絹繊維などの有機物などである。」(段落【0023】) ウ「本発明で用いる酸化触媒は、紫外線照射を行わなくても前記庫内の雰囲気において前記光触媒フィルタの通風路を通過する空気中の臭い分子を分解する機能を有するものであり、光触媒のように臭い分子を完全に分解して水と炭酸ガスまで分解できるものであっても、あるいは臭い分子を分解して臭いの少ないあるいは臭いのない分子まで分解できるものであってもよく、その種類は特に限定されるものではない、具体的には、例えば、酸化銅、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化カルシウム、臭素やヨウ素などのハロゲン類、あるいはこれらの2種以上の組み合わせを挙げることができる。・・・ 例えば、本発明で用いる酸化触媒の一例である酸化マンガンは、紫外線照射を行わなくても、前記庫内の雰囲気において前記光触媒フィルタの通風路を通過する空気中のメチルメルカプタンを、2硫化メチルに分解できる。メチルメルカプタンは嗅覚閾値が0.000070の臭いの非常に強い臭い分子であるが、2硫化メチルは嗅覚閾値が0.0022で臭いの弱い分子である。メチルメルカプタンを2硫化メチルに分解すればそれだけで臭いを相当低減する効果があるが、紫外線照射を行って光触媒を活性化して脱臭する際には、メチルメルカプタンを完全分解するのに較べて、この2硫化メチルは容易に完全分解され、無臭化される。」(段落【0027】?【0029】) エ「本発明の冷蔵庫10においては、紫外線放射ランプ24からの紫外線照射中でもあるいは紫外線の照射を停止しても冷気中の臭い分子は光触媒フィルタ25の紫外線が照射されない側の表層Bにある吸着剤にも吸着して集められ、そして前記酸化触媒により分解される。したがって、本発明の冷蔵庫10は、例えば臭いの強い被冷却物を収納した際などにはそれをセンサで検知して、紫外線放射ランプ24を作動して紫外線を光触媒に照射して脱臭したり、庫内の臭いが少なく光触媒による強い脱臭の必要があまりないなどの場合はそれをセンサで検知して紫外線放射ランプ24による紫外線照射を停止するなど、必要に応じて紫外線の照射を停止する間欠照射を行うことができる。紫外線照射中でもあるいは紫外線の照射を停止したり間欠的に行って紫外線照射を行わない間も脱臭できるので脱臭効率が向上する上、紫外線放射ランプ24の長寿命化や消費電力の低減を図ることができる。」(段落【0037】) オ 図4、前記ウの「光触媒フィルタの通風路を通過する空気中の臭い分子を分解する機能を有する」の記載からみて、光触媒フィルタ25は、通気性の部材であることは明らかである。 以上の記載及び図面から、引用例には、 「冷蔵庫に収納され、脱臭性の光触媒フィルタ25において、通気性部材に、庫内の雰囲気で機能する酸化触媒を備え、必要に応じて吸着剤を用いることができる冷蔵庫用光触媒フィルタ25。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「光触媒フィルタ25」は、紫外線照射を行わない態様も含むものであるから、本願発明の「脱臭フィルタ」に、機能的に、相当するものである。同様に、「脱臭性の」は「食品からの臭いを脱臭するための」に、「庫内の雰囲気で機能する酸化触媒」は「常温触媒物質」に、「備え」は「担持させ」に、それぞれ、相当する。 したがって、両発明は、 「冷蔵庫に収納された食品からの臭いを脱臭するための冷蔵庫用脱臭フィルタにおいて、 通気性部材で常温触媒物質を担持させた冷蔵庫用脱臭フィルタ。」の点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 本願発明では、「物理吸着剤を配さずに(担持させた)」ものであるのに対し、引用発明では、「必要に応じて吸着剤を用いることができる」ものである点。 そこで、上記相違点について検討する。 冷蔵庫内で用いる酸化マンガン等の触媒を、活性炭などの物理吸着剤を用いることなく、そのまま脱臭部材として用いることは、本願出願前周知の技術である(例えば、前審で提示した特開平8-173795号公報、特開平6-288672号公報参照。)。 そして、同じ機能を期待できるのであれば、少ない部材で構成しようと考えるのは、技術常識ともいえることである。 そうすると、引用発明において、本願発明のように、常温触媒物質を、物理吸着剤を配さずに担持させるようにした点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明の奏する効果を全体としてみても、引用発明及び周知技術から、当業者が予測することができたものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-31 |
結審通知日 | 2010-04-06 |
審決日 | 2010-04-26 |
出願番号 | 特願2004-59904(P2004-59904) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田々井 正吾 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 稲垣 浩司 |
発明の名称 | 冷蔵庫用脱臭フィルタ及びこれを用いた冷蔵庫 |
代理人 | ▲角▼谷 浩 |