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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1218096 |
審判番号 | 不服2008-18523 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-22 |
確定日 | 2010-06-07 |
事件の表示 | 特願2002-194154「電子内視鏡用プロセッサ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日出願公開,特開2004- 33451〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成14年7月3日に特許出願されたものであって,平成20年6月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月22日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。さらに,平成21年12月7日付けで審尋がなされ,回答書が平成22年2月8日付けで請求人より提出されたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正後の請求項1に係る発明 本件補正により,補正前の特許請求の範囲(平成20年5月1日付けで補正されたもの。以下,同様。)の請求項1は,次のとおりに補正された。(下線は補正箇所を示す。) 「【請求項1】電子スコープの撮像処理により生成された画像信号を処理する電子内視鏡用プロセッサにおいて、 前記電子スコープから入力される画像信号を一系統に多重化する多重化手段と、 前記多重化手段の後段に設けられたビデオ信号出力手段であって、前記多重化により生成されたデジタルビデオ信号を出力するデジタルビデオ信号出力手段、および該多重化により生成されたデジタルビデオ信号をエンコードして分離してアナログビデオ信号に変換し出力するアナログビデオ信号出力手段と、 を有すること、を特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。」 上記補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「該多重化により生成されたデジタルビデオ信号をアナログ変換してアナログビデオ信号を出力するアナログビデオ信号出力手段」を「該多重化により生成されたデジタルビデオ信号をエンコードして分離してアナログビデオ信号に変換し出力するアナログビデオ信号出力手段」と限定するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用刊行物の記載事項 本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平08-214290号公報(以下「刊行物」という)には,次の事項が記載されている。 (1-ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】固体撮像素子で撮像された内視鏡観察画像の撮像信号をビデオプロセッサにおいて処理し、ビデオプロセッサからテレビモニタに映像信号を出力して内視鏡観察画像を表示するようにした電子内視鏡装置において、 上記ビデオプロセッサに、赤、緑、青の各色のアナログの映像信号を出力するためのRGB信号出力手段と、上記テレビモニタに内視鏡観察画像を表示させるためのアナログのコンポジットビデオ信号及びSビデオ信号を出力させるためのビデオ信号出力手段とを設けると共に、上記内視鏡観察画像のデジタルの映像信号をシリアルに出力するためのデジタル映像信号シリアル出力手段を設けたことを特徴とする電子内視鏡装置。 【請求項2】上記デジタル映像信号シリアル出力手段から出力される映像信号に付随させるためのコメント等のキャラクタ情報を、上記デジタル映像信号と共に上記デジタル映像信号シリアル出力手段から出力させるためのキャラクタ処理手段が設けられている請求項1記載の電子内視鏡装置。」 (1-イ) 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、固体撮像素子で撮像された内視鏡観察画像の撮像信号をビデオプロセッサにおいて処理し、ビデオプロセッサからテレビモニタに映像信号を出力して内視鏡観察画像を表示するようにした電子内視鏡装置に関する。」 (1-ウ) 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】近年は、医学研究や教育等のために、内視鏡検査中の内視鏡観察画像を検査室から遠く離れた遠隔地でもリアルタイムで観察できるようにすることが望まれている。 【0004】しかし、従来の電子内視鏡装置においては、上述のようにビデオプロセッサから出力されるのがアナログの映像信号なので、伝送距離が長くなるにつれて信号が大幅に減衰して画質が劣化してしまい、内視鏡室内のテレビモニタと同等の良質な画像を遠隔地で観察することができなかった。 【0005】また一般に、ビデオプロセッサのパネルには現在の内視鏡の操作状況や観察画像の処理状態等を示すキャラクタ情報が表示されるので、内視鏡室のテレビモニタには、それを除いた現在時刻や患者名等のキャラクタ情報が表示される。 【0006】したがって、内視鏡室のテレビモニタに表示される画面と同じ画面を遠隔地で表示しただけでは、遠隔地側では、ビデオプロセッサのパネルに表示されているキャラクタ情報等の内容がわからないので、必要な情報が不足してしまう問題がある。 【0007】そこで本発明は、内視鏡室のモニタと同等の良質な内視鏡観察画像を遠隔地においてもリアルタイムで表示することができ、さらに遠隔地側に必要なキャラクタ情報を送ることのできる電子内視鏡装置を提供することを目的とする。」 (1-エ) 「【0010】 【実施例】図面を参照して実施例を説明する。図2は本発明の実施例の電子内視鏡装置の全体的構成を示しており、内視鏡1の挿入部2の先端に設けられた対物光学系3による被写体の結像位置に、例えば電荷結合素子(CCD)からなる固体撮像素子4が配置されている。5は、観察範囲を照明する照明光を伝達するためのライトガイドファイババンドルである。」 (1-オ) 「【0019】図1は、上述のビデオプロセス部16の構成を具体的に示したものである。ビデオプロセス部16においては、まず、CCDプロセス部14から送られてくるR,G,Bの各色別に分けられた映像信号が各色に対応したフレームメモリ28R,28G,28Bに格納される。 【0020】そして、その三色の映像信号はフレームメモリ28R,28G,28Bから同時に読み出されて、各々デジタルアナログ変換回路29R,29G,29Bにおいてアナログの三色別の映像信号として出力される。 【0021】またそれと同時に、デジタルアナログ変換回路29R,29G,29Bから同時に読み出された三色の映像信号は、RGBエンコーダ30に入力され、そこでテレビモニタ20に内視鏡観察画像を表示するためのコンポジットビデオ信号とSビデオ信号に変換されて、テレビモニタ20に出力される。」 (1-カ) 「【0023】デジタルアナログ変換回路29R,29G,29Bに入力される前のR,G,Bの三色別のデジタル信号は、そこから分岐されてマトリクス回路33に入力される。 【0024】そして、マトリクス回路33において、R,G,Bの各色デジタル信号が、例えばサンプリング周波数の比率が4:2:2になるように、輝度信号Y、色差信号Cr(Cr=R-Y)及びCb(Cb=B-Y)に変換される。 【0025】サンプリング周波数は、例えば輝度信号Yについては13.5MHz、色差信号Cr及びCbについては6.75MHzとし、クロック周波数はY信号の2倍の27MHzとする。また、各信号の1ラインの有効映像期間のサンプル数は、例えばYが720サンプル、CrとCbが各々360サンプルで、合計1440サンプルとする。 【0026】マトリクス回路33から出力された輝度信号Yと色差信号Cr,Cbは、マルチプレクサ34においてCb,Y,Cr,Y,Cb,Y,…の順に多重化されて、さらに同期ワード発生回路38から入力される同期ワードが付加される。 【0027】その結果、アナログの映像信号ラインにおいては例えば図4に示されるようなアナログの映像信号が、図5に示されるような1系統のパラレルデジタル信号としてマルチプレクサ34から出力される。 【0028】このようなパラレルデジタル信号をケーブルで伝送するためには、ビット数にクロック信号用のラインを加えた信号ラインが必要になり、例えばビット数が10の場合は信号線が11本必要となる。 【0029】そこでこのパラレル信号を、図6にも示されるように、パラレルシリアル変換器35においてシリアル信号に変換し、伝送レートを例えばクロック周波数の10倍の270Mb/sにして、LCBから順に1本の信号ケーブル40で遠隔地に向けて伝送するようにしている。」 上記記載事項(1-ア)?(1-カ)および図1を参照すると,刊行物には次の発明が記載されていると認められる。 「内視鏡1の固体撮像素子4で撮像された内視鏡観察画像の撮像信号をビデオプロセッサ10において処理し,該ビデオプロセッサ10からテレビモニタ20に映像信号を出力して内視鏡観察画像を表示するようにした電子内視鏡装置において,上記ビデオプロセッサ10のビデオプロセス部16に,赤,緑,青の各色のアナログの映像信号を出力するためのRGB信号出力手段であるデジタルアナログ変換回路29R,29G,29Bと,上記テレビモニタに内視鏡観察画像を表示させるためのアナログのコンポジットビデオ信号及びSビデオ信号を出力させるためのビデオ信号出力手段であるRGBエンコーダ30とを設けると共に,上記内視鏡観察画像のデジタルの映像信号をシリアルに出力するためのデジタル映像信号シリアル出力手段を設け,該デジタル映像信号シリアル出力手段がマトリクス回路33,マルチプレクサ34およびパラレルシリアル変換器35から構成される電子内視鏡装置。」 3 対比・判断 (1)対比 補正発明と引用発明とを対比すると,その機能・構造からみて,引用発明の「内視鏡1」,「マルチプレクサ34」,「パラレルシリアル変換器35」および「ビデオプロセス部16」は,それぞれ,補正発明の「電子スコープ」,「多重化手段」,「デジタルビデオ信号出力手段」および「電子内視鏡用プロセッサ」に対応することは明らかである。 そうすると,両者は, (一致点) 「電子スコープの撮像処理により生成された画像信号を処理する電子内視鏡用プロセッサにおいて、 前記電子スコープから入力される画像信号を一系統に多重化する多重化手段と、 前記多重化手段の後段に設けられたビデオ信号出力手段であって、前記多重化により生成されたデジタルビデオ信号を出力するデジタルビデオ信号出力手段を有する電子内視鏡用プロセッサ。」 である点で一致し,次の点で相違する。 (相違点) 補正発明では「多重化手段の後段に設けられ」た「該多重化により生成されたデジタルビデオ信号をエンコードして分離してアナログビデオ信号に変換し出力するアナログビデオ信号出力手段」を有するのに対して,引用発明では「マルチプレクサ34」の後段ではなく並列に設けられた「赤、緑、青の各色のアナログの映像信号を出力するためのRGB信号出力手段であるデジタルアナログ変換回路29R,29G,29B」および「アナログのコンポジットビデオ信号及びSビデオ信号を出力させるためのビデオ信号出力手段であるRGBエンコーダ30」を有する点。 (3)判断 相違点について検討すると, そもそも,本願明細書の段落【0005】?【0006】に記載されたような,回路の規模を縮小しコストダウンする,あるいは信号同士の干渉,ノイズの放出などを抑え高画質にするという課題は,当業者において常に設計段階において考慮される範囲のものであるといえる。 また,「多重化により生成されたデジタルビデオ信号をアナログビデオ信号に変換し出力するアナログビデオ信号出力手段を,多重化手段の後段に設ける」ことは,ビデオ表示の技術分野において本願出願前周知の事項である。 例えば,本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-69201号公報の段落【0024】には「このようにして出力されるY0’信号とY1’信号は、MPX50において時間軸多重されてY’信号を生成して出力し、このY’信号をD/Aコンバータ60でアナログ変換してアナログビデオ輝度信号を得ている。・・・・・」と記載され,その「MPX50」および「D/Aコンバータ60」は,その機能からみて,それぞれ,補正発明の「多重化手段」および「アナログビデオ信号出力手段」に対応するといえる。 また,本願出願前に頒布された刊行物である特開平1-175383号公報には「15はマルチプレクサで、このマルチプレクサ15は、VRAM11A,11Bから読み出された分割画像データを多重することにより、1フレーム分の画像データとして再生するものである。16はNTSC・RGBデコーダで、このNTSC・RGBデコーダ16はNTSCの入力画像をアナログRGBにデコードするものである。」(5頁右下欄7?13行)と記載され,その「マルチプレクサ15」および「NTSC・RGBデコーダ16」は,その機能からみて,それぞれ,補正発明の「多重化手段」および「アナログビデオ信号出力手段」に対応するといえる。 そして,アナログビデオ信号として,RGB信号あるいはSビデオ信号を採用する場合には,アナログ変換の際に「エンコードして分離」することは,技術常識の範囲であるといえる。 してみると,引用発明おいて,その「デジタルアナログ変換回路29R,29G,29B」に換えて,その「マルチプレクサ34」の後段に上記周知のアナログビデオ信号出力手段を設け,相違点における補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得る事項であるといえる。 そして,本願明細書に記載された相違点により奏する作用・効果も,刊行物の記載および周知の事項から予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。 したがって,補正発明は,引用発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,独立して特許を受けることができないものである。 4 まとめ 以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?7に係る発明は,平成20年5月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであって,その請求項1は次のとおりである。(以下「本願発明」という) 「【請求項1】電子スコープの撮像処理により生成された画像信号を処理する電子内視鏡用プロセッサにおいて、 前記電子スコープから入力される画像信号を一系統に多重化する多重化手段と、 前記多重化手段の後段に設けられたビデオ信号出力手段であって、前記多重化により生成されたデジタルビデオ信号を出力するデジタルビデオ信号出力手段、および該多重化により生成されたデジタルビデオ信号をエンコードして分離してアナログビデオ信号に変換し出力するアナログビデオ信号出力手段と、を有すること、を特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。」 2 引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した刊行物およびその記載事項は,前記「第2 2 引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。 3 判断 本願発明は,補正発明において「エンコードして分離してアナログビデオ信号に変換し」との限定がないものである。 そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに限定された補正発明が,前記「第2 3 対比・判断」において検討したとおり,引用発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-06 |
結審通知日 | 2010-04-07 |
審決日 | 2010-04-20 |
出願番号 | 特願2002-194154(P2002-194154) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小田倉 直人 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
竹中 靖典 郡山 順 |
発明の名称 | 電子内視鏡用プロセッサ |
代理人 | 松岡 修平 |