ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04C |
---|---|
管理番号 | 1218022 |
審判番号 | 不服2008-25147 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-01 |
確定日 | 2010-06-10 |
事件の表示 | 特願2005-176268「梁貫通孔補強材」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開、特開2006-348589〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成17年6月16日の出願であって、平成20年8月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月17日付けで手続補正がなされたものである。 その後、平成21年10月29日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成22年1月7日付けで回答書が提出された。 2.平成20年10月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成20年10月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成20年10月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに補正しようとする補正事項を含むものである。 「梁に形成された貫通孔に設けられる梁貫通孔補強材の製造方法であって、圧延もしくは鋳造により成型した略円柱形状の素材を、軸方向に圧縮し、前記素材の中心部を除去して素材をリング状に形成後、前記リング状素材を型でプレスし、前記リング状素材の内径および外径を拡幅しつつ成形することを特徴とする梁貫通孔補強材の製造方法。」 上記補正事項は、本願の請求項1に係る発明の「径を拡幅」を「内径および外径を拡幅」に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。 (2)刊行物及びその記載内容 刊行物1:特開2003-232105号公報 刊行物2:特開平10-180386号公報 刊行物3:特開昭50-86470号公報 原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された上記刊行物1には、図面とともに、次のことが記載されている。 (1a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、各種建築構造物を構成する梁に形成された貫通孔に固定され当該梁を補強する梁補強金具およびこれを用いた梁貫通孔補強構造に関する。」、 (1b)「【0025】図1に示すように、梁補強金具1は、例えばH形鋼からなる梁2に形成された内径Rの大きさの円形の貫通孔3に嵌入され、貫通孔3の周縁部に外周部4が溶接固定されるリング状の補強部材である。梁補強金具1の外径d1は、貫通孔3の内部に形成された内径Rの円形の空間部6に嵌入可能な大きさであり、その軸方向長さAは、梁2のウェブ部2wの厚みt1より厚く形成されている。また、梁補強金具1の内径d2は、その内側に配管5を挿通可能な大きさであって、梁2の重力方向の高さである梁成Hの0.8倍以下に形成している。」。 上記記載より、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。 「梁2に形成された貫通孔3に設けられるリング状の梁補強金具1」(以下、「上記刊行物1記載の発明」という。) 同じく上記刊行物2には、図面とともに、次のことが記載されている。 (2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、外周にV溝を有するプーリ及びその製造方法に関する。」、 (2b)「【0022】…上記プーリ10の製造方法を図2?図8を参照して説明する。まず、図1に示す円柱状の鉄の素材W1からプレスによる冷間鍛造(冷間加工)によって、図2に示す厚肉円板体W2を成形する。そして、図4に示すように、厚肉円板体W2の中央部を、その上下の面からプレスによる冷間鍛造によって円形状に押し潰して、円形薄肉部W2aを形成する。それから、図5に示すように、円形薄肉部W2aをプレスで打ち抜くことによって厚肉リング体W3を成形する。 【0023】その後、図6に示すように、厚肉リング体W3における半径方向の中間部をその上下の面からプレスによる冷間鍛造で押し潰すことによって、その内周部に軸受部11を成形するとともに、その中間部にウエブ部12を成形し、さらに外周部にはリム部13を形成するための余肉部W4aを成形する。すなわち、プーリの粗形状体W4を成形する。この粗形状体W4は、図7に示すように、下金型M1、上金型M2、内周面保持金型M3及び外周面保持金型M4によって、冷間で鍛造される。 【0024】次ぎに、図8に示すように、下面保持金型M5、上面保持金型M6、内周面保持金型M7で軸受部11及びウエブ部12を保持した状態で、ローラ金型M8を用いて、外周面から冷間でローラ成形することにより、リム部13及びV溝14を成形する。これにより、プーリ10が完成する。」。 (2c)【図2】、【図3】には、円柱状の鉄の素材W1を軸方向に圧縮する状態が記載されている。 同じく上記刊行物3には、図面とともに、次のことが記載されている。 (3a)「本発明は、普通の組成の標準軸受鋼か、または化学的に熱で処理される鋼か、または、たとえば、特願昭44-104,231号による鋼のような他の鋼から作られる中空円形被加工部材の製造法に関するものである。」(1頁左下欄19行右下欄3行)、 (3b)「本発明による中空円形被加工部材の製造方法は、普通の軸受鋼または化学的に熱で処理される鋼、たとえば、浸炭鋼や他の鋼、たとえば、その構造が特願昭44-104,231号の要旨となっているような鋼を使用する遠心式に鋳造した中空インゴツトにより前述の製造方法を改善する。本発明の原理は、遠心式に鋳造された中空インゴツトまたは個々の環体またはならい削りされた表面を有する他の回転部材が圧延、鍛造または型鍛造機構を使つて形成されることにあり、その際、えられる管または環体はいくつかの部分に分割され、それらの部分は、それからならい圧延されるか、鍛造されるかまたは型鍛造され、それから金属切削法により機械仕上げされ、それから最適硬度さをうるように熱処理され、焼もどし後、研削、超仕上げ、ラツプ仕上げまたはつや出しにより、あるいは、これらの仕上げ法の組合せにより仕上げが行われる。」(2頁左上欄9行?右上欄6行)、 (3c)「個々の環体の中空インゴツトの穴やならい削りされた表面を有する他の回転部材の中空インゴツトの穴内の、あるいは分離された環体の穴内のスラツグで汚染された材料層は、圧延または鍛造または型鍛造の前に、取り除かれる。」(2頁右上欄10?15行)、 (3d)「周囲溝を有する被加工部材を製造する時、外面に溝22を有し、スラツグを混じえた中心層23を有する化学的に熱処理される鋼でできた遠心鍛造中空インゴツト21から、切削工具24を使つて、この中心層23が同時に除去され、切断工具25を使つて、個々の環体26が分離され、その環体26は、ついで、形成用ダイ27間で型鍛造される。内側にばり30を有する被加工部材の半製品29は、ついで、金属切削法により機械仕上げされ、そして化学的に熱処理され、焼入れしたのち、それは指定の寸法に仕上げられる。」(4頁左上欄5?15行)。 (3)対比 本願補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、上記刊行物1記載の発明の「梁補強金具1」は本願補正発明の「梁貫通孔補強材」に相当するから、刊行物1記載の発明は、本願補正発明における「梁に形成された貫通孔に設けられるリング状の梁貫通孔補強材」に相当する。 したがって、両者は、本願補正発明が「梁貫通孔補強材の製造方法」であって「圧延もしくは鋳造により成型した略円柱形状の素材を、軸方向に圧縮し、前記素材の中心部を除去して素材をリング状に形成後、前記リング状素材を型でプレスし、前記リング状素材の内径および外径を拡幅しつつ成形する」ものであるのに対し、上記刊行物1記載の発明は、梁貫通孔補強材であって、その製造方法は不明な点で相違する。 (4)判断 上記相違点について検討すると、上記刊行物2には、リング状金属部材の製造方法として、円柱状の鉄の素材W1にプレスによる冷間鍛造を行って厚肉円板体W2を成形し、厚肉円板体W2の中央部をその上下の面からプレスによる冷間鍛造によって円形状に押し潰して円形薄肉部W2aを形成し、該円形薄肉部W2aをプレスで打ち抜くことによって厚肉リング体W3を形成し、金型M1?M4によって冷間で鍛造し、粗形状体W4を成形すること、すなわち、略円柱形状の素材を、軸方向に圧縮し、前記素材の中心部を除去して素材をリング状に形成後、前記リング状素材を型でプレスし、成形するリング状の部材を製造する方法の発明が記載されていると認めることができる。 また、刊行物3には、鋳造または圧延により成型した素材から、リング形状の部材を成形すること、鋳造により成型した素材の中心部は汚染された材料層となることから、鍛造の前にこの材料層を取り除くことが記載されている。 そうすると、上記刊行物1記載の発明の梁貫通孔補強材を製造するに際し、円柱状の鉄の素材を軸方向に圧縮し、中心部を除去してリング形状にプレス成型すること、素材として圧延または鋳造により成型したものを用いることは、刊行物2及び3記載の発明に基いて当業者が容易になしうることである。 さらに、リング状素材を型でプレスする際には、最終的に所望する大きさや形状によって型が適宜選択されるものであり、最終の径より小さい中心径を開けた後、リング形状の素材の内径及び外径を拡幅することは、本願出願前周知の技術であり(例えば、特開2002-282987号公報、特開平11-244983号公報)、リング形状の梁貫通孔補強材の成型の際、リング状素材の内径および外径を拡幅しつつ成形することも、上記周知技術に基いて当業者が容易になし得ることである。 なお、請求人は、刊行物2記載の発明は、厚肉円板体W2の中央部を冷間鍛造によって円形状に押し潰し円形薄肉部を成形した後、円形薄肉部を打ち抜いており、円形薄肉部成形時、厚肉円板体の中央部の不純物が円形薄肉部外側の厚肉リング体W3にも拡散し、円形薄肉部を打ち抜いた後も、厚肉リング体W3に不純物が含まれている恐れがある(回答書2頁下から11?7行)と主張するが、特許請求の範囲の請求項1によれば「軸方向に圧縮し、前記素材の中心部を除去して素材をリング状に形成」と記載され、また、本願の【図10(b)】、【図10(c)】及び【0024】によれば、素材の中心部を薄肉状に形成した後に中心部を除去した実施例が記載されていることから、本願補正発明は、軸方向に圧縮する際に、中央部を押し潰すものを排除していないと認められる。さらに、円形薄肉部を成形することなく、中心部を除去することも適宜なしうること程度のことである。 そして、上記本願補正発明の作用効果は、刊行物1及び2記載の発明及び周知技術から予測できる程度であって、格別のものとは認められない。 なお、請求人は、審判請求書において、上記各刊行物には、同一形状の円筒状素材から、径の異なる複数の梁貫通孔補強材を異なる設備を用いることなく安価に製造することができるという効果については記載も示唆もない(審判請求書の平成20年10月17日付けの手続補正書4頁1?6行)旨主張するが、明細書には、同一形状の円筒状素材から、径の異なる複数の梁貫通孔補強材を製造することは記載されておらず、請求人の主張は、明細書の記載に基づかないものである。 よって、本願補正発明は、上記刊行物1ないし3記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成20年10月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年3月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「梁に形成された貫通孔に設けられる梁貫通孔補強材の製造方法であって、圧延もしくは鋳造により成型した略円柱形状の素材を、軸方向に圧縮し、前記素材の中心部を除去して素材をリング状に形成後、前記リング状素材を型でプレスし、前記リング状素材の径を拡幅しつつ成形することを特徴とする梁貫通孔補強材の製造方法。」 (1)刊行物の記載内容 原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の「内径および外径を拡幅」を「径を拡幅」と上位概念化したものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、上記刊行物1ないし3記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記刊行物1ないし3記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、上記刊行物1ないし3記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-08 |
結審通知日 | 2010-04-13 |
審決日 | 2010-04-26 |
出願番号 | 特願2005-176268(P2005-176268) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(E04C)
P 1 8・ 121- Z (E04C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鉄 豊郎、渋谷 知子 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
伊波 猛 関根 裕 |
発明の名称 | 梁貫通孔補強材 |
代理人 | 井上 誠一 |