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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1217968 |
審判番号 | 不服2007-22465 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-13 |
確定日 | 2010-06-09 |
事件の表示 | 特願2002- 23952「情報処理装置及びその方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 8日出願公開、特開2003-223314〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は平成14年1月31日の出願であって、平成19年7月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年8月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年9月12日付けで手続補正がなされたものである。 第2.平成19年9月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年9月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正内容 (1)本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 入力手段から入力された音声に対して、音声認識用の認識文法、該認識文法に対応するコマンド及びそのコマンドの重要度を対応付けた認識文法情報を参照して音声認識を行い、その音声認識結果に対応するコマンド及びそのコマンドの重要度を取得する取得手段と、 前記コマンドの重要度毎にそのコマンドの実行の確認方法を対応付けて記憶した記憶手段を参照し、前記取得手段で取得したコマンドの重要度に対応するコマンドの実行の確認方法を判定する確認判定手段と、 前記確認判定手段で判定された確認方法によって、前記コマンドの実行の確認を実行する確認実行手段と、 前記確認実行手段による確認に対する応答を入力する応答入力手段から入力された入力結果に基づいて、前記コマンドを実行するコマンド実行手段と を備えることを特徴とする情報処理装置。」を、 「 【請求項1】 入力手段から入力された音声に対して、音声認識用の認識文法、該認識文法に対応するコマンド及びそのコマンドの重要度を対応付けた認識文法情報を参照して音声認識を行い、その音声認識結果に対応するコマンド及びそのコマンドの重要度を取得する取得手段と、 前記コマンドの重要度毎にそのコマンドの実行の確認をするための確認情報を対応付けて記憶した記憶手段を参照し、前記取得手段で取得したコマンドの重要度に対応する確認情報を判定する確認判定手段と、 前記確認判定手段で判定された確認情報を出力することによって、前記コマンドの実行の確認を実行する確認実行手段と、 前記確認実行手段により実行された確認に対する応答を入力する応答入力手段から入力された入力結果に基づいて、前記コマンドを実行するコマンド実行手段と を備えることを特徴とする情報処理装置。」と補正することを含むものである。但し、下線は補正箇所である。 すなわち、本件補正は、請求項1において、 (a)「確認方法を対応付けて記憶した」を「確認をするための確認情報を対応付けて記憶した」と補正し、 (b)「重要度に対応するコマンドの実行の確認方法を判定する」を「重要度に対応する確認情報を判定する」と補正し、 (c)「確認方法によって、」を「確認情報を出力することによって、」と補正し、 (d)「前記確認実行手段による確認」を「前記確認実行手段により実行された確認」と補正するものである。 (2)本件補正が特許法第17条の2に規定する要件を満たしているか否か検討する。 (a)「記憶されるものは、情報である。」ということが技術常識であるから、「確認方法を対応付けて記憶した」とは、「確認方法の情報を対応付けて記憶した」という意味であると解される。「確認方法の情報を対応付けて記憶した」を「確認をするための確認情報を対応付けて記憶した」と補正することによって、記憶されるものが「確認方法の情報」から「確認をするための確認情報」に変わった。「確認をするための確認情報」には、「確認方法の情報」以外の「確認に関する情報」も含まれるから、上記補正事項(a)は、特許請求の範囲の拡張または変更を目的とするものである。 (b)上記補正事項(b)により、判定されるものが、「コマンドの実行の確認方法」から「確認情報」に変わった。「確認情報」には、「コマンドの実行の確認方法」以外の「確認に関する情報」も含まれるから、上記補正事項(b)は、特許請求の範囲の拡張または変更を目的とするものである。 (c)上記補正事項(b)により、「確認方法によって、」が「確認情報を出力することによって、」となった。「確認情報」には、「確認方法」以外の「確認に関する情報」も含まれるから、上記補正事項(c)は、特許請求の範囲の拡張または変更を目的とするものである。 (d)確認実行手段は、確認を実行する手段であるから、「前記確認実行手段による確認」は、「前記確認実行手段により実行された確認」という意味であると解される。したがって、「前記確認実行手段による確認」を「前記確認実行手段により実行された確認」とする補正は、意味を変えないものと認められる。 (e)上記補正事項(a)?(c)は、請求項の削除を目的とするものでなく、誤記の訂正を目的とするものでなく、また明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。したがって、上記補正事項(a)?(c)は、特許法第17条の2第4項の第1号?第4号のいずれをも目的とするものでない。 2.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 上記のとおり、平成19年9月12日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、(「本願発明」という。)は、平成18年8月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 入力手段から入力された音声に対して、音声認識用の認識文法、該認識文法に対応するコマンド及びそのコマンドの重要度を対応付けた認識文法情報を参照して音声認識を行い、その音声認識結果に対応するコマンド及びそのコマンドの重要度を取得する取得手段と、 前記コマンドの重要度毎にそのコマンドの実行の確認方法を対応付けて記憶した記憶手段を参照し、前記取得手段で取得したコマンドの重要度に対応するコマンドの実行の確認方法を判定する確認判定手段と、 前記確認判定手段で判定された確認方法によって、前記コマンドの実行の確認を実行する確認実行手段と、 前記確認実行手段による確認に対する応答を入力する応答入力手段から入力された入力結果に基づいて、前記コマンドを実行するコマンド実行手段と を備えることを特徴とする情報処理装置。」 2.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-219584号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (a)段落番号【0013】 「 101は、マイク等により入力された音声を装置内部に取り込む音声入力部である。102は、音声出力を行う音声出力部である。103は、文字出力、画像出力等を行う表示部である。104は、キーボードを用いた入力を行うキーボード入力部である。105は、マウスを用いた入力を行うマウス入力部である。106は、101から入力された音声を音声認識しコマンドに変換する音声認識部である。107は、106で認識したコマンドを保持する認識コマンド保持部である。108は、コマンド辞書109を用いて107に保持したコマンドをユーザーに再確認するかどうか判定する再確認判定部である。109は、それぞれのコマンドについて、ユーザーに再確認するかどうかを登録しておくコマンド辞書である。110は、106で認識したコマンドをアプリケーションプログラムに渡してよいかどうかユーザーに確認するコマンド実行確認部である。111は、107に保持したコマンドをアプリケーションプログラムに渡すコマンド出力部である。」 (b)段落番号【0014】 「 図2は、図1の構成で、音声情報処理装置が動作する過程を表わしたフローチャートである。」 (c)段落番号【0018】-【0021】 「 図4は、コマンド辞書109の例である。 コマンド辞書109には、各アプリケーションの各コマンド毎に、コマンドの再確認を行なうかどうかを設定する。その場合、例えば“logout”や“ファイルの削除”のように誤って実行されると危険なコマンドの再確認を“する”に設定する。 以下、ユーザーが音声情報処理装置を使って、アプリケーションプログラムのシェルを利用している場合について具体的に説明する。 ユーザがマイクに向かって「アールログイン」と発声する。音声認識部106は音声認識をおこない入力音声をコマンドに変換する。ここでシステムが“logout”と誤認識したとする。再確認判定部108はコマンド辞書109で“logout”を調べ、その結果再確認を“する”と判定する。コマンド実行確認部11は、まず「“logout”をおこないますか?(はい/いいえ)」という内容を表示部103へ出力し、ユーザーの返事を待つ。ユーザーはマウスを使い“いいえ”を選ぶ、システムは、音声認識に失敗したとし、コマンド認識コマンド保持部に保持している“logout”を捨て、新たな入力を待つ。このように、誤認識による危険なコマンドの実行を防ぐことができる。」 (d)図4のコマンド辞書のアプリケーション「シェル」において、コマンド「mail」の再確認欄には「しない」と記載され、コマンド「削除」の再確認欄には「する」と記載され、コマンド「表計算」の再確認欄には「しない」と記載され、コマンド「logout」の再確認欄には「する」と記載されている。 したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 マイク等により入力された音声を装置内部に取り込む音声入力部101、音声出力を行う音声出力部102、文字出力、画像出力等を行う表示部103、キーボードを用いた入力を行うキーボード入力部104、マウスを用いた入力を行うマウス入力部105、101から入力された音声を音声認識しコマンドに変換する音声認識部106、106で認識したコマンドを保持する認識コマンド保持部107、コマンド辞書109を用いて107に保持したコマンドをユーザーに再確認するかどうか判定する再確認判定部108、それぞれのコマンドについて、ユーザーに再確認するかどうかを登録しておくコマンド辞書109、106で認識したコマンドをアプリケーションプログラムに渡してよいかどうかユーザーに確認するコマンド実行確認部110、107に保持したコマンドをアプリケーションプログラムに渡すコマンド出力部111を備えた音声情報処理装置であって、 コマンド辞書のアプリケーション「シェル」において、コマンド「mail」の再確認欄には「しない」と記載され、コマンド「削除」の再確認欄には「する」と記載され、コマンド「表計算」の再確認欄には「しない」と記載され、コマンド「logout」の再確認欄には「する」と記載されており、 コマンド辞書においては、“logout”や“ファイルの削除”のように誤って実行されると危険なコマンドの再確認を“する”に設定されており、 ユーザがマイクに向かって「アールログイン」と発声すると、音声認識部106は音声認識をおこない入力音声をコマンドに変換し、ここでシステムが“logout”と誤認識したとすると、再確認判定部108はコマンド辞書109で“logout”を調べ、その結果再確認を“する”と判定し、コマンド実行確認部11は、まず「“logout”をおこないますか?(はい/いいえ)」という内容を表示部103へ出力し、ユーザーの返事を待ち、ユーザーはマウスを使い“いいえ”を選ぶと、システムは、音声認識に失敗したとし、コマンド認識コマンド保持部に保持している“logout”を捨て、新たな入力を待つ、このように、誤認識による危険なコマンドの実行を防ぐことができる 音声情報処理装置。」 3.本願発明と引用発明の一致点・相違点 本願発明の入力手段は音声を入力する入力手段であるから、引用発明の「マイク等により入力された音声を装置内部に取り込む音声入力部101」が、本願発明の入力手段に相当する。 引用発明の音声認識部106は、音声入力部101から入力された音声を音声認識しコマンドに変換しているから、本願発明の取得手段と、「音声認識用の認識文法、該認識文法に対応するコマンドを対応付けた認識文法情報を参照して音声認識を行い、その音声認識結果に対応するコマンドを取得する」点において一致している。 本願の発明の詳細な説明の段落番号【0024】には「確認判定部107において、コマンドの重要度に応じてユーザにコマンドの実行の有無の確認方法の例を、図4に示す。」と記載されており、段落番号【0029】には「また、重要度レベルが3のコマンドの場合には、単に、実行するか否かをユーザに確認する。」と記載されており、段落番号【0031】には「また、重要度レベルが1のコマンドの場合には、確認は行わない。」と記載されている。したがって、本願発明において、「単に、実行するか否かをユーザに確認する。」は確認方法の一種であり、また「確認は行わない。」も確認方法の一種である。 してみると、引用発明のコマンド辞書の再確認欄の「する」と「しない」は確認方法を記載したものであると認められる。 引用発明の「“logout”や“ファイルの削除”のように誤って実行されると危険なコマンド」は、重要度が高いコマンドであると認められる。引用発明では、“logout”や“ファイルの削除”のように誤って実行されると危険なコマンド、すなわち重要度が高いコマンドの再確認を“する”に設定されているから、引用発明のコマンド辞書109は、本願発明の記憶手段と、「前記コマンドの重要度に応じて、そのコマンドの実行の確認方法を対応付けて記憶した」点において一致している。 引用発明の再確認判定部108は、「前記コマンドの重要度に応じて、そのコマンドの実行の確認方法を対応付けて記憶した」コマンド辞書109を用いて、認識コマンド保持部107に保持したコマンドをユーザーに再確認するかどうか判定しているから、本願発明の「前記取得手段で取得したコマンドの重要度に対応するコマンドの実行の確認方法を判定する確認判定手段」に相当する。 引用発明の「106で認識したコマンドをアプリケーションプログラムに渡してよいかどうかユーザーに確認するコマンド実行確認部110」は、本願発明の「前記確認判定手段で判定された確認方法によって、前記コマンドの実行の確認を実行する確認実行手段」に相当する。 引用発明では、ユーザーはマウスを使い“いいえ”を選ぶから、引用発明のマウス入力部105が、本願発明の「前記確認実行手段による確認に対する応答を入力する応答入力手段」に相当する。 引用発明の「107に保持したコマンドをアプリケーションプログラムに渡すコマンド出力部111」が、本願発明の「応答入力手段から入力された入力結果に基づいて、前記コマンドを実行するコマンド実行手段」に相当する。 引用発明の音声情報処理装置が、本願発明の情報処理装置に相当する。 したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「 入力手段から入力された音声に対して、音声認識用の認識文法、該認識文法に対応するコマンドを対応付けた認識文法情報を参照して音声認識を行い、その音声認識結果に対応するコマンドを取得する取得手段と、 前記コマンドの重要度に応じて、そのコマンドの実行の確認方法を対応付けて記憶した記憶手段を参照し、前記取得手段で取得したコマンドの重要度に対応するコマンドの実行の確認方法を判定する確認判定手段と、 前記確認判定手段で判定された確認方法によって、前記コマンドの実行の確認を実行する確認実行手段と、 前記確認実行手段による確認に対する応答を入力する応答入力手段から入力された入力結果に基づいて、前記コマンドを実行するコマンド実行手段と を備えることを特徴とする情報処理装置。」である点。 [相違点] (イ)本願発明の取得手段は、コマンドの重要度を対応付けた認識文法情報を参照して音声認識を行い、そのコマンドの重要度を取得するのに対して、 引用発明の音声認識部106は、コマンドの重要度の取得までは行わない点。 (ロ)本願発明の記憶手段は、前記コマンドの重要度毎にそのコマンドの実行の確認方法を対応付けて記憶しているのに対して、引用発明のコマンド辞書109は、コマンド毎に、前記コマンドの重要度に応じて、そのコマンドの実行の確認方法を対応付けて記憶している点。 4.相違点の検討 [相違点(ロ)について] 引用発明のコマンド辞書109は、コマンドを確認方法に変換するためのものであり、且つ確認方法はコマンドの重要度に応じて設定されているから、コマンドを直接、確認方法に変換するか、それとも重要度という媒介変数を介して変換するかは、設計的事項に過ぎない。 重要度という媒介変数を介して変換する場合には、引用発明のコマンド辞書109が、「コマンド毎に重要度を対応付けたテーブル」と「重要度毎に確認方法を対応付けたテーブル」とで構成されることになるが、後者の「重要度毎に確認方法を対応付けたテーブル」が、本願発明の「前記コマンドの重要度毎にそのコマンドの実行の確認方法を対応付けて記憶している記憶手段」に相当する。 [相違点(イ)について] 上記[相違点(ロ)について]で指摘した、重要度という媒介変数を介して変換する場合には、「コマンドを重要度に変換する処理」と「重要度を確認方法に変換する処理」とが行われることになるが、前者の「コマンドを重要度に変換する処理」を引用発明のどの部が行うかは、設計的事項に過ぎない。 上記各相違点についての判断を総合しても、本願発明の奏する効果は、引用発明から当業者が十分に予測可能なものあって、格別のものでない。 したがって、本願発明は、引用発明から容易に想到することができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は本願出願前に頒布された上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-07 |
結審通知日 | 2010-04-09 |
審決日 | 2010-04-20 |
出願番号 | 特願2002-23952(P2002-23952) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 57- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 慎太郎 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
篠塚 隆 近藤 聡 |
発明の名称 | 情報処理装置及びその方法、プログラム |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 永川 行光 |